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掲載日:2021年6月17日

第39回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年6月16日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第39回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版(準備中)

感染状況について

全国の新規感染者数は、報告日別では、減少が続いており、直近の1週間では10万人あたり約9となっている。感染拡大が見られていた地域では減少傾向となっている。しかし、人流の増加が見られ減少速度が鈍化する地域もあり、そうした地域では、今後リバウンドが懸念される。

新規感染者数の減少に伴い、重症者数も減少が続いており、死亡者数も減少に転じている。

実効再生産数:
全国的には、低下傾向で、直近(5/30時点)で0.78と1を下回る水準が継続。

2021年6月14日
(掲載日:2021年6月16日)

国立感染症研究所
厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード・
データ解析チーム

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要約

本報告では、2021年4月以降に実施されたまん延防止等重点措置(重点措置)と緊急事態宣言が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行動態に及ぼした効果について定量的評価を行った。流行動態の評価指標(アウトカム)としてCOVID-19の新規報告患者数と実効再生産数を、代替指標としてヒト移動データと繁華街の滞留人口を用いた。方法論は、大きく分類して分割時系列解析と実効再生産数の推定の2つのアプローチを採用した。

分割時系列解析では、COVID-19新規症例数、および6つのエリアカテゴリ(小売・娯楽、食料品店・薬局、公園、乗換駅、職場、住宅)における人流データを分析した。新規症例数については、毎日のPCR検査数やN501Y変異株の検査陽性率等を調整した準ポアソン回帰モデルを用いて、重点措置および緊急事態宣言の効果が現れるまでの期間(lag)を8日から16日までと仮定して分析を行った。大阪府においては、重点措置と緊急事態宣言のどちらについても、全てのlagにおいて、その適用後に新規症例数の推移のトレンドに減少変化がみられた。両措置に効果があった可能性が示唆された。一方、東京都においては、重点措置のlag=11日以降、緊急事態宣言のlag=8日以降で、新規症例数の推移のトレンドに減少変化がみられたが、分析時点のデータでは緊急事態宣言のlag=12日のみで統計学的な有意性を認めた。人流データについては、前日の新規症例数やN501Y変異株陽性数などを調整したロバスト線形回帰モデルを用いて分析を行った。重点措置および緊急事態宣言の効果は多くのエリアカテゴリで示唆されたが、措置前後での推移のトレンド変化は限定的であった。

実効再生産数の推定では、感染時刻別の実効再生産数の最尤推定を実施した。基準となる期間(ベースライン)を措置開始前の7日間ないし14日間として、措置実施中の同期間あるいは措置全期間との間で、再生産数の相対的および絶対的減少に関して評価を行った。対象は2021年4月以降に重点措置が実施された16都道府県(大阪府、兵庫県、東京都、京都府、沖縄県、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、愛媛県、北海道、岐阜県、三重県、群馬県、石川県、熊本県)、および緊急事態宣言が発出された10都道府県(大阪府、兵庫県、京都府、東京都、福岡県、愛知県、北海道、岡山県、広島県、沖縄県)とした。対象期間の設定によって結果に幅があるが、重点措置が実施された16都道府県のうち、措置開始後に実効再生産数が1を下回ったのは6県であり、平均的な実効再生産数の相対的減少は2-19%程度と推定された。他方、分析対象とした緊急事態宣言期間中に沖縄県を除く全ての都道府県(9都道府県)で実効再生産数が1を下回った。緊急事態宣言による平均的な実効再生産数の相対的減少は26-39%程度と推定された。措置の内容や措置開始時のステージ指標と実効再生産数の絶対的減少・相対的減少との間に明確な関連はほとんど認めなかった。

繁華街の滞留人口に関するベクトル自己回帰分析では、緊急事態宣言により東京都では夕方と夜間の滞留人口が、大阪府では昼間、夕方、夜間の滞留人口が抑制されていた。一方で東京都、大阪府ともに重点措置による滞留人口の抑制は限定的であった。

本報告の時系列解析では、重点措置や緊急事態宣言以外に新規症例数や人流に影響を与える交絡因子の一部しか考慮できていないこと、また都道府県単位の人口レベルの分析であり措置が適用される地域や業種などの集団に特異的な分析ではないことが限界である。特に、人々の流行の認知に伴う心理的効果や、措置とは独立の社会経済活動の背景状況などについては、十分に検討する必要がある。両措置の効果に関して本分析を通じて疫学的に結論づけることは困難であるが、(1)大阪における措置の時系列の患者数変化は東京よりも顕著であり、(2)重点措置で実効再生産数が1を下回ったのは16都道府県のうち6県であった一方で、緊急事態宣言では10都道府県のうち9都道府県であり、再生産数の相対的減少の程度も重点措置より大きかった。追加情報やコンプライアンス、年齢構造なども加味した上で継続的に評価を行うことが求められる。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan