注目すべき感染症 ※PDF版よりピックアップして掲載しています。
インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられる。主な感染経路は咳、くしゃみ、会話等から発生する飛沫による感染(飛沫感染)であり、他に飛沫の付着物に触れた手指を介した接触感染もある。感染後、発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続くが、いわゆる「通常感冒」と比べて全身症状が強いことが特徴である。通常は1週間前後の経過で軽快する。
インフルエンザは、全国約5,000カ所のインフルエンザ定点医療機関(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)から、患者数が毎週報告されている。2018/19シーズン〔2018年第36週(2018年9月3〜9日)以降〕のインフルエンザ定点当たり報告数は、2018年第49週(2018年12月3〜9日)に1.70となり、全国的な流行開始の指標である1.00を初めて上回った。2018/19シーズンの週毎のインフルエンザ定点当たり報告数は、これまで過去5年間の同時期の平均(当該週と過去5年間の前週、当該週、後週の合計15週の平均)と比較すると、第43〜49週は平均より低いレベルであったが、2018年第41週以降、継続して増加した(インフルエンザの年別・週別発生状況:https://www.niid.go.jp/niid/ja/10/2096-weeklygraph/1644-01flu.html)。
定点当たり報告数が1.00を上回っていた都道府県は、第46週には三重県と沖縄県のみであったが、第47週には4県、第48週には15道府県、第49週には28都道府県であった。第49週では43都道府県で前週の報告数より増加がみられ、都道府県別の上位5位は、香川県(4.00)、北海道(3.96)、愛知県(3.43)、和歌山県(2.90)、鹿児島県(2.76)であった。また、第36〜49週の定点医療機関(全国約5,000)からの報告数の男女比は例年と同様で、15歳未満の年齢群では1.1:1とやや男性に多く、15歳以上の年齢群では1:1.2とやや女性に多かった。
定点医療機関からの報告をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を受診した患者数を推計すると、2018年第49週は約6.3万人(95%信頼区間:5.5〜7.0万人)となり、前週の推計値(約3.4万人、95%信頼区間:2.8〜4.0万人)より増加した。年齢別では、0〜4歳が約0.8万人、5〜9歳が約1.8万人、10〜14歳が約1.0万人、15〜19歳が約0.2万人、20代が約0.4万人、30代が約0.5万人、40代が約0.6万人、50代が約0.3万人、60代が約0.3万人、70歳以上が約0.2万人であった。今シーズンの第49週時点での累積の推計受診者数は約18.7万人となり、これまで15歳未満が55%、70歳以上が5%と推計された。
全国約500カ所の基幹定点医療機関からのインフルエンザによる入院患者数(インフルエンザ入院サーベイランス)においては、第46週(16例)を除いて、第41週(9例)〜第49週(88例)は継続して増加した。今シーズンの基幹定点におけるインフルエンザによる入院患者の累積報告数は383例となり、15歳未満が144例(38%)、70歳以上が160例(42%)であった。推計受診患者数とは異なり、高齢者が多かった。
インフルエンザウイルス型別の検出状況について、今シーズンはこれまでにAH1pdm09が216株、AH3が75株、B型が7株(山形系統4株、ビクトリア系統3株)検出されている〔インフルエンザウイルス分離・検出速報(2018年12月14日現在):https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-inf.html〕。
例年のインフルエンザ流行は、11月末から12月にかけて始まり、1月末から2月上旬にかけてピークとなることが多い〔今冬のインフルエンザについて(2017/18シーズン):https://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/disease/influ/fludoco1718.pdf〕。今シーズンは、例年並みに、第49週に全国的な流行開始となり、第46週以降、定点当たり報告数、入院患者数ともに継続して増加しており、インフルエンザ様疾患発生報告における休校、学年閉鎖、学級閉鎖施設数の合計(インフルエンザに関する報道発表資料:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou.html)も同様に継続して増加している。
インフルエンザの感染予防策としては、飛沫感染対策としての咳エチケット(有症者自身がマスクを着用し、咳をする際にはティッシュやハンカチで口を覆う等の対応を行うこと)、接触感染対策としての手洗い等の手指衛生を徹底することが重要である。高齢者における感染への警戒の観点から、医療・福祉施設へのウイルスの持ち込みを防ぐために、関係者が個人で出来る予防策を徹底すると同時に、訪問者等については、インフルエンザの症状が認められる場合の訪問を自粛してもらう等の対策が重要である。なお、2018/19シーズンは、例年通りA型2亜型とB型2系統による4価のインフルエンザワクチン(https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/a/flu.html)が製造されており、65歳以上の高齢者、又は60〜64歳で心臓、腎臓若しくは呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される方、あるいはヒト免疫不全ウイルスにより免疫機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方は、予防接種法上の定期接種の対象となっている(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/influenza/)。
今後のインフルエンザの感染症発生動向調査に注意していただくとともに、詳細な情報と最新の状況については、以下を参照いただきたい:
●感染症発生動向調査週報(IDWR)
国立感染症研究所 感染症疫学センター |