Suppression of obesity by an intestinal helminth through interactions with intestinal microbiota.
Chikako Shimokawa, Seiji Obi, Mioko Shibata, Alex Olia, Takashi Imai, Kazutomo Suzue, Hajime Hisaeda
腸管寄生蠕虫には痩身効果があると言われるが、そのメカニズムについては不明な点が多かった。本報告では寄生虫による体重増加抑制機構を科学的に証明した。
高脂肪食を与えたマウスに、腸管寄生性線虫、Heligmosomoides polygyrusを感染させ、高脂肪食を与え続けた。非感染マウスでは体重は増加し続けたが、感染マウスでは体重増加の抑制、脂肪量の減少を認めた。感染マウスでは、脂肪細胞でのUCP1の発現、UCP1の誘導に関わるノルエピネフリンの血中濃度が高かった。ノルエピネフリンレセプターを阻害すると、感染マウスにおけるUCP1の増加、肥満抑制効果はみられなくなった。感染マウスでは、交感神経系のみならず、腸内細菌もノルエピネフリン増加に関与しており、感染マウスの腸内細菌中で、バシラス属、エシェリキア属のノルエピネフリンを分泌する細菌種が増加していた。以上のように、腸管寄生蠕虫の体重の増加抑制メカニズムが明らかになった。
図 高脂肪食で肥満になったマウスでのH. polygyrusの感染は、交感神経および腸内細菌からのノルエピネフリンを増加させる。脂肪細胞ではノルエピネフリンの作用でUCP1の発現が誘導され、その結果としてエネルギー消費が盛んとなり、肥満の抑制にはたらく。 NE: ノルエピネフリン、b3AR: b3アドレナリン作動性レセプター
今回の研究成果によって、実際に寄生虫によるダイエット効果が世界で初めて科学的に証明されました。今後さらに詳細なメカニズムを解明することで、寄生虫を感染させることなく肥満を抑制できる薬や健康食品等の開発が期待できる。