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掲載日:2022年4月7日
第79回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年4月6日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第79回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。
全国の新規感染者数(報告日別)は、直近の1週間では10万人あたり約259で、今週先週比が1.08と増加傾向となっており、今後の動向に注意が必要。また、年代別の新規感染者数は全ての年代で増加傾向に転じており、特に10-20代の増加が顕著。
全国の新規感染者数の増加傾向に伴い、療養者数も増加傾向に転じている。一方、これまでの新規感染者数減少の動きに伴い、重症者数及び死亡者数は減少が継続している。
掲載日:2022年3月31日
第78回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年3月23日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第78回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。
全国の新規感染者数(報告日別)は、直近の1週間では10万人あたり約240で、今週先週比が1.04となり、足下で増加傾向となっているが、先週の連休の影響もあるため今後の動向に注意が必要。
全国のこれまでの新規感染者数減少の動きに伴い、療養者数、重症者数及び死亡者数は減少が継続している。
国立感染症研究所
2022年3月28日9:00時点
変異株の再分類
デルタ株とオミクロン株の組換え体について
表1 国立感染症研究所による国内における変異株の分類(2022年3月28日時点)
分類 |
定義 |
主な対応 |
該当 変異株 |
懸念される変異株 (VOC; Variants of Concern) |
公衆衛生への影響が大きい感染・伝播性、毒力*、及び治療・ワクチン効果の変化が明らかになった変異株 |
対応 ・週単位で検出数を公表(IDWR) ・ゲノムサーベイランス(国内・検疫)で監視 ・必要に応じて変異株PCR検査で監視 ・積極的疫学調査 |
デルタ株 オミクロン株 |
注目すべき変異株 (VOI; Variant of Interest) |
公衆衛生への影響が見込まれる感染・伝播性、毒力、及び治療・ワクチン効果や診断に影響がある可能性がある、又は確実な変異株で、国内侵入・増加の兆候やリスクを認めるもの(以下、例) ・検疫での一定数の検知 ・渡航例等と無関係な国内での検出 ・国内でのクラスター連鎖 ・日本との往来が多い国での急速な増加 |
警戒 ・週単位で検出数を公表(IDWR) ・ゲノムサーベイランス(国内・検疫)で監視 ・積極的疫学調査 ・必要に応じて変異株PCR検査の準備
|
該当なし |
監視下の変異株 (VUM; Variants Under Monitoring) |
公衆衛生への影響が見込まれる感染・伝播性、毒力、及び診断・治療・ワクチン効果に影響がある可能性がある変異を有する変異株 また、VOCやVOIに分類された変異株であっても、以下のような状況では、本分類に一定期間位置付ける ・世界的に検出数が著しく減少 ・追加的な疫学的な影響なし ・国内・検疫等での検出が継続的に僅か ・特に懸念される形質変化なし |
監視 ・発生状況や基本的性状の情 報収集 ・ゲノムサーベイランス(国内・検疫)で監視 ・(VOC/VOIからVUMに移行後国内発生が継続するものは)週単位で検出数を公表 (IDWR)
|
アルファ株 ベータ株 ガンマ株
|
* 毒力virulence: 病原体が引き起こす感染症の重症度の強さ
IDWR: 感染症発生動向調査週報
参考 主な変異株の各国における位置付け(2022年3月28日時点)
系統名 |
感染研 |
WHO* |
ECDC |
英国HSA |
CDC |
B.1.617.2系統 (デルタ株) |
VOC |
currently circulating VOC |
VOC |
VOC |
VOC |
B.1.1.529系統 (オミクロン株) |
VOC |
currently circulating VOC |
VOC |
VOC |
VOC |
B.1.1.7系統 (アルファ株) |
VUM |
previously circulating VOC |
De-escalated variant |
VOC |
VBM |
B.1.351系統 (ベータ株) |
VOC →VUM |
previously circulating VOC |
VOC |
International VOC |
VBM |
P.1系統 (ガンマ株) |
VOC →VUM |
previously circulating VOC |
VOC |
VOC |
VBM |
B.1.617.1系統 (旧カッパ株) |
VUM →なし |
previously circulating VOI |
De-escalated variant |
なし |
VBM |
C.37系統 (ラムダ株) |
VUM →なし |
previously circulating VOI |
De-escalated variant |
なし |
なし |
B.1.621系統 (ミュー株) |
VUM →なし |
previously circulating VOI |
De-escalated variant |
International VUI |
VBM |
AY.4.2系統 (デルタ株の |
VUM →なし |
なし |
De-escalated variant |
VUI |
なし |
VOC: Variant of Concern(懸念される変異株)、VOI: Variant of Interest(注目すべき変異株)、VUI:Variant under Investigation(調査中の変異株)、VUM: Variant under Monitoring(監視下の変異株)、VBM: Variant being Monitored(監視中の変異株)、De-escalated variant(警戒解除した変異株)
* WHOは2022年3月22日よりVOCとVOIについて、previously circulating(かつて流行していた)とcurrently circulating(現在流行中)の2種類に分けている。
引用文献
注意事項
更新履歴
第15報 2022/03/28 9:00 時点 注)タイトル変更
「感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念されるSARS-CoV-2の変異株について」
第14報 2021/10/28 12:00時点
第13報 2021/08/28 12:00 時点
第12報 2021/07/31 12:00 時点
第11報 2021/07/17 12:00 時点
第10報 2021/07/06 18:00時点
第 9報 2021/06/11 10:00時点
第 8報 2021/04/06 17:00 時点
第 7報 2021/03/03 14:00時点
第 6報 2021/02/12 18:00時点
第 5報 2021/01/25 18:00時点 注)タイトル変更
「感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念されるSARS-CoV-2の新規変異株について」
第 4報 2021/01/02 15:00時点
第 3報 2020/12/28 14:00時点
第 2報 2020/12/25 20:00時点 注)第1報からタイトル変更
「感染性の増加が懸念されるSARS-CoV-2新規変異株について」
第 1報 2020/12/22 16:00時点
「英国における新規変異株(VUI-202012/01)の検出について」
(IASR Vol. 43 p74-76: 2022年3月号)
我々はこれまでに2020年9月に県内の単科精神科病院において発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の集団感染事例とその対応, および血清疫学調査の結果を報告した1,2)。本稿では本調査の対象となった患者の精神科診断や治療の状況, COVID-19の重症化因子や重症度等の臨床情報をまとめた。併せてワクチン接種後にみられた発熱の状況について報告する。
続きを読む: 単科精神科病院の療養病棟で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)集団感染事例の血清疫学調査(第三報:臨床的背景)
(IASR Vol. 43 p76-77: 2022年3月号)
現在, 国内では新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン株スクリーニングの目的で, デルタ株に認められるL452R変異がオミクロン株では陰性となることを利用したPCR検査が実施されている1)。しかしながら, 当所におけるL452R変異検出PCR検査では, L452R変異判定不能となる検体の割合が多かった。一方, 2022年1月に, オミクロン株を検出できるPrimer/Probe G339D(SARS-CoV-2)が市販され, G339D変異検出PCR法を用いてオミクロン株のスクリーニングが可能になった。このため, 我々はSARS-CoV-2陽性検体を用いて, L452R変異PCR法とG339D変異PCR法によるオミクロン株のスクリーニングPCR法の検出感度を比較検討した。
国立感染症研究所
(掲載日:2022年3月28日)
人は、咳、くしゃみ、会話、歌、呼吸などの際に、鼻や口からさまざまな大きさや性状をもった粒子を空中に放出する[1-5]。粒子はその大きさや含まれる液体の量によって空中での振る舞いが異なる。液体を含んだ大きな粒子は、放出されてから数秒から数分以内に落下するが、小さな粒子や乾燥した粒子は、空中に数分から数時間にわたって浮遊する[2-5]。従来、これらの粒子については大きさや性状に応じて飛沫やエアロゾルと呼ばれてきた [4,5]。
SARS-CoV-2は、感染者の鼻や口から放出される感染性ウイルスを含む粒子に、感受性者が曝露されることで感染する。その経路は主に3つあり、①空中に浮遊するウイルスを含むエアロゾルを吸い込むこと(エアロゾル感染)、②ウイルスを含む飛沫が口、鼻、目などの露出した粘膜に付着すること(飛沫感染)、③ウイルスを含む飛沫を直接触ったか、ウイルスが付着したものの表面を触った手指で露出した粘膜を触ること(接触感染)、である[1,2]。
実際にどの経路で感染するのかは、感染者から放出される感染性ウイルスを含む粒子の量や環境条件によって決まり、必ずしも1つであるとは限らない。感染者が呼吸をすると粒子が放出され、大きな声を出したり、歌ったりすると、放出される粒子の量が増える[6-8]。また感染者との距離が近いほど(概ね1-2メートル以内)感染する可能性が高く、距離が遠いほど(概ね1-2メートル以上)感染する可能性は低くなる[1,2]。特に換気が悪い環境や密集した室内では、感染者から放出された感染性ウイルスを含む粒子が空中に漂う時間が長く、また距離も長くなる。こうした環境に感染者が一定時間滞在することで、感染者との距離が遠いにもかかわらず感染が発生した事例が国内外で報告されている[9-12]。
このようなSARS-CoV-2の感染が起こりやすい環境条件をわかりやすく説明したものが、「3つの密」と呼ばれる概念である[1,13,14]。
密閉:換気の悪い閉じられた環境
密集:狭い空間に多くの人が集まっている環境
密接:お互いの距離が近く、特に会話をしている環境
3つの条件に1つでも当てはまる環境に感染者と感受性者が滞在すると、感染が成立する可能性は高くなり、さらに3つの条件がそろうとより高くなる[1]。
なお、呼吸器感染症の感染経路については国際的に研究が進められており、これらの知見は今後更新される可能性がある。
掲載日:2022年3月24日
第77回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年3月23日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第77回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。
全国の新規感染者数(報告日別)は、今週先週比が0.79となり、直近の1週間では10万人あたり約232と減少が継続しているが、連休による数値への影響に注意が必要。 また、年代別の新規感染者数は全ての年代で減少が継続している。
重点措置区域の適用が解除された18都道府県すべてにおいて、今週先週比が1以下となっている。
全国の新規感染者数減少の動きに伴い、療養者数、重症者数及び死亡者数は減少が継続している。
国立感染症研究所
(掲載日:2022年3月20日)
2022年2月10日に開催された厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(1)で、5~11歳の小児に対しても予防接種法に基づく特例臨時接種として実施される方針が決まり(努力義務の適用は除外)、2022年2月21日の省令改正で、5~11歳用のファイザー製新型コロナワクチンの接種が可能となりました。2022年3月13日現在、国内ではファイザー製(12歳以上用、5~11歳用)、武田/モデルナ製、アストラゼネカ製の4種類の新型コロナワクチン(以下、ワクチン)が使用されています。 2021年12月1日から、18歳以上の者を対象としてファイザー製ワクチンによる追加接種(3回目接種)が始まり、2021年12月17日からは、武田/モデルナ製ワクチンも追加接種(3回目接種)可能となりました。2022年3月13日現在、2種類のワクチンが追加接種に使用されています。初回接種で使用したワクチンとは異なる種類のワクチンで追加接種すること(交互接種)も可能です。
2022年3月11日現在の国内での総接種回数は2億3,805万214回で、このうち高齢者( 65歳以上 )は9,033万7,971回、職域接種は1,977万3,546回、小児は2万3,158回でした。2022年3月10日時点の1回以上接種率は全人口(1億1,461万7,716人: 令和3年1月1日現在の住民基本台帳に基づくもの )の80.4%、2回接種完了率は79.3%、3回接種完了率は28.3%でした。また、高齢者の1回以上接種率は、65歳以上人口(3,576万7,994 人: 令和3年1月1日現在の住民基本台帳に基づくもの)の92.7%、2回接種完了率は92.4%、3回接種完了率は67.4%でした。
2022年3月7日公表時点の年代別接種回数別被接種者数と接種率/接種完了率( 図1 )を示します。また、新規感染者数と累積接種割合についてまとめました( 図2 )。
図1 年代別接種回数別被接種者数・接種率/接種完了率(首相官邸ホームページ公表数値より作図):2022年 3月 7日公表時点
注)被接種者の年齢分布は、ワクチン接種記録システム(VRS)に報告済みのデータのみにより把握可能なため、接種率の算出においては、VRSへ報告された、一般接種(高齢者を含む)と先行接種対象者(接種券付き予診票で接種を行った優先接種者)の合計回数が使用されています。使用回数には、首相官邸HPで公表している総接種回数のうち、職域接種及び先行接種対象者のVRS未入力分である約100万回分程度が含まれていません。年齢階級別人口は、総務省が公表している「令和3年住民基本台帳年齢階級別人口(市区町村別)」のうち、各市区町村の性別及び年代階級の数字を集計したものを利用し、12~19歳人口は10~14歳人口を5分の3したものに、15~19歳人口を加えたものが使用されています。
図2 日本_新規感染者数および新規死亡者数と累積接種割合の推移 [データ範囲:2020年1月22日~2022年3月7日]下記データより作図.Roser M, Ritchie H, Ortiz-Ospina E and Hasell J. (2020) - "Coronavirus Pandemic (COVID-19)". Published online at OurWorldInData.org. Retrieved from: 'https://ourworldindata.org/coronavirus' [Online Resource](閲覧日2022年3月9日)
参考文献
今回は、下記の内容について、最近のトピックスをまとめました。
新型コロナワクチンについて ( 2022 年3月13日現在 )
2022年3月16日9:00時点
国立感染症研究所
概要
WHOは2021年11月24日にSARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統を監視下の変異株(Variant Under Monitoring; VUM)に分類したが(WHO. Tracking SARS-CoV-2 variants)、同年11月26日にウイルス特性の変化の可能性を考慮し、「オミクロン株」と命名し、懸念される変異株(Variant of Concern; VOC)に位置づけを変更した(WHO. Classification of Omicron (B.1.1.529) )。
2021年11月26日、国立感染症研究所は、PANGO系統でB.1.1.529系統に分類される変異株を、感染・伝播性、抗原性の変化等を踏まえた評価に基づき、注目すべき変異株(Variant of Interest; VOI)として位置づけ、監視体制の強化を開始した。2021年11月28日、国外における情報と国内のリスク評価の更新に基づき、B.1.1.529 系統(オミクロン株*)を、懸念される変異株(VOC)に位置付けを変更した。
* B.1.1.529 系統の下位系統であるBA.1系統 BA.2系統, BA.3系統及び更にその下位の亜系統(BA.1.1を含む)が含まれる。
表 SARS-CoV-2 B.1.1.529系統(オミクロン株)の概要
PANGO 系統名 |
日本 感染研 |
WHO |
EU ECDC |
英国 UKHSA |
米国 CDC |
スパイクタンパク質の主な変異等(全てのオミクロン株で認めるわけではない) |
B.1.1.529 BA.x
|
VOC |
VOC |
VOC |
VOC (BA.2系統はVUI、BA.3系統はSignals currently under monitoring and investigationに分類) |
VOC
|
BA.1/BA.2系統共に主流:G142D, G339D, S373P, S375F, K417N, N440K, S477N, T478K, E484A, Q493R, Q498R, N501Y, Y505H, D614G, H665Y, N679K, P681H, N764K, D796Y, Q954H, N969K
BA.1系統で主流: A67V, del69/70, T95I, del143/145, N211I, del212, S371L, G446S, G496S, T547K, N856K, L981F (BA.1.1ではR346K)
BA.2系統で主流: T19I, L24S, del25/27, V213G, S371F, T376A, D405N, R408S |
オミクロン株について
B.1.1.529系統の下位系統としてBA.1系統、BA.2系統、BA.3系統が位置付けられており、現在の世界的な主流はBA.1系統である。さらにこれらの系統の下位に複数の亜系統が分類されている(cov-lineages.org)。BA.1系統とBA.2系統では、共通する変異が多いが、それぞれの系統に特異的な変異や欠失が複数ある。海外では、異なる系統のオミクロン株同士、デルタ株とオミクロン株の組換えウイルスの散発的な発生が報告されており、WHOよりモニタリングの対象として指定されたものもある。感染者の症状等の形質の違いが生じているという報告はまだないが、注視が必要である(WHO. Tracking SARS-CoV-2 variants)。
世界の多くの地域において、オミクロン株による感染者(以下オミクロン株感染者)の新規報告数は減少に転じた。一方で、西太平洋地域では報告数の増加が継続している。オミクロン株の下位系統(BA.1系統、BA.1.1系統、BA.2系統ならびにBA.3系統)に関し、現状では世界的にBA.1系統(BA.1.1系統を含む)が最も多くを占めていると推定される。しかし、多くの地域でBA.2系統の占める割合が増加し、いくつかの国でBA.2系統が優勢となっていることが報告されている。また、少数ではあるが、複数の国でBA.1系統感染後のBA.2系統への再感染例が報告されている。
日本での発生状況
国内では全てオミクロン株に置き換わっている。当初BA.1系統とBA.1.1系統の海外からの流入がともにあったものの、その後BA.1.1系統が多数を占めるに至り、現在も主流となっている。BA.2系統は、2021年第52週に国内で初めて検出された。国内では2022年第4週から5週間に全国で検出されたオミクロン株のうち、BA.2系統は1%であり、週毎の割合は増加傾向である。また、東京都で実施している変異株PCR検査(後段の検査診断の項を参照のこと)によると、「BA.2系統」疑いの割合は、約12%(2/22-2/28)と報告されている。なお、ゲノム解析の報告遅れがあるので、この数値は暫定値である。また、地域によって各系統が占める割合は異なる可能性がある。
ウイルスの性状・臨床像・疫学に関する評価についての知見
国内外でオミクロン株では、これまでの流行株と比べてより短い潜伏期間(中央値2.9日(95%CI 2.6-3.2)(国立感染症研究所. SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)の潜伏期間の推定:暫定報告)と発症間隔(中央値2.6日(95%CI 2.2-3.1)(国立感染症研究所. SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)の発症間隔の推定:暫定報告)が報告されている。
海外ではBA.2系統に関して2次感染率がBA.1系統に比べて高いこと、短い倍加時間が報告された。これらの所見は、BA.1系統に比べてBA.2系統の感染者数増加における優位性に寄与している可能性がある。国内でもBA.2系統の割合の増加が観察されており、感染者数の増加(減少)速度に影響を与える可能性がある。
国内外の報告からは、ワクチン2回接種による発症予防効果がデルタ株の感染と比較してBA.1系統への感染では低下するが、3回目接種(ブースター接種)によりBA.1系統感染による発症予防効果が一時的に高まることが示されている。感染予防効果についても、同様のブースター接種による効果が報告されている。ただし、海外の報告では、3回接種後の発症予防効果が数ヶ月で減衰するが、一定程度は保たれることが示唆されている。長期的にどのように推移するかは不明である。
重症化予防効果(入院および死亡予防効果)も、BA.1系統では、2回接種者においてデルタ株と比較して一定程度の低下を認めるものの、発症予防効果の低下の程度と比較すると保たれていることが報告されている。さらに、重症化予防効果も、3回目接種(ブースター接種)により、短中期的には効果が高まることが報告されている。BA.2系統においても、発症予防効果は大きな違いはないとする英国からの報告があり、実験室レベルでのデータもこれを支持している。
オミクロン株においては、SARS-CoV-2に対するモノクローナル抗体を用いた抗体医薬品の効果への影響も懸念されている。国内外のin vitroの評価で、BA.1系統の分離ウイルスに対して、カシリビマブ・イムデビマブ(ロナプリーブ)は中和活性が著しく低下している一方、(ゼビュディ)に対しては中和活性が一定程度維持されていた。BA.2系統の分離ウイルスに対しては、BA.1系統と比較して、カシリビマブ・イムデビマブ(ロナプリーブ)の中和活性は若干高い一方、ソトロビマブ(ゼビュディ)に対しては若干の低下を認めた。BA.2系統のハムスターへの感染実験においては、カシリビマブ・イムデビマブ(ロナプリーブ)、ソトロビマブ(ゼビュディ)により肺におけるウイルス量が低下したという報告がある。ただし、これらの報告はin vitroや動物モデルでの評価であり、解釈に注意が必要であり、臨床的な評価についての知見の蓄積が待たれる。
なお、in vitroの評価では、BA.1系統、BA.2系統いずれに対しても、レムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレビルはいずれも感受性を有していた。
第8報までの報告に加えて、以下の知見が新たに報告された。
デルタ株と比較してオミクロン株では、総じて重症化リスクの低下が示唆されているが、ワクチン未接種、基礎疾患等の重症化リスク因子を有する場合は、ウイルス性肺炎や基礎疾患の悪化などの要因により、死亡の転帰をとり得る。ただし、国内の重症例および死亡例は高齢者が多く、高齢者において感染者が大幅に増加することで相対的な重症化リスクの低下分が相殺される可能性に注意する必要がある。また、重症化や死亡の転機を確認するには時間がかかることを踏まえた知見の集積が必要である。さらに、小児での評価についても知見の集積が必要である。BA.2系統について、重症化・死亡のリスクが増加するという報告はないが、引き続き知見の集積が必要である。
オミクロン株の病原性についての実験科学的な知見については、BA.1系統ウイルスとマウスおよびハムスターを用いた動物モデルおよびex vivoでの評価に関する論文報告がある。いずれも、オミクロン株のBA.1系統では従来株に比べて肺組織への感染性と病原性が低下していることを示唆している。ただし、これらの報告はあくまで動物モデルや細胞・組織レベルでの評価であり、ヒトに対するオミクロン株病原性とは必ずしも相関しない可能性があることに注意する必要がある。また、BA.2系統ウイルスの病原性に関する実験科学的な知見については、臨床検体から分離されたウイルス株を用いた解析 (Kawaoka et al.) と、従来株のウイルスにBA.2系統のスパイクタンパク質のみを組換えたキメラウイルスを用いた解析 (Yamasoba et al.) が報告されている。前者ではBA.2系統の病原性はBA.1系統と同程度であったが、後者ではBA.2系統のスパイクタンパク質を持つキメラウイルスの方がBA.1系統のスパイクタンパク質を持つキメラウイルスよりも高い病原性を示しており、実験系により相反する結果が報告されている。前者の結果については、分離ウイルス1株で得られた結果でありBA.2系統のウイルス全体の性質を反映しているのかについては、慎重な判断が必要である。また、後者の結果についても、スパイクタンパク質の性質のみを評価した実験の結果であり、BA.2系統のウイルスそのものの性質を反映しているのかについては、慎重な判断が必要となる。いずれの実験系についても更なる知見の集積が望まれる。
基本的な感染対策の推奨
個人の基本的な感染予防策としては、変異株であっても、従来と同様に、3密の回避、適切なマスクの着用、手洗い、換気などの徹底が推奨される。
参考文献
https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2484-idsc/10969-covid19-72.html
注意事項
更新履歴
第9報 2022/3/16 9:00時点
第8報 2022/2/16 9:00時点(2022/3/18 一部修正)
第7報 2022/1/26 9:00時点
第6報 2022/1/13 9:00時点(2022/1/14, 1/20, 1/25 一部修正)
第5報 2021/12/28 9:30時点(2021/12/31 一部修正)
第4報 2021/12/15 19:00時点
第3報 2021/12/8
第2報 2021/11/28
第1報 2021/11/26
広島県では2021年12月末より新型コロナウイルス感染症(COVID-19)症例が増加し、2022年1月下旬に1週間の新規症例報告者数が人口10万当たり300を超えた。さらに、重症例・死亡例の報告数も増加した。また、それまでの流行株であるB.1.617.2系統の変異株(デルタ株)からB.1.1.529系統の変異株(オミクロン株)への急速な置き換わりも確認され、1月4日時点では、県内で実施されたL452R変異判定PCR検査におけるL452(L452R変異陰性)と判定された検体の割合は、約8割であった。本調査は、オミクロン株流行にともなう広島県のCOVID-19重症例・死亡例の全体像を把握することを目的に実施した。