国立感染症研究所

新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 関連情報ページ

(このページでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 関連の記事を、掲載日が新しい順に表示しています)

 

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 2023年5月現在

(IASR Vol. 44 p99-100: 2023年7月号)
 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスである重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は, コロナウイルス科ベータコロナウイルス属に分類され, 約30,000塩基からなる1本鎖・プラス鎖RNAゲノムを持つ。

掲載日:2023年7月12日

第123回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和5年6月16日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第123回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版(準備中)

感染状況や医療提供体制の状況等

  • 新規患者数は、4月上旬以降緩やかな増加傾向となっており、5類移行後も7週連続で増加が継続している。
     (全国の6/26~7/2の定点当たり7.24人、前週比1.18)
  • 地域別の新規患者数は、46都道府県で前週より増加傾向にあり、特に沖縄県で感染の拡大がみられる。
     (沖縄県の6/26~7/2の定点当たり48.39人、前週比1.23)
  • 全国の年代別新規患者数は、すべての年代で前週より増加傾向にある。
  • 変異株の発生動向について、XBB.系統の割合が大部分を占めており、特にXBB.1.16系統は増加傾向、XBB.1.5系統は低下 傾向、XBB.1.9系統は横ばいとなっている。
  • 新規入院者数や重症者数は、いずれも増加傾向となっている(直近のデータほど過小評価となっている点に留意が必要) 。
  • 医療提供体制の状況について、全国的にひっ迫はみられないが、沖縄県では入院者数の増加や院内クラスターの発生により、医療への負荷が増加している状況にある。
  • 救急医療について、救急搬送困難事案数はコロナ疑い、非コロナ疑いともにほぼ横ばいとなっている。
  • 夜間滞留人口について、5類移行後において、全国的に大きな増加はみられていない。

 

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長崎県内における75歳未満の新型コロナウイルス感染症罹患後の死亡例に関する実地疫学調査, 2022年1月~2023年1月

(IASR Vol. 44 p96-98: 2023年6月号)
 

2022年1月以降, オミクロンの流行により新型コロナウイルス感染症(COVID-19)症例は, 以前に比してその流行規模が大きくなった1)。死亡者の多くは高齢者だが, 高齢者以外の死亡も認められた。死亡リスクが比較的低いとされている年代の死亡者の背景や発症から死亡に至るまでの経過を把握することは, 公衆衛生対策を検討するうえで重要である。本調査はオミクロン流行にともなう長崎県内の75歳未満のCOVID-19罹患後死亡者の特徴の把握を目的に積極的疫学調査を行った。

掲載日:2023年6月19日

第122回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和5年6月16日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第122回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版(準備中)

感染状況や医療提供体制の状況等

  • 新規患者数は、4月上旬以降緩やかな増加傾向となっており、5類移行後も4週連続で増加が継続している。
    (6/5~6/11の定点当たり5.11人、前週比1.12)
  • 地域別の新規患者数は、36の都道府県で前週より増加傾向にあり、沖縄県で感染拡大の傾向がみられる。
    (6/5~6/11の定点当たり18.41人、前週比1.17)
  • 全国の年代別新規患者数は、80歳以上を除き前週より増加傾向にある。
  • 変異株の発生動向について、XBB.系統の割合が大部分を占めており、特にXBB.1.16系統は増加傾向、XBB.1.5系統は低下傾向、XBB.1.9系統は横ばいとなっている。
  • 新規入院者数や重症者数は、いずれも増加傾向となっている(直近のデータほど過小評価となっている点に留意が必要) 。
  • 医療提供体制の状況について、全国的にひっ迫はみられないが、沖縄県の医療の状況には注視が必要。
  • 救急医療について、救急搬送困難事案数は、コロナ疑い、非コロナ疑いともに足元で増加となっている。
  • 夜間滞留人口について、5類移行後において、全国的に大きな増加はみられていない。



 

過去のデータ

 

新型コロナウイルス ゲノムサーベイランスによる全国の系統別検出状況(.pdf)

2024年

2023年

2022年

2021年

 

新型コロナウイルス ゲノムサーベイランスによる都道府県別検出状況(.xls)

2024年

2023年

 

民間検査機関の検体に基づくゲノムサーベイランスによる系統別検出状況(.pdf)

2024年

2023年

2022年

 

民間検査機関の検体に基づくゲノムサーベイランスによる各株・系統検出割合の推定(.pdf)

(注)新たな変異株が検出されるなどして各株・系統の置き換わりが認められる期間のみ掲載

2024年

2023年

2022年

 

<国立感染症研究所のゲノム解析の実施状況及びPANGO系統別検出状況>

国内におけるSARS-CoV-2ゲノム解析 全ゲノム解析数の累積・都道府県別内訳を記載 (.xlsx)

※2023年5月7日時点で終了

2023年

2022年

 

新型コロナウイルス ゲノムサーベイランスによる国内の系統別検出状況(.csv)

※2023年5月11日時点で終了

2023年

2022年

2021年

 

 

一般的にウイルスは増殖や感染を繰り返す中で徐々に変異をしてくことが知られており、新型コロナウイルスについても少しずつ変異をしています。大半の変異はウイルスの特性にほとんど影響を及ぼしませんが、一部の変異では、感染・伝播性、重症化リスク、ワクチン・治療薬の効果、診断法などに影響を及ぼすことがあります。 国立感染症研究所では新型コロナウイルスの変異株について迅速リスク評価を行い、「懸念される変異株(VOC)」、「注目すべき変異株(VOI)」、「監視下の変異株(VUM)」に分類しています。

 

  国立感染症研究所による国内における変異株の分類(2023年4月21日時点)

分類

定義

主な対応

該当

変異株

懸念される変異株

(VOC; Variants of Concern)

公衆衛生への影響が大きい感染・伝播性、毒力*、及び治療・ワクチン効果の変化が明らかになった変異株

対応

Ÿ 週単位で検出数を公表

Ÿ ゲノムサーベイランス(国内・検疫)

Ÿ 必要に応じて変異株PCR検査で監視

Ÿ 積極的疫学調査

オミクロン

注目すべき変異株

(VOI; Variants of Interest)

公衆衛生への影響が見込まれる感染・伝播性、毒力、及び治療・ワクチン効果や診断に影響がある可能性がある、又は確実な変異株で、国内侵入・増加の兆候やリスクを認めるもの(以下、例)

・検疫での一定数の検知

・渡航例等と無関係な国内での検出

・国内でのクラスター連鎖

・日本との往来が多い国での急速な増加

警戒

Ÿ週単位で検出数を公表

Ÿゲノムサーベイランス(国内・検疫)で監視

Ÿ積極的疫学調査

Ÿ必要に応じて変異株PCR検査の準備

 

 該当なし

監視下の変異株

(VUM; Variants Under Monitoring)

公衆衛生への影響が見込まれる感染・伝播性、毒力、及び診断・治療・ワクチン効果に影響がある可能性がある変異を有する変異株

また、VOCやVOIに分類された変異株であっても、以下のような状況では、本分類に一定期間位置付ける

・世界的に検出数が著しく減少

・追加的な疫学的な影響なし

・国内・検疫等での検出が継続的に僅か

・特に懸念される形質変化なし

監視

Ÿ発生状況や基本的性状の情報収集

Ÿゲノムサーベイランス(国内・検疫)で監視

Ÿ週単位で検出数を公表 

 

該当なし

* 毒力virulence: 病原体が引き起こす感染症の重症度の強さ

※ VariantのPango系統やNextstrainクレードといった分類が複雑で覚えにくく、初めて報告された地名などが呼称として使用されていることが、差別や偏見につながることも懸念して、2021年5月より、WHOは代表的なvariantに対してギリシャ文字の呼称を定めている。これまで”variant”の訳語として「変異株」、WHOが呼称を定めたvariantについてそれを用いて「〇〇株」と称してきた(例:B.1.1.7系統=アルファ株、B.1.1.529系統=オミクロン株)。しかし、B.1.1.529系統が主流となって以降、亜系統が広く分岐し、さらにWHOが用いる呼称で総称される系統・亜系統の抗原性等の性質が多様化しており、遺伝的に同一、又はほぼ均一なウイルスの集合体を示す「株」を、WHOが用いる呼称に対応して用いることが適さなくなってきている。そのため、WHOが呼称を定めた各variantについて「アルファ」「オミクロン」のように表現することとした。

なお、「〇〇株」は一般に広く使用されている用語となっており、通称として引き続き用いることを妨げるものではない。

 

⚫︎国立感染症研究所が公表している新規変異株に関する報告

 

⚫︎変異株に関する疫学調査

 

⚫︎国立感染症研究所のゲノム解析の実施状況及びPANGO系統別検出状況

新型コロナウイルス ゲノムサーベイランスによる全国の系統別検出状況(.pdf)

2024年第6週(2024年2月16日時点)

 

新型コロナウイルス ゲノムサーベイランスによる都道府県別検出状況(.xls)

2024年第6週(2024年2月16日時点)

 

民間検査機関の検体に基づくゲノムサーベイランスによる系統別検出状況(.pdf)

2024年第13週(2024年4月15日時点

 

民間検査機関の検体に基づくゲノムサーベイランスによる各株・系統検出割合の推定(.pdf)

(注)新たな変異株が検出されるなどして各株・系統の置き換わりが認められる期間のみ掲載

2024年第13週(2024年4月15日時点)

 

過去のデータ

 

⚫︎新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する治療薬の効果に影響を及ぼす可能性があるウイルスゲノム変異によるアミノ酸置換について

第4版(2023年6月23日)

第3版(2023年3月29日)

第2版(2023年2月3日)

第1版(2022年12月20日(2023年2月3日一部修正))

 

2023年5月29日
厚生労働省
国立感染症研究所

【背景・目的】

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)においては、無症状病原体保有者の存在などから全ての感染者の診断は困難であるため、これまでに診断された症例の累積報告数よりも実際の累積感染者数が多い可能性が指摘されている。これまでに厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部と国立感染症研究所では、我が国における新型コロナウイルス感染症の疾病負荷の把握と新型コロナワクチン接種で誘導された抗体の保有状況を検討することを目的として、5都府県をおいて住民調査をベースにした大規模な血清疫学調査を計6回(2020年6月、2020年12月、2021年12月、2022年2月-3月、2023年11月-12月、2023年2月-3月)[1]、および献血検体を用いて全国47都道府県において1回(2022年11月)[2]、抗体保有状況の把握を行ってきた。2022年11月における全国を対象とした血清疫学調査では感染によって誘導されるSARS-CoV-2抗ヌクレオカプシド抗体(抗N抗体)保有割合は概ね29%程度であったが、その後も2022年から2023年にかけての冬の流行(いわゆる第八波)が生じたことから、血清疫学調査により市中感染状況の推移を把握する必要があった。そこで、本調査では日本赤十字社による協力のもと、再度、全都道府県を対象に、献血時の検査用検体の残余血液を用いて、2023年2月19日〜27日における献血者における抗N抗体保有割合を調査した。本報告書ではその結果を示す。

【方法】

調査対象者

本調査は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)第15条第2項に基づき実施した。調査対象者は2023年2月19日〜27日に日本赤十字社の献血ルーム等を訪れ、全血献血又は成分献血の基準を満たし(対象年齢は16〜69歳)、以下のいずれにも該当しない者とした。

  • 新型コロナウイルス感染症と診断された又は新型コロナウイルス検査で陽性になったことがあり、症状消失後(無症状の場合は陽性となった検査の検体採取日から)4週間以内の者 
  • 発熱及び咳・呼吸困難などの急性の呼吸器症状を含む新型コロナウイルス感染症が疑われる症状や、味覚・嗅覚の違和感を自覚する方で、症状出現日から2週間以内及び症状消失から3日以内の者
  • 新型コロナウイルス感染者の濃厚接触者に該当し、最終接触日から2週間以内の者

上記の対象者から献血時に採血された検査用検体の残余血清のなかから、血清学的検査の対象となる検体を以下の方法で抽出した。抽出数を定めるために、全都道府県を対象として、人口動態調査に基づく令和3年10月1日時点の推計人口、令和5年1月17日時点の累積罹患割合を想定される有病率として、有意水準0.05、許容誤差範囲5%、無作為抽出を前提とし、抽出する検体数(以下「検査検体数」という。)を設定した。都道府県毎に決められた検査検体数に従い、系統的抽出法又は無作為抽出法により、統計学的に偏りが生じないよう収集した。抽出にあたっては、各都道府県内で地理的な差異が出ないように各都道府県の実情に応じて適切な方法が選択された。

血清学的検査

抽出された残余血清(1.0mL程度)を用いて本業務委託先の民間検査機関において抗N抗体を測定した。抗体の測定はロシュ・ダイアグノスティックス社Elecsys® Anti-SARS-CoV-2を用いて実施した。陽性判定については、メーカーの規定したカットオフ値(抗N抗体カットオフインデックス(COI)≥1.0)に従った。なお、現在、国内で使用されているワクチン(mRNAワクチンおよびウイルスベクターワクチン、組換えタンパク質ワクチン)は、いずれもスパイク(S)抗原をコードする配列以外のウイルスゲノム配列またはS抗原以外の抗原を有していないことから、抗N抗体はウイルス感染のみで誘導される。よって、抗N抗体陽性であることは、既感染であることを意味する。残余検体については、委託業者において適切に廃棄された。当該残余血液に係る付帯情報(検体と突合可能な検体ID、年齢、性別、採取した血液センターID及び当該血液センターの所在都道府県及び市町村名)が厚生労働省に提供された。

統計解析

血清疫学調査から得られたデータに対して、都道府県ごとの年齢分布や性別の人口構成比を反映するために都道府県、性別、年齢階級ごとにウェイトを計算し集計した。ベースラインの人口は2021年10月1日現在の人口推計(都道府県、年齢(5歳階級)、男女別人口)データを利用した。本調査結果の数値や比率(%)は全てウェイトバック後の数値を四捨五入したものであるため、単純な合計とは異なる。割合の95%信頼区間(CI: Confidence Interval)に関しては、binomial exact法を用いて算出した。なお、比較のために、2022年11月に行われた血清疫学調査から得られた抗N抗体陽性割合も掲載している。

【結果】

研究対象期間(2023年2月19日〜27日)において、13,121検体を収集した。本調査では日本全体の人口の42.0% (95%CI: 41.2-42.9%)が抗N抗体陽性であることが判明した(表1)。以下に、

  • 表1:全国の抗N抗体保有割合
  • 表2:都道府県別の抗N抗体保有割合
  • 図1:都道府県別の抗N抗体保有割合
  • 図2:都道府県別の抗N抗体保有割合(日本地図)
  • 図3:都道府県別の抗N抗体保有割合について2022年11月調査と2023年2月調査比較
  • 図4 ABCDEF:都道府県別の抗N抗体保有割合について2022年11月調査と2023年2月調査比較(地域別)
  • 表3:性別の抗N抗体保有割合 • 表4:年齢階級別の抗N抗体保有割合
  • 表5:性・年齢階級別の抗N抗体保有割合 • 図5:性・年齢階級別の抗N抗体保有割合
  • 図6ABC:性、年齢階級、性・年齢階級別の抗N抗体保有割合について2022年11月調査と2023年2月調査比較

のウェイトバック後の推定された抗N抗体陽性割合とその95%CIを示す。

【結果の考察】

本調査では、我が国における新型コロナウイルス感染症の抗体保有状況を検討することを目的として、2023年2月に47都道府県において献血時の検査用検体の残余血液を用いて抗N抗体保有割合を調査した。

調査対象期間において推定された抗N抗体保有割合を都道府県別にみると、全て都道府県で抗N抗体陽性割合の点推定値が増加しており、これは前回調査の2022年11月以降のいわゆる第八波の影響を捉えているものと考えられる。一方でその増加の程度には地域差がみられた。宮城、東京、愛知、大阪、福岡においては、39.8% (95%CI: 33.8-46.0%)、44.4% (95%CI: 38.9-50.0%)、56.5% (95%CI: 50.7-62.2%)、54.1% (95%CI: 48.4-59.7%)、57.2% (95%CI: 51.6-62.7%)であった (表2)。比較対象として、これまでに厚生労働省と国立感染症研究所により実施された、2022年11月の血清疫学調査の結果も同時に示す。この調査においては宮城、東京、愛知、大阪、福岡においてそれぞれ17.3% (95%CI: 11.3-24.8%)、34.5% (95%CI: 28.7-40.7%)、28.5% (95%CI: 22.5-35.2%)、43.0% (95%CI: 36.9-49.3%)、35.8% (95%CI: 29.8-42.3%)であった。なお、いくつかの都道府県では推定された95%CIは両調査で重なっており、増加については必ずしも統計的に有意であるとは限らない点に注意する。

同様に、性年齢階級別に抗N抗体保有割合をみると、2022年11月調査同様、同一年齢階級の中では性差はみられなかった。また、抗N抗体保有割合を年齢階級ごとにみると、(30代で多少の上昇は見られるものの)若年層で高く、年齢が高くなるにしたがって割合が減っていく傾向が観察された。この傾向も前回の2022年11月の調査の結果と合致する。

最後に、同時期の海外における献血データを用いた血清疫学調査の結果としては、以下のものが挙げられる。カナダは2023年2月1日から28日まで計31,755サンプルの血清疫学調査を行い[3]、抗N抗体保有割合を77.6% (95%CI: 77.1.-78.6%)としており、同年1月の調査の76.7% (95%CI: 76.3-77.2%)から微増としていることを報告した。また、17-24歳の年齢群が88.4% (95%CI: 87.4-89.4%)と最も高い抗N抗体保有割合を示しているとしている。同様に英国では2023年1月25日から3月17日までに収集された14,575サンプルの血清疫学調査により、抗N抗体保有割合を86.1% (95%CI: 85.4-86.7%)としている[4]。

本調査は日本における2022年11月以降の抗N抗体保有割合の推移を、47都道府県で献血検体を用いて検証した初めての大規模な血清疫学調査である。既感染の指標として使用されるワクチンでは誘導されない抗N抗体保有割合は日本全体としては42.0% (95%CI: 41.2-42.9%)であり、前回の2022年11月調査時点が28.6%(95%CI: 27.6-29.6%)であることを考えると(表1)、本調査での増分は主にいわゆる第八波での自然感染をした人口の割合を推定している可能性を示唆している。今後も継続的に既感染者割合を評価していくことにより、本感染症の流行動態の把握と評価の一助とすることが重要と考えられた。

【結果の解釈の注意点】
  • ウェイトバック集計を行うことで、都道府県ごとに性別、年齢の分布は補正されているが、そもそも献血に来る人の偏りに起因するバイアスは補正されていないことに注意を有する。
  • 献血の対象年齢が16~69歳であり、70歳以上の高齢者や15歳以下は含まれず、小児、高齢者の陽性率の分布はこのデータからは評価できていない。小児における抗体保有割合が評価できていないことは、全体の抗体保有割合を過小又は過大評価している可能性も考えられる。
  • 2022年2月の献血の検体データであるため、リアルタイムの感染状況を反映しているわけではない。また、採血時時点までの累積感染者の割合を評価するものであり、現時点の感染流行状況を評価するものではないことに注意が必要である。
  • 抗N抗体保有割合は感染によって誘導される抗体であるため、感染防御に関連しCOVID-19ワクチンによって誘導されるS抗体は捉えることができておらず、集団免疫の状態についての考察は困難である。
  • 抗N抗体は感染によって誘導されない場合や感染後に低下する場合もあり、抗N抗体陰性であることをもって必ずしも感染歴がないことを意味しないこと、そのため抗N抗体の保有割合が既感染の累積割合と同一であるとはいえないことに留意が必要である。
【参考文献】
  1. 2021 年度新型コロナウイルス感染症に対する血清疫学調査報告 https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2484-idsc/11118-covid19-79.html
  2. 2022年11月における献血検体を用いた既感染割合に関する分析 https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2484-idsc/11729-covid19-82.html
  3. COVID-19 vaccine surveillance report, Week 14, UK health security agency https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1067158/vaccine-surveillance-report-week-14.pdf
  4. COVID-19 Seroprevalence Report, April 5, 2023, Canadian Blood Services https://www.covid19immunitytaskforce.ca/wp-content/uploads/2023/04/covid-19-full-report-february-2023-april-5-2023.pdf

 

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更新日:2023年5月16日

 

本週報は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行状況を、時・人・場所の項目を用いて記述し、複数の指標を精査し、全国的な観点からまとめています。 「トレンド(傾向)」と「レベル(水準)」を明記し、疫学的な概念を用いて、状況把握の解釈を週ごとに行っています。 解釈については、注意事項にも記載していますが、特に直近の情報については、過小評価となりうる場合などがあるので十分にご注意下さい。 国や地方自治体のCOVID-19対策に従事する皆様とともに、広く国民の皆様にCOVID-19に関する情報を提供し、還元する事を目的としております。 COVID-19対策・対応の参考資料として活用していただければ幸いです。

 

2022年第43週以降の週報において、1.1全国の新規症例報告数と2.1地域別の新規症例報告数の出典に不備があったこと、2.1地域別の新規症例報告数の図の集計方法が凡例と異なっていたために、再集計のうえ差し替えてあります。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

 

PDF:2023年第18週(5月1日~5月7日; 5月8日現在)掲載日:2023年5月16日

PDF:2023年第17週(4月24日~4月30日; 5月1日現在)掲載日:2023年5月8日

PDF:2023年第16週(4月17日~4月23日; 4月24日現在)掲載日:2023年5月1日

PDF:2023年第15週(4月10日~4月16日; 4月17日現在)掲載日:2023年4月24日

PDF:2023年第14週(4月3日~4月9日; 4月10日現在)掲載日:2023年4月17日

PDF:2023年第13週(3月27日~4月2日; 4月3日現在)掲載日:2023年4月10日

PDF:2023年第12週(3月20日~3月26日; 3月27日現在)掲載日:2023年4月3日

PDF:2023年第11週(3月13日~3月19日; 3月20日現在)掲載日:2023年3月27日

PDF:2023年第10週(3月6日~3月12日; 3月13日現在)掲載日:2023年3月20日

PDF:2023年第9週(2月27日~3月5日; 3月6日現在)掲載日:2023年3月13日

PDF:2023年第8週(2月20日~2月26日; 2月27日現在)掲載日:2023年3月5日

PDF:2023年第7週(2月13日~2月19日; 2月20日現在)掲載日:2023年2月27日

PDF:2023年第6週(2月6日~2月12日; 2月13日現在)掲載日:2023年2月20日

PDF:2023年第5週(1月30日~2月5日; 2月6日現在)掲載日:2023年2月14日

PDF:2023年第4週(1月23日~1月29日; 1月30日現在)掲載日:2023年2月6日

PDF:2023年第3週(1月16日~1月22日; 1月23日現在)掲載日:2023年1月30日

PDF:2023年第2週(1月9日~1月15日; 1月16日現在)掲載日:2023年1月23日

PDF:2023年第1週(1月2日~1月8日; 1月9日現在)掲載日:2023年1月16日

PDF:2022年第52週(12月26日~1月1日; 1月2日現在)掲載日:2023年1月15日

PDF:2022年第51週(12月19日~12月25日; 12月26日現在)掲載日:2023年1月13日

PDF:2022年第50週(12月12日~12月18日; 12月19日現在)掲載日:2022年12月26日

PDF:2022年第49週(12月5日~12月11日; 12月12日現在)掲載日:2022年12月19日

PDF:2022年第48週(11月28日~12月4日; 12月5日現在)掲載日:2022年12月12日

PDF:2022年第47週(11月21日~11月27日; 11月28日現在)掲載日:2022年12月05日

PDF:2022年第46週(11月14日~11月20日; 11月21日現在)掲載日:2022年11月28日

PDF:2022年第45週(11月7日~11月13日; 11月14日現在)掲載日:2022年11月21日

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2023年4月28日
国立感染症研究所
NPO法人 日本ECMOnet

端 緒

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンの開発は未曾有のスピードで進み、ファイザー社製およびモデルナ社製のmRNAワクチンは大規模なランダム化比較試験で高い有効性(vaccine efficacy)が示された1-3。国内においても、国立感染症研究所にて、複数の医療機関や民間検査会社の協力のもとで、発熱外来等で新型コロナウイルスの検査を受ける者を対象として、症例対照研究(test-negative design)を実施し、実社会における有効性(vaccine effectiveness)として、主に軽症の発症予防効果を検討してきた4-11。しかし、新型コロナワクチンの重要な効果の一つとしての重症肺炎の予防効果については国内の知見は非常に乏しかった。今回、国立感染症研究所と日本ECMOnet が共同で、デルタ流行期〜オミクロン流行初期(BA.1/BA.2流行期)における呼吸不全を伴うCOVID-19肺炎発症(中等症Ⅱ以上相当)および人工呼吸器を要するCOVID-19肺炎発症(重症相当)に対する予防効果を、症例対照研究を実施して検討することとした。

方 法

2021年8月1日から2022年6月30日までに複数の急性期病院に呼吸不全で入院した者(診断が酸素を必要とするCOVID-19肺炎、COVID-19以外の肺炎、心不全、その他呼吸器疾患等)で、16歳以上の者を対象とした。PCR、抗原検査等の検査の種類を問わず、検査陽性者を症例群(ケース)、検査陰性者を対照群(コントロール)と分類した。同一患者は初回の入院のみが組み入れられ、本解析においては、以下の者は除外して解析した:(1)発症日が不明の者、(2)発症15日以降に入院した者、(3)入院中に発症した者、(4)発症8日以上前または発症15日以降に検査された者、(5)入院15日以上前または入院15日以降に検査された者、(6)在宅酸素療法中または在宅人工呼吸器使用中の者、(7)入院15日以上前または15日以降に酸素使用を開始された者、(8)入院15日以上前または20日以降に人工呼吸器を使用開始された者、(9)3ヶ月以上前の新型コロナウイルス感染症診断歴のある者、(10)免疫不全の者または免疫抑制剤を使用している者。補足として、発症7日前以降に検査された者を組み入れ、発症8日以上前に検査された者を除外した理由は、例えば無症状スクリーニングで陽性になり、その後発症して重症化した者も含めるために発症前に検査された者も組み入れることとしたが、発症から8日以上遡ると陽性となる可能性が低くなるためである。また、入院14日前以降に検査された者を組み入れ、入院15日以上前に検査された者を除外した理由は、COVID-19においては発症後数日〜最大2週間後に重症化するため、発症直後に検査陽性となり、その後COVID-19肺炎として入院した者を含めるためである。

期間としては、2021年8月1日から2021年11月31日をデルタ流行期、2022年1月1日から2022年6月30日をオミクロン流行初期(BA.1/BA.2流行期)とした。なお、2021年12月1日から2021年12月31日に入院した症例は非流行期/置き換わり期として予防効果の推定には含めなかった。

ワクチン接種歴については、(1)未接種、(2)1回接種から13日以内、(3)1回接種から14日以降または2回接種から13日以内、(4)2回接種から14日-6ヶ月(14-181日)、(5)2回接種から6ヶ月以降(181日以降)、(6)3回接種から13日以内、(7)3回接種から14日-6ヶ月(14-181日)、(8)3回接種から6ヶ月以降(181日以降)、の8つのカテゴリーに分けた。いずれも1価ワクチン(従来株ワクチン)のみを受けた者であり、デルタ流行期は、国内において3回接種が未実施であったことからカテゴリー1-5のみとした。なお、ワクチンの最終接種日が不明の者は本解析では除外した。この影響をみるために、最終接種日不明症例も含む接種回数別の解析も行った。

ロジスティック回帰モデルを用いて、オッズ比と95%信頼区間(CI)を算出した。多変量解析における調整変数としては、先行研究等を参照し、入院時年齢群、性別、独自の重症化リスクスコア(0, 1, 2, 3, 4, 5, 6+)*、過去1年間の入院有無(自院または他院)、喫煙歴、入院医療機関の所在都府県、入院日のカレンダー週(2週ごと)をモデルに組み込んだ。ワクチン有効率は(1-調整オッズ比)×100%で推定した。

人工呼吸器を要するCOVID-19肺炎(重症相当)に対する予防効果を検討するために、症例群を、人工呼吸器を要するCOVID-19患者に限定した解析も行った(対照群については全ての呼吸不全の患者を含んでいる)。本調査は国立感染症研究所および協力医療機関において、ヒトを対象とする医学研究倫理審査で承認され、実施された(国立感染症研究所における審査の受付番号1454、1527)。

* 先行研究12-13を参照し入院時妊娠の有無、基礎疾患、BMIを元に作成:糖尿病・慢性腎臓病・認知症・ダウン症・肥満に対しては2点、その他の基礎疾患・入院時妊娠・過体重に対しては1点で、各症例における点数の総計で算出

 

結 果

9都府県の21医療機関において、2021年8月1日から2022年6月30日までに複数医療機関に急性呼吸不全で入院した者で解析可能であった2,244名が組み入れられた。発症日が不明の者10名、発症15日以降に入院した者11名、入院中に発症した者20名、発症8日以上前または発症15日以降に検査された者41名、入院15日以上前または入院15日以降に検査された者46名、在宅酸素療法中または在宅人工呼吸器使用中の者60名、入院15日以上前または15日以降に酸素使用を開始された者10名、入院15日以上前または20日以降に人工呼吸器を使用開始された者8名、3ヶ月以上前の新型コロナウイルス感染症診断歴のある者9名、免疫不全または免疫抑制剤を使用している者42名が除外され、1987名が解析に含まれた。期間別では、デルタ流行期1025名、オミクロン流行初期(BA.1/BA.2流行期)909名、2021年12月の非流行期53名であった。解析に含まれた1,987名(うち陽性1,511名(76.0%))においては、年齢中央値(範囲)68(52-82)歳、男性1,329名(66.9%)、女性658名(33.1%)であった(表1)。ワクチンの種類(製造会社)は、全ての回で判明している者において、ファイザー社製が86.8%、モデルナ社製が7.5%、mRNAワクチンの交互接種が5.0%、その他のワクチンが0.7%であった。ワクチンの最終接種日が不明の者は217名(10.9%)であった。

 

covid19 9999 2table1

 

ワクチン接種歴を接種回数および接種後の期間別で8つのカテゴリーに分け、検査陽性者(症例群)と検査陰性者(対照群)とで比較した(表2表3)。

呼吸不全患者において、未接種者を参照項とする調整オッズ比は、デルタ流行期における2回接種後14日-6ヶ月では0.040 (95%CI 0.016-0.099)(表2A)、オミクロン流行初期における2回接種後6ヶ月以降では0.578 (95%CI 0.280-1.193)、ブースター(3回目)接種後14日-6ヶ月では0.144 (95%CI 0.065-0.319)であった(表2B)。

人工呼吸器を要するCOVID-19患者と呼吸不全の対照群において、未接種者を参照項とする調整オッズ比は、デルタ流行期における2回接種後14日-6ヶ月では0.001 (95%CI 0.000-0.015) (表3A)、オミクロン流行初期における2回接種後6ヶ月以降では0.084 (95%CI 0.011-0.627)、3回接種後14日-6ヶ月では0.004 (95%CI 0.000-0.069)であった(表3B)。なお、サンプルサイズの制約から、sparse data bias等モデルによるバイアスの影響もあり得るので解釈に注意が必要である。

最終接種日不明症例も含む接種回数別の解析でも類似の結果であった。

 

covid19 9999 2table2

 

covid19 9999 2table3

 

調整オッズ比を元にワクチン有効率を算出したところ、デルタ流行期において、呼吸不全を伴うCOVID-19肺炎に対する2回接種後14日-6ヶ月の有効性は96.0% (95%CI 90.1-98.4%)、人工呼吸器を要するCOVID-19肺炎に対する2回接種後14日-6ヶ月の有効性は99.9% (95%CI 98.5-100.0%)であった(表4)。また、オミクロン流行初期においては、呼吸不全を伴うCOVID-19肺炎に対する2回接種後6ヶ月以降の有効性は42.2% (95%CI -19.3-72.0%)、3回接種後14日-6ヶ月の有効性は85.6% (95%CI 68.1-93.5%)であり、人工呼吸器を要するCOVID-19肺炎に対する2回接種後6ヶ月以降の有効性は91.6% (95%CI 37.3-98.9%)、3回接種後14日-6ヶ月の有効性は99.6% (95%CI 93.1-100.0%)であった(表4)。

 

covid19 9999 2table4

 

考 察

本報告では、デルタ流行期〜オミクロン流行初期(BA.1/BA.2流行期)における呼吸不全を伴うCOVID-19肺炎および人工呼吸器を要するCOVID-19肺炎に対する予防効果を検討した。デルタ流行期においては、呼吸不全を伴うCOVID-19肺炎および人工呼吸器を要するCOVID-19肺炎に対して、ともに非常に高い有効性(点推定値:それぞれ96%、>99%)を示した。

オミクロン流行初期においては、2回接種後6ヶ月以降で、呼吸不全を伴うCOVID-19肺炎に対しては低下したが(点推定値:42%)、人工呼吸器を要するCOVID-19肺炎に対しては高い有効性(点推定値:92%)であった(ともに信頼区間が広く解釈に注意が必要)。また、ブースター(3回目)接種により、呼吸不全を伴うCOVID-19肺炎および人工呼吸器を要するCOVID-19肺炎に対して、ともに有効性が高まった(点推定値:それぞれ86%、>99%)。

諸外国においては、入院予防効果を検討した研究結果が数多く報告されている14-15。国内で承認されているワクチンにおいて、デルタ流行期には、一貫して高い重症化予防効果が示されてきた14。しかし、オミクロン流行期においては、2回接種およびブースター接種において、50-100%と幅のある重症化予防効果が報告されている15。本報告においては、COVID-19重症肺炎により特異的なアウトカム(転帰)である酸素需要を伴う症例や人工呼吸器を要する症例に限定して解析を行うことで、より確度の高い推定を目指した16。オミクロン流行期においては、入院患者で偶発的に新型コロナウイルス感染者が増えており、入院予防効果では有効性を過小評価しうるため、この考慮は特に重要となる。

本報告では、デルタ流行期における2回接種の高い重症化予防効果、オミクロン流行初期における3回接種の高い重症化予防効果が示された。2023年5月からCOVID-19の感染症法上の位置づけは5類感染症へ移行するが、今後も、有効性や安全性等のエビデンスに基づいて新型コロナワクチンの接種戦略を検討することが重要となる。

制 限

本調査および報告においては少なくとも以下の制限がある。まず、1つ目に交絡因子、誤分類等の観察研究の通常のバイアスの影響を否定できない。2つ目の制限として、上述の通り、ワクチンの最終接種日が不明の者(10.9%)は本解析では除外している。ただし、最終接種日不明症例も含む接種回数別の解析を行ったところ、類似の結果であった。3つ目の制限として、今回の調査では、ワクチンの製造会社ごとの有効性は評価していない。4つ目の制限として、本研究では陽性例についてウイルスゲノム解析を実施していない。ただし、デルタ流行期、オミクロン流行初期における解析であり大部分はそれぞれデルタ、BA.1/BA.2への感染であったとの想定のもとで実施している。5つ目の制限として、サンプルサイズの制約から、一部の推定では有効率の信頼区間が広いため、点推定値の解釈には注意が必要である。なお、人工呼吸器を要する症例と呼吸不全の対照群を比較した調整オッズ比は、点推計値が過大評価されている可能性(sparse data bias)があるが、この二群におけるワクチン接種歴の分布は大きく異なっていた。6つ目の制限として、3回接種の中長期的な重症化予防効果、4回接種およびオミクロン対応2価ワクチンの重症化予防効果は検討しておらず、これらは今後の検討課題である。

本調査および報告は以下の研究資金を利用して行われた:

・厚生労働科学研究費補助金「新型コロナワクチン等の有効性及び安全性の評価体制の構築に向けた研究」
・AMED新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業「ワクチンで予防可能な疾病のサーベイランス及びワクチン効果の評価に関する研究」

 

参考文献
  1. Polack FP, Thomas SJ, Kitchin N, et al. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine. N Engl J Med. 2020;383(27):2603-2615. doi:10.1056/NEJMoa2034577
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  6. 新城ら.新型コロナワクチンの有効性を検討した症例対照研究の暫定報告(第三報):オミクロン株流行期における有効性.国立感染症研究所.https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2484-idsc/10966-covid19-71.html
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MOTIVATE study group
国立感染症研究所 感染症疫学センター 新城雄士 有馬雄三 鈴木基
NPO法人 日本ECMOnet/かわぐち心臓呼吸器病院 竹田晋浩
NPO法人 集中治療コラボレーションネットワーク/NPO法人 日本ECMOnet 橋本悟
NPO法人日本ECMOnet/大阪大学医学部附属病院 藤野裕士
東京都立広尾病院 三輪槙 中西明日香
大阪市立総合医療センター 中河秀憲 林下浩士
関西労災病院 髙松純平
公立昭和病院 大場邦弘 谷山大輔
大阪急性期・総合医療センター 藤見聡 山口浅瀬
相模原協同病院 菊地斉
横須賀市立うわまち病院 岩澤孝昌 内倉淑男
上尾中央総合病院 神部芙美子
かわぐち心臓呼吸器病院 大山慶介
東京警察病院 金井尚之 松永麻衣子
八尾徳洲会総合病院 緒方嘉隆 濵口眞成 元田健太郎
北里大学北里研究所病院 朝倉崇徳 中山莊平
佐野厚生総合病院 浅見貴弘
順天堂大学医学部附属練馬病院 杉田学 水野慶子
聖路加国際病院 仁多寅彦
埼玉医科大学総合医療センター 岡秀昭 西田裕介 山本慧
横浜市立大学附属病院 加藤英明 田中克志
奈良県総合医療センター 安宅一晃 日垣太希
紀南病院 中野好夫
東京大学医学部附属病院 堤武也 土井研人 奥川周
日本赤十字社医療センター 上田晃弘
総合病院国保旭中央病院 中村朗 井上武 小林三枝子
聖マリアンナ医科大学病院 藤谷茂樹 吉田徹
東京都立多摩総合医療センター 清水敬樹 三森薫
秋田赤十字病院 藤田康雄
東京山手メディカルセンター 大河内康実
京都市立病院 栃谷健太郎

 

謝辞
本調査にご協⼒いただいた上記医療機関の職員皆様、技術/事務的支援をしていただいた以下の会社の皆様および研究補助員の皆様に⼼より御礼申し上げます:
株式会社アクセライズ・サイト、レバレジーズメディカルケア株式会社、株式会社うるるBPO、瑞穂印刷株式会社、千木良望、淺野瑠々実、塚原万葵、竹田早希

 

注意事項
迅速な情報共有を⽬的とした暫定的な資料であり、内容や⾒解は知見の更新によって変わる可能性がある。

 

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