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新型コロナウイルス感染症における積極的疫学調査の結果について(第2回)
(2020年10月5日時点:暫定)

(速報掲載日 2020/12/1) (IASR Vol.41 p220-221: 2020年12月号)

本報告は、厚生労働省健康局結核感染症課名にて協力依頼として発出された、感染症法第15条第1項の規定に基づいた積極的疫学調査(健感発0220第3号、令和2年2月20日;https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000598774.pdf)に基づいて集約された、各自治体・医療機関から寄せられた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の退院患者の情報に関する、第2回目の暫定的なまとめである。本まとめは、前回6月3日時点の結果(https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2488-idsc/iasr-news/9803-487p01.html)に対して、新たに加わった情報を含めて分析したもので、10月5日時点の状況となる。なお、対象については、COVID-19として入院し、退院した者(死亡退院を含む)との定義を満たす者であって、それ以上の層別に沿って選定していないことに注意されたい。

COVID-19患者396例のデータを集計した(前回より211例のデータを追加)。入院開始日は2020年1月25日~9月2日までで(n=393、不明3を除く)、入院期間は中央値13.0日(四分位範囲8.0-19.0日、n=359、全396例から入院中6例および入院期間不明31例を除く)であった。感染確認の経緯として、国内確認362例(91%)に加え、チャーター便による帰国5例(1%)、ダイヤモンド・プリンセス号乗船者29例(7%)が含まれた。転帰は、生存退院357例(90%)、死亡退院25例(6%)、入院中で軽快傾向を認める症例14例(4%)であった。性別は男性211例(53%)、女性185例(47%)で、年齢は中央値48.0歳(四分位範囲28.0-65.0歳)であった。年齢群別では20代が91例(23%)と最も多く、50代64例(16%)、60代50例(13%)等に分布した(図1)。妊婦は1例であった。

基礎疾患として、高血圧63例(16%)、糖尿病44例(11%)、脂質代謝異常症38例(10%)、喘息19例(5%)、悪性腫瘍13例(3%)、腎疾患8例(2%)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)6例(2%)などが挙げられ、喫煙歴は33例(8%)で認められた(表1)。何らかの基礎疾患を有した症例は142例(36%)であった。

発症時の症状として、発熱217例(55%)、呼吸器症状141例(36%)、倦怠感57例(14%)、頭痛35例(9%)、消化器症状26例(7%)、鼻汁21例(5%)、味覚異常21例(5%)、嗅覚異常21例(5%)、関節痛15例(4%)、筋肉痛7例(2%)の順に多くみられた(表2)。入院時の症状は、呼吸器症状116例(29%)、発熱101例(26%)、味覚異常40例(10%)、嗅覚異常40例(10%)、消化器症状39例(10%)、倦怠感32例(8%)、頭痛18例(5%)、鼻汁18例(5%)、関節痛10例(3%)、筋肉痛2例(1%)、意識障害1例(0.3%)であった。入院中、19例(5%)において合併症の記載があり、その内訳は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS) 11例(3%)、急性腎障害6例(2%)、人工呼吸器関連肺炎3例(1%)、細菌性肺炎1例(0.3%)、カテーテル関連血流感染1例(0.3%)であり、このうち14例が死亡した。なお、本報告における無症状病原体保有者は55例(14%)であった。

入院時(入院日の前後3日を含む期間)の主な血液・生化学検査値を表3に示す。血液検査において、60歳以上の年齢群ではリンパ球割合およびリンパ球数の低い傾向が認められた。生化学検査のうち、LDHは、60歳以上で中央値234.5 U/Lと基準値の範囲をやや超えていた。CRPは、全症例で中央値0.5 mg/dLであり、60歳以上で中央値2.4 mg/dLとやや高かった。総ビリルビン、ALP、血中尿素窒素については概ね基準値の範囲内であった。

画像所見については6月時点で集められた263例について確認した。入院時(入院日の前後3日を含む期間)にCTが撮像された165例のうち異常所見の認められた132例(80%)について、異常所見の分布を表4に示す。異常所見は、5肺葉55例(42%)におよび、最も大きい陰影のサイズは3cm から肺葉の50%未満を占める場合が最も多かった70例(53%)。また、異常陰影は、両側肺野110例(83%)、末梢性123例(93%)に認められ、特に左下葉115例(87%)、右下葉113例(86%)と、下葉優位に分布していた。陰影所見として、すりガラス陰影(ground-glass opacity)132例(100%)、気管支透亮像(air bronchogram)86例(65%)、気管支拡張81例(61%)、胸膜下線状影(subpleural line)68例(52%)、メロンの皮様所見(crazy-paving pattern)66例(50%)が多く認められた(表5)。これらの異常所見は、60歳以上の年齢群においてより高い割合を示した。

全396例のうち、対症療法ではなくCOVID-19への直接的な効果を期待して140例(35%)で抗ウイルス薬投与等の治療介入が行われていた。投与薬剤の内訳は、シクレソニド82例、ファビピラビル72例、ロピナビル/リトナビル21例、ナファモスタット4例、ヒドロキシクロロキン硫酸塩3例、レムデシビル2例等であり(表6)、このほか6例でステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム1例、シベレスタット1例、これら2剤の使用1例、薬剤不明3例)が実施されていた。治療薬投与の割合について、60歳以上の症例(53%)は60歳未満の症例(27%)よりも高く、基礎疾患を有する症例(56%)は、基礎疾患のない症例(24%)よりも高かった。呼吸器への治療介入として、酸素投与は59例(15%)に実施され、その投与方法は、マスク22例、カニューラ8例、リザーバーマスク8例、人工呼吸器16例、体外式膜型人工肺(ECMO)2例であった。酸素投与の実施割合について、60歳以上の症例(37%)は60歳未満の症例(5%)よりも高く、基礎疾患のある症例(29%)は、基礎疾患のない症例(6%)より高い値を示した。侵襲的な人工呼吸管理についても同様であった。

謝辞:本調査にご協力いただいております各自治体関係者の皆様、医療関係者の皆様、および画像読影にご協力いただきました徳島大学放射線科・音見暢一先生に心より御礼申し上げます。本稿は、次の医療機関からお送りいただいた情報をもとにまとめています。

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