国立感染症研究所

Membrane sphingomyelin in host cells is essential for nucleocapsid penetration into the cytoplasm after hemifusion during rubella virus entry

Yoshio Mori, Masafumi Sakata, Shota Sakai, Toru Okamoto, Yuichiro Nakatsu, Shuhei Taguwa, Noriyuki Otsuki, Yusuke Maeda, Kentaro Hanada, Yoshiharu Matsuura, Makoto Takeda

mBio, 8 Nov, 2022(URL: https://doi.org/10.1128/mbio.01698-22

国立感染症研究所(ウイルス第三部、細胞化学部、品質保証・管理部)と大阪大学微生物病研究所の共同研究により、風疹ウイルスの細胞侵入において宿主細胞のスフィンゴミエリン合成酵素(SMS)の酵素活性が決定的な役割を果たすことが明らかになりました。SMSが欠損した細胞では、風疹ウイルスのエンベロープ膜と宿主のエンドソーム膜の融合がヘミフュージョンの段階で停止し、ウイルスゲノムの細胞質への放出が著しく抑制されることが示されました。このことはウイルス感染における宿主膜の脂質構成の役割について新たな知見を与えるものです。

本研究は、日本医療研究開発機構、文部科学省、日本学術振興会、大阪大学微生物病研究所の支援を受けて実施されました。

imm 2022 02
Oral and Rectal Colonization by Antimicrobial-Resistant Gram-Negative Bacteria and Their Association with Death among Residents of Long-Term Care Facilities: A Prospective, Multicenter, Observational, Cohort Study

Kajihara T, Yahara K, Yoshikawa M, Haruta A, Kawada-Matsuo M, Le NT M, Arai C, Takeuchi M, Kitamura N, Sugawara Y, Hisatsune J, Kayama S, Ohta K, Tsuga K, Komatsuzawa H, Ohge H and Sugai M

Gerontology. 2022: Oct 6;1-12.

長期療養施設(介護老人保健施設(保健施設)、特別養護老人ホーム(特養))は、JANIS等のサーベイランスが及んでおらず、薬剤耐性の実態が不明であり、国の薬剤耐性アクションプランにおける動向調査の強化対象となっている。保健施設3施設と特養3施設の入所者計178名の口腔と直腸の耐性菌保菌調査を行った。検出菌の全ゲノム解析を行い、経過の追えた146名の臨床情報・予後との関連を解析した。その結果、入所者の便検体の42.7%(保健施設28.4%, 特養51.4%)からESBL産生菌が分離された。また、ESBL産生菌と緑膿菌の分離頻度は経腸栄養実施者で有意に高かった。さらに、予後との関連解析の結果、ESBL産生菌の保菌は死亡率と関連しない一方、緑膿菌の保菌は有意に死亡率と関連することが明らかになった。

Essential role of TMPRSS2 in SARS-CoV-2 infection in murine airways

Naoko Iwata-Yoshikawa1, Masatoshi Kakizaki1, Nozomi Shiwa-Sudo, Takashi Okura, Maino Tahara, Shuetsu Fukushi, Ken Maeda, Miyuki Kawase, Hideki Asanuma, Yuriko Tomita, Ikuyo Takayama, Shutoku Matsuyama, Kazuya Shirato, Tadaki Suzuki, Noriyo Nagata*, Makoto Takeda*(1 equal contribution, * corresponding authors)

Nature Communications (Published online 15 October 2022)
https://doi.org/10.1038/s41467-022-33911-8

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、ウイルス粒子表面のスパイク蛋白の働きによって細胞に吸着し、ウイルスの膜と細胞の膜とを融合させることで感染します。ただし、このスパイク蛋白がこのような働きをするためには、感染しようとする細胞がもつ蛋白分解酵素の力が必要です。しかし、蛋白分解酵素には沢山の種類があり、SARS-CoV-2が気道の細胞に感染して、肺炎を起こす時に働いている蛋白分解酵素が何であるのかは、はっきりとはしていませんでした。国立感染症研究所のウイルス第三部(竹田誠部長:現在東京大学医学部微生物学教授)、感染病理部の永田典代室長らを中心とした研究チームでは、気道の上皮に発現しているTMPRSS2と呼ばれる蛋白分解酵素に注目して研究を進めてきました。マウスにおけるTMPRSS2の遺伝子を人為的に欠損させると、SARS-CoV-2は、その個体の鼻腔や肺の中で増殖することができなくなり、肺炎などの病気を起こすことができなくなりました。この成果は、TMPRSS2がSARS-CoV-2による肺炎の発症に非常に重要であることを示しています。そして、この成果は、SARS-CoV-2による肺炎に対する治療法の開発に貢献すると考えられます。

本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)、JSPS科研費、光科学技術研究振興財団、内藤記念科学振興財団、日本呼吸器財団の助成を受けて成されました。

High-throughput analysis of anti-poliovirus neutralization antibody titre in human serum by the pseudovirus neutralization test

Minetaro Arita and Masae Iwai-Itamochi

Scientific reports, 12:16074, 2022
https://doi.org/10.1038/s41598-022-20544-6

小児麻痺(ポリオ)流行に対する集団免疫を評価・維持するために、ポリオウイルスに対する中和抗体の保有率調査が行われています。近年ポリオウイルスの管理基準が厳格になり、感染性のウイルスを用いる従来の中和抗体価測定試験が制限されつつあり、新しい方法論が模索されています。  国立感染症研究所では、従来法の代替法として、感染性のウイルスを使わない中和試験法(疑似ウイルス法)を開発しています。疑似ウイルス法では、感染性のウイルスが産生されないため、ウイルスが新たに伝播するリスクがありません。しかし、多くの検体を測定するための条件の確立(ハイスループット化)が課題でした。

今回、国立感染症研究所と富山県衛生研究所との共同研究により、一日当たりおよそ300検体を測定が可能な疑似ウイルス法が確立されました。この成果は、厳格なウイルス管理条件の下で中和抗体保有率調査を継続できる見通しを与えるものと期待されます。

Neutralization of Hepatitis B Virus with Vaccine-Escape Mutations by Hepatitis B Vaccine with Large-HBs Antigen.

Ayaka Washizaki, Asako Murayama, Megumi Murata, Tomoko Kiyohara, Keigo Yato, Norie Yamada, Hussein Hassan Aly, Tomohisa Tanaka, Kohji Moriishi, Hironori Nishitsuji, Kunitada Shimotohno, Yasumasa Goh, Ken J. Ishii, Hiroshi Yotsuyanagi, Masamichi Muramatsu, Koji Ishii, Yoshimasa Takahashi, Ryosuke Suzuki, Hirofumi Akari, Takanobu Kato.

 Nature Communications. (2022) 13:5207.

現在、国内ではS-HBs抗原を用いたHBワクチンが使用されている。このワクチンは感染中和抗体の誘導が可能であり、副反応の少ない優れたワクチンであるが、感染中和エピトープに特定の変異を持つHBV株では、このワクチンでは感染阻止できないものがあることが知られている。そこで、HBVの感染レセプターへの結合領域を持つL-HBs抗原を用いて新規HBワクチンを開発した。霊長類モデルを用いた接種実験により、このワクチンではHBVのレセプターへの結合領域内のエピトープに対する抗体が誘導された。さらに従来のHBワクチンでは感染阻止が難しいワクチンエスケープ変異株についても感染阻止が可能であった。この新規HBワクチンを現行のHBワクチンと併せて使用することにより、従来のHBワクチンのみでは対応できない多くのHBV株に対する感染予防が期待できる。

COVID-19 vaccine effectiveness against symptomatic SARS-CoV-2 infection during Delta-dominant and Omicron-dominant periods in Japan: a multi-center prospective case-control study (FASCINATE study)

Takeshi Arashiro, Yuzo Arima, Hirokazu Muraoka, Akihiro Sato, Kunihiro Oba, Yuki Uehara, Hiroko Arioka, Hideki Yanai, Jin Kuramochi, Genei Ihara, Kumi Chubachi, Naoki Yanagisawa, Yoshito Nagura, Yasuyuki Kato, Akihiro Ueda, Akira Numata, Hideaki Kato, Koji Ishii, Takao Ooki, Hideaki Oka, Yusuke Nishida, Ashley Stucky, Chris Smith, Martin Hibberd, Koya Ariyoshi, Motoi Suzuki

Clinical Infectious Diseases doi: 10.1093/cid/ciac635

新型コロナワクチンの有効性においては、免疫の減衰や免疫逃避能をもつ変異株の出現が懸念されている。そこで、国内16医療機関の協力のもと、症例対照研究を実施し、有効性(発症予防効果)を検討した。推定された有効率は、デルタ株流行期においては、2回接種後14日-3ヶ月では88%(95%信頼区間(CI)82-93)、2回接種後3-6ヶ月では87%(95%CI 38-97)であった。オミクロン株(BA.1/BA.2)流行期においては、2回接種後14日-3ヶ月では56%(95%CI 37-70)、2回接種後3-6ヶ月では52%(95%CI 40-62)、2回接種後6ヶ月以降では49%(95%CI 34-61)であった。3回(ブースター)接種後14日以降では74%(95%CI 62-83)まで回復した。重症化リスクの高い者(65歳以上または基礎疾患あり)に限定した解析およびマスク着用状況とリスク行動の有無でさらに調整した解析においても、結果は同様であった。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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