新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報

公開講座

第33回感染研シンポジウム

国立感染症研究所では、第33回感染研シンポジウムを「過去を知り、その先へ!」のテーマのもとに開催いたします。 日時:2024年5月21日(火)    13:00〜17:00 方法:オンライン開催(Zoomウェビナー)   申込み方法: 事前登録が必要となりますので、下記...

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令和6年度 国立感染症研究所研究発表会(学生・若手研究者対象 研究部紹介)

国立感染症研究所では、ウイルス・細菌・真菌・寄生虫等による各種感染症の克服に向け、数々の基礎・臨床研究に取り組んでいます。 感染症研究を志す若手研究者・医療関係者・学生の皆様のご参加を歓迎します。  2024年5月25日(土)13:00〜18:00 Zoom Webinarで開催いたします。参加を希望...

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令和6年度 感染研市民公開講座 知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 (全6回)

掲載日:2024年5月8日 オンライン企画(世界中どこからでも視聴可能!) 令和6年度 国立感染症研究所 感染研市民公開講座知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 ポスターPDF 感染症にまつわる、普段なかなか聞くことができないさまざまな「へぇー、そうだったん...

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IASR最新号 特集記事

IASR 45(4), 風疹・先天性風疹症候群 2024年2月現在

  風疹・先天性風疹症候群 2024年2月現在 (IASR Vol. 45 p51-52: 2024年4月号)   風疹は風疹ウイルスによる急性感染症であり, 発熱, 発疹, リンパ節腫脹を主徴とする。風疹に対する免疫が不十分な妊婦が風疹ウイル...

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急性弛緩性麻痺症例の臨床鑑別と症状

(IASR Vol. 41 p19-20: 2020年2月号)

急性弛緩性麻痺(acute flaccid paralysis: AFP)は急性に四肢の弛緩性運動麻痺を呈する疾患の総称である。AFPにはポリオや非ポリオエンテロウイルスによる脊髄炎, ギラン・バレー症候群やボツリヌス症など脊髄前角細胞または, その末梢側の障害をきたす様々な疾患が含まれるので鑑別が必要である(1)。急性弛緩性脊髄炎(acute flaccid myelitis: AFM)は2014年, エンテロウイルスD68流行期に多発した急性脊髄炎によるAFP症例を検知するために提唱された概念である。AFMは “脊髄前角細胞を病変の主座とする急性炎症性疾患” と想定され, 臨床症状(1肢以上の急性弛緩性脱力)と検査/画像所見(MRIで灰白質優位の1脊髄分節以上にわたる脊髄病変)の組み合わせで診断される疾患である2)

AFMの臨床症候を以下に示す3-6)

発症年齢:幼児から学童が大半を占める。成人期の発症者もいる。

先行症状・前駆症状:高率に発熱, 呼吸器症状, 消化器症状などの先行症状または前駆症状を認める。手足口病が先行することもある7)。先行症状から麻痺発症までの期間は数日である。

運動麻痺:急性に発症する四肢や脳神経系の弛緩性脱力・筋力低下・麻痺は, AFMの中核的な症状で100%に認められる。麻痺は上肢と下肢いずれにも起こりえる。罹患肢は1肢(単麻痺)から4肢(四肢麻痺)まで, 麻痺の程度も徒手筋力テストで0−4まで様々で, 同一個体内でも部位により麻痺の程度が異なる。同じ肢でも遠位筋と近位筋で異なり, 遠位筋の方が麻痺の程度が軽いことがある。5−7割の患者で麻痺は左右非対称である。運動麻痺は急速に進行し, 約8割の患者で48時間以内にピークに達する。

腱反射の減弱・消失:患者で麻痺した部位の腱反射が減弱または消失する。

感覚の異常:運動麻痺が中核症状であるのに対して, 感覚の異常は主要な症状ではない。AFMでは基本的に他覚的感覚脱失は認めない。

脳神経症状:顔面麻痺, 球症状または眼球運動障害をしばしば伴う。症状は主に脳神経系の運動麻痺である。

その他の神経症候:急性脳炎を示唆する精神状態の変化はAFMでは少ない。エンテロウイルスA71感染症に関連するAFMではミオクローヌスと小脳失調を伴う。膀胱直腸障害はしばしばみられるが一過性のことが多い。

AFM症例のMRI画像

AFMの診断には脊髄MRI検査が必須で, その所見としてT2強調像で高信号を呈する灰白質優位の長大な縦走病変(図A, B)と馬尾の造影効果(図C)が特徴的である8)。縦走病変は胸髄よりも頚髄に病変を認めやすく, 全脊髄に及ぶことも多い。灰白質病変は診断に必須であるが, 病変が白質まで広がることも多い。ガドリニウム造影では, 馬尾と神経根が造影されやすく, 脊髄実質は造影されにくい。馬尾が発症後2日以内に造影されることは少なく, その後, 造影される。画像所見と麻痺の部位は必ずしも一致しない。発症から2週間も経つと, 不明瞭であったMRI病変が明瞭になり, 部位も脊髄前角に限局していく。またこの時期の病変部位と残存する麻痺がよく対応するようになる。

脳MRIではしばしば脳幹病変を認める。脳幹病変は脊髄から連続して延髄まで及ぶ例が多く, 中には橋, 中脳まで広がる例がある。一方, 大脳や小脳に異常を認めることは少ない。

AFMが疑われる症例にMRIを行う場合, 撮像部位や方法, 検査時期に関する注意点が指摘されている1)

電気生理学的検査

AFM患者の罹患肢において, 感覚神経障害を伴わない運動神経単独の障害を認める4)。すなわち罹患肢のM波の導出不能, 伝導速度の低下を伴わないM波の振幅低下, F波の出現頻度の低下が神経生理学的検査で得られる所見である。所見は急性期の間, 経時的に変化しうる。AFMと軸索型ギラン・バレー症候群を神経生理学的検査により区別することは困難である。

脳脊髄液検査

単核球(リンパ球)優位の軽度白血球数増多が大部分のAFM患者に認められる。細胞数は発症から5日以内で最も高く, 約2週間を過ぎると正常化する。

 

参考文献
  1. 急性弛緩性麻痺を認める疾患のサーベイランス・診断・検査・治療に関する手引き
    https://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/disease/AFP/AFP-guide.pdf(参照 2020-1-10)
  2. Epidemiologists CoSaT
    https://cdn.ymaws.com/www.cste.org/resource/resmgr/2019ps/final/19-ID-05_AFM_final_7.31.19.pdf
  3. Chong PF, et al., Clin Infect Dis 66: 653-664, 2018
  4. Messacar K, et al., Ann Neurol 80: 326-338, 2016
  5. Ayers T, et al., Pediatrics 144, 2019
  6. Lopez A, et al., MMWR Morb Mortal Wkly Rep 68: 608-614, 2019
  7. Messacar K, et al., Lancet Infect Dis, 2019
  8. Okumura A, et al., Brain Dev 41: 443-451, 2019
 
 
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 吉良龍太郎

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