Saturation time of exposure interval for cross-neutralization response to SARS-CoV-2: implications for vaccine dose interval

Sho Miyamoto, Yudai Kuroda, Takayuki Kanno, Akira Ueno, Nozomi Shiwa-Sudo, Naoko Iwata-Yoshikawa, Yusuke Sakai, Noriyo Nagata, Takeshi Arashiro, Akira Ainai, Saya Moriyama, Noriko Kishida, Shinji Watanabe, Kiyoko Nojima, Yohei Seki, Takuo Mizukami, Hideki Hasegawa, Hideki Ebihara, Shuetsu Fukushi, Yoshimasa Takahashi, Maeda Ken, Tadaki Suzuki.

 iScience. 2023 Apr 106694.

免疫逃避能の高いSARS-CoV-2オミクロン系統への中和抗体を誘導するためには十分なワクチン接種間隔が必要である。しかしながら、2回目から3回目ワクチン(ブースター)接種の間隔は世界保健機関(WHO)で4〜6ヶ月と推奨されているものの、科学的な裏付けは限定されている。私達は2回ワクチン接種後から感染までの曝露間隔が多様なブレークスルー感染者(ワクチン接種後感染者)血清を用いて、交差中和反応の誘導に必要な時間を推定した。曝露間隔が異なるオミクロン流行前と流行期ブレークスルー感染者血清の中和抗体価を用いて交差中和反応の上昇と飽和に至る時間を推定した。

オミクロン系統に対する交差中和反応の飽和には2回ワクチン接種後から2〜4ヶ月の間隔が必要であると推定され、その日数は祖先株から抗原性が遠い系統ほど延長した。様々なSARS-CoV-2オミクロン系統を中和する交差中和反応を最大化するためには、2回目から3回目のワクチン接種間隔を4ヶ月以上とすることが重要であると示唆された。

 厚生労働省外部精度管理事業

 

    「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」に基づき感染症の行政検査を行う公的検査機関を対象とする。当該施設において実施する検査に関して、外部精度評価の機会を提供し、調査結果の評価・還元等をつうじて精度保証の取組を促進し、検査の信頼性を確保することを目的とします。

 

令和5年度課題

Dose-sparing effect of Sabin-derived inactivated polio vaccine produced in Japan by intradermal injection device for rats

Eriko Itoh, Sakiko Shimizu, Yasushi Ami, Yoichiro Iwase, and Yuichi Someya

 Biologicals, Vol. 82, 2023.

世界的に不活化ポリオワクチンの接種がなされるようになり、ワクチンの不足が懸念されている。不活化ポリオワクチンは通常筋肉内もしくは皮下に接種されるが、強毒株由来不活化ポリオワクチン(ソークワクチン)の皮内接種の検討により、1回の接種用量を1/5に削減することが実証されており、ワクチン不足への対策のひとつとなりうる。本研究では、セービン株由来不活化ポリオワクチンについて、皮内接種により同様の効果が認められるか、ラットを用いて検証した。皮内接種はテルモ株式会社が開発した皮内注射デバイス、イムサイスをラット用に改造した専用デバイスを用いた。セービン株由来不活化ポリオワクチンの1ヒト用量を筋肉内に接種する群と1/5ヒト用量を接種した群とを比較したところ、同等の中和抗体価を得たことから、セービン株由来不活化ポリオワクチンにおいてもソークワクチンと同様に、皮内接種により1/5量まで投与量を削減することができることが示された。

本研究はテルモ株式会社との共同研究契約に基づき実施された。

Monitoring Enteroviruses and SARS-CoV-2 in Wastewater Using the Polio Environmental Surveillance System in Japan

Kazuhiro Kitakawa , Kouichi Kitamura , Hiromu Yoshida

Applied and Environmental Microbiology, 89, e01853-22, 2023
https://doi.org/10.1128/aem.01853-22

世界ポリオ根絶計画の一環として、下水等からウイルスを検出するポリオ環境水サーベイランスが国内外で実施されています。ポリオが根絶されている日本ではポリオウイルス以外のエンテロウイルスが毎年検出されてきました。このサーベイランスシステムを活用し下水中新型コロナウイルスRNAの検出も行った結果、(1) COVID-19パンデミック後のエンテロウイルス関連疾患の減少と同時期に下水中エンテロウイルスの検出頻度も大きく減少し、(2) 下水中新型コロナウイルスRNA量と地域のCOVID-19新規陽性者数との間に相関が見られ、既存のポリオ環境水サーベイランスシステムが下水中エンテロウイルス及び新型コロナウイルスの監視に活用しうることが示されました。

本研究は、厚労省科研費、AMEDの研究支援を受け実施しました。

National seroepidemiological study of COVID-19 after the initial rollout of vaccines: Before and at the peak of the Omicron-dominant period in Japan

Takeshi Arashiro*, Satoru Arai*, Ryo Kinoshita, Kanako Otani, Sho Miyamoto, Daisuke Yoneoka, Taro Kamigaki, Hiromizu Takahashi, Hiromi Hibino, Mai Okuyama, Ai Hayashi, Fuka Kikuchi, Saeko Morino, Sayaka Takanashi, Takaji Wakita, Keiko Tanaka-Taya, Tadaki Suzuki†, Motoi Suzuki
(*These authors contributed equally; †corresponding author)

Influenza and Other Respiratory Viruses doi: 10.1111/irv.13094

新型コロナワクチン導入後のオミクロン流行前(2021年12月)およびオミクロン(BA.1/BA.2)流行のピーク(2022年2-3月)に、5都府県16,296名を対象として人口ベースの血清疫学調査が行われた。抗N抗体(感染のみで誘導)保有割合はオミクロン流行前には2.2%(95% CI 1.9-2.5)、BA.1/BA.2のピークには3.5%(3.1-3.9)であった。オミクロン流行前の我が国の抗体保有割合は、米国(33%)、英国(25%)、世界(45%)と比較して1/10未満であったが、多くの者がワクチンにより抗体(抗S抗体)を獲得していた。全体の疾患負荷は低かったが、都心居住者、若年者、ワクチン未接種、特定の職種(介護従事者・保育従事者・飲食業従事者)等は累積感染歴と高い相関を示した。

Non-Omicron breakthrough infection with higher viral load and longer vaccination-infection interval improves SARS-CoV-2 BA.4/5 neutralization

Sho Miyamoto, Takeshi Arashiro, Akira Ueno, Takayuki Kanno, Shinji Saito, Harutaka Katano, Shun Iida, Akira Ainai, Seiya Ozono, Takuya Hemmi, Yuichiro Hirata, Saya Moriyama, Ryutaro Kotaki, Hitomi Kinoshita, Souichi Yamada, Masaharu Shinkai, Shuetsu Fukushi, Yoshimasa Takahashi, Tadaki Suzuki.

 iScience. 2023 Feb 17;26(2):105969.

COVID-19症例におけるSARS-CoV-2オミクロンなどの変異ウイルスに対する免疫応答は、ワクチン接種や感染の有無など様々な要因に影響される。既存の免疫力を有するCOVID-19症例におけるSARS-CoV-2に対する中和活性の向上の要因を解明することは、オミクロンなどの抗原性の異なる変異ウイルスに対する幅広い中和抗体を誘導するブースターワクチンの改良に役立つ。

本研究により、ブレークスルー感染後のオミクロンに対する血清中和活性の大きさと幅は、主に上気道ウイルス量とワクチン接種から感染のインターバルによって誘導されることが明らかとなった。抗原性の離れたオミクロンBA.5亜系統までカバーする広い血清中和活性は、高ウイルス量かつ長いインターバルの症例で観察された。抗原地図を描くことで、変異ウイルスに対する中和の幅を広げる上で,インターバルが重要な役割を担っていることを明らかにした.この成果は、変異ウイルスに対する耐性を持つブースターワクチンの開発において、抗原設計と同様に投与間隔の最適化が重要であることを示している。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan