NESIDに届出された20歳未満の新型コロナウイルス感染症例のまとめ(2020年2月1日~5月28日)

国立感染症研究所 感染症疫学センター
国立感染症研究所 実地疫学専門家養成コース
(掲載日 2020/9/16)
  

本邦において、severe acute respiratory syndrome coronavirus 2(以下SARS-CoV-2)感染による新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)は2020年2月1日に指定感染症に定められた。これにより、医師による迅速な感染症発生動向調査(NESID)への届出、感染者に対する入院措置や公費による適切な医療の提供、感染者発生時の積極的疫学調査(接触者調査)の実施による感染者の把握が開始された。その後、5月13日に届出票の様式改訂が行われ、5月29日に新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システムHealth Center Real-time information-sharing System on COVID-19(以下HER-SYS)が導入された。本稿は2020年2月1日~5月28日の間にNESIDに届出されたCOVID-19のうち、自治体により確認済となった20歳未満例(患者、無症状病原体保有者の両者を含む)についてまとめた(2020年7月21日データ抽出、その時点で確認済であった例)。この調査期間にNESIDに届出がなされ、7月21日時点で確認済であった全COVID-19症例(患者、無症状病原体保有者、感染症死亡者の死体)は16,765例であった。


ダイヤモンドプリンセス号環境検査に関する報告

2020年8月30日
(掲載日 2020年9月14日)
 

要旨

2020年2月に3711人の乗員乗客を乗せたダイヤモンドプリンセス号内で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の集団発生が発生し、合計712人の患者が確認された。患者周囲の環境汚染の程度を確認し、感染伝播について推測するため、船内の環境調査を実施した。

船内の共有部分97か所と乗員乗客の49部屋490か所について、環境表面をスワブで拭い、検体を採取し、国立感染症研究所でrRT-PCRにてSARS-CoV-2 RNAを検出した。乗員乗客の部屋は、患者が使用していた33部屋、患者が使用していた16部屋から各10か所(ライトスウィッチ、ドアノブ、トイレボタン、トイレ便座、浴室内トイレ床、椅子手すり、TVリモコン、電話機、机、枕)の計490か所に加え、空気検体を7部屋14か所から採取した。RNAが検出された検体については、一度凍結したのち、ウイルス分離を試みた。更にSARS-CoV-2 RNAが検出された7部屋の環境18か所について、検体を再度採取したのち、凍結させずにウイルス分離を試みた。

合計601か所(共有部分97か所、部屋490か所、空気14か所)から検体採取が行われ、58検体でSARS-CoV-2 RNAが検出された。共有部分では廊下排気口1か所のみから、患者の部屋では21部屋(64%)からの57検体(17%)で検出された。有症状患者が使用していた19部屋では10部屋(53%)から28検体(15%)、無症状患者しか使用していなかった13部屋では10部屋(77%)から28検体(21%)で検出され、症状の有無とSARS-CoV-2 RNA検出に有意な差は認められなかった。各部屋での検出頻度は、浴室内トイレ床13か所(39%)、枕11か所(34%)、電話機8か所(24%)、机8か所(24%)、TVリモコン7か所(21%)などであった。退室からRNA検出検体採取までの日数は、最長で17日であった。患者が入っていなかった部屋からは検出されなかった。また、空気検体からはRNA検出を認めなかった。SARS-CoV-2 RNAが検出された58検体全てでSARS-CoV-2は分離されず、再度採取した18検体についてもSARS-CoV-2は分離されなかった。

COVID-19アウトブレイクが起きたダイヤモンドプリンセス号における環境調査から、患者が生活する空間で周囲環境がSARS-CoV-2にどの程度汚染されるかが判明した。患者周囲では、トイレ周辺、机、電話機、TVリモコン等から高頻度にSARS-CoV-2 RNAが検出された。接触伝播の可能性を考慮すると、これらの物品は適切に清掃・消毒・洗濯すべきであると考えられた。また、患者周囲では症状の有無に関わらず環境が汚染されており、日常的な手指衛生が極めて重要であることが再確認された。空気伝播を示唆する証拠は得られなかったが、廊下天井排気口からSARS-CoV-2 RNAが検出されており、特殊な環境でウイルスが遠方まで浮遊する可能性について更なる検討が必要である。

 

 

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東京都での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行(2020年1~5月)

(IASR Vol. 41 p146-147: 2020年8月号)

はじめに

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は, 2019年12月初旬に, 中国の武漢市で第1例目の感染者が報告されてから, わずか数カ月ほどの間にパンデミックと言われる世界的な流行となった。わが国においては, 2020年1月15日に最初の感染者が確認された後, 5月12日までに, 46都道府県において合計15,854人の感染者, 668人の死亡者が確認されている1)。東京都内では, 3月下旬以降, COVID-19の感染者数が急増しており, 2020年1月から5月下旬までの感染者の発生動向をまとめたので報告する。

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石川県における新型コロナウイルス感染症の発生状況について

(IASR Vol. 41 p148-149: 2020年8月号)

新型コロナウイルス感染症は全国的に感染が拡がっている。石川県でも2020年2月以降多数の感染者が確認されており, 人口10万人当たりの感染者数は全国の中でも上位にあることから, その発生状況について解析した。

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茨城県における新型コロナウイルス感染症流行第1波の記述疫学

(IASR Vol. 41 p149-151: 2020年8月号)

茨城県では2020年3月17日に初めて本疾患患者が確認され, 5月4日までに168例の報告があった。それ以降, 患者報告がない状態が6月18日まで続いている。

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新型コロナウイルス感染症における積極的疫学調査の結果について(第1回)
(2020年6月3日時点:暫定)

(IASR Vol. 41 p166-169: 2020年9月号)

(速報掲載日 2020/8/14)

本報告は、厚生労働省健康局結核感染症課名にて協力依頼として発出された、感染症法第15条第1項の規定に基づいた積極的疫学調査(健感発0220第3号、令和2年2月20日;https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000598774.pdf)に基づいて集約された、各自治体・医療機関から寄せられた新型コロナウイルス感染症の退院患者の情報に関する、第1回目の暫定的なまとめである。6月3日時点の状況を報告する。


長崎市に停泊していたクルーズ船内で発生した新型コロナウイルス感染症の集団発生事例:最終報告

(掲載日 2020/8/11)
 

本稿では、長崎県長崎市で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のクラスター感染が確認されたイタリア籍のクルーズ船「コスタ・アトランチカ」の情報還元を行う。令和2年5月22日の中間報告の続報であり、初期の検査結果や船内の状況については、中間報告を参照されたい(https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9622-covid19-20.html)。

 

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新型コロナウイルス感染症 2020年5月現在

(IASR Vol. 41 p103-105: 2020年7月号)

コロナウイルスはプラス鎖1本鎖のRNAをウイルスゲノムとして有するエンベロープウイルスであり, ヒトに感染するコロナウイルスとしては, 風邪の原因ウイルスであるヒトコロナウイルス229E, OC43, NL63, HKU1の4種類, そして, 重篤な肺炎を引き起こす重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス(SARS-CoV)と中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス(MERS-CoV)が知られていた。2019年12月に確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の病原ウイルスであるSARS-CoV-2は, SARS-CoVと同じベータコロナウイルス属に分類され, 遺伝子の相同性が高く(約80%), 受容体(ACE2)を使ってヒトの細胞に吸着・侵入することが報告されている。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan