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新型コロナウイルス感染症(新規変異株)の積極的疫学調査(第1報)

(速報掲載日 2021/4/23)
 
目 的

 本調査は、厚⽣労働省健康局結核感染症課名にて協⼒依頼として発出された、感染症法第15条第2項の規定に基づいた積極的疫学調査(健感発0315第3号、令和3年3月15日、https://www.mhlw.go.jp/content/000753875.pdf)に基づいて集約された、医療機関から寄せられた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)新規変異株患者の疫学情報・臨床情報に関する、第1回⽬の暫定的なまとめである。2021年4⽉15⽇時点の状況を報告する。

 調査対象者以下の条件をすべて満たすものとした。

 (1) 2020年12月22日~2021年3月9日までに感染症法に基づくCOVID-19の届出がされた患者

 (2) ゲノム検査が実施され、VOC-202012/01、501Y.V2、501Y.V3のいずれかが確定した患者1)

 (3) ゲノム検査結果がCOVID-19等情報把握・管理支援システム(Health Center Real-time Information-sharing System on COVID-19: HER-SYS)に報告された患者

 (4) 入院医療機関名がHER-SYSに報告された患者(調査期間中の新規変異株患者は原則入院対応)

結 果

 調査期間中、全国で感染症法に基づくCOVID-19の届出がされた患者は242,373例で、うちゲノム検査でVOC-202012/01、501Y.V2、501Y.V3のいずれかが同定・報告された患者が380例(0.16%)、そのうち入院医療機関名が判明した患者が112例(0.05%)であった。112例中110例(0.05%)から調査への協力が得られた〔回収割合:98.2% (110/112例)〕。

 110例の性別は男性52例(47.3%)、年齢の中央値(四分位範囲)は42(27-63)歳で、年齢群では10歳未満(18.2%)、30代(16.4%)、40代(15.5%)の割合が多かった。出身国は日本が最多であった(90%)。入院医療機関の所在都道府県が、新潟県、北海道、広島県、兵庫県、東京都の症例が多く含まれていた。確定したウイルス株の内訳は、VOC-202012/01が105例(95.5%)、501Y.V2が4例(3.6%)、501Y.V3が1例(0.9%)であった。110例のBMI(body mass index)の中央値(四分位範囲)は21.5(18.6-24.6)kg/m2で、6例(5.5%)が入院時に喫煙歴、1例(0.9%)が常時飲酒歴を認めた。9例(8.2%)が発症14日以内に海外への渡航歴があり、89例(80.9%)が発症14日以内にCOVID-19確定例もしくは疑い例との濃厚接触歴を認めた。主な接触歴の内訳は、家族47例(42.7%)、職場14例(12.7%)、保育・教育関連施設14例(12.7%)であった。9例(8.2%)が発症14日以内に同居家族以外での集団での飲食歴、13例(11.8%)がいわゆる3密空間での滞在を認めた。発症から初診、診断、入院までの期間の中央値(四分位範囲)は、それぞれ1(0-3)日、2(1-4)日、3(2-6)日であった。110例において、何らかの基礎疾患を有した症例は31例(28.2%)で、高血圧(17例、15.5%)、脂質異常症(11例、10.0%)、肥満(5例、4.5%)の頻度が多かった。

 入院時の体温、脈拍数、呼吸数、酸素飽和度の中央値(四分位範囲)は、それぞれ36.8(36.6-37.4)℃、88(79-101)回/分、18(16-22)回/分、97(96-98)%であった。入院時に91例(82.7%)が何らかの症状を認め、19例(17.3%)が無症候であった。入院時の主な症状は、37.5℃以上の発熱(44例、40.0%)、咳嗽(42例、38.2%)、倦怠感(27例、24.5%)で、9例(8.2%)に酸素需要を認めた。入院時の胸部レントゲン検査で28例(25.5%)に、胸部CT検査で49例(77.8%)に肺炎像を認めた。血液検査所見では、白血球数の中央値(四分位範囲)は4,500(3,700-5,700)/µLで、16例(14.5%)がD-ダイマー上昇*をみとめ、D-ダイマー中央値(四分位範囲)は、800(692.5-1,170)ng/mLであった。生化学的検査所見は概ね正常範囲内で、CRPの中央値(四分位範囲)は0.64(0.2-2.2)mg/dLであった。

 110例中40例(36.4%)がCOVID-19への直接的な効果を期待して治療介入が行われた。治療介入の内容は、ステロイド24例(21.8%)、レムデシビル21例(19.1%)、ファビピラビル10例(9.1%)、トシリズマブ5例(4.5%)、シクレソニド2例(1.8%)であった。抗血栓・抗凝固療法は予防目的13例(11.8%)、治療目的2例(1.8%)であった。入院期間中に行われた酸素投与は、鼻カニューレもしくはマスク21例(19.1%)に、ネーザルハイフロー8例(7.3%)であった。5例(4.5%)がICUで重症治療を受け、ICU滞在期間の中央値は12(8-13)日であった。5例のうち、3例(2.7%)に人工呼吸器管理、1例(0.9%)に体外式膜型人工肺(ECMO)装着が行われた。全入院期間の中央値(四分位範囲)は16(12-23)日で、入院期間中にPCR2回陰性を確認した80例(72.7%)における入院から2回陰性までの期間の中央値(四分位範囲)は15(12-19)日であった。3例(2.7%)に細菌性肺炎、3例(2.7%)に急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を認めた。98例(89.1%)が自宅退院し、1例(0.9%)(人工呼吸器管理は行わずにネーザルハイフローによる酸素投与実施)が死亡退院した。重症例(ICUでの治療や人工呼吸器等による治療を行った症例または死亡した症例)は6例(5.5%)で、全例VOC-202012/01であった()。

 *D-ダイマー上昇*
 COVID-19は凝固能の異常を起こし血栓傾向を示すことが指摘されているが、凝固能の異常を起こす際に血液検査所見としてD-ダイマーの上昇を認める。

考 察

 調査対象の大多数(105例、95.5%)がVOC-202012/01で、年齢層の中心は比較的若年層であった。入院時に酸素需要があったのは9例(8.2%)であったが、入院中に21例(19.1%)が鼻カニューレもしくはマスクによる、8例(7.3%)がネーザルハイフローによる酸素投与を必要とした。重症例は6例(5.5%)で、入院していない症例も含めた従来株におけるこれまでの重症化の割合(約1.6%)と比較すると高い値であったが、調査対象者数が限定的であることや、入院時の重症度や基礎疾患等、重症化の割合に影響を与える因子の調整を行っていないことから、新規変異株の症例における重症化の割合が従来株の症例より高いかどうかについて結論づけることは困難である2)。重症例は全例VOC-202012/01で(広島県2例、埼玉県、東京都、大阪府、兵庫県各1例ずつ)、年齢の内訳は、40代1例、50代1例、70代2例、80代2例であった。

制 限

 本調査には複数の制限がある。はじめに、本調査は入院症例を対象に行われた。新規変異株症例は原則入院対応とされているが、変異株と判明した時期、地域のCOVID-19の発生状況等の理由により入院しなかった無症状や軽症症例が調査対象とならなかった可能性がある。2つめに、全国で届け出されたCOVID-19全例にゲノム検査が実施されたわけではない。3つめに本調査の第1報は迅速性を重視するために記述疫学のみに限定した。

結 論

 本調査では、日本国内のCOVID-19新規変異株の疫学的・臨床的特徴を初めて明らかにした。今後、新規変異株における重症例と非重症例の比較、従来株と新規変異株との比較等の解析が期待される。

 謝辞:本調査にご協⼒いただいております各自治体関係者および各医療関係者の皆様に⼼より御礼申し上げます。本稿は、次の医療機関からお送りいただいた情報をもとにまとめています。

 岡山大学病院、小樽市立病院、鹿児島市医師会病院、金沢赤十字病院、関西医科大学総合医療センター、岐阜赤十字病院、京都中部総合医療センター、県立広島病院、公益財団法人甲南会甲南医療センター、神戸市立医療センター中央市民病院、公立岩瀬病院、国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院、国立大学法人千葉大学医学部附属病院、埼玉医療生活協同組合羽生総合病院、自衛隊阪神病院、自治医科大学附属さいたま医療センター、社会福祉法人恩賜財団済生会支部神奈川県済生会横浜市東部病院、社会福祉法人新潟市社会事業協会信楽園病院、市立芦屋病院、市立札幌病院、高砂市民病院、立川綜合病院、地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪急性期・総合医療センター、地方独立行政法人広島市立病院機構広島市立舟入市民病院、東京医科大学八王子医療センター、東京都立駒込病院、独立行政法人国立病院機構指宿医療センター、独立行政法人国立病院機構西新潟中央病院、独立行政法人地域医療機能推進機構北海道病院、長岡赤十字病院、新潟県厚生農業協同組合連合会長岡中央綜合病院、新潟県地域医療推進機構魚沼基幹病院、新潟県立加茂病院、新潟県立新発田病院、新潟県立燕労災病院、新潟県立吉田病院、新潟市民病院、藤沢市民病院、富士宮市立病院、防衛医科大学校病院、北海道大学病院、前橋赤十字病院、横浜市立市民病院(五十音順)

 

引用文献
  1. 国立感染症研究所, 日本国内で報告された新規変異株症例の疫学的分析(第1報)
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/10279-covid19-40.html
  2. 厚生労働省, 新型コロナウイルス感染症の”いま”に関する11の知識(2021年2月時点)
    https://www.mhlw.go.jp/content/000749530.pdf

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