国立感染症研究所

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2021年7月31日12:00時点

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VOCsに関する主な知見のアップデート

【B.1.617.2系統の変異株(デルタ株)】
  • WHOによれば、2021年7月20日時点のGISAIDへの登録情報で、過去4週間にデルタ株の割合が75%を超えている国として、オーストラリア、バングラデシュ、ボツワナ、中国、デンマーク、インド、インドネシア、イスラエル、ポルトガル、ロシア、シンガポール、南アフリカ、英国を挙げている(1)。また、デルタ株は世界の132の国・地域で確認されている(2)。
  • 英国では、2021年7月4日から7月10日に遺伝子型決定された症例の96%をデルタ株(B.1.617.2系統およびAY.1/AY.2系統を含む)が占めていた(3)。
  • 米国では、2021年7月4日から7月17日の時点でB.1.617.2系統が82.2%を占めていると推計している(4) 。
  • 中国のグループによる研究では、非VOCsに比べ、デルタ株では、ウイルスへの曝露からPCR陽性になるまでの期間が短くなっている可能性があること(非VOCs: 6日、デルタ株4日)、感染後最初に検出された時点のウイルス量が、非VOCsに比べ、デルタ株では1,200倍であることを示し、デルタ株の増殖速度が速く、感染早期により感染性が高い可能性を指摘した(5)。
  • 英国の報告では、再感染の調整後オッズ比がアルファ株に比してデルタ株では1.46倍(95% CI: 1.03 - 2.05)であることを示した。また、前回感染から180日未満である場合には再感染リスクは上昇していないものの、180日以上経過後は2.37倍(95%CI: 1.43 – 3.93)と上昇していた(3)。
  • 米国マサチューセッツ州で報告された主にデルタ株の感染によるクラスターでは、ブレークスルー感染を起こした79%に症状があった。また、ワクチン接種者とワクチン非接種者(2回接種後14日経過などの条件を満たさないもの、接種歴不明の者を含む)で、診断時のRT-PCRのCt値に差がなかったことが報告された(6)。また、シンガポールからの報告では、デルタ株では診断時のCt値はワクチン接種者と非接種者で変わらなかったが、ワクチン接種者では、非接種者と比較してその後のウイルスRNA量がより速やかに低下した、との報告がある(7)。
  • カナダのグループによる研究では、非VOCsに比べ、デルタ株が毒力(Virulence)を増していることを示した。入院リスク、ICU入室リスク、死亡リスクは、デルタ株症例は非VOCs症例に比べ、それぞれ120% (93-153%)、 287% (198-399%) 、 137% (50-230%)と増加していた(8)。
  • スコットランドにおける研究でも、アルファ株(S遺伝子陰性例)に比べてデルタ株(S遺伝子陽性例)で入院のオッズ比が高いことが示されている(9)。

VOCの日本での状況

  • 2021年7月26日時点のHER-SYSに登録された事例数によれば、B.1.617.2系統(デルタ株)は計783事例が34都道府県から報告されている(10)。
  • 厚生労働省のまとめによると、L452R変異株スクリーニング検査の陽性割合は全国で33%である(7/12-7/18の速報値)(10)。国立感染症研究所および地方衛生研究所等における全ゲノム解析により確認されたB.1.617.2系統等*の変異株(デルタ株)は国内857例であった(2021年7月19日時点)(10)。*AY.1等を含む
  • 国立感染症研究所感染症疫学センターの解析(2021年7月27日時点)では、SARS-CoV-2陽性検体に占めるL452R変異を有する検体の割合は、関東地方で75%、関西地方で32%と推定されている(11)。
  • 国内で流行するデルタ株の由来について国立感染症研究所で分子疫学的検討を行った。
    • 2021 年7月20日時点で、空港検疫で 312件(B.1.617.2: 298件, AY.1: 14件)を検出してきた。初めてデルタ株を検出した2021年3月28日(64週)から 72週はインドとネパールからの検出が多く、その後(75週(6/9)~)はインドネシアから頻出であった(図1)。
    • 国内症例の始まりとしては、それぞれ独立して異なる系譜を示す海外からの流入と考えられる少なくとも7つの起点(個人か集団であるかは特定できていない)が存在したと考えられる。陽性者検出時期と検疫での検出の状況を判断すれば、インドとネパールからの流入と推測される(図2)。
    • そのうちの一つの起点が、首都圏を中心に拡大し、全国へと波及した。現在、その起点を中心に全国規模に拡大が続いていると推測される。この起点の最も過去の国内検体は、海外渡航歴や海外渡航症例とのリンクが無い症例から2021年5月18日に採取された。また、この起点の検体より変異が2塩基少ない最も起源に近い系譜の検体が2021年4月16日に検疫検体で見つかっている(図3)。そのため、例えば、この4月16日の入国関連症例を起点にして、首都圏で潜在的に感染リンクが繋がっていた可能性が考えられる。一方で、検疫強化後(5/10以降)の未検出の輸入症例が直接拡大させた可能性も否定できない。
    • インド・ネパールからの流入と考えられる初期(70週)に発生した地方(関西、中京、南九州、北関東、南関東)を起点としたクラスターの多くは、その後、顕著な拡大がみられないため、78週頃にはほぼ終息したと推察される(図4)。
  • 2021年7月30日、鹿児島県よりE484K変異を有するデルタ株が検出されたことが発表された。濃厚接触者は特定済みであり、県外への移動・接触は無いため地域内で終息したと考えられる。デルタ株+E484K変異は世界では約120例が報告されている。日本での確認は今回初めてである。E484Kはガンマ株やベータ株に共通する変異で、ワクチン効果に影響を及ぼすことが示唆されているが、今般のデルタ株+E484Kについては現時点で疫学的な知見はなく、引き続き動向を注視する。
  • ウイルスの全遺伝子解析は国内症例全体の5~10% (註:患者報告から検体輸送やゲノム情報解析まで数週間かかるため、解析割合としては過少評価である)について行われている。 参考)国内のゲノム確定数 57,883検体(2021年7月19日時点)。
  • 国立感染症研究所ではB.1.1.7系統(アルファ株)、B.1.351系統(ベータ株)、P.1系統(ガンマ株)、B.1.617.2系統(デルタ株)の分離・培養に成功している。

国立感染症研究所では、国内でのVOCs/VOIsの検出状況については、感染症発生動向調査感染週報(IDWR; https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr.html)にて報告しているので参考にされたい。また、懸念される変異株(VOCs)に対するワクチンの有効性については、新型コロナワクチンについて (2021年7月15日現在)(https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/10531-covid19-51.html)にて報告しているので同様に参考にされたい。

引用文献 (5,7,8, は査読前のプレプリント論文である)

  1. World Health Organization. COVID-19 Weekly Epidemiological Update. Edition 49. 20 July 2021.
  2. World Health Organization. COVID-19 Weekly Epidemiological Update. Edition 50. 27 July 2021.
  3. Public Health England. SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England: Technical briefing 19. 23 July 2021.
  4. US CDC. Variant Proportions. https://covid.cdc.gov/covid-data-tracker/#variant-proportions.
  5. Li B, Deng A, et al. Viral infection and transmission in a large well-traced outbreak caused by the Delta SARS-CoV-2 variant. medRxiv. Published online July 12, 2021:2021.07.07.21260122. doi:10.1101/2021.07.07.21260122.
  6. Brown CM, et al. Outbreak of SARS-CoV-2 Infections, Including COVID-19 Vaccine Breakthrough Infections, Associated with Large Public Gatherings — Barnstable County, Massachusetts, July 2021. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. ePub: 30 July 2021. DOI: http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm7031e2.
  7. Chia PY, et al. Virological and serological kinetics of SARS-CoV-2 Delta variant vaccine-breakthrough infections: a multi-center cohort study. medRxiv 2021.07.28.21261295; doi: https://doi.org/10.1101/2021.07.28.21261295.
  8. Fisman DN and Tuite AR. Progressive Increase in Virulence of Novel SARS-CoV-2 Variants in Ontario, Canada. medRxiv. Published online July 12, 2021:2021.07.05.21260050. doi:10.1101/2021.07.05.21260050.
  9. Sheikh A, et al. SARS-CoV-2 Delta VOC in Scotland: demographics, risk of hospital admission, and vaccine effectiveness. Lancet. 397 (10293). P. 2461-242. 2021.
  10. 第45回厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料4 新型コロナウイルス感染症(変異株)への対応等. 令和3年7月28日.
  11. 第45回厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料3-2. 令和3年7月28日.

注意事項

  • 迅速な情報共有を目的とした資料であり、内容や見解は情勢の変化によって変わる可能性がある。

更新履歴

第12報 2021/07/31 12:00 時点  
第11報 2021/07/17 12:00 時点  
第10報 2021/07/06 18:00時点  
第9報 2021/6/11 10:00時点  
第8報 2021/04/06 17:00時点  
第7報 2021/03/03 14:00時点  
第6報 2021/02/12 18:00時点  
第5報 2021/01/25 18:00時点 注)タイトル変更
「感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念されるSARS-CoV-2の新規変異株について」
第4報 2021/01/02 15:00時点  
第3報 2020/12/28 14:00時点  
第2報 2020/12/25 20:00時点 注)第1報からタイトル変更
「感染性の増加が懸念されるSARS-CoV-2新規変異株について」
第1報 2020/12/22 16:00時点 「英国における新規変異株 (VUI-202012/01)の検出について」

図1 週別新型コロナウイルス系統別検出状況

図2 国内のデルタ株の国内拡大の起点

図3 国内のデルタ株の拡大状況

図4 国内で終息したと考えられるデルタ株のクラスター

表 新型コロナウイルスの懸念される変異株 (Variants of Concern; VOCs) 2021.7.31 12:00時点
covid19 48 thum

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