新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 関連情報ページ

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厚生労働省
国立感染症研究所
(掲載日:2022年12月23日)

【背景・目的】

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)においては、無症状病原体保有者の存在などから全ての感染者の診断は困難であるため、これまでに診断された症例の累積報告数よりも実際の累積感染者数が多い可能性が指摘されている。これまでに厚生労働省と国立感染症研究所では、我が国における新型コロナウイルス感染症の疾病負荷の把握と新型コロナワクチン接種で誘導された抗体の保有状況を検討することを目的として、5都府県をおいて大規模な血清疫学調査を計4回(2020年6月、2020年12月、2021年12月、2022年2月)実施しているが、全国47都道府県における網羅的な抗体保有状況の把握はできていなかった。2022年2月における血清疫学調査では感染によって誘導される抗N抗体保有割合は概ね4%程度であったが、その後、オミクロン株の流行下において過去最大規模の流行(第7波)があり、その後も流行が継続しており、血清疫学調査により市中感染状況の推移を把握する必要があった。

 そこで、本調査では日本赤十字社による協力のもと、全都道府県を対象に、献血時の検査用検体の残余血液を用いて、2022年11月6日〜11月13日における献血者における抗N抗体保有割合を調査した。本報告書では、献血検体を用いた血清疫学調査の結果を示す。

  続きを読む:2022年11月における献血検体を用いた既感染割合に関する分析
 

掲載日:2022年12月28日

一部訂正:2023年1月13日

国立感染症研究所実地疫学研究センター

同   感染症疫学センター

 新型コロナウイルス感染症に罹患し、お亡くなりになった方々とご遺族の皆様に対し、深くお悔やみを申し上げます。

背景・目的

 厚生労働省は、新型コロナウイルス(以下、SARS-CoV-2という。)感染による重症度等の知見を集積・監視するため、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。)第15条に基づく積極的疫学調査の一環として、「新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査におけるゲノム解析及び変異株PCR検査について(要請)」(令和3年2月5日付け健感発0205第4号厚生労働省健康局結核感染症課長通知。令和4年2月10日一部改正。)及び「B.1.1.529系統(オミクロン株)の感染が確認された患者等に係る入退院及び濃厚接触者並びに公表等の取扱いについて」(令和3年11月30日付け厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部事務連絡。令和4年2月2日一部改正。)において、自治体に対し、重症例及び死亡例についての報告やゲノム解析をこれまで依頼してきた。

 2022年以降の感染拡大に伴い、小児の感染者数が増加し1)、小児の重症例、死亡例発生への懸念から、厚生労働省及び国立感染症研究所は、関係学会(日本小児科学会、日本集中治療医学会、日本救急医学会)と協力して、SARS-CoV-2感染後の20歳未満の死亡例(以下、小児等の死亡例という。)について、急性期以降の死亡例も含め幅広く調査対象とし、積極的疫学調査を実施することとした。

 本調査の第一報2)として、2022年9月14日に暫定的な報告を行った。本報告は、2022年1月1日から2022年9月30日までの小児等の死亡例についてまとめたものである。

方法

 報告された小児等の死亡例のうち、下記2つのうちいずれかを満たす者を調査対象とした。自治体及び医療機関の協力のもと、国立感染症研究所職員及び実地疫学専門家養成コース研修員が、自治体による疫学調査等の資料収集、可能な限り現地に赴き実地においての医療機関での診療録の閲覧、及び医師への聞き取り等の調査(以下、「実地疫学調査」という。)を実施した。調査員は、2または3名体制とし、うち1名は必ず小児科の経験を有する医師とした。

調査対象とした者:

①発症日(あるいは入院日)及び死亡日が2022年1月1日から9月30日までのSARS-CoV-2感染後の20歳未満の急性期の死亡例

②発症日(あるいは入院日)及び死亡日が2022年1月1日から9月30日までのSARS-CoV-2感染後の20歳未満の急性期以後に死亡した症例(死因を別原因とした症例。発症からの日数は問わない。)

実地疫学調査における主な調査項目:
 年齢、性別、基礎疾患、新型コロナワクチン接種歴、発症日、診断日、死亡日、症状または所見、来院時検査所見、治療、死亡に至る経緯、等

結果

 本調査における症例の概要、及び実地疫学調査の結果は、以下のとおりであった。症例の収集において、調査対象を上述の①または②を満たす者としたが、報告された症例について①と②を明確に分類することは困難であった。また、第二報作成にあたり、第一報の症例も併せて情報の見直しを行った。なお、下記の記述内容は個人が特定されないよう配慮した。

1. 症例の概要

 症例は、計62例(年齢:0歳9例(15%)、1-4歳19例(31%)、5-11歳25例(40%)、12-19歳9例(15%)、性別:男性33例(53%)、女性29例(47%))であった(第一報にて報告した41例を含む)。2022年1月1日(疫学週2021年52週)~2022年9月30日(疫学週2022年39週)の発症日または診断日に基づく報告数を図に示した。症例は、2022年1月から継続的に発生し、疫学週2022年28週(7月11日~7月17日)から増加を認め、33週(8月15日~8月21日)が最も多かった。

 なお、本調査にて報告された症例は62例であったが、新型コロナワクチン接種歴、臨床経過、死亡の種類(内因性死亡及び外因性死亡)、死亡に至る経緯等、判断にあたり詳細情報が必要な項目については、診療録や医師への聞き取り、疫学調査票等の情報を要するため、この62例のうち下記の実地疫学調査が実施できた57例のみを対象として結果を示した(参照:2.実地疫学調査の結果)。

図. 新型コロナウイルス感染後の20歳未満の死亡例の報告数(n=61*; 2022年1月1日(疫学週2021年52週)~9月30日(疫学週2022年39週))

*新型コロナウイルス感染症の発症日及び診断日が不明の1例を除く

**新型コロナウイルス感染症の発症日が不明(n=8)の場合は新型コロナウイルス感染症の診断日とした

2. 実地疫学調査の結果

 62例のうち実地疫学調査が実施できた症例は、57例(92%;内因性死亡と考えられた症例50例(88%)、外因性死亡と考えられた症例7例(12%))であった。以下、内因性死亡と考えられた症例及び外因性死亡と考えられた症例、それぞれについて述べる。

2-1.内因性死亡と考えられた50症例について(表1)

 年齢・年代の内訳は、0歳8例(16%)(うち生後6か月未満3例)、1-4歳16例(32%)、5-11歳20例(40%)、12-19歳6例(12%)であった。性別は、男性24例(48%)、女性26例(52%)であった。0歳の症例における在胎週数は、8例のうち7例について得られ、早産(在胎37週未満)4例(57%)、正期産(在胎37週以上42週未満)3例(43%)であり、すべて30週以上であった。来院時の身長、体重が得られた35例において、低体重の者(18歳未満は標準体重から-2SD(標準偏差)を下回る者、18歳以上はBMI(Body Mass Index)が18.5未満の者)は10例(29%)であり、過体重の者(18歳未満は標準体重から+2SDを上回る者、18歳以上はBMIが25.0以上の者)はいなかった。推定感染経路は、家族内感染が23例(46%;同居の成人14例、同胞6例、同居の成人または同胞3例)であった。但し、不明が23例(46%)であった。新型コロナワクチン接種は、死亡時点で接種対象外年齢の者が24例(48%)、接種対象年齢の者が26例(52%)であり、接種対象年齢となる5歳以上の26例では、未接種が23例(88%)、2回接種が3例(12%)であった。2回接種を受けた3例は全例12歳以上であり、発症日は、最終接種日から最低3ヶ月を経過していた。また、医療機関到着までに認められた症状または所見は、発熱38例(76%)、悪心嘔吐23例(46%)、意識障害21例(42%)、痙攣18例(36%)、経口摂取不良11例(22%)、咳嗽11例(22%)、出血症状9例(18%)、呼吸困難8例(16%)、頭痛7例(14%)、咽頭痛7例(14%)の順に多かった(重複あり)。来院時心肺停止の症例は22例(44%)であった。また、50例のうち、外来にて死亡が確認された症例は20例(40%)、入院した症例は30例(60%)であった。

 医療機関において疑われた死亡に至る主な経緯は、中枢神経系の異常19例(38%:急性脳症等)、循環器系の異常9例(18%:急性心筋炎、不整脈等)、呼吸器系の異常4例(8%:細菌性肺炎を含む肺炎等)、その他9例(18%:多臓器不全等)、原因不明9例(18%)であった。小児多系統炎症性症候群はなかった。急性脳症等の中枢神経系の異常、急性心筋炎や不整脈等の循環器系の異常によって急激な経過を辿った症例があった。発症日は、50例のうち48例について得られ、発症から心肺停止までの日数が、中央値2.0日(四分位範囲:1.0-5.0日、範囲:0-70日)、その内訳は0-2日が25例(52%)、3-6日が14例(29%)、7日以上が9例(19%)であり、発症から死亡までの日数が、中央値3.0日(四分位範囲:1.0-6.5日、範囲:0-74日)、内訳は0-2日が22例(46%)、3-6日が14例(29%)、7日以上が12例(25%)であった。入院した症例30例のうち、転院での来院例13例及び来院時心肺停止例3例を除いた14例の入院時の血液・凝固、生化学検査値を表2に示した。Dダイマーが高値である以外に、基準値の範囲から大きく外れたものは見られなかった。また、入院した症例30例における投与薬剤は、SARS-CoV-2に対する抗ウイルス薬13例(43%)、ステロイド16例(53%)、循環作動薬18例(60%)であった(重複あり)。輸血は13例(43%)、免疫グロブリン投与は4例(13%)に対して行われていた(重複あり)。入院中の治療は、人工呼吸器24例(80%)、体温管理療法5例(17%)、体外式膜型人工肺(ECMO)5例(17%)、透析3例(10%)、血漿交換1例(3%)であった(重複あり)。

1)基礎疾患の有無別について(表1)

 基礎疾患は、50例のうち、あり21例(42%)、なし29例(58%)であった。基礎疾患ありの内訳は、中枢神経疾患7例(14%)、先天性心疾患5例(10%)、染色体異常5例(10%)等であった(重複あり)。基礎疾患の有無については、第二報より、明らかに全身状態に影響を及ぼす疾患のある者を基礎疾患ありに分類した。低体重の者は、基礎疾患ありでは7例(33%)、基礎疾患なしでは3例(10%)であった。また、医療機関到着までに認められた症状または所見について、呼吸困難は、基礎疾患ありが8例(38%)、基礎疾患なしが0例(0%)で、基礎疾患なしの症例には認められなかった。死亡に至る経緯は、基礎疾患なしでは、中枢神経系の異常が多く、呼吸器系の異常はなかった。発症日に関する情報が得られた48例について、発症から心肺停止までの日数は、基礎疾患ありでは中央値2.0日(四分位範囲:1.0-4.0日)、基礎疾患なしでは中央値3.0日(四分位範囲:1.0-7.0日)であり、発症から死亡までの日数は、基礎疾患ありでは中央値2.0日(四分位範囲:1.0-4.0日)、基礎疾患なしでは中央値4.0日(四分位範囲:1.0-12.0日)であった。なお、基礎疾患と死亡との関連については、本調査では検討していない。

表1.新型コロナウイルス感染後の20歳未満の死亡例の特性

(n=50 ; 内因性死亡と考えられた症例に限る)

*発症から心肺停止までの日数、発症から死亡までの日数は、発症日に関する情報が得られた48例(基礎疾患あり19例、基礎疾患なし29例)

表2.入院時血液・凝固、生化学検査所見

(n=14 ; 内因性死亡の入院症例のうち、転院での来院例、来院時心肺停止例を除く)

2)来院時に心肺停止していた症例について(表3)

 内因性死亡と考えられた50例のうち、来院時心肺停止が22例(44%)に認められた。年齢の中央値は、3.0歳(四分位範囲: 1.0-9.0歳)であり、およそ9割が12歳未満であった。性別による偏りはなかった。来院時心肺停止の症例のうち、13例(59%)に基礎疾患がなかった。医療機関到着までに認められた症状または所見は、発熱14例(64%)、悪心嘔吐9例(41%)、咳嗽5例(23%)、痙攣4例(18%)、意識障害4例(18%)、出血症状4例(18%)、呼吸困難3例(14%)、全身倦怠感3例(14%)、経口摂取不良3例(14%)の順に多かった(重複あり)。また、発症日に関する情報が得られた20例について、発症から心肺停止までの日数の中央値1.0日(四分位範囲:0-3.0日)、発症から死亡までの日数の中央値1.0日(四分位範囲:0.5-3.5日)であった。全症例において、発症から1週間未満に心肺停止が発生していた。

表3.新型コロナウイルス感染後の20歳未満の死亡例のうち、来院時心肺停止例の特性 (n=22 ; 内因性死亡と考えられた症例に限る)

*発症から心肺停止までの日数、発症から死亡までの日数は、発症日に関する情報が得られた20例

3)医療機関において疑われた死亡に至る経緯について

① 中枢神経系の異常について(表4、表5)

 内因性死亡と考えられた50例のうち、死亡に至る経緯が中枢神経系の異常であった症例は19例(38%)であった。年齢の中央値は8.0歳(四分位範囲: 3.0-10.0歳)で、性別による偏りは認められなかった。医療機関到着までに認められた症状または所見は、発熱16例(84%)、意識障害16例(84%)、痙攣14例(74%)、悪心嘔吐11例(58%)、頭痛7例(37%)であった。4例(21%)の症例に来院時心肺停止を認めた。外来にて死亡が確認された症例は3例(16%)、入院した症例は16例(84%)であった。

 死亡に至る経緯が中枢神経系の異常であった症例において、頻度の高い症状は、発熱、意識障害、痙攣、悪心嘔吐であり、一般的な急性脳症に見られる臨床症状が多くを占めた。また、腹痛や下痢などの消化器症状を主訴として来院した症例も認められた。発症から心肺停止までの日数の内訳は、0-4日13例(68%)、5-9日0例(0%)、10日以上6例(32%)で、二峰性の分布を呈した。発症から心肺停止までの日数が0-4日の症例では、急激に進行する脳浮腫や脳ヘルニア等が認められた。発症から心肺停止までの日数が10日以上の症例も、ほとんどの症例が発症0-4日に神経学的予後不良な状態を呈していた。

 入院した症例16例のうち、転院での来院例7例及び来院時心肺停止例1例を除く8例の入院時の血液・凝固、生化学検査値を表5に示した。Dダイマーが高値である以外に、基準値の範囲から大きく外れたものは見られなかった。入院した症例16例における投与薬剤は、SARS-CoV-2に対する抗ウイルス薬8例(50%)、ステロイド12例(75%)、循環作動薬12例(75%)であった(重複あり)。輸血は6例(38%)、免疫グロブリン投与は3例(19%)に対して行われていた(重複あり)。入院中の治療は、人工呼吸器15例(94%)、体温管理療法5例(31%)、ECMO2例(13%)、透析1例(6%)、血漿交換1例(6%)であった(重複あり)。

 なお、中枢神経系の異常19例のうち、急性脳症と考えられる症例は14例(74%)であった。急性脳症のうち、臨床的に出血性ショック脳症症候群が疑われた症例が5例(36%)であり最も多かった。但し、分類不明が7例(50%)であった。

表4.新型コロナウイルス感染後の20歳未満の死亡例のうち、中枢神経系の異常により死亡に至った症例の特性 (n=19)

表5.入院時血液・凝固、生化学検査所見 (n=8; 死亡に至る経緯が中枢神経系の異常の入院症例のうち、転院での来院例、来院時心肺停止例を除く)

② 循環器系の異常について(表6)

 内因性死亡と考えられた50例のうち、死亡に至る経緯が循環器系の異常であった症例は9例(18%)であった。年齢の中央値は6.0歳(四分位範囲: 2.0-10.0歳)、女性が男性に比べて多かった。医療機関到着までに認められた症状または所見は、発熱7例(78%)、悪心嘔吐4例(44%)、経口摂取不良3例(33%)であった。6例(67%)の症例に来院時心肺停止を認めた。外来にて死亡が確認された症例は5例(56%)、入院した症例は4例(44%)であった。死亡に至る経緯が循環器系の異常であった症例において、頻度の高い症状は、発熱、悪心嘔吐、経口摂取不良であり、急性心筋炎に見られる臨床症状が多くを占めた。

 発症から心肺停止及び死亡までの日数は、全症例が1週間未満であり、急激な循環動態の悪化が認められた。

 入院した症例4例のうち過半数が、転院での来院または来院時心肺停止の症例であったため入院時の血液検査所見を示すことは出来なかった。入院した症例4例における投与薬剤は、SARS-CoV-2に対する抗ウイルス薬1例(25%)、ステロイド1例(25%)、循環作動薬2例(50%)であった(重複あり)。輸血は3例(75%)に対して行われていた。入院中の治療は、人工呼吸器3例(75%)、ECMO2例(50%)、透析1例(25%)であった(重複あり)。

 なお、循環器系の異常9例のうち、急性心筋炎と考えられる症例は8例(89%)であった。

表6.新型コロナウイルス感染後の20歳未満の死亡例のうち、循環器系の異常により死亡に至った症例の特性 (n=9)

2-2.外因性死亡と考えられた7症例について

 年代の内訳は、5歳未満2例(28%)、5歳以上5例(72%)であった。多くが不慮の事故であったが、交通事故、火災、中毒、自然災害によるものは含まれていない。外因の発生直前に意識障害が疑われるものがあった。

考察

 発症日(あるいは入院日)及び死亡日が2022年1月1日から2022年9月30日までの小児等の死亡例、62例について報告を行った。症例数は、7月中旬から増加し、8月中旬が最も多かった。

 今回の実地疫学調査で内因性死亡と考えられた小児等の死亡例50例のうち、基礎疾患のない小児等の死亡例が29例(58%)であり、SARS-CoV-2感染後は、基礎疾患のある者はもちろん、基礎疾患のない者においても、症状の経過を注意深く観察することが必要であると考えられた。新型コロナワクチンは、接種対象年齢であった26例のうち、23例(88%)の死亡例では未接種であった。

 症状は、日本小児科学会による国内小児におけるCOVID-19レジストリ調査3)と比較して、第一報2)と同様、呼吸器症状以外の症状のうち、悪心嘔吐(46%)、意識障害(42%)、痙攣(36%)、経口摂取不良(22%)の割合が高かった。日本集中治療医学会及び小児集中治療委員会による新型コロナウイルス関連小児重症・中等症例発生状況速報4)の入院理由では、けいれん、肺炎、急性脳症の順に多く、呼吸器系以外の診断が約7割を占めていた。これらのことから、小児においては、痙攣、意識障害などの神経症状や、嘔吐、経口摂取不良等の呼吸器症状以外の全身症状の出現にも注意を払う必要があると考えられた。

 死亡に至る経緯は、中枢神経系の異常と循環器系の異常が多く、臨床的に急性脳症、急性心筋炎等の診断がされているものが多かった。中枢神経系の異常では急激に進行する脳浮腫や脳ヘルニア等、循環器系の異常では急激な循環動態の悪化等、ともに、急激な全身状態の悪化がみられた。

 内因性死亡と考えられた小児等の死亡例50例においても、症状の増悪は非常に速く、発症から心肺停止までの日数、発症から死亡までの日数が1週間未満の症例がそれぞれ81%、75%を占めた。また、来院時心肺停止が認められた22例(44%)に関して、その全例の心肺停止の発生は、発症から1週間未満であった。特に発症後1週間は症状の急激な変化に留意することが重要であると考えられた。

調査に関する制限

 本調査では、SARS-CoV-2感染と死亡との因果関係や、基礎疾患と死亡との関連について検討していない点、医療機関により診断、検査、治療などが必ずしも同一ではない点については考慮していないことに留意する必要がある。

 

本調査における協力学会:日本小児科学会、日本集中治療医学会、日本救急医学会

謝辞:本調査にご協力いただきました関係者の皆様に心より御礼申し上げます。

 

参考資料:

1.厚生労働省 データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報

https://covid19.mhlw.go.jp/ (閲覧日:2022年8月19日)

2.新型コロナウイルス感染後の20歳未満の死亡例に関する積極的疫学調査(第一報):2022年8月31日現在

https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2559-cfeir/11480-20-2022-8-31.html

3.小児科学会 予防接種・感染症対策委員会「データベースを用いた国内発症小児 Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) 症例の臨床経過に関する検討」の中間報告: 第 3 報、2022年3月28日

http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20220328_tyukan_hokoku3.pdf

4.日本集中治療医学会 小児集中治療委員会「新型コロナウイルス関連⼩児重症・中等症例の発⽣状況速報」:中間集計結果(2022年12月1日版)

https://www.jsicm.org/news/upload/221201JSICM_jscts.pdf

 

一部訂正:(2023/1/13)「②循環器系の異常について」輸血の割合を訂正しました。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 2022年11月現在

(IASR Vol. 43 p271-272: 2022年12月号) (2022年12月28日黄色部分改訂)
 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスである重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は, コロナウイルス科ベータコロナウイルス属に分類され, 約30,000塩基からなる1本鎖・プラス鎖RNAゲノムを持つ。

掲載日:2022年12月22日

第111回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年12月21日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第111回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版(準備中)

感染状況等の概要

全国の新規感染者数(報告日別)は、直近の1週間では10万人あたり約845人となり、 今週先週比は1.18と、増加速度は低下しているものの、増加傾向が継続している。
今後の免疫の減衰や変異株の置き換わりの状況、また、年末年始における接触機会の増加等が感染状況に与える影響に注意が必要。

病床使用率は、全国的に上昇傾向にあり5割を上回る地域も多く、重症者数と死亡者数は、増加傾向が継続している。

 

 

国立感染症研究所

2022年 12月16日 9:00 時点

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変異株の概況

  •   現在、流行している新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)変異株は、第22報時点と同様に、B.1.1.529系統とその亜系統(オミクロン)が支配的な状況が世界的に継続している。2022年11月5日~12月5日、世界でゲノム解析され GISAID データベースに登録されたウイルスの87.8%をオミクロンが占め、残る12.2%も配列が割り当てられていないもののオミクロンに該当すると推定され、その他の系統はほとんど検出されていない(WHO, 2022a)。オミクロンの中では多くの亜系統が発生しているが、BA.5系統が70.1%、BA.2系統が10.5%、 BA.4系統が2.0%、(いずれも亜系統を含む)と、引き続き世界的にBA.5系統が流行の主流となっており(WHO, 2022a)、日本国内でも2022年7月頃にBA.2系統からBA.5系統に置き換わりが進み、BA.5系統が主流となったのち、10月以降BQ.1系統(BA.5.3系統の亜系統)の占める割合が上昇傾向にある。また、国内外でオミクロンの亜系統間のさまざまな組換え体も報告されている。世界保健機関(WHO)は、これらのB.1.1.529系統とその亜系統および組換え体を全て含めて「オミクロン」と総称する一方、いくつかの亜系統や組換え体(BA.2.3.20、BA.4.6、BA.2.75、XBBの各系統および、BA.5系統にN450D変異もしくはR346/K444/V445/N460のいずれかの箇所に変異を有するもの)を「監視下のオミクロンの亜系統(Omicron subvariants under monitoring)」としている。
  •   BQ.1系統、XBB系統(BJ.1系統(BA.2.10系統の亜系統)とBM.1.1.1系統(BA.2.75.3系統の亜系統)の組換え体)をはじめ、特徴的なスパイクタンパク質の変異がみられ、ワクチン接種や感染免疫による中和抗体からの逃避や、感染者数増加の優位性が示唆される亜系統が複数報告されている。局所的に優位な増加をみせる亜系統も報告されているが、特定の変異株が世界的に優勢となる兆候は見られない。
  •   現時点では、オミクロンと総称される系統の中で、主に免疫逃避に寄与するがその他の形質は大きく変化していない変異株が生じていると考えられる。世界の人口の免疫状態や、介入施策も多様になる中で、変異株の性質が流行の動態に直接的に寄与する割合は低下していると考えられる。変異株の発生動向や病原性・毒力(virulence)、感染・伝播性、ワクチン・医薬品への抵抗性、臨床像等の形質の変化を継続して監視し、迅速にリスクと性質を評価し、それらに応じた介入施策が検討される必要がある。 

 

第22報からの変更点

  •   各変異株の国内外での発生状況の更新
  •   BQ.1系統、XBB系統に関する知見の更新

 

 

BA.5系統について

  •   BA.1系統、BA.2系統、BA.3系統に加え、2022年1月にBA.4系統が、2月にBA.5系統がいずれも南アフリカ共和国で検出された。以降BA.5系統は世界的に検出数が増加し、2022年42週(10月17日~23日)時点で BA.5系統とその亜系統が全世界で登録された株の74.5%を占め、主流となっている (WHO, 2022a)。
  •   国内では2022年6月以降、BA.2系統からBA.5系統への置き換わりが進行した。BA.5系統は2022年第17週(4月18日~24日)に日本から初めてGISAIDに登録され、第27週(7月4日~10日)に50%を、第28週(7月11日~17日)に75%を、30週(7月25日~31日)に90%を超えた(covSPECTRUM, 2022)。国内民間検査機関2社に集められた週800検体のゲノム解析結果を用いたゲノムサーベイランスでも、2022年22週(5月23日~29日)に初めて検出されたのち、第27週に50%を、第28週に75%を、30週に90%を超えた(国立感染症研究所, 2022)。

 

BA.2.75系統、BA.4.6系統について

  •   12月1日時点でGISAIDに、BA.2.75系統が82か国から40,320件(BA.2.75系統の亜系統を含む)、BA.4.6系統が92か国から55,058件(BA.4.6系統の亜系統を含む)登録されている(covSPECTRUM, 2022)。日本では、12月7日時点で、BA.2.75系統が検疫で169件、国内で769件、BA.4.6系統が検疫で16件、国内で198件登録されている (GISAID, 2022)。BA.2.75系統はBA.2系統と比較して中和抗体からの逃避能が上昇しているとの報告もある(Cao Y. et al., 2022a) 。一方で、ワクチン接種による中和抗体からの逃避能は、BA.2系統と比較して同等、BA.4/BA.5系統に比して低いという報告もある (Shen X. et al., 2022)。BA.4.6系統はBA.4系統と比較して、中和抗体からの逃避能が上昇しているとの報告がある(Jian F et al., 2022)。BA.2.75系統はインド、BA.4.6系統は米国での検出状況からBA.2系統、BA.5系統に対する感染者数増加の優位性が示唆されたが、いずれの国においても9月以降、XBB系統やBQ.1系統への置き換わりが進んでいる(covSPECTRUM, 2022)。

 

オミクロンの新規亜系統の世界的な発生状況について

  •   世界各地でBA.2系統やBA.5系統を起源とする亜系統が多数発生し、それらの有するスパイクタンパク質の変異から、中和抗体からの逃避能の上昇が懸念されている。米国や欧州ではBQ.1系統や、CH.1.1系統(BA.2.75.3系統の亜系統)が、アジアではBQ.1系統やXBB系統、オセアニアではBQ.1.1系統、CH.1.1系統が、これまでに各地で主流となっている系統に比較して、感染者数増加の優位性を見せている(covSPECTRUM, 2022)。一方で、これらの系統の割合の上昇傾向は地域によって異なっており、オミクロンの中で特定の亜系統が世界的に優位となる傾向は現在みられない。
  •   これらの亜系統が有するスパイクタンパク質における変異はR346、K444、V445、G446、N450、L452、N460、F486、F490、R493といった共通の部位に集中する傾向がみられており、ウイルスの収斂進化が起きているとの指摘がある(Cao Y, 2022b)。BA.5系統に比較して、BQ1.1系統、BM.1.1.1系統などは中和抗体からの逃避能が高く、特に比較された中ではXBB系統が最も逃避能が高いことが示唆されている(Cao. Y, 2022b)。ただし、査読を受けていないプレプリント論文であることに注意が必要である。また、これらの亜系統に関して重症度の上昇など、逃避能以外の形質が大きく変化しているという知見はない。スパイクタンパク質の主要箇所の変異が多いほど感染者数増加の優位性が高まるとの指摘もあり、BQ.1.1系統とXBB系統は特に感染者数増加の優位性が高い系統と指摘する専門家もいる(Wensleers T, 2022)が、世界の人口の免疫状態や、介入施策も多様になる中で、変異株の性質が流行の動態に直接的に寄与する割合は低下していることが考えられる。
  •   これらの系統について、WHOはBA.2.3.20、BA.4.6、BA.2.75、BJ.1、XBBの各系統および、BA.5系統にN450D変異もしくはR346/K444/V445/N460のいずれかの箇所に変異を有するものを「Omicron subvariants under monitoring」に指定している。欧州疾病予防対策センター(ECDC)は、 BA.2.75系統、BQ.1系統、XBB系統を「Variants of interest」、BA.2.3.20系統、BF.7系統を「Variants under monitoring」に指定している。英国健康安全保障庁(UKHSA)は、BA.2.12.1系統、BA.2.75系統、BA.4.6系統、XE系統、BQ.1系統、XBB系統を「Variants」、BA.2.75.2系統、BQ.1.1系統、BA.5.2.35系統、BN.1系統、BA.2.3.20系統を「Signals in monitoring」に指定している(ECDC, 2022a、WHO, 2022b、UKHSA, 2022)。
  •   また、オミクロンとデルタの組換え体である、XBC系統についても、ECDCは「Variants under monitoring」、UKHSAは「Signals in monitoring」に指定している(ECDC, 2022a、UKHSA, 2022)。

 BQ.1系統について

  •   2022年9月にBA.5.3系統の亜系統であるBQ.1系統がナイジェリアから報告され、またBQ.1系統にR346T変異が追加されたBQ.1.1系統などBQ.1系統の亜系統も報告されている(Cov-lineages.org, 2022)。 BQ.1系統とその亜系統(以下BQ.1系統)は12月1日時点で、GISAIDに欧米を中心に85か国から74,590件が登録されている(covSPECTRUM, 2022)。2022年第46週時点で、BQ.1系統は全世界で検出された株の36.2%を占め、割合は上昇傾向が続いている(WHO, 2022a)。米国では8月以降BQ.1系統の占める割合が上昇し2022年46週(11月13日~19日)には43%を占め、今後もBQ.1系統が占める割合が上昇することが見込まれている。一方で、感染者数は8月以降減少し、10月以降おおむね横ばいで経過している(CDC, 2022a)。欧州では9月末頃から一部の国でBQ.1系統の占める割合が上昇し、スペイン、アイルランド、ポルトガル、フランス、ルクセンブルク、アイスランド、ベルギーでは2022年45週頃にはBQ.1系統が主流となっている。一方で、いずれの国も感染者数は 9月から10月頃を境に減少に転じており、その後フランスのみ11月中旬以降再度増加傾向にある。また、フランスを含めいずれの国も死亡者数の増加は見られない(ECDC, 2022b、Our World in Data, 2022)。日本では、12月7日時点でBQ.1系統が検疫で37件、国内で680件検出されており(GISAID, 2022)、民間検査機関の検体に基づくゲノムサーベイランスでも、第43週(10月24日~30日)には1.4%であったが、第46週(11月14日~20日)には6.3%と割合が上昇しており(国立感染症研究所, 2022b、国立感染症研究所, 2022c)、第50週(12月5日~11日)においては34%を占めると推定されている(国立感染症研究所, 2022d)。
  •   BQ.1系統はBA.5系統から、スパイクタンパク質にK444T、N460K変異を獲得しており、中和抗体からの逃避能が上昇する可能性が示唆されている。また、実験的にも中和抗体からの逃避能が高いことが示唆されている(Cao Y. et al., 2022b) 。一方で、ハムスターを用いた動物実験では、BQ.1.1系統の病原性はBA.5系統と同等またはより低かった(Ito J. et al., 2022)。ただし、いずれも査読を受けていないプレプリント論文であることに注意が必要である。感染者数増加の優位性もBA.5系統などと比較して高い可能性があるものの、ヒトにおける重症度の上昇を示唆する疫学的な所見はない (WHO, 2022c)。従来株、オミクロン対応2価の両ワクチンの感染予防効果が低下する可能性が示唆されている(Kurhade C. et al.,2022)一方で、オミクロン対応2価ワクチンは従来株ワクチンよりもBQ.1系統に対する免疫原性が高い可能性が示唆されている(Zou J. et al., 2022)。また、ワクチンの重症化予防効果には影響がないと予測されている (WHO, 2022c)。ただし、治療薬やワクチンの有効性について、疫学的な評価はされていない。今後の国内外での検出状況、感染者数や重症者数の推移を注視する必要がある。

 XBB系統について

  •   2022年9月にシンガポールや米国からBJ.1系統(BA.2.10系統の亜系統)とBM.1.1.1系統(BA.2.75.3系統の亜系統)の組換え体であるXBB系統が報告され、その後遡ってインドから8月に検出された検体の登録がされている。12月1日時点で、GISAIDに66か国から9,875件が登録されており、インド、バングラデシュ、シンガポールなどアジア各国のほか、米国、英国、オーストラリアなどから多く登録されている(covSPECTRUM, 2022)。2022年第46週時点で、XBB系統とその亜系統(以下XBB系統)は全世界で検出された株の5.0%を占め、前週から割合が上昇している(WHO, 2022a)。シンガポールにおいては、9月末からXBB系統の占める割合が上昇したが、10月中旬以降下降し、同時期よりBQ.1系統の占める割合が上昇傾向にある(outbreak. info, 2022)。感染者数、入院者数は10月に増加した一方で、重症者数は横ばいであり、10月後半以降シンガポールの感染者数は減少傾向にある。インドとバングラデシュではXBB系統が主流となっているが、感染者数の増加は見られていない(outbreak. info, 2022、Our World in Data, 2022)。日本では12月7日時点でXBB系統が検疫で27件、国内で94件検出されており(GISAID, 2022)、民間検査機関の検体に基づくゲノムサーベイランスでは、第43週(10月24日~30日)は0.25%、第46週(11月14日~20日)は0.39%とおおむね横ばいで推移しており(国立感染症研究所, 2022b、国立感染症研究所, 2022c)、第50週(12月5日~11日)においては2%を占めると推定されている(国立感染症研究所, 2022d)。検疫での検体陽性者の滞在国は大部分が南アジア、東南アジアであり、世界的な検出状況を反映しているものと考えられる。
  •   XBB系統はスパイクタンパク質の受容体結合部位中のR346T、N460K、F486Sなどのアミノ酸変異を有し、中和抗体からの逃避能が上昇する可能性が示唆されている。また、実験的にも中和抗体からの逃避能が高いこと(Cao Y. et al., 2022b)や、従来株、オミクロン対応2価の両ワクチンの感染予防効果が低下する可能性が示唆されている(Kurhade C. et al.,2022)一方で、オミクロン対応2価ワクチンは従来株ワクチンよりも免疫原性が高い可能性が示唆されている(Zou J. et al., 2022)。ただし、いずれも査読を受けていないプレプリント論文であることに注意が必要である。また、感染者数増加の優位性もBA.2.75系統やBA.4.6系統と比較して高い可能性があるものの、XBB系統が占める割合の上昇と感染者数の増加との明確な関連性はなく、臨床的な所見からは、重症度の上昇は示唆されていない(WHO, 2022c)。再感染のリスクが高まる可能性も示唆されているが、オミクロン既感染者の再感染についての証拠はない(WHO, 2022c)。また、治療薬やワクチンの有効性について、疫学的な評価はされていない。国内外での報告数が少ないことから、今後の国内外での検出状況、感染者数や重症者数の推移を注視する必要がある。

 BS.1系統について

  •   検疫において、2022年8月下旬に日本に到着した入国者3名の陽性検体から、BA.2.3.2系統(BA.2系統の亜系統)が起源と考えられるが、これまでに報告のない変異を有するウイルスが検出され、BS.1系統と命名された(GitHub, 2022)。当該3名の陽性者の行動歴にはいずれもベトナムへの渡航があったが到着日および到着空港は異なっており、明らかな疫学リンクは確認できない。また、BS.1系統に変異が加わったBS.1.1系統、BS.1.2系統が報告されている(Cov-lineages.org, 2022)。12月7日時点でBS.1系統(亜系統を含む)は検疫で39件、国内で42件の報告がある(GISAID, 2022)。また、12月1日時点で日本以外にオーストラリア、ベトナム、韓国など計24か国からGISAIDに323件が登録されている(covSPECTRUM, 2022)。
  •   BS.1系統はBA.2.3.2系統の有する変異に加え、スパイクタンパク質に3つのアミノ酸の挿入、Y144欠失、R346T、L452R、N460R、G476S、R493Q (reversion)およびS640Fの特異的変異を有している。これらスパイクタンパク質の変異による抗体結合部位への構造の影響に伴い、中和抗体からの逃避能の上昇が示唆される。また、ORF6に27266〜27300欠失によるフレームシフトが認められることから、自然免疫応答への影響が示唆される。ただし、国内外での報告数が少ないことから、感染者数増加の優位性、重症度、治療薬やワクチンの有効性への影響についての明らかな知見はなく、今後の国内外での検出状況、感染者数や重症者数の推移を注視する必要がある。

 

参考 主な変異株の各国における位置付け(2022 年 12月12日時点)

系統名

感染研

WHO*

ECDC

UKHSA

CDC

B.1.1.529系統

 (オミクロン)

VOC

currently circulating VOC

※BA.5(+R346X or +K444X or +V445X or +N450D or  +N460X), BA.2.75, BA.4.6, XBB, BA.2.3.20: Omicron subvariants under monitoring

VOC

※BA.2, BA.4, BA.5: VOC

BA.2.75, BQ.1, XBB: VOI

BA.2.3.20, BF.7, XBC注1): VUM

BA.1, BA.3, BA.2+L452X, XAK、B.1.1.529+R346X, B.1.1.259+K444X,N460X, B.1.1.529+N460X,F490X: de-escalated variant

VOC

※BA.1, BA.2, BA.4, BA.5:  VOC

BA2.12.1, BA.2.75, BA.4.6, XE, BQ.1, XBB: Variants
BA.2.75.2,  BQ.1.1, BA.5.2.35, BN.1,  XBC注1): signals in monitoring

VOC


VOC: variant of concern(懸念される変異株)、Omicron subvariants under monitoring(監視下のオミクロンの亜系統)、VOI: variant of interest (注目すべき変異株)、VUM: variant under monitoring(監視下の変異株)、de-escalated variants(警戒解除した変異株)、signals in monitoring (監視中のシグナル)


注1)
オミクロンとデルタの組換え体

 

 

 引用文献

 

注意事項

  •   迅速な情報共有を目的とした資料であり、内容や見解は情勢の変化によって変わる可能性がある。

 

更新履歴

第 23 報 2022/12/16  9:00時点

第 22 報 2022/11/18  9:00時点

第 21 報 2022/10/21  9:00時点

第 20 報 2022/09/08  9:00時点

第 19 報 2022/07/27  9:00時点

第 18 報 2022/07/01  9:00時点

第 17 報 2022/06/03  9:00時点

第 16 報 2022/04/26  9:00時点

第 15 報 2022/03/28 9:00 時点 注)タイトル変更

          「感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される SARS-CoV-2 の変異株について」

第 14 報 2021/10/28  12:00 時点

第 13 報 2021/08/28  12:00 時点

第 12 報 2021/07/31  12:00 時点

第 11 報 2021/07/17  12:00 時点

第 10 報 2021/07/06  18:00 時点

第  9報 2021/06/11 10:00 時点

第  8報 2021/04/06 17:00 時点

第  7報 2021/03/03 14:00 時点

第  6報 2021/02/12 18:00 時点

第  5報 2021/01/25 18:00 時点 注)タイトル変更

「感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される SARS-CoV-2 の新規変異株について」

第  4報 2021/01/02 15:00 時点

第  3報 2020/12/28 14:00 時点

第  2報 2020/12/25 20:00 時点 注)第1報からタイトル変更

「感染性の増加が懸念される SARS-CoV-2 新規変異株について」

第 1報 2020/12/22 16:00 時点 「英国における新規変異株(VUI-202012/01)の検出について」

 

2022年12月13日

 
 
端 緒

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンの開発は未曾有のスピードで進み、ファイザー社製およびモデルナ社製のmRNAワクチンは大規模なランダム化比較試験で高い有効性(vaccine efficacy)が示された1-3。国内においても、国立感染症研究所にて、複数の医療機関や民間検査会社の協力のもとで、発熱外来等で新型コロナウイルスの検査を受ける者を対象として、症例対照研究(test-negative design)を実施し、実社会における有効性(vaccine effectiveness;発症予防効果)を検討している。これまでの暫定報告においては、B.1.1.7系統(アルファ)およびB.1.617.2系統(デルタ)に対して、高い有効性を示すことが確認された一方で4-5、2021年末に出現したオミクロンにおいては、発症予防効果が一定程度みられたものの、相対的に低く、免疫の減衰も示唆された6-8。こうした中で、ファイザー社およびモデルナ社は、オミクロンの亜系統であるBA.1およびBA.4-5にそれぞれ対応した2種類のオミクロン対応2価ワクチン(以下、オミクロン対応2価ワクチン(BA.1)およびオミクロン対応2価ワクチン(BA.4-5))を開発し、国内においてこれらが承認され、接種が開始された9-10。ファイザー社製およびモデルナ社製のオミクロン対応2価ワクチン(BA.1)は9月20日に、ファイザー社製のオミクロン対応2価ワクチン(BA.4-5)は10月13日に、モデルナ社製のオミクロン対応2価ワクチン(BA.4-5)は11月28日に、それぞれ接種が開始されている9-10。そこで今回は、2価ワクチンの接種が開始された9月20日から11月30日の調査における暫定結果を報告する。なお同時期には、関東地方において、BA.5が75-90%以上を占めるとされた11

掲載日:2022年12月15日

第110回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年12月14日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第110回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版(準備中)

感染状況等の概要

全国の新規感染者数(報告日別)は、直近の1週間では10万人あたり約716人となり、 今週先週比は1.20と増加傾向にあり、一部の地域では増加幅が大きくなるなど地域差がみられる。
今後の免疫の減衰や変異株の置き換わりの状況、また、年末年始における接触機会の増加等が感染状況に与える影響に注意が必要。

病床使用率は全国的に上昇傾向にあり、重症者数と死亡者数は増加傾向にある。

掲載日:2022年12月8日

第109回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年12月7日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第109回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版(準備中)

感染状況等の概要

全国の新規感染者数(報告日別)は、直近の1週間では10万人あたり約595人となり、 今週先週比は1.06と増加速度が低下し、足元では横ばいとなっているものの、一部の地域では増加傾向が継続するなど地域差がみられる。
今後の免疫の減衰や変異株の置き換わりの状況、また、年末に向けて社会経済活動の活発化による接触機会の増加等が感染状況に与える影響に注意が必要。

病床使用率は全国的に上昇傾向にあり、重症者数と死亡者数は足元で横ばいとなっている。

掲載日:2022年12月1日

第108回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年11月30日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第108回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版(準備中)

感染状況等の概要

全国の新規感染者数(報告日別)は、直近の1週間では10万人あたり約564人となり、 今週先週比は1.15と増加が継続しているが、地域差もみられる。
今後の免疫の減衰や変異株の置き換わりの状況、また、年末に向けて社会経済活動の活発化による接触機会の増加等が感染状況に与える影響に注意が必要。

病床使用率は全国的に上昇傾向にあり、重症者数と死亡者数も増加傾向にある。

IASR-logo

下水中から検出される新型コロナウイルス変異株の塩基配列解析について

(IASR Vol. 43 p264-265: 2022年11月号)
 
はじめに

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はRNAウイルスであり変異株の出現は避けられないことから, 新たに出現することが想定されるウイルス株の感染力, 病原性, ワクチンの効果等を評価するために, 迅速に変異株を検出できる手法が求められている。下水には上気道, 糞便由来のSARS-CoV-2が含まれているため, 下水中のウイルスゲノム検出事例が国内外で報告されている。福島県では2013年度よりポリオ環境水サーベイランス(感染症流行予測調査事業への協力)を実施しており, 本調査方法は腸管系ウイルスの監視に優れた感度特性を持つ。本報告では, 下水中のSARS-CoV-2遺伝子について, サンガーシーケンス法によりレセプター結合部位の解析を試み, 臨床由来検体の解析結果と比較を行った。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan