国立感染症研究所

新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 関連情報ページ

(このページでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 関連の記事を、掲載日が新しい順に表示しています)

掲載日:2022年4月14日

第80回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年4月13日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第80回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版

感染状況について

全国の新規感染者数(報告日別)は、直近の1週間では10万人あたり約274で、今週先週比が1.06と増加傾向が続いている。年代別の新規感染者数は10代以下で減少傾向に転じる一方、50代以上で増加傾向が見られる。

全国の新規感染者数の増加傾向に伴い、療養者数も増加傾向が続いている。一方、これまでの新規感染者数減少の動きに伴い、重症者数及び死亡者数は減少が継続している。

実効再生産数:
全国的には、直近(3/27)で1.03と1を上回る水準となっており、首都圏、関西圏ともに1.02となっている。

 

国立感染症研究所

20224月11

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  •        SARS-CoV-2を含めRNAウイルスにおいて遺伝子組換え(2種あるいはそれ以上の同種または近縁ウイルス間で、遺伝子の一部が組換わったゲノムを有するウイルスが生成すること)が起こりうることはよく知られている。異なる系統のウイルスが宿主に同時感染することで生じると考えられるが、SARS-CoV-2についても異なる系統間の組換え体と考えられるウイルスが検出される事例がある。
  •        これまで、アルファ株(B.1.1.7系統)とB.1.177系統の組換え体(XA系統)、B.1.634系統とB.1.631系統の組換え体(XB系統)、アルファ株(B.1.1.7系統)とデルタ株(AY.29系統)の組換え体(XC系統)、デルタ株とオミクロン株の組換え体(XD、XF、XS系統)にPANGO系統が付与されてきた。
  •        最近では、世界的なオミクロン株感染者の急増、そしてBA.1系統からBA.2系統への置き換わりが進行する中で、世界各地からこれらの組換え体が報告されており、PANGO系統が付与されてきている(XE, XG, XH, XJ, XK, XL, XM, XN, XP, XQ, XR)。また、PANGO系統がまだ付与されていない組換え箇所等が異なるオミクロン株の組換え体も世界各地から報告されている。
  •       これらの組換え体の多くは、形質の変化は明らかになっていないが、唯一、XE系統については、イングランドではコミュニティ伝播が認められており、感染者の増加する速度がBA.2より12.6%高いことを報告している。なお、直近3週間に限れば20.9%高いとの解析結果もあるが、検査政策の変更の影響等含めて精査中であり、XE系統の増加優位性を示す数値として解釈すべきではないとしている。イングランドでは4月5日時点で1,125件が報告されているが、全体に占める割合は1%未満である。その他GISAIDには、米国(3件)、デンマーク(1件)、アイルランド(1件)よりGISAIDに登録があり、さらに他の国からも検出されたことを報告する報道がある。重症度等の形質の変化に関する報告はない。英国は、現在流行中の変異株に比べて生物学的に性質が異なると考えられる"Variants"の一つに位置付け、ECDCはVUM(監視下の変異株)に位置付けている。
  •        このXE系統について、国立感染症研究所は、検疫で2022年3月26日に採取された検体から1件を確認した。PANGO系統判定プログラムで判定不能であったため、遺伝子配列の解読データを確認し、遺伝子配列の詳細な解析を行った結果、XE系統と判定した。なお、このXE系統が英国で流行しているものに由来するか、それとは異なる場所で生じた組換え体であるかはゲノム情報だけから判定することはできない。
  •        XE系統は、ウイルスの抗原性を規定し標的細胞への侵入に関与するスパイクタンパク質はBA.2系統と同一であり、ウイルス粒子の基本的な性状はBA.2系統の形質を有すると考えられる。ウイルスのスパイクタンパク質を標的とする中和抗体医薬やワクチンの効果も、BA.2系統に対する効果と同等と考えられるが、組換え箇所にコードされるウイルス遺伝子の機能変化等のゲノム組換え現象がウイルス感染に与える影響については不明であり、感染伝播性や病原性などのウイルスの形質の変化の有無や感染拡大状況を注視していく必要がある。国立感染症研究所の病原体検出マニュアルに記載のPCR検査法のプライマー部分に変異は無く、検出感度の低下はないと考えられる。
  •       また、遺伝子配列上はオミクロン株間の組換え体と考えられる検体が検疫でほかに2検体検出されているが、これまで分類されている系統には該当せず、PANGO系統は判定できなかった。
  •        国内では、過去にXC系統(AY.29系統とB.1.1.7系統)の組換え体を国内で検知した例がある。XC系統は計24検体を検出したものの、2021年10月16日を最後にその後検出されていない。デルタ株とオミクロン株、オミクロン株間の組換え体は国内では検出されていない。
  •       XE系統に限らず、また、組換え体に限らず、感染拡大状況を注視し、感染・伝播性や免疫回避等の生物学的性質が大幅に変化し社会に大きなインパクトをもたらす変異株の発生を監視していく必要がある。引き続き、諸外国の状況や知見等も収集しつつ、ゲノムサーベイランスによる監視を行っていく。

参考文献

  •       国立感染症研究所. 感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株について (第15報). 2022年3月28日時点.
  •       Sekizuka T, et al. Genome Recombination between Delta and Alpha Variants of Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 (SARS-CoV-2). Jpn J Infect Dis. 2022 Feb 28. doi: 10.7883/yoken.JJID.2021.844.
  •       UK Health Security Agency. SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England: Technical briefing 40. 8 April 2022.

 

掲載日:2022年4月7日

第79回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年4月6日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第79回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版

感染状況について

全国の新規感染者数(報告日別)は、直近の1週間では10万人あたり約259で、今週先週比が1.08と増加傾向となっており、今後の動向に注意が必要。また、年代別の新規感染者数は全ての年代で増加傾向に転じており、特に10-20代の増加が顕著。

全国の新規感染者数の増加傾向に伴い、療養者数も増加傾向に転じている。一方、これまでの新規感染者数減少の動きに伴い、重症者数及び死亡者数は減少が継続している。

実効再生産数:
全国的には、直近(3/20)で0.97と1を下回る水準となっており、首都圏では0.97、関西圏では0.93となっている。

掲載日:2022年3月31日

第78回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年3月23日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第78回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版

感染状況について

全国の新規感染者数(報告日別)は、直近の1週間では10万人あたり約240で、今週先週比が1.04となり、足下で増加傾向となっているが、先週の連休の影響もあるため今後の動向に注意が必要。

全国のこれまでの新規感染者数減少の動きに伴い、療養者数、重症者数及び死亡者数は減少が継続している。

 

実効再生産数:
全国的には、直近(3/13)で0.95と1を下回る水準となっており、首都圏では0.95、関西圏では0.90となっている。

 

国立感染症研究所

2022年3月28日9:00時点

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変異株の再分類

  •   2021年11月28日にB.1.1.529系統を懸念される変異株(VOC)と位置付けて以来、オミクロン株は国外でも、国内でも割合が増加しデルタ株からの置き換わりが進行し、世界でも過去30日間にゲノム解析されGISAID登録されたウイルス株の99.8%を占め、デルタ株が0.1%を占めるのみとなった(WHO, 2022)。国内でも全てオミクロン株に置き換わった状況にある。変異株の流行状況が大きく変化したことから、変異株の分類を見直すこととした。
  •   B.1.351系統の変異株(ベータ株)、P.1系統の変異株(ガンマ株)については、世界的に検出数は継続して減少し、GISAIDデータベース上では最終検出日は、それぞれ、2021年12月30日、2022年1月10日と2カ月以上にわたって検出されていない。そのため、監視下の変異株(VUM)に位置付けを変更する。
  •   B.1.617.1系統の変異株(旧カッパ株)、C.37系統の変異株 (ラムダ株)、B.1.621系統の変異株 (ミュー株)についても、世界的に検出数は減少し、GISAIDデータベース上での最終検出日は、それぞれ、2022年2月14日、2022年1月29日、2022年2月11日である。国内では、旧カッパ株は2021年5月7日、ミュー株は2021年8月4日が最後の検出日であり、ラムダ株は国内では検出されていない。そのため、VUMの位置付けから除外する。
  •   AY.4.2系統の変異株については、GISAIDデータベース上での最終検出日は2022年2月17日で、国内では検出されたことがない。デルタ株全体として大幅に検出が減少しており、デルタ株の中でAY.4.2について現状で特段増加の優位性を認めるものではないことから、VUMの位置付けから除外する。
  •   以前よりVUMに位置付けていたB.1.1.7系統の変異株(アルファ株)については、国内では2021年10月1日以降登録がないが、GISAIDデータベース上では現在も散発的に登録がある。そのため、VUMの位置付けを維持する。

デルタ株とオミクロン株の組換え体について

  •   SARS-CoV-2を含めRNAウイルスにおいて遺伝子組換え(2種あるいはそれ以上の同種または近縁ウイルス間で、遺伝子の一部が組換わったゲノムを有するウイルスが生成すること)が起こりうることはよく知られている。異なる系統のウイルスが宿主に同時感染することで生じると考えられるが、SARS-Co-V-2についても異なる系統間の組換え体と考えられるウイルスが検出された事例があり、PANGO系統(XA/XB/XC系統)に分類されているものもある。
  •   デルタ株とオミクロン株の組換え体は、おそらくは、デルタ株からオミクロン株への置き代わりの時期に、ヒトなどでの共感染によって出現し、感染が維持されたものが検出されていると考えられる。いくつかの組換え体については、PANGO系統の付与、あるいはモニタリング対象として指定されているほか、英国は、デルタ株とオミクロン株の組換え体を包括的にVariants in monitoring(監視中の変異株)として扱っている(UK Health Security Agency, 2022a)
  •   そのほかにも、組換えを起こした系統や組換わった部分が異なる複数種類のデルタ株とオミクロン株の組換え体が報告されている。これらの組換え体のウイルス学的な性質や感染者における症状等はまだ明らかではなく、特段これまでの変異株と形質が異なるという所見はない(WHO. COVID-19 Weekly Epidemiological Update, Edition 84, published 22 March 2022)。また、検出数も多くはなく、引き続きゲノムサーベイランスの中で動向を監視していく。

表1 国立感染症研究所による国内における変異株の分類(2022年3月28日時点)

分類

定義

主な対応

該当

変異株

懸念される変異株

(VOC; Variants of Concern)

公衆衛生への影響が大きい感染・伝播性、毒力*、及び治療・ワクチン効果の変化が明らかになった変異株

対応

 ・週単位で検出数を公表(IDWR)

 ・ゲノムサーベイランス(国内・検疫)で監視

 ・必要に応じて変異株PCR検査で監視

 ・積極的疫学調査

デルタ株

オミクロン株

注目すべき変異株

(VOI; Variant of Interest)

公衆衛生への影響が見込まれる感染・伝播性、毒力、及び治療・ワクチン効果や診断に影響がある可能性がある、又は確実な変異株で、国内侵入・増加の兆候やリスクを認めるもの(以下、例)

・検疫での一定数の検知

・渡航例等と無関係な国内での検出

・国内でのクラスター連鎖

・日本との往来が多い国での急速な増加

警戒

 ・週単位で検出数を公表(IDWR)

 ・ゲノムサーベイランス(国内・検疫)で監視

 ・積極的疫学調査

 ・必要に応じて変異株PCR検査の準備

該当なし

監視下の変異株

(VUM; Variants Under Monitoring)

公衆衛生への影響が見込まれる感染・伝播性、毒力、及び診断・治療・ワクチン効果に影響がある可能性がある変異を有する変異株

また、VOCやVOIに分類された変異株であっても、以下のような状況では、本分類に一定期間位置付ける

・世界的に検出数が著しく減少

・追加的な疫学的な影響なし

・国内・検疫等での検出が継続的に僅か

・特に懸念される形質変化なし

監視

 ・発生状況や基本的性状の情  報収集

 ・ゲノムサーベイランス(国内・検疫)で監視

 ・(VOC/VOIからVUMに移行後国内発生が継続するものは)週単位で検出数を公表 (IDWR)

アルファ株

ベータ株

ガンマ株

* 毒力virulence: 病原体が引き起こす感染症の重症度の強さ

IDWR: 感染症発生動向調査週報

 

参考 主な変異株の各国における位置付け(2022年3月28日時点)

系統名

感染研

WHO*

ECDC

英国HSA

CDC

B.1.617.2系統

(デルタ株)

VOC

currently circulating VOC

VOC

VOC

VOC

B.1.1.529系統

(オミクロン株)

VOC

currently circulating VOC

VOC

VOC

VOC

B.1.1.7系統

(アルファ株)

VUM

previously circulating VOC

De-escalated variant

VOC

VBM

B.1.351系統

(ベータ株)

VOC

→VUM

previously circulating VOC

VOC

International VOC

VBM

P.1系統

(ガンマ株)

VOC

→VUM

previously circulating VOC

VOC

VOC

VBM

B.1.617.1系統

(旧カッパ株)

VUM

→なし

previously circulating VOI

De-escalated variant

なし

VBM

C.37系統

(ラムダ株)

VUM

→なし

previously circulating VOI

De-escalated variant

なし

なし

B.1.621系統

(ミュー株)

VUM

→なし

previously circulating VOI

De-escalated variant

International VUI

VBM

AY.4.2系統

(デルタ株の
 一亜系統)

VUM

→なし

なし

De-escalated variant

VUI

なし

VOC: Variant of Concern(懸念される変異株)、VOI: Variant of Interest(注目すべき変異株)、VUI:Variant under Investigation(調査中の変異株)、VUM: Variant under Monitoring(監視下の変異株)、VBM: Variant being Monitored(監視中の変異株)、De-escalated variant(警戒解除した変異株)

* WHOは2022年3月22日よりVOCとVOIについて、previously circulating(かつて流行していた)とcurrently circulating(現在流行中)の2種類に分けている。

 

引用文献

  •   European Centre for Disease Prevention and Control. SARS-CoV-2 variants of concern as of 17 March 2022. https://www.ecdc.europa.eu/en/covid-19/variants-concern.
  •   UK Health Security Agency. SARS-CoV-2 variant data update, England. Version 24. 11 March 2022a. https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1060192/routine-variant-data-update-24-data-england-11-March-2022.pdf.
  •   UK Health Security Agency. SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England. Technical briefing 39. 25 March 2022b.
  •   WHO. COVID-19 Weekly Epidemiological Update, Edition 84, published 22 March 2022. https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---22-march-2022.

 

 

注意事項

  •   迅速な情報共有を目的とした資料であり、内容や見解は情勢の変化によって変わる可能性がある。

更新履歴

第15報   2022/03/28 9:00 時点       注)タイトル変更

             「感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念されるSARS-CoV-2の変異株について」

第14報   2021/10/28  12:00時点

13   2021/08/28  12:00 時点

12   2021/07/31  12:00 時点

11   2021/07/17  12:00 時点

10報 2021/07/06  18:00時点

  報 2021/06/11 10:00時点

      2021/04/06 17:00 時点

     2021/03/03 14:00時点 

      2021/02/12 18:00時点

5報 2021/01/25 18:00時点 注)タイトル変更

  「感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念されるSARS-CoV-2の新規変異株について」

  報 2021/01/02 15:00時点

  報 2020/12/28 14:00時点 

  2報 2020/12/25 20:00時点 注)第1報からタイトル変更

         「感染性の増加が懸念されるSARS-CoV-2新規変異株について」

  1報 2020/12/22 16:00時点

     「英国における新規変異株(VUI-202012/01)の検出について」

 

 

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単科精神科病院の療養病棟で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)集団感染事例の血清疫学調査(第三報:臨床的背景)

(IASR Vol. 43 p74-76: 2022年3月号)

 
はじめに

 我々はこれまでに2020年9月に県内の単科精神科病院において発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の集団感染事例とその対応, および血清疫学調査の結果を報告した1,2)。本稿では本調査の対象となった患者の精神科診断や治療の状況, COVID-19の重症化因子や重症度等の臨床情報をまとめた。併せてワクチン接種後にみられた発熱の状況について報告する。

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新型コロナウイルスオミクロン株のスクリーニングPCR法の検出感度の違いについて

(IASR Vol. 43 p76-77: 2022年3月号)

 
はじめに

 現在, 国内では新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン株スクリーニングの目的で, デルタ株に認められるL452R変異がオミクロン株では陰性となることを利用したPCR検査が実施されている1)。しかしながら, 当所におけるL452R変異検出PCR検査では, L452R変異判定不能となる検体の割合が多かった。一方, 2022年1月に, オミクロン株を検出できるPrimer/Probe G339D(SARS-CoV-2)が市販され, G339D変異検出PCR法を用いてオミクロン株のスクリーニングが可能になった。このため, 我々はSARS-CoV-2陽性検体を用いて, L452R変異PCR法とG339D変異PCR法によるオミクロン株のスクリーニングPCR法の検出感度を比較検討した。

国立感染症研究所
(掲載日:2022年3月28日)

人は、咳、くしゃみ、会話、歌、呼吸などの際に、鼻や口からさまざまな大きさや性状をもった粒子を空中に放出する[1-5]。粒子はその大きさや含まれる液体の量によって空中での振る舞いが異なる。液体を含んだ大きな粒子は、放出されてから数秒から数分以内に落下するが、小さな粒子や乾燥した粒子は、空中に数分から数時間にわたって浮遊する[2-5]。従来、これらの粒子については大きさや性状に応じて飛沫やエアロゾルと呼ばれてきた [4,5]。

SARS-CoV-2は、感染者の鼻や口から放出される感染性ウイルスを含む粒子に、感受性者が曝露されることで感染する。その経路は主に3つあり、①空中に浮遊するウイルスを含むエアロゾルを吸い込むこと(エアロゾル感染)、②ウイルスを含む飛沫が口、鼻、目などの露出した粘膜に付着すること(飛沫感染)、③ウイルスを含む飛沫を直接触ったか、ウイルスが付着したものの表面を触った手指で露出した粘膜を触ること(接触感染)、である[1,2]。

実際にどの経路で感染するのかは、感染者から放出される感染性ウイルスを含む粒子の量や環境条件によって決まり、必ずしも1つであるとは限らない。感染者が呼吸をすると粒子が放出され、大きな声を出したり、歌ったりすると、放出される粒子の量が増える[6-8]。また感染者との距離が近いほど(概ね1-2メートル以内)感染する可能性が高く、距離が遠いほど(概ね1-2メートル以上)感染する可能性は低くなる[1,2]。特に換気が悪い環境や密集した室内では、感染者から放出された感染性ウイルスを含む粒子が空中に漂う時間が長く、また距離も長くなる。こうした環境に感染者が一定時間滞在することで、感染者との距離が遠いにもかかわらず感染が発生した事例が国内外で報告されている[9-12]。

このようなSARS-CoV-2の感染が起こりやすい環境条件をわかりやすく説明したものが、「3つの密」と呼ばれる概念である[1,13,14]。

密閉:換気の悪い閉じられた環境
密集:狭い空間に多くの人が集まっている環境
密接:お互いの距離が近く、特に会話をしている環境

3つの条件に1つでも当てはまる環境に感染者と感受性者が滞在すると、感染が成立する可能性は高くなり、さらに3つの条件がそろうとより高くなる[1]。

なお、呼吸器感染症の感染経路については国際的に研究が進められており、これらの知見は今後更新される可能性がある。

参考文献
  1. World Health Organization (WHO), “Coronavirus disease (COVID-19): How is it transmitted?” (2021); who.int/news-room/q-a-detail/coronavirus-disease-covid-19-how-is-it-transmitted.
  2. S. Centers for Disease Control and Prevention (CDC), “Scientific brief: SARS-CoV-2 transmission” (2021); www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/science/science-briefs/sars-cov-2-transmission.html.
  3. Gesellschaft für Aerosolforschung, “GAeF position paper on understanding the role of aerosol particles in SARS-CoV-2 infection” (2020); https://ae00780f-bbdd-47b2-aa10-e1dc2cdeb6dd.filesusr.com/ugd/fab12b_0b691414cfb344fe96d4b44e6f44a5ab.pdf
  4. Jones RM, et al. Aerosol transmission of infectious disease. J Occup Environ Med. 2015 May;57(5):501-8.
  5. Wang CC, et al. Airborne transmission of respiratory viruses. Science. 2021 Aug 27;373(6558):eabd9149.
  6. Stadnytskyi V, et al. The airborne lifetime of small speech droplets and their potential importance in SARS-CoV-2 transmission. Proc Natl Acad Sci U S A. 2020 Jun 2;117(22):11875-7.
  7. Alsved M, et al. Exhaled respiratory particles during singing and talking. Aerosol Sci Technol. 2020;54:1245–8.
  8. Alsved M, et al. SARS-CoV-2 in exhaled aerosol particles from covid-19 cases and its association to household transmission. Clin Infect Dis. 2022 Mar 10:ciac202.
  9. Jang S, et al. Cluster of Coronavirus Disease Associated with Fitness Dance Classes, South Korea. Emerg Infect Dis. Aug 2020;26(8):1917-20.
  10. Cai J, et al. Indirect Virus Transmission in Cluster of COVID-19 Cases, Wenzhou, China, 2020. Emerg Infect Dis. 2020 Jun;26(6):1343-5.
  11. Katelaris AL, et al. Epidemiologic Evidence for Airborne Transmission of SARS-CoV-2 during Church Singing, Australia, 2020. Emerg Infect Dis. 2021 Jun;27(6):1677-80.
  12. Toyokawa T, et al. Transmission of SARS-CoV-2 during a 2-h domestic flight to Okinawa, Japan, March 2020. Influenza Other Respir Viruses. 2021 Oct 3.
  13. Furuse Y, et al. Clusters of Coronavirus Disease in Communities, Japan, January-April 2020. Emerg Infect Dis. 2020 Sep;26(9):2176–9.
  14. Furuse Y, et al. COVID-19 case-clusters and transmission chains in the communities in Japan. J Infect. 2021 Aug 11:S0163-4453(21)00399-6.
 

掲載日:2022年3月24日

第77回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年3月23日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第77回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版

感染状況について

全国の新規感染者数(報告日別)は、今週先週比が0.79となり、直近の1週間では10万人あたり約232と減少が継続しているが、連休による数値への影響に注意が必要。 また、年代別の新規感染者数は全ての年代で減少が継続している。

重点措置区域の適用が解除された18都道府県すべてにおいて、今週先週比が1以下となっている。

全国の新規感染者数減少の動きに伴い、療養者数、重症者数及び死亡者数は減少が継続している。

実効再生産数:
全国的には、直近(3/7)で0.96と1を下回る水準となっており、首都圏では0.97、関西圏では0.92となっている。

国立感染症研究所
(掲載日:2022年3月20日)

2022年2月10日に開催された厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(1)で、5~11歳の小児に対しても予防接種法に基づく特例臨時接種として実施される方針が決まり(努力義務の適用は除外)、2022年2月21日の省令改正で、5~11歳用のファイザー製新型コロナワクチンの接種が可能となりました。2022年3月13日現在、国内ではファイザー製(12歳以上用、5~11歳用)、武田/モデルナ製、アストラゼネカ製の4種類の新型コロナワクチン(以下、ワクチン)が使用されています。 2021年12月1日から、18歳以上の者を対象としてファイザー製ワクチンによる追加接種(3回目接種)が始まり、2021年12月17日からは、武田/モデルナ製ワクチンも追加接種(3回目接種)可能となりました。2022年3月13日現在、2種類のワクチンが追加接種に使用されています。初回接種で使用したワクチンとは異なる種類のワクチンで追加接種すること(交互接種)も可能です。

2022年3月11日現在の国内での総接種回数は2億3,805万214回で、このうち高齢者( 65歳以上 )は9,033万7,971回、職域接種は1,977万3,546回、小児は2万3,158回でした。2022年3月10日時点の1回以上接種率は全人口(1億1,461万7,716人: 令和3年1月1日現在の住民基本台帳に基づくもの )の80.4%、2回接種完了率は79.3%、3回接種完了率は28.3%でした。また、高齢者の1回以上接種率は、65歳以上人口(3,576万7,994 人: 令和3年1月1日現在の住民基本台帳に基づくもの)の92.7%、2回接種完了率は92.4%、3回接種完了率は67.4%でした。

2022年3月7日公表時点の年代別接種回数別被接種者数と接種率/接種完了率( 図1 )を示します。また、新規感染者数と累積接種割合についてまとめました( 図2 )。

図1 年代別接種回数別被接種者数・接種率/接種完了率(首相官邸ホームページ公表数値より作図):2022年 3月 7日公表時点

注)被接種者の年齢分布は、ワクチン接種記録システム(VRS)に報告済みのデータのみにより把握可能なため、接種率の算出においては、VRSへ報告された、一般接種(高齢者を含む)と先行接種対象者(接種券付き予診票で接種を行った優先接種者)の合計回数が使用されています。使用回数には、首相官邸HPで公表している総接種回数のうち、職域接種及び先行接種対象者のVRS未入力分である約100万回分程度が含まれていません。年齢階級別人口は、総務省が公表している「令和3年住民基本台帳年齢階級別人口(市区町村別)」のうち、各市区町村の性別及び年代階級の数字を集計したものを利用し、12~19歳人口は10~14歳人口を5分の3したものに、15~19歳人口を加えたものが使用されています。

図2 日本_新規感染者数および新規死亡者数と累積接種割合の推移 [データ範囲:2020年1月22日~2022年3月7日]下記データより作図.Roser M, Ritchie H, Ortiz-Ospina E and Hasell J. (2020) - "Coronavirus Pandemic (COVID-19)". Published online at OurWorldInData.org. Retrieved from: 'https://ourworldindata.org/coronavirus' [Online Resource](閲覧日2022年3月9日)

参考文献

  1. 厚生労働省:第30回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000192554_00019.html(閲覧日2022年3月13日)

今回は、下記の内容について、最近のトピックスをまとめました。

【本項の内容】
  • 海外のワクチン接種の進捗と感染状況の推移・・・・・・・・・ 3
  • ワクチン既接種者からの二次感染予防効果・・・・・・・・・・ 9
  • Long COVIDに対するワクチン効果・・・・・・・・・・・・・ 11
  • 母体へのワクチン接種による出生児への効果について・・・・・ 13
  • オミクロン株出現後の小児におけるファイザー製ワクチンの有効性の変化・・・・・・ 15

新型コロナワクチンについて ( 2022 年3月13日現在 )

 

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