我々は, 2018年3月の新生児集中治療室（NICU）における集団発生の原因がG9であり, 11分節の型別はNSP4遺伝子がE2であるG9-P[8]-I1-R1-C1-M1-A1-N1-T1-E2-H1のモノリアソータントであったことを報告した^1）。そこで, 2019年のG9について注目し, 4月以降に検出した20株についてVP7-VP4-VP6-NSP4の遺伝子型別を実施した。3株（15％）はG9-P[8]-I1-E1であったが, 17株（85％）はG9-P[8]-I1-E2であった。さらに, 5年間に検出されたG9 44株のうち37株についてLineageを決定したところ^2,3）, 1株を除きすべてLineage 6（L6）に分類された。L6に属さなかった1株はG9-P[8]-I1-E1であり, L3に分類された。つまり, このモノリアソータントウイルスは, G9のうちL6に属するウイルスのNSP4遺伝子がE1からE2に組み換わったものであり, 2018～2019年にかけて広まったことが明らかとなった。また, 2018年の東京都においてもG9のモノリアソータントの流行が報告されており^4）, これらは同じウイルスであると考えられる。NSP4は病原性に関連する因子の1つと考えられていることや, ワクチン株由来の重症例報告においてもNSP4に変異を検出した^5）ことから, NSP4の遺伝的な変化が今般のG9流行の一要因であったかもしれない。

以上の結果より, 2019年は基幹病院から報告されるロタウイルス胃腸炎数および感染性胃腸炎検体からの検出数も増加し, ロタウイルスの流行が過去2年に比べて大きいことが明らかとなった。流行の主要な流行株はG9であり, モノリアソータント株であることが考えられた。

なお, 5年間に105株のロタウイルスを検出したが, ワクチン歴が記載され, ロタウイルス胃腸炎を発症した症例は13件あった。そのうち, 12件のG typingの結果はG2, G3がそれぞれ4件, G9が3件, G8が1件であり, 特定のG typeへの偏りはないと考えられた。残りの1件はRotarix^®投与2日後に発症し, 患者からワクチン株が検出された事例であった。

今回明らかとなったモノリアソータントウイルスの流行事例から, ロタウイルスサーベイランスに当たっては, 11分節の型別を実施する必要性があると考えられた。

参考文献