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2022年度感染症流行予測調査におけるインフルエンザ予防接種状況および抗体保有状況(2023年4月現在)

(IASR Vol. 44 p176-179: 2023年11月号)
 
はじめに

感染症流行予測調査事業は厚生労働省健康局結核感染症課が実施主体となり, 毎年度, 健康局長通知に基づいて全国の都道府県と国立感染症研究所が協力して実施している予防接種法に基づいた事業である1)。本稿では, インフルエンザ流行シーズン前におけるワクチン株に対するインフルエンザ予防接種状況と抗体保有状況の2022年度調査結果について報告する。

 

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令和5(2023)年度インフルエンザワクチン用製造株とその推奨理由

(IASR Vol. 44 p179-180: 2023年11月号)
 
1.ワクチン株決定の手続き

わが国における令和5(2023)年度インフルエンザワクチン用製造株は, 厚生労働省(厚労省)健康局の依頼に応じて, 2月中旬~4月上旬にかけて3回に分けて国立感染症研究所(感染研)で開催された『インフルエンザワクチン株選定のための検討会議』で検討され, その推奨株が『厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会季節性インフルエンザワクチンの製造株について検討する小委員会』(以下, 小委員会)へ報告され, 同小委員会において審議され決定された。その結果は厚労省健康局長へ報告され, 健康局長から決定通知が交付された(IASR 44: 109, 2023)。本稿は, 『インフルエンザワクチン株選定のための検討会議』で検討され, 小委員会へ推奨された株についての推奨理由を記載したものである。

 

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鳥・ブタインフルエンザウイルスのヒト感染事例の状況について

(IASR Vol. 44 p180-182: 2023年11月号)
 
鳥インフルエンザウイルス

A/H5亜型ウイルス

2022年9月以降, 家禽または野鳥・愛玩鳥等でのA/H5亜型ウイルス(N3を除くN1-N6 NA亜型, NA亜型不明も含む)による高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の発生が欧州, アフリカ, アジア, 北米, 中南米から報告されている。NA亜型別ではN1が欧州36カ国/地域, アフリカ7カ国, アジア12カ国/地域, 北米2カ国, 中南米13カ国で, N2が日本, 台湾, 南アフリカで, N4が米国で, N5がノルウェー, フィンランド, 台湾で, N6がフィリピンで, それぞれ検出されている(2023年8月17日時点)1)。このうちN1とN6亜型でヒト感染が報告されている2)。A(H5N1)ウイルスについては2003年以降, アジア, アフリカを中心に世界23カ国で死亡460例を含む880例のヒト感染が確認されているが, 2022年9月以降では, 中国で2022年9月に1例(死亡)と2023年1月に1例, ベトナムで2022年10月に1例, スペインで2022年9月に1例と2022年10月に1例, エクアドルで2022年12月に1例, チリで2023年3月に1例, 英国で2023年5月に2例と2023年6月に1例と2023年7月に1例, カンボジアで2023年2月に2例(1名死亡), 2023年10月に2例(2名死亡)のヒト感染が確認され, スペイン, エクアドル, チリでは初のヒト感染報告となった(2023年10月16日時点)2-4)。これらヒト感染を起こしたA(H5N1)ウイルスのHAのクレードは, カンボジアの事例では2.3.2.1c, それ以外の事例では2021年以降に鳥類で世界的に大流行している2.3.4.4bに分類されることが確認されている5)。A(H5N6)ウイルスについては2014年以降, 中国で87例, ラオスで1例のヒト感染が確認されており, 2022年9月以降は, 中国広西チワン族自治区と重慶市で2例ずつ, 広東省, 湖南省, 四川省でそれぞれ1例のヒト感染(2.3.4.4b)が確認されている(2023年10月16日時点)4)

 

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2022/23シーズンの国内における家禽および野鳥由来A/H5亜型高病原性鳥インフルエンザウイルスの解析

(IASR Vol. 44 p182-183: 2023年11月号)
(2024年2月2日改訂:当初18種類とされていた遺伝子型が17種類に変更になったため、黄色部分を改訂 ※遺伝子型の変更に関する詳細はこちらをご覧ください
 

国内の家禽における2022/23シーズンA/H5亜型高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の発生は, 2004年以降過去最も早く(2022年10月28日~2023年4月7日まで), 発生件数も過去最多である26道県において84事例が確認された。約1,771万羽が殺処分の対象となり, 鶏卵の価格の高騰等, 経済的な影響ももたらした1)。鶏以外の家禽では, あひる, エミュー, うずらおよびほろほろ鳥飼養農場での発生や, 動物園等での飼養鳥で6県10事例が報告された。また野鳥では, 家禽での発生の確認よりも約1カ月前の9月25日には高病原性鳥インフルエンザウイルス(HPAIV)が検出され, 家禽同様に2004年以降最速の検出であった。その件数も27道県242事例と過去最多であった。HPAIVは鶏には高病原性であるが, 一部の野鳥では感染しても死亡せずにウイルスを排泄する種類がいる2,3)。そのような渡り鳥の移動(秋の繁殖地・シベリアから越冬のための南下や, 春先のシベリアへの北帰行)にともなってウイルスが移動すると考えられ, わが国のHPAIの発生は渡り鳥が日本に飛来する秋から帰路につく春までにみられている。

 

 

更新  2023.11.21 第45週(11/6~11/12)データを掲載しました。

※次回の第46週の更新は11月28日(火)です。

※2015年からはCSVデータのみの更新となります。

2015年からのIDWRの変更についてはこちら から。


*データは報告数集計の速報値として公開するものであり、後日感染症発生動向調査 週報 、さらには確定データとしての年報において修正される場合があります。また発生動向に関するコメント、その他詳細についても週報をご参照ください。

 

■全数把握疾患、報告数、累積報告数、都道府県別

一~五類感染症の全数把握疾患についての各週の報告数、および当年第1週からの累積報告数です。
※累積報告数は再集計されています。

DL-csv

第45週

■定点把握疾患(週報告)、報告数、定点当たり報告数、都道府県別
五類感染症のうち週単位で報告される定点把握疾患の報告数、および定点当たり報告数です。
DL-csv

第45週

■定点把握疾患(週報告)、累積報告数、定点当たり累積報告数、都道府県別
五類感染症のうち週単位で報告される定点把握疾患の、当年第1週からの累積報告数、および定点当たり報告数です。
※累積報告数は再集計されています。
DL-csv

第45週

■疾病毎定点当たり報告数 ~過去10年間との比較~
五類感染症のうち週単位で報告される定点把握疾患の過去10年間の定点当たり報告数です。
DL-csv

第45週

■定点把握疾患(週報告)、(1週から当該週まで)報告数・定点当り報告数
五類感染症のうち週単位で報告される定点把握疾患の、当年1週から当該週までの各週の報告数、および定点当たり報告数です。
※報告数・累積報告数は再集計されています。
DL-csv

第45週

■動物疾患、報告数、累積報告数、都道府県別
獣医師が届出を行う感染症と対象動物についての各週の報告数、および当年第1週からの累積報告数です。
※累積報告数は再集計されています。
DL-csv

第45週

2023年第44週(第44号)

  pdficons  ダウンロード(33p/1.1MB)

(10月30日~11月5日) 発生動向総覧/感染症関連情報〔病原体情報/海外感染症情報/その他〕〔2023年11月17日発行〕
※2015年からのIDWRの変更についてはこちらから。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan