国立感染症研究所

IDWRchumoku 注目すべき感染症 ※PDF版よりピックアップして掲載しています。

◆直近の新型コロナウイルス感染症およびインフルエンザの状況(2021年3月26日現在)

 

新型コロナウイルス感染症:

 2019年12月、中華人民共和国湖北省武漢市において確認され、2020年1月30日、世界保健機関(WHO)により「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言され、3月11日にはパンデミック(世界的な大流行)の状態にあると表明された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2021年3月26日15時現在、感染者数(死亡者数)は、世界で125,492,070例(2,755,221例)、194カ国・地域(集計方法変更:海外領土を本国分に計上)に広がった(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_17682.html)。

 国内では、厚生労働省により公表されている、各自治体がプレスリリースしている個別の症例数(再陽性例を含む)を積み上げた情報によると、2021年3月26日0時現在、新型コロナウイルス感染症の検査陽性者数は462,840例、死亡者数は8,967例と報告されている。累積のPCR検査実施人数は、暫定値として9,555,049例であった(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_17682.html)。全国の報告日別新規陽性者数は、2020年9月後半(第39週)より増加傾向に転じ、2021年第1週(1月4〜10日)42,882例をピークとして減少傾向であった。検査数も第3週(1月18〜24日)513,832件をピークとして減少傾向であった。しかし、第9週(3月1〜7日)以降は、新規陽性者数、検査陽性率(検査数に対する陽性者数の割合)がともに増加傾向に転じ、第11週(3月15〜21日)は、第10週(3月8〜14日)と比べて、検査数(第11週:356,420、第10週:329,280)、新規陽性者数(第11週:8,911、第10週:7,921)、検査陽性率(第11週:2.5%、第10週:2.4%)がいずれも増加した(https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/open-data.html)。

 COVID-19による全国の入院治療等を要する者の数の推移については(https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html#h2_1)、2020年10月20日(5,031例)以降は、継続して増加していたが、2021年1月18日(71,129例)をピークに、3月9日(11,581例)まで減少傾向であった。その後、3月10日から3月26日まで、再び増加傾向に転じた(15,239例:2021年3月26日現在)。また、全国の入院治療等を要する者のうち重症者数においても、2021年1月26日(1,043例)をピークに減少が続いていたが、減少が鈍化し横ばいになった(331例:2021年3月26日現在)。同様に、日本COVID-19対策ECMOnetが集計するECMO/人工呼吸器装着数の推移(https://crisis.ecmonet.jp/)においても、2021年1月20日(624例)をピークに、減少傾向に転じていたが、3月以降減少が鈍化し、横ばいになった(2021年3月26日現在)。

 第11週は、第10週と比較して、検査数、新規陽性者数、検査陽性率がいずれも微増し、入院治療を有する者の数も微増した。また、在院中の重症患者数、ECMO/人工呼吸器装着数は、いずれも微減傾向から横ばいに転じた(重症患者数については、一部の都道府県においては、都道府県独自の基準にのっとって発表された数値を用いて算出されているため、地域毎の比較には注意が必要である)。また、全国的に、医療機関や介護施設等での事例を含む集団感染(クラスター)の発生が継続して認められている。

 感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株の感染者が世界各地から報告され、いくつかの国ではこれらの変異株による感染者の割合が上昇している。警戒を要する変異株としては、英国で最初に検出されたVOC-202012/01、南アフリカで最初に検出された501Y.V2、ブラジルからの帰国者において日本で最初に検出された501Y.V3が挙げられる。国内においても渡航歴のない者や、渡航者と疫学的関連がない者からの新規変異株感染者が報告されており、増加傾向である。これらの変異株の検出には検査体制の拡充が不可欠であり、全国で整備が進みつつある。変異株が検出された症例への対応は、通常のSARS-CoV-2感染症例への対応と原則、同様であるが、広域事例を含め、積極的疫学調査によりクラスターを検出し対応していくことがより重要である。

 また、感染症発生動向調査(NESID)病原体サーベイランスには、医療機関、保健所等で採取された検体から、各都道府県市の地方衛生研究所、保健所、ならびに検疫所で検出された病原体の情報が陰性結果を含めて、任意ではあるが報告されている。2021年3月29日現在、地方衛生研究所および保健所から報告された、新型コロナウイルス感染症/新型コロナウイルス感染症疑い症例から検出された病原体は、SARS-CoV-2が16,006件、陰性が104,345件であった。これ以外にも検疫所で検出されたSARS-CoV-2が334件報告されている。

 2020年5月29日以降、新型コロナウイルス感染症発生届に関する国への報告事務は、厚生労働省が運営する新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)を用いて行われることとなり、移行可能な自治体から順次、移行を実施し、現時点で全国の自治体で利用されている。厚生労働省においては、今後の統計情報の集計等については、HER-SYSに入力された情報に基づいて行うことを基本とするとしている。

 

季節性インフルエンザ:

 全国約5,000のインフルエンザ定点より報告された、2021年第11週(2021年3月24日現在)の定点当たりのインフルエンザ報告数は0.00(患者報告数24)となり、前週の定点当たり報告数0.01(患者報告数44)より減少した。都道府県別の第11週の定点当たり報告数(報告数)では島根県0.05(報告数2)、三重県0.03(報告数2)、岩手県0.02(報告数1)、宮城県0.02(報告数2)、滋賀県0.02(報告数1)、兵庫県0.02(報告数3)、奈良県0.02(報告数1)、北海道0.01(報告数2)、栃木県0.01(報告数1)、長野県0.01(報告数1)、岐阜県0.01(報告数1)、愛知県0.01(報告数1)、岡山県0.01(報告数1)、広島県0.01(報告数1)、長崎県0.01(報告数1)、埼玉県0.00(報告数1)、神奈川県0.00(報告数1)、大阪府0.00(報告数1)となっている。定点医療機関からの報告を基にした、定点以外を含む全国の医療機関をこの1週間に受診した患者数は約0.0万人(95%信頼区間:0〜0.0万人)となり、前週の推計値(約0.0万人)と同程度と推定された。また、全国約500の病原体定点からの報告による感染症発生動向調査(NESID)病原体サーベイランスにおける、インフルエンザウイルス分離・検出速報によると(https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-inf.html)、2020/21シーズンのインフルエンザウイルス分離・検出報告において、2020年第43週、第44週の長崎県からの報告として、採取検体からAH1pdm09がそれぞれ1例ずつ、2021年第6週の山形県からの報告として、採取検体からAH3が2例検出された(2021年3月24日現在)。より重症な患者を反映する、全国約500カ所の基幹定点医療機関からのインフルエンザによる入院患者数(インフルエンザ入院サーベイランス)においては、2020年第36週1例、第40週1例、第41週1例、第42週4例、第43週1例、第44週4例、第45週4例、第46週9例、第47週2例、第48週5例、第49週3例、第50週5例、第51週2例、第52週6例、第53週9例、2021年第1週7例、第2週8例、第3週3例、第4週8例、第5週4例、第6週8例、第7週8例、第8週6例、第9週3例,第10週4例、第11週2例(2021年3月24日現在)が報告されており依然として少数であった。

 「感染症法に基づくサーベイランス」以外の情報においても、インフルエンザは低いレベルで推移しており、大きな増加傾向は見られていない。インフルエンザ様疾患発生報告数(全国の保育所・幼稚園、小学校、中学校、高等学校におけるインフルエンザ様症状の患者による学校欠席者数;https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-flulike.html)においては、2021年3月12日現在、2020年第36週以降、第37週に学年閉鎖1、第43週に学級閉鎖1、第44週に学級閉鎖1、2021年第6週に学年閉鎖1と学級閉鎖1、第7週に学年閉鎖1が報告された。なお、同報告は3月12日が本シーズンにおける最終更新である。「国立病院機構におけるインフルエンザ全国感染動向」〔国立病院機構141病院で、診察医師がインフルエンザ(疑いを含む)と仮診断した患者にインフルエンザ迅速抗原検査を実施した検査件数と陽性となった数の報告;https://nho.hosp.go.jp/cnt1-1_0000201804_00005.html〕のデータにおいては、2021年2月16〜28日では1,744件の検査のうち、インフルエンザ陽性は0件、3月1〜15日では2,023件の検査のうち、インフルエンザ陽性は0件と報告された。2021年2月1日〜3月15日の期間に、6,171件の検査が実施されたが、インフルエンザ陽性は0件であった。

 

 新型コロナウイルス感染症においては、2021年第1週以降、全国的には新規の検査陽性者数が減少に転じ、その後に検査陽性率、入院患者数、重症患者数も減少に転じていたものの、3月26日現在、それらの減少傾向は横ばい、若しくは微増に転じている。インフルエンザについては、例年のシーズン期間に大きな増加を認めず、継続して、複数の指標で低いレベルで推移したことから、冬季の流行は発生しなかったと考えられる。引き続き今後の状況に関する注視を行うとともに、変化が観測された際には国立感染症研究所ホームページ等で情報提供を予定している。二つの感染症に共通する個人の予防策として、マスクの適切な使用、手洗い・手指衛生の徹底、適切な換気等の実施に努めていただきたい。

 

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