2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に向けての感染症リスク評価

令和6年(2024年)1月9日
(掲載日:2024年1月9日)

国立感染症研究所
実地疫学研究センター
感染症危機管理研究センター
感染症疫学センター

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1.目的

 

2025日本国際博覧会(大阪・関西万博、以下万博とする)を、国内外から同時期、同じ目的で特定の場所・地域に多くの者が集まる、いわゆる国際的マスギャザリングイベントととらえ、発生しうる感染症を中心とする健康危機事象を想定し、公衆衛生対応に備えることが重要である。また、来場する外国人客の多くは、国内に一定期間滞在することが見込まれることから、万博会場内外を通じて整合性のある備えと内外での情報の共有が重要である。
万博に関して、国、各自治体(特に大阪府・市を含む近畿圏)の感染症担当部局が地域住民、国内外の万博来場者における感染症のリスクを事前に評価し、事前、期間中、事後の準備と対策に資する。

 

対象:

・国内外の万博来場者

・開催地周辺自治体の住民

・参加者:160か国・地域、9国際機関(2023年11月14日現在)からの公式参加者とパビリオン出展

・催事・運営・営業等に係る非公式参加者

・万博会場で業務に従事するスタッフ:医療・警備・清掃・案内所担当・ボランティア等

・関係機関:国・府市・警察・消防等

 

2.万博の概要

 

開催期間1:2025年4月13日(日) – 10月13日(月)184日間
 開催場所1:大阪市此花区 夢洲(ゆめしま)(約155ha)、大阪北港にある人工島3地区のひとつ

 

01
 

参加者:公式参加者・非公式参加者(1万5千人程度想定(万博協会2023年10月時点試算))、2-4関係従事者としてボランティアを含む万博スタッフ(7万人程度想定(万博協会2023年10月時点試算))に加え、警察、消防、自治体等の関係機関の職員が運営に関与する。来場者総数は約 2,820 万人(国内は約 2,470 万人 (88%)、海外来場者が約 350 万人(12%))、国内来場者のうち、近畿圏内は約 1,559 万人(63%)、近畿圏外は 約 911 万人(37%)、海外来場者の中心は、東南アジア、オセアニアからの渡航者と想定される。

 

3.万博の概要と過去の万博の状況にもとづいた、健康被害に関するリスク評価
      を行う際に考慮すべき万博の特徴

 

(1)時・期間

・開催期間が180日以上である
・食中毒の発生しやすい時期を含む
・開催が豪雨・台風・猛暑の影響を受ける時期を含む3
・媒介蚊の繁殖の時期を含む

(2)人流

・参加国や参加人数の規模が大きい
 - 期間中の海外からの入場者は約350万人と推計されており、その大半は東南アジアおよびオセアニアと推定される。
 - 滞在日数は通常の訪日客と大きく変わりないと思われ、これらの訪日客の70%ほどは1週間~2週間程度の滞在と想定する。
・国内外の観光客の滞在先や地理的行動範囲は大阪府内や近畿圏の観光地周辺が中心となりうるが、日本国内の様々な地域に移動、宿泊する可能性がある。
・国内外の来場者や観光客の多くが、移動手段として公共交通機関を利用すると想定される。

(3)開催場所
  会場配置図1

      02

・国内や大阪府内の大型テーマパークと同様に、会場内には、パビリオンやイベントなど、屋内外を問わず特定の場所に人(訪日外国人も含め)が集まる場所や機会がある。
・食品を提供するパビリオン(国内外の関係者が主催)がある。
・会場に、感染症を媒介する昆虫や動物が生息しやすい環境がある(静けさの森、ウォータープラザ 等)。
・会場に、冷却塔、給水機、ドライ型ミスト等がある。
・観客にしぶきがかかるような水を使った演出がある。

(4)会場の医療体制

会場内の医療救護施設の整備状況については、8か所の診療所・応急手当所の設置が予定されており、主として大阪府内に勤務する医師、看護師により運営される見込みである。

(5)その他

・メディアの関心が高いと想定され、感染症、その他の健康危機事象が発生した場合、開催自治体や開催を推進する政府にとってreputation riskがある。

・海外からの観光客は、万博のみを目的に訪日するとは限らず、市中で感染した者が会場を訪れるケースや、会場で感染した者が市中で観光を行い、感染を広げるケースの両面があることに注意を払う必要がある。

     

4.リスク評価

 

以下のように、リスク評価の骨子に従い①および②と③(②と③はそれぞれ独立して検討)を検討し、リスク評価を行った。

(1)リスク評価の骨子

①公衆衛生対応に必要な体制に関する基本情報の整理

・既存のサーベイランス(病原体、媒介蚊含む)
・食中毒・感染症対応体制(特に広域対応や情報共有の体制)

平時の感染症の発生状況(輸入例と国内例)(特に5月-10月)及びワクチン予防可能疾患(VPD)のワクチン接種率と抗体保有状況

③評価のための項目
 万博の特徴、および疾病や災害に関する以下の特徴を考慮して感染症(発生動向調査報告対象疾患(市中感染が主の感染症を対象)や食品苦情窓口の対象事象を想定)を評価し、対策において優先すべき感染症を選定する。

ⅰ.考慮すべき感染症の特徴より
・訪日来場者、訪日スタッフから持ち込まれる可能性が高い
・臨床診断や病原体検査が容易でなく早期探知が難しい
・重症度が高い・対応にあたる行政や医療機関への負荷が高い

ⅱ.考慮すべき感染経路の特徴より
・万博会場や公共交通機関で不特定の者が曝露する(環境・媒介昆虫・媒介動物による曝露を
  含む)可能性がある感染症
・万博会場やその近隣で曝露する可能性がある食品媒介感染症
・ヒトーヒト感染し、万博会場、市中、宿泊施設で感染伝播がありうる感染症

ⅲ.自然災害後に発生しうる感染症(特に会場における浸水、地震被害への対応にあたる
   スタッフを想定)

ⅳ.バイオテロ災害

ⅴ.過去に開催された万博で行われた強化サーベイランスの対象、報告のあった感染症(疑い)

       

結果

表のとおり、疾患ごとに、(A)国外からの持ち込み、(B)大阪府内における感染伝播、(C)万博(来場者、スタッフ)に関連した集団発生、(D)大規模事例かつ重症度の高い症例の発生にわけてまとめた(表)。大規模事例の懸念、かつ高い重症度等を考慮すると、まず、麻しん、侵襲性髄膜炎菌感染症、中東呼吸器症候群(MERS)、食品に関連した腸管出血性大腸菌感染症は注意すべき感染症といえる。COVID-19、季節性インフルエンザを含めた急性呼吸器感染症の集団発生、会場で提供された食品が原因の集団食中毒について十分注意が必要である。また、万博に関連した原因不明の重症の感染症疑いの発生についても念頭に置く必要がある。なお、本リスク評価では、急性の感染症や食中毒以外の中長期的な拡散リスクに伴う感染症リスクについては、対策の性質が異なることから含めていない。

       
03
04 2



特記事項

・輸入感染症については、全般に一般臨床医の診断経験が乏しいこと、また、特異的な検査が医療機関レベルでは行えないものもあり、診断が難しい場合がある。
・つつが虫病、日本紅斑熱、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を含むダニ媒介感染症は大阪府内での報告があり、ヒトからヒトへの感染伝播はないが、会場内の森林、府内の感染リスクの高いエリアでの活動により複数人が感染する可能性がある。
・一部の国や地域で既に排除が達成されている疾患(麻しん、風しん等)について、万博に関連した事例が発生した場合には、排除国等からの訪日者においてリスク認識の程度に隔たりがあり、国際的なコミュニケーション上の負荷が高くなる可能性がある。
・会場に自然災害の被害が発生した場合には、特にその対応にあたるスタッフ(ボランティア)について、破傷風、レプトスピラ症等の災害関連の感染症について注意が必要となる。
・尚、表の評価項目(A)、(B)については、必ずしも万博に特化して影響を受けるとは限らない。

 

(2)対策の策定

リスク評価の結果から、想定されうる対策を以下に挙げた。

事前の対策・介入対象の検討

国及び地域

・麻しん・風しんワクチン接種の啓発(特に観光業を中心とした不特定多数と接する
    機会のある業務の従事者について)

・地域の医療機関における輸入感染症等の普段診療することが少ない感染症に関する
    認知の向上

・輸入感染症を中心とした比較的まれな感染症の検査体制の確認と周知

・食品部局との連携強化

・広域対応等も含む事例発生時対応機能(大阪府、市、近畿圏自治体、国の連携体制
    の構築を含む)の強化(研修等による)

 

万博関係施設、スタッフ

・万博協会を通じた必要な予防接種の啓発等(麻しん・風しんワクチン、救護所を含
    む万博関連医療施設で患者対応する者については髄膜炎菌ワクチンの接種を検討)

・基本的な感染対策に関する教育・訓練及び啓発

・食品提供基準管理のための準備(特に海外事業者向け、健康教育等)

・会場内の救護・診療体制の構築

・会場内の水質管理・衛生管理体制

・会場内の感染症媒介昆虫・動物(同伴ペットを含む)への対応

 

サーベイランスの強化

国及び地域

・強化サーベイランス実施の計画

-強化サーベイランスの対象者の特定

-万博関係症例の定義の作成と万博関係症例かどうかが判断できる仕組みづくり

-大阪府内の感染症発生動向を万博協会に共有し、会場内での注意喚起等の対応が
   できる仕組みづくり

-強化サーベイランス関係者の連携体制の確認(近畿圏で広域に情報共有が必要と
   なることを想定しておく、食品部局との連携

・情報の探知・確認・評価・周知までの関係者の役割の明確化

-食中毒、自然災害、バイオテロの場合を含む
→このため「周知」には平時のコミュニケーション~クライシスコミュニケーション
  までを想定(国際保健規則に基づく通報、国際的な情報共有が必要な事例(例えば
  集団発生が他国に影響を及ぼす場合)も念頭に置く

・運用に関する説明およびトレーニングの実施

-上記で述べた注意すべき疾患および疑似症サーベイランスについても関係者で
   報告~対応のプロセスの確認が重要

 

万博関係施設、スタッフ

・来場者、スタッフにおける追加のサーベイランス導入の検討(救護所含む会場内
    サーベイランス(症候群)、スタッフの健康観察等)

-感染症に関する症候群サーベイランスの項目(例):発熱、急性呼吸器感染症
   (発熱+上気道症状)、消化器症状(下痢、嘔吐等)、皮疹、髄膜炎症状、重症感染症
   疑い等

・万博協会と地域の公衆衛生担当部局(特に感染症、食品衛生部局)との連絡・連携
    体制の構築

-担当窓口の明確化、関係者におけるサーベイランス情報や感染症(疑い)発生状況
   の共有

・事例発生時の地域の公衆衛生担当部局との連携体制の事前の構築

-窓口の明確化、役割分担、情報共有の仕組み、クライシスコミュニケーション
  (公表の基準等)

 

 

参考情報


 平時の感染症の発生状況

(1)2015~2019年の年間報告数と輸入指数を用いた輸入感染症の分類

  05

       06

 

2015-2019年の全国で報告された全数把握対象疾患について「輸入例/感染地域不明を除く報告症例数」の割合を「輸入指数」とした。2015-2019年に輸入例が1例以上報告された疾患について、輸入指数の中央値を算出し、中央値より高い場合を輸入リスクの高い疾患とした。また、輸入感染症の報告数の程度は、2015-2019年の年間平均報告数が10~99例を「少」、100~999例を「中」、1000例以上を「多」と分類した。

(2)大阪府における年間平均症例数が10 例を超える感染症(2015年~2019 年)

  07

注)

*1  感染症発生動向調査において、2015-2019年の大阪府内の総報告数が多い順に掲載

*2  感染症発生動向調査において、大阪府内の2015-2019 年の年間平均報告数が10例以上
   または100例以上の疾患

*3  各年の診断週第13-44週までの報告数より算出

*4  2015-2019年に感染症発生動向調査に国外感染例が報告された疾患について、報告症例
      における国外感染例の割合を輸入指数として、その中央値(0.06)を算出

*5  最短の潜伏期間が4週間以上(結核以外)の疾患及び潜伏期間が明らかでない薬剤耐性菌
      感染症を除く

 

参考文献

1.EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト

https://www.expo2025.or.jp/

2.大阪・関西万博 来場者輸送具体方針(アクションプラン)初 版.2025 年日本国際博覧会来場者輸送対策協議会 2022 年 10 月

https://www.expo2025.or.jp/wp-content/uploads/221017_raizyousyayusougutaihousin.pdf

3.愛地球博 EX`P2005 第5回外国人入場者数調査.愛・地球博公式ウェブサイト

http://www.expo2005.or.jp/jp/N0/N2/N2.6/N2.6.401/index.html

>4.日本政府観光局

https://www.jnto.go.jp/statistics/data/visitors-statistics/

 

謝辞

本感染症リスク評価の作成に当たってご協力いただきました大阪府健康医療部感染症対策企画課、大阪市保健所感染症対策課、大阪健康安全基盤研究所公衆衛生部健康危機管理課の皆様に深謝いたします。

 

 

 

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    1
    はじめに
     
     1989年にHoughtonら米国カイロン社の研究グループにより感染チンパンジー血漿から C型肝炎ウイルス (HCV) の遺伝子断片が発見された(Choo et al., 1989, Kuo et al., 1989)。そして、それを基にしたスクリーニング系の導入により、輸血用血液の抗体スクリーニングが可能となり、我が国では輸血による新規感 染は激減した。しかしながら、HCV感染者は日本で約200万人、世界中で1億7000万人にのぼるとされ、その多くが10-30年という長期間を経て慢 性肝炎から肝硬変へと進行し、高率に肝細胞癌を発症する(Saito et al., 1990, Alteret al., 1995, Bisceglie et al., 1997, Grakoui et al., 2001, Lauer et al., 2001, Poynard et al ., 2003, Pawlotsky 2004)。現在、HCV感染症に対する主要な治療法はインターフェロンとリバビリンによる併用療法であるが、投与法や薬物の形態が工夫された結果、よう やく半数以上の患者に有効となったが、未だ十分でなく、強い副作用も問題となっている。より有効な治療法の開発が望まれているが、HCVには効率の良いウ イルス培養系と実験用の感染小動物が存在しなかった。そのため、HCVの基礎研究はウイルス遺伝子の発現産物の機能解析を中心に進み、HCVのウイルス学 的な解析はチンパンジーを用いた感染実験に頼るしか無いわけだが、倫理的な問題やコストの面からも安易にできる実験ではなかった。このような状況がHCV の基礎研究の妨げになり、抗ウイルス薬やワクチンの開発が遅れてきた。しかし、1999年に培養細胞で自律複製する構造領域を欠くサブゲノムレプリコンが 開発され(Lohmann et al., 1999)、これを皮切りにHCVの複製に関する研究が精力的に進められてきた。また、レトロウイルスまたは水胞性口内炎ウイルスのエンベロープ蛋白を欠 損させ、代わりにHCVのエンベロープ蛋白を持ったシュードタイプウイルスを感染モデルとして用いることで、HCVの感染に関する研究は大きく進歩した (Lagging et al., 1998, Matsuura et al., 2001, Bartosch et al., 2003, Hsu et al., 2003)。さらに、劇症肝炎患者から単離されたJFH-1株のゲノムRNAを肝癌細胞由来のHuh-7細胞に導入することにより、感染性ウイルス粒子を 培養細胞で作製する技術が2005年に確立された(Wakita et al., 2005, Zhong et al ., 2005, Lindenbach et al ., 2005)。これは、レプリコンシステムやシュードタイプウイルスと異なりHCVの生活環 (感染、翻訳、複製、ウイルス粒子形成・放出) をすべて再現可能な実験系であり、HCV研究を急速に加速させた。

    国立感染症研究所・ウイルス第二部 脇田隆字 

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      (掲載日:2022年4月27日)
      ※2023年10月4日 誤りが見つかったため、現在修正作業中です。近日中に修正版を再掲します

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    日本紅斑熱やツツガムシ病などのリケッチア感染症について、症状、感染経路、治療、予防等に関する情報は下記の「リケッチアって知っていますか?」からご覧ください。

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    通常は蠕虫(いわゆる"ムシ")、原虫(顕微鏡でしか見えない単細胞生物)による疾患ですが、昆虫・ダニによる疾患も含みます。主に以下のような疾患が含まれます。
    ここでは、脳・脊髄などの中枢神経系組織に病原体が感染して起きる疾患を中心に取り上げます。主に以下のような疾患があります。
    正常の宿主に対しては病原性を発揮しない病原体が、宿主の抵抗力が弱っている時に病原性を発揮しておこる感染症です。主に以下のような疾患が含まれます。
    結膜炎など、主に眼に症状が出現する感染症です。主に以下のような疾患が含まれます。
    すべてが、あるいは主に海外で感染して国内に持ち込まれる感染症です。主に以下のような疾患が含まれます。
    主に以下のような疾患が含まれます。
    主に以下のような疾患が含まれます。
    主に以下のような疾患が含まれます。

     

    母子感染には妊娠中の胎内感染、出産時の産道感染、出生後の経母乳感染などがあり、主に以下のような疾患が含まれます。妊婦健康診査で検査が行われるものもあるので、きちんと受診しましょう。まだ発見されていない感染症や検査が一般に行われない感染症もあります。日頃から感染症の理解を深めると共に、手洗いやうがいなどの感染予防に努めましょう。
    妊婦検診を受けましょう[厚生労働省]
    ※ 母子感染を知っていますか?[厚生労働省]
     

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