国立感染症研究所

新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 関連情報ページ

(このページでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 関連の記事を、掲載日が新しい順に表示しています)

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新型コロナウイルスオミクロン株によると推定された院内クラスターにおける医療従事者を対象としたスクリーニング検査

(IASR Vol. 43 p238-240: 2022年10月号)

 

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン株(以下, オミクロン株)が優勢となった2022年1月に発生した高知市内の急性期病院(A病院)におけるクラスターで, 職員へのスクリーニング検査で得られた知見を報告する。

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BA.5系統とBA.2系統の組換え体と推察された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)株の検出について

(IASR Vol. 43 p240-241: 2022年10月号)

 

 愛知県衛生研究所(当所)では国立感染症研究所(感染研)の方法1)にのっとり, SARS-CoV-2のゲノム解析を実施している。今回, BA.5.2.1系統とBA.2.9系統の組換え体と考えられる2株を検出したので報告する。

掲載日:2022年10月24日

第103回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年10月20日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第103回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版(準備中)

感染状況等の概要

全国の新規感染者数(報告日別)は、直近の1週間では10万人あたり約197人となり、 今週先週比は1.35と増加に転じているが、今後の増加速度及び増加が継続するかについて注視する必要がある。
また、今後、社会経済活動の活発化による接触機会の増加等が感染状況に与える影響に注意が必要。

一方、病床使用率は総じて低下傾向にあり、低い水準にある。また、重症者数や死亡者数は下げ止まりとなっている。

 

 

国立感染症研究所

2022年 10月21日 9:00 時点

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変異株の概況

  •   現在、流行する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)変異株は、第20報時点と同様に、B.1.1.529系統とその亜系統(オミクロン)注)が支配的な状況が世界的に継続している。世界でゲノム解析され GISAID データベースに登録されたウイルスの99.9%をオミクロンが占め、その他の系統はほとんど検出されていない(WHO, 2022a)。オミクロンの中では多くの亜系統が発生しているが、BA.5系統が76.2%、BA.4系統が7.0%、BA.2系統が3.9%(いずれも亜系統を含む)と、引き続き世界的にBA.5系統が主流となっており(WHO, 2022a)、日本国内でも2022年7月頃にBA.2系統からBA.5系統に置き換わりが進み、BA.5系統が主流がとなっている。また、国内外でオミクロンの亜系統間のさまざまな組換え体も報告されている。世界保健機関(WHO)は、これらのB.1.1.529系統とその亜系統および組換え体を全て含めて「オミクロン」と総称する一方、いくつかの亜系統および組換え体(BA.2.3.20、BA.4.6、BA.2.75、BJ.1、XBBの各系統及び、BA.5系統にN450D変異もしくはR346/K444/V445/N460のいずれかの箇所に変異を有するもの)を「監視下のオミクロンの亜系統(Omicron subvariants under monitoring)」としている。
  •   2022年5月に米国で初めて報告されたBA.4.6系統(BA.4系統の亜系統)、2022年6月にインドで初めて報告されたBA.2.75系統(BA.2系統の亜系統)をはじめ、特徴的なスパイクタンパク質の変異がみられ、ワクチン接種や感染免疫による中和抗体からの逃避や、感染者数増加の優位性が示唆される亜系統が複数報告されている。局所的に優位な増加をみせる亜系統も報告されているが、特定の変異株が世界的に優勢となる兆候は見られない。これらの変異株の今後の動向に関する一致した見解は得られておらず、引き続き国内外での動向の注視、知見の収集とともに、国内でのゲノムサーベイランスを継続していく必要がある。

注) VariantのPango系統やNextstrainクレードといった分類が複雑で覚えにくく、初めて報告された地名などが呼称として使用されていることが、差別や偏見につながることも懸念して、2021年5月より、WHOは代表的なvariantに対してギリシャ文字の呼称を定めている。既報において、”variant”の訳語として「変異株」、WHOが呼称を定めたvariantについてそれを用いて「〇〇株」と称してきた(例:B.1.1.7系統=アルファ株、B.1.1.529系統=オミクロン株)。しかし、B.1.1.529系統が主流となって以降、亜系統が広く分岐し、さらにWHOが用いる呼称で総称される系統・亜系統の抗原性等の性質が多様化しており、遺伝的に同一、又はほぼ均一なウイルスの集合体を示す「株」を、WHOが用いる呼称に対応して用いることが適さなくなってきている。そのため、第21報以降、本文書においてはWHOが呼称を定めた各variantについて「アルファ」「オミクロン」のように表現することとした。
なお、「〇〇株」は一般に広く使用されている用語となっており、通称として引き続き用いることを妨げるものではない。

 

 

BA.5系統について

  •   BA.1系統、BA.2系統、BA.3系統に加え、2022年1月にBA.4系統が、2月にBA.5系統がいずれも南アフリカ共和国で検出された。以降BA.5系統は世界的に検出数が増加し、2022年37週(9月12日~18日)時点で BA.5系統とその亜系統が全世界で検出された株の76.2%を占め、主流となっている (WHO, 2022a)。
  •   国内では2022年6月以降、BA.2系統からBA.5系統への置き換わりが進行した。BA.5系統は2022年第17週(4月18日~24日)に日本から初めてGISAIDに登録され、第27週(7月4日~10日)に50%を、第28週(7月11日~17日)に75%を、30週(7月25日~31日)に90%を超えた(covSPECTRUM, 2022)。国内民間検査機関2社に集められた週800検体のゲノム解析結果を用いたゲノムサーベイランスでも、2022年22週(5月23日~29日)に初めて検出されたのち、第27週に50%を、第28週に75%を、30週に90%を超えた (国立感染症研究所, 2022)。

 

BA.2.75系統、BA.4.6系統について

  •   2022年6月にインドから報告されたBA.2.75系統は10月10日時点で、GISAIDに59か国から15,817件(BA.2.75系統の亜系統を含む)が登録されており、日本でも10月17日時点で検疫で129件、国内で137件のBA.2.75系統(亜系統含む)の登録がある (GISAID, 2022)。BA.2系統と比較して中和抗体からの逃避能が上昇しているとの報告がある(Cao Y. et al., 2022a)が、査読を受けていないプレプリント論文であることに注意が必要である。インドでの検出状況からBA.2系統、BA.5系統に対する感染者数増加の優位性が示唆されたが、シンガポールではBA.5系統からBA.2.75系統への置き換わりが進んでいた中、別の変異株への置き換わりが進んでいる(covSPECTRUM, 2022)。
  •   2022年5月に米国から報告されたBA.4.6系統は10月10日時点で、GISAIDに79か国から36,818件が登録されており(covSPECTRUM, 2022)、日本では10月17日時点で検疫で12件、国内で136件のBA.4.6系統(亜系統含む)が登録されている (GISAID, 2022)。BA.4系統と比較して、ワクチン接種による中和抗体からの逃避が示唆され、ヒト血清を用いた抗原性の評価では、BA.4.6系統の中和活性はBA.4/BA.5系統に比べて2.4~2.6倍低下することが示唆されている(Jian F, 2022)。米国では6月以降感染者数の増加とともにBA.4.6系統の割合が上昇したが、8月以降感染者数は減少し、BA.4.6系統の割合はおおむね横ばいとなっている (CDC, 2022a)。そのほか、カナダ、英国でBA.4.6系統の割合が上昇傾向にあり(covSPECTRUM. 2022)、いずれも感染者数は9月以降微増しているが(Our World in Data, 2022)、BA.4.6系統の割合の増加による感染者数や死亡者数への影響は現時点では不明である。
  •   BA.2.75系統、BA.4.6系統ともに、他の系統と比較した感染・伝播性、重症度に関する明らかな知見はなく、疫学的な評価については今後の各国での検出状況、感染者数や重症者数の推移を注視する必要がある。

 

オミクロンの新規亜系統の世界的な発生状況について

  •   世界各地でBA.2系統やBA.5系統を起源とする亜系統が多数発生し、それらの有するスパイクタンパク質の変異から、中和抗体からの逃避能の上昇が懸念されている。
    米国や欧州ではBA.5.3系統の亜系統であるBQ.1系統とBQ.1.1系統や、BA.2.3.20系統が、アジアではBQ.1系統とBQ.1.1系統や、BJ.1系統(BA.2.10系統の亜系統)とBM.1.1.1系統(BA.2.75.3系統の亜系統)の組換え体であるXBB系統、BJ.1系統、BA.2.3.20系統が、各地で主流となっている系統に比較して、感染者数増加の優位性を見せている(covSPECTRUM, 2022)。一方で、これらの系統の割合の上昇傾向は地域によって異なっており、オミクロンの中で特定の亜系統が世界的に優位となる傾向は見られない。
  •   これらの亜系統が有する変異はR346、K444、V445、G446、N450、L452、N460、F486、F490、R493といった共通の部位に集中する傾向がみられており、ウイルスの収斂進化が起きているとの指摘がある(Cao Y, 2022b)。BA.5系統に比較してBQ1.1系統、BM.1.1.1系統などのワクチン接種や感染免疫による中和抗体からの逃避能が高く、特にXBB系統が最も逃避能が高いことが示唆された(Cao. Y, 2022b)。ただし、査読を受けていないプレプリント論文であることに注意が必要である。また、スパイクタンパク質の主要箇所の変異が多いほど感染者数増加の優位性が高まるとの指摘があり、BQ.1.1系統とXBB系統は特に感染者数増加の優位性が高い系統と指摘する専門家もいる (Wensleers T, 2022)。
  •   これらの系統について、WHOはBA.2.3.20、BA.4.6、BA.2.75、BJ.1、XBBの各系統及び、BA.5系統にN450D変異もしくはR346/K444/V445/N460のいずれかの箇所に変異を有するもの)を「Omicron subvariants under monitoring」、ECDCはBA.4系統、BA.5系統にそれぞれR346に変異を有するもの、オミクロンのうちK444、N460の両方に変異を有するもの( BQ.1系統とその他の亜系統を含む)、オミクロンのうちN460、F490の両方に変異を有するもの(XBB系統とその他の亜系統を含む)を「Variants under monitoring」、UKHSAはBA.2.12.1系統、BA.2.75系統、BA.4.6系統, XE系統をVariants、BA.3系統、BA.4.7系統、BA.2.75.2系統、BF.7系統、BJ.1系統、BQ.1系統、BQ.1.1系統をSignals in monitoringに指定している(ECDC, 2022、WHO, 2022b、UKHSA, 2022)。

 XBB系統について

  •   2022年9月にシンガポールからBJ.1系統(BA.2.10系統の亜系統)とBM.1.1.1系統(BA.2.75.3系統の亜系統)の組換え体であるXBB系統が報告され、10月10日時点で、GISAIDに21か国から562件が登録されており、バングラデシュ、インド、シンガポールで検出数の増加がみられる(covSPECTRUM, 2022)。シンガポールにおいては、9月末より感染者数が増加傾向を示している一方で、重症者数の増加は見られていない 。また、BA.5.2系統からBA2.75系統へと置き換わりが進んでいた中でXBB系統の割合の上昇が見られている。XBB系統の割合の上昇による感染者数の増加への影響については定まった見解はないが、シンガポール保健省は10月15日にXBB系統が国内で優勢となる中で症例数が増加しており、それに比例して入院患者数は増加していること、一方で、重症者数は横ばいでありXBB系統が重症化につながっている証拠はないこと、XBB系統の感染・伝播性が既存の変異株と同等以上と考えられること、XBB系統が再感染の増加に影響を及ぼしている可能性があることを述べている (Ministry of Health Singapore, 2022)。なお、インドでは感染者数の増加は見られない(Our World in Data, 2022)。日本では10月17日時点でXBB系統(亜系統含む)が検疫で7件、国内で0件検出されている(GISAID, 2022)。これらの検体陽性者の滞在国は大部分がインドであり、世界的な検出状況を反映しているものと考えられる。
  •   XBB系統はスパイクタンパク質の受容体結合部位にR346T、N460K、F486Sなどのアミノ酸変異を有し、中和抗体からの逃避の可能性が示唆されている。また、実験的にも中和抗体からの逃避能が高いことが示唆されている(Cao Y. et al., 2022b)が、査読を受けていないプレプリント論文であることに注意が必要である。また、報告数の増加の状況などから、感染者数増加の優位性もBA.2.75系統やBA.4.6系統と比較して高い可能性があるものの、重症度の疫学・臨床的な評価はされていない。国内外での報告数が少ないことから、感染者数増加の優位性、重症度、治療薬の有効性への影響についての明らかな知見はなく、今後の国内外での検出状況、感染者数や重症者数の推移を注視する必要がある。

 BQ.1系統、BQ.1.1系統について

  •   2022年9月にBA.5.3系統の亜系統であるBQ.1系統がナイジェリアから報告され、またBQ.1系統にR346T変異が追加されたBQ.1.1系統も報告されている(Cov-lineages.org, 2022)。BQ.1系統及びその亜系統(BQ.1.1系統を含む)は10月10日時点で、GISAIDに48か国から3,284件が登録されており、英国、フランス、デンマークなど欧州および米国から多く登録されている(covSPECTRUM, 2022)。米国では8月以降BQ.1系統、BQ.1.1系統の割合が上昇し、今後もBQ.1系統、BQ.1.1系統が占める割合が上昇する懸念がされている。一方で感染者数は8月以降減少傾向にある(CDC, 2022a)。英国では米国同様8月以降BQ.1系統、BQ.1.1系統の割合が上昇しており、感染者数は6月から7月にピークを形成したのち、9月以降再度微増している(covSPECTRUM, 2022、Our World in Data, 2022)。その他、欧州ではフランス、ドイツ、イタリアなどで9月以降感染者数の増加がみられるが、各国におけるBQ.1系統及びBQ.1.1系統の占める割合には差がみられる(covSPECTRUM, 2022、Our World in Data, 2022)。BQ.1系統、BQ.1.1系統の割合の増加による感染者数や死亡者数への影響は現時点では不明である。日本では、10月17日時点でBQ.1系統もしくはBQ.1.1系統が検疫で11件、国内で6件検出されている(GISAID, 2022)。
  •   BQ.1系統はBA.5系統から、スパイクタンパク質にK444T、N460K変異を獲得しており、ワクチン接種や感染免疫による中和抗体からの逃避の可能性が示唆されている。また、実験的にも中和抗体からの逃避能が高いことが示唆されている(Cao Y. et al., 2022b) が、査読を受けていないプレプリント論文であることに注意が必要である。国内外での報告数が少ないことから、感染者数増加の優位性、重症度、治療薬の有効性への影響についての明らかな知見はなく、今後の国内外での検出状況、感染者数や重症者数の推移を注視する必要がある。

 BS.1系統について

  •   検疫において、2022年8月下旬に日本に到着した入国者3名の陽性検体からBA.2.3.2系統(BA.2系統の亜系統)が起源と考えられるが、これまでに報告のない変異を有するウイルスが検出され、BS.1系統と命名された(GitHub, 2022)。当該3名の陽性者の行動歴にはいずれもベトナムへの渡航があったが到着日および到着空港は異なっており、明らかな疫学リンクは確認できない。また、BS.1系統にK356T変異が加わったBS.1.1系統が報告されている(Cov-lineages.org, 2022)。10月17日時点でBS.1系統は検疫で11件、国内で1件、BS.1.1系統は検疫で23件、国内で0件の報告がある(GISAID, 2022)。10月10日時点で、日本以外にオーストラリア、ベトナム、シンガポールなど計10か国からGISAIDに100件が登録されている(covSPECTRUM, 2022)。
  •   BS.1系統はBA.2.3.2系統の有する変異に加え、スパイクタンパク質に3つのアミノ酸の挿入、Y144欠失、R346T、L452R、N460R、G476S、R493Q (reversion)およびS640Fの特異的変異を有している。これらスパイクタンパク質の変異による抗体結合部位への構造の影響に伴い、中和抗体からの逃避が示唆される。また、ORF6においては、27266〜27300欠失によるフレームシフトが認められることから、自然免疫応答への影響が示唆される。ただし、国内外での報告数が少ないことから、感染者数増加の優位性、重症度、治療薬の有効性への影響についての明らかな知見はなく、今後の国内外での検出状況、感染者数や重症者数の推移を注視する必要がある。

 

参考 主な変異株の各国における位置付け(2022 年 10月 17日時点)

系統名

感染研

WHO*

ECDC

UKHSA

CDC

B.1.1.529 系統

 (オミクロン)

VOC

currently circulating VOC

※BA.5 (+R346X or +K444X or +V445X or +N450D or  +N460X), BA.2.75, BJ.1, BA.4.6, XBB, BA.2.3.20: Omicron subvariants under monitoring

VOC

BA.2, BA.4, BA.5: VOC

BA.2.75: VOI

BA.4+R346X, BA.5+R346X, B.1.1.529+K444X+ N460X注1), B.1.1.529+N460X+F490X注2): VUM

BA.1, BA.3, BA.2+L452X, XAK: de-escalated variant

VOC

BA.1, BA.2, BA.4, BA.5:  VOC

BA2.12.1, BA.2.75, BA.4.6, XE: Variants
BA.3, BA.4.7, BA.2.75.2, BF.7, BJ.1, BQ.1.1, BQ.1: signals in monitoring

VOC


VOC: variant of concern(懸念される変異株)、Omicron subvariants under monitoring(監視下のオミクロンの亜系統)、VUM: variant under monitoring(監視下の変異株)、VOI: variant of interest (注目すべき変異株)、VBM: variant being monitored(監視中の変異株)、de-escalated variants(警戒解除した変異株)、currently circulating(現在流行中)、previously circulating(かつて流行していた)、signals in monitoring (監視中のシグナル)


注1)BQ.1系統とその他の亜系統を含む

注2)XBB系統とその他の亜系統を含む

 

 

 引用文献

 

注意事項

  •   迅速な情報共有を目的とした資料であり、内容や見解は情勢の変化によって変わる可能性がある。

 

更新履歴

第 21 報 2022/10/21  9:00時点

第 20 報 2022/09/08  9:00時点

第 19 報 2022/07/27  9:00時点

第 18 報 2022/07/01  9:00時点

第 17 報 2022/06/03  9:00時点

第 16 報 2022/04/26  9:00時点

第 15 報 2022/03/28 9:00 時点 注)タイトル変更

          「感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される SARS-CoV-2 の変異株について」

第 14 報 2021/10/28  12:00 時点

第 13 報 2021/08/28  12:00 時点

第 12 報 2021/07/31  12:00 時点

第 11 報 2021/07/17  12:00 時点

第 10 報 2021/07/06  18:00 時点

第  9報 2021/06/11 10:00 時点

第  8報 2021/04/06 17:00 時点

第  7報 2021/03/03 14:00 時点

第  6報 2021/02/12 18:00 時点

第  5報 2021/01/25 18:00 時点 注)タイトル変更

「感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される SARS-CoV-2 の新規変異株について」

第  4報 2021/01/02 15:00 時点

第  3報 2020/12/28 14:00 時点

第  2報 2020/12/25 20:00 時点 注)第1報からタイトル変更

「感染性の増加が懸念される SARS-CoV-2 新規変異株について」

第 1報 2020/12/22 16:00 時点 「英国における新規変異株(VUI-202012/01)の検出について」

掲載日:2022年10月13日

第102回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年10月12日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第102回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版(準備中)

感染状況等の概要

全国の新規感染者数(報告日別)は、直近の1週間では10万人あたり約143人となり、 今週先週比は0.73と減少が継続している。
しかし、連休による接触機会の増加等が感染状況に与える影響に注意が必要。

新規感染者数が減少していることに伴い、療養者数も減少している。また、病床使用率も低下傾向にあり、医療提供体制について状況の改善がみられる。
重症者数や死亡者数は減少傾向が継続している。

掲載日:2022年10月6日

第101回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年10月5日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第101回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版(準備中)

感染状況等の概要

全国の新規感染者数(報告日別)は、直近の1週間では10万人あたり約197人となり、 今週先週比は0.65と減少が継続している。
しかし、今後連休による接触機会の増加等が感染状況に与える影響に注意が必要。

新規感染者数が減少していることに伴い、療養者数も減少している。また、病床使用率も低下傾向にあり、医療提供体制について状況の改善がみられる。
重症者数や死亡者数は減少傾向が継続しているが、足元で横ばいとなっている。

国立感染症研究所
(掲載日:2022年9月27日)

【背景・目的】

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防には、SARS-CoV-2感染や新型コロナワクチン接種に誘導されるSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に対する抗体が重要であることが知られている。

 本邦においては、新型コロナワクチンの接種が広く普及しており、2022年7月25日現在で6割以上の者が3回以上のワクチン接種を完了している(デジタル庁ワクチン接種記録システム (VRS) 新型コロナワクチンの接種状況, https://info.vrs.digital.go.jp/dashboard/)。

 一方で、オミクロン株の出現後の第6波以降、本邦の感染者数は急増しており、一般人口において感染歴とワクチン接種歴の双方を有する者の割合が増加しつつある。感染とワクチンの組み合わせにより誘導されるハイブリッド免疫は、SARS-CoV-2再感染に対して優れた免疫防御を与えることが報告されている。一方で、ハイブリッド免疫の質と持続性は、感染したウイルス株や、接種ワクチンの種類、ワクチン接種間隔、ワクチン接種と感染の間隔など様々な要因の組み合わせにより変動する可能性が指摘されている。よって、今後の新型コロナウイルス感染症の疾病負荷予測のためには、感染もしくはワクチン接種により誘導された免疫保有者だけでなく、ワクチン接種と感染歴の双方を有するハイブリッド免疫者のSARS-CoV-2に対する免疫防御の特性を評価しておくことが重要となる。

 しかしながら、本邦においては、感染履歴のないワクチン接種者の血清抗体の報告に比べて、感染とワクチン接種の双方の履歴を有しハイブリッド免疫を有する者の血清抗体の特性解析の報告は限られている。また、これまでに実施された血清疫学調査では、ワクチン株として使用されている祖先株に対する抗スパイク抗体のみの評価であり、変異株に対する抗体は評価されていなかったが、SARS-CoV-2に対する免疫の全体像を理解するためには、抗原性の変化した変異株に対する抗体も合わせて評価する必要がある。

 そこで、本研究では、令和3年度に厚生労働省/国立感染症研究所が実施した新型コロナウルス感染症に対する抗体保有状況の調査において感染やワクチンによりSARS-CoV-2に対する抗体を保有することが判明した者の血清の残余を用いて各種変異株に対する中和試験を実施することにより、感染歴を持つ者におけるSARS-CoV-2変異株に対する血清中和抗体の性状を評価した。

  続きを読む:新型コロナウイルスに対する抗体保有者の血清中和抗体の性状に関する解析
 

掲載日:2022年9月22日

第100回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年9月21日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第100回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版(準備中)

感染状況について

全国の新規感染者数(報告日別)は、直近の1週間では10万人あたり約370人となり、 今週先週比は0.71と減少が継続し、全国的には本年2月のピークを下回る感染レベルとなった。しかし、連休が続くことによる感染状況への影響に注意が必要。

新規感染者数が減少していることに伴い、療養者数も減少している。また、病床使用率も低下傾向にある。
医療提供体制への負荷は一部継続しているものの、状況の改善がみられる。
重症者数や死亡者数は、減少が継続している。

掲載日:2022年9月15日

第99回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年9月14日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第99回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版(準備中)

感染状況について

全国の新規感染者数(報告日別)は、直近の1週間では10万人あたり約520人となり、 今週先週比は0.76と減少が継続し、全国的には本年2月のピークとほぼ同じ感染レベルとなった。しかし、一部地域では感染者数の減少の鈍化がみられ、引き続き、夏休み後の学校再開および今後の連休による感染状況への影響に注意が必要。

新規感染者数が減少していることに伴い、療養者数も減少している。また、病床使用率も低下傾向にある。
医療提供体制においては、コロナだけでなく一般医療を含め医療提供体制への負荷が一部継続しているものの、状況の改善がみられる。
重症者数は減少が継続しており、死亡者数も減少に転じている。

実効再生産数:
全国的には、直近(8/28)で0.89となっており、首都圏は0.91、関西圏は0.89となっている。

掲載日:2022年9月14日
一部追加:2022年9月15日

英語版


国立感染症研究所実地疫学研究センター
同     感染症疫学センター   

 

新型コロナウイルス感染症に罹患し、お亡くなりになった方々とご遺族の皆様に対し、深くお悔やみを申し上げます。

 

背景・目的

 厚生労働省は、新型コロナウイルス(以下、「SARS-CoV-2」という。)感染による重症度等の知見を集積・監視するため、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。)第15条に基づく積極的疫学調査の一環として、「新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査におけるゲノム解析及び変異株PCR検査について(要請)」(令和3年2月5日付け健感発0205第4号厚生労働省健康局結核感染症課長通知。令和4年2月10日一部改正。)及び「B.1.1.529系統(オミクロン株)の感染が確認された患者等に係る入退院及び濃厚接触者並びに公表等の取扱いについて」(令和3年11月30日付け厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部事務連絡。令和4年2月2日一部改正。)において、自治体に対し、重症例及び死亡例についての報告やゲノム解析をこれまで依頼してきた。
 今般、感染拡大に伴い、小児の感染者数が増加し1)、小児の重症例、死亡例発生への懸念から、厚生労働省及び国立感染症研究所は、関係学会(日本小児科学会、日本集中治療医学会、日本救急医学会)と協力して、SARS-CoV-2感染後の20歳未満の死亡例(以下、小児等の死亡例という。)について、急性期以降の死亡例も含め幅広く調査対象とし、積極的疫学調査を実施することとした。
 本報告は、2022年1月1日から2022年8月31日までに報告された小児等の死亡例に関する暫定的な報告である。

 

方法

報告された小児等の死亡例のうち、下記2つのうちいずれかを満たす者を調査対象とした。自治体及び医療機関の協力のもと、国立感染症研究所職員及び実地疫学専門家養成コース研修員が、自治体による疫学調査等の資料収集、可能な限り現地に赴き実地においての医療機関での診療録の閲覧、及び医師への聞き取り等の調査(以下、実地調査という。)を実施した。

調査対象とした者:

①発症日(あるいは入院日)が2022年1月1日以降のSARS-CoV-2感染後の20歳未満の急性期の死亡例

②発症日(あるいは入院日)が2022年1月1日以降のSARS-CoV-2感染後の20歳未満の急性期以後に死亡した症例(死因を別原因とした症例。発症からの日数は問わない。)

実地調査における主な調査項目:
 年齢、性別、基礎疾患、新型コロナワクチン接種歴、発症日、死亡日、症状/所見、死亡に至る経緯等

 

結果(暫定)

本調査における2022年8月31日現在の症例の概要、及び実地調査の結果は、以下のとおりであった。症例の収集において、調査対象を上述の①または②を満たす者としたが、報告された症例について①と②を明確に分類することは困難であった。なお、下記の記述内容は個人が特定されないよう配慮した。

〇症例の概要
 症例は、2022年8月31日時点で、計41例(年齢:0歳8例(20%)、1-4歳10例(24%)、5-11歳17例(41%)、12-19歳5例(12%)、不明1例(2%)、性別:男性23例(56%)、女性18例(44%)、基礎疾患:あり18例(44%)、なし17例(41%)、不明6例(15%))であった。2022年1月1日(疫学週2021年52週)以降の発症日に基づく報告数を図に示した。症例は、2022年1月から継続的に発生し、疫学週2022年28週(7月11日~7月17日)から増加した。

図.新型コロナウイルス感染後の20歳未満の死亡例の報告数(n=34; 発症日または入院日が2022年1月1日(疫学週2021年52週)~8月31日(疫学週2022年35週))(2022年8月31日時点)**
*発症日不明の7例を除く
**直近の報告はグラフに反映されにくいため、解釈には注意が必要である。

〇実地調査の結果
 41例のうち実地調査が実施できた症例は、2022年8月31日時点で32例であり、このうち、明らかな内因性死亡(外傷を除く疾病による死亡)と考えられたのは29例であった。以下、この29例について述べる(表)。
 年齢・年代の内訳は、0歳8例(28%)、1-4歳6例(21%)、5-11歳12例(41%)、12-19歳3例(10%)であった。性別は、男性16例(55%)、女性13例(45%)であった。基礎疾患は、あり14例(48%)、なし15例(52%)であった。2022年8月31日時点での基礎疾患ありの内訳は、中枢神経疾患7例(50%)、先天性心疾患2例(14%)、染色体異常2例(14%)等であった(重複あり)。新型コロナワクチンは、29例のうち接種対象外年齢の者が14例(48%)、接種対象年齢の者が15例(52%)であり、接種対象年齢となる5歳以上の15例では、未接種が13例(87%)、2回接種が2例(13%)であった。接種を受けた2例はともに12歳以上であり、発症日は、最終接種日から最低3ヶ月を経過していた。また、医療機関到着時の症状/所見は、発熱23例(79%)、悪心嘔吐15例(52%)、意識障害13例(45%)、咳嗽9例(31%)、経口摂取不良9例(31%)、痙攣8例(28%)、呼吸困難7例(24%)の順に多かった。医療機関において疑われた死亡に至る主な経緯は、循環器系の異常7例(24%:心筋炎、不整脈等)、中枢神経系の異常7例(24%:急性脳症等)、呼吸器系の異常3例(10%:肺炎、細菌性肺炎等)、その他6例(21%:多臓器不全等)、原因不明6例(21%)であった。急性脳症等の中枢神経系の異常、心筋炎や不整脈等の循環器系の異常によって急激な経過を辿った症例があった。発症日は、29例のうち26例について得られ、発症から死亡までの日数が、中央値4日(範囲:0-74日)、内訳は0-2日が8例(31%)、3-6日が11例(42%)、7日以上が7例(27%)であった。

29例のうち基礎疾患があったと考えられた14例について、年齢・年代の内訳は、5歳未満8例(57%)(うち0歳4例)、5歳以上6例(43%)であった。性別は、男性9例(64%)、女性5例(36%)であった。医療機関到着時の症状/所見は、発熱11例(79%)、呼吸困難7例(50%)、悪心嘔吐6例(43%)、咳嗽5例(36%)、経口摂取不良4例(29%)、痙攣3例(21%)、意識障害3例(21%)であった。医療機関において疑われた死亡に至る主な経緯として、循環器系の異常3例(21%)、呼吸器系の異常3例(21%)、中枢神経系の異常2例(14%)、その他3例(21%)、原因不明3例(21%)であった。発症日は、14例のうち12例について得られ、発症から死亡までの日数は、中央値4日(範囲:1-74日)、内訳は0-2日が3例(25%)、3-6日が7例(58%)、7日以上が2例(17%)であった。

29例のうち基礎疾患がなかったと考えられた15例について、年齢・年代の内訳は、5歳未満6例(40%)(うち0歳4例)、5歳以上9例(60%)であった。性別は、男性7例(47%)、女性8例(53%)であった。医療機関到着時の症状/所見は、発熱12例(80%)、意識障害10例(67%)、悪心嘔吐9例(60%)、痙攣5例(33%)、経口摂取不良5例(33%)、咳嗽4例(27%)、呼吸困難0例(0%)であった。医療機関において疑われた死亡に至る主な経緯は、中枢神経系の異常5例(33%)、循環器系の異常4例(27%)、その他3例(20%)、原因不明3例(20%)であり、呼吸器系の異常はなかった。発症日は、15例のうち14例について得られ、発症から死亡までの日数は、中央値4.5日(範囲:0-15日)、内訳は0-2日が5例(36%)、3-6日が4例(29%)、7日以上が5例(36%)であった。

 

表. 新型コロナウイルス感染後の20歳未満の死亡例の特性
(n=29 ; 発症日または入院日が2022年1月1日から8月31日、明らかな内因性死亡に限る)(2022年8月31日時点)

* 発症から死亡までの日数は発症日に関する情報が得られた26例(基礎疾患あり12例、基礎疾患なし14例)

 

考察

 2022年8月31日時点における、2022年1月1日から2022年8月31日までに報告された小児等の死亡例、41例について暫定的な報告を行った。症例数は、7月中旬から増加していた。
 今回の実地調査で内因性死亡が明らかとされた小児等の死亡例において、基礎疾患のなかった症例も死亡していることから、SARS-CoV-2感染後は、基礎疾患のある者はもちろん、基礎疾患のない者においても、症状の経過を注意深く観察することが必要であると考えられた。新型コロナワクチンは、接種対象でも多くの小児の死亡例では未接種であった。また、症状は、日本小児科学会による国内小児におけるCOVID-19レジストリ調査2)と比較して、呼吸器症状以外の症状のうち、悪心嘔吐(52%)、意識障害(45%)、経口摂取不良(31%)、痙攣(28%)の割合が高かった。新型コロナウイルス感染症における重症度分類は、主に呼吸器症状等により分類されているが3)、小児においては、痙攣、意識障害などの神経症状や、嘔吐、経口摂取不良等の呼吸器症状以外の全身症状の出現にも注意を払う必要があると考えられた。発症から死亡までの日数は、1週間未満が73%を占めており、特に発症後1週間の症状の経過観察が重要であると考えられた。

 

調査に関する制限と今後

本報告は、2022年8月31日時点での暫定的な報告であり、今後の調査の進捗にあわせて、情報の更新・修正がなされる可能性がある点、及び本調査では、SARS-CoV-2感染と死亡との因果関係を検討していない点に留意する必要がある。引き続き、自治体及び関係学会の協力のもと、本調査を継続していく予定である。

 

本調査における協力学会:日本小児科学会、日本集中治療医学会、日本救急医学会 

謝辞:本調査にご協力いただきました関係者の皆様に心より御礼申し上げます。

 

参考資料

1. 厚生労働省 データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報

https://covid19.mhlw.go.jp/ (閲覧日:2022年8月19日)

2. 小児科学会 予防接種・感染症対策委員会「データベースを用いた国内発症小児 Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) 症例の臨床経過に関する検討」の中間報告:第3報、2022年3月28日

http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20220328_tyukan_hokoku3.pdf

3. 新型コロナウイルス感染症診療の手引き・第8.0版

https://www.mhlw.go.jp/content/000967699.pdf

 

追加:(2022/9/15)参考資料1.の引用表記を追記しました。

 

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