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(IASR Vol. 43 p22-23: 2022年1月号)
福井県における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)第5波の期間(2021年7月20日~10月14日)において, 県内の高齢者施設(施設)で計39例のCOVID-19症例の集積が確認された。当該施設の全職員62名, 入所者68名(A階の居室:29名, B階の居室:39名)は2021年4~7月に2回のワクチン接種を終え, ワクチン接種率は100%であったにもかかわらずクラスターが発生し, いわゆるブレイクスルー感染集団発生事例であった。今回, ブレイクスルー感染のクラスターがどのような状況, 環境下において発生したのかを明らかにし, 今後の対策に資するため, 実地疫学調査を行ったので, その結果について報告する。
掲載日:2022年1月27日
第69回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年1月26日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第69回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。
全国の新規感染者数(報告日別)は、今週先週比は2.2と急速な増加が続き、直近の1週間では10万人あたり約276となっている。新規感染者は20代以下を中心に増加しているが、年代別の割合では20代が減少する一方、10歳未満が増加している。まん延防止等重点措置が適用されている16都県のうち、沖縄県以外の15都県では急速な増加が継続している。沖縄県では今週先週比が1を下回る水準となっているが、新規感染者について20代中心に若年層で減少する一方、60代以上で増加していることに留意が必要。また、重点措置区域以外の地域でも新規感染者数の急速な増加が継続している。全国で新規感染者数が急速に増加していることに伴い、療養者数が急増し、重症者数も増加している。
オミクロン株のいわゆる市中感染が拡大しており、多くの地域でオミクロン株への急速な置き換わりが進んでいるが、引き続き、デルタ株も検出されている。
国立感染症研究所
(掲載日:2022年1月20日)
2022年1月12日現在、国内ではファイザー製、武田/モデルナ製、アストラゼネカ製の新型コロナワクチン(以下、ワクチン)が使用されています。ファイザー製と武田/モデルナ製の接種対象は12歳以上で、アストラゼネカ製の接種対象は原則40歳以上です。
また、2021年12月1日から18歳以上の者を対象として、ファイザー製ワクチンによる追加接種(3回目接種)が始まり、2021年12月17日からは、武田/モデルナ製ワクチンも追加接種(3回目接種)可能となりました。2回目接種と3回目接種の接種間隔は下記に示すとおりです(表1)。
表1 2回目接種と3回目接種の接種間隔対象 | 2022年1月 | 2022年2月 | 2022年3月以降 |
医療従事者等や高齢者施設等の入所者等 | 6か月 | 6か月 | 6か月 |
その他の高齢者 | 8か月 | 7か月 | 6か月 (前月より1か月短縮) |
64歳以下 | 8か月 | 8か月 | 7か月 |
※ なお、自治体によっては上記スケジュールから前倒しになることがあります。
初回接種(1回目・2回目接種)で使用したワクチンとは異なる種類のワクチン(ファイザー製、武田/モデルナ製)で追加接種すること(交互接種)も可能です。なお、武田/モデルナ製ワクチンによる追加接種は、初回接種の半量で実施する必要があるため注意が必要です(初回接種:1回0.5mL、追加接種:1回0.25mL)。
米国では2021年10月29日、5~11歳の小児に対するファイザー製ワクチン(以下、小児用ファイザー製ワクチン)の緊急使用許可( Emergency Use Authorization:EUA )が承認されました。2021年11月2日に開催された予防接種の実施に関する諮問委員会(Advisory Committee on Immunization Practices:ACIP)で5~11歳への接種推奨が決まり、11月3日~12月19日までに約870万回の接種が実施されました(1)。国内では2021年11 月 10 日に小児用ファイザー製ワクチンの薬事申請がなされ、現在審査中ですが、各自治体で接種開始に向けた準備が進められています。なお、小児用ファイザー製ワクチンは12歳以上用とは生理食塩水での希釈量 (小児用:1.3mL、12歳以上用:1.8mL)、1回接種量(小児用0.2mL、12歳以上用0.3mL)、1バイアルの接種可能人数(小児用10人分、12歳以上用6人分)、保存及び移送方法が異なるため、別の種類のワクチンとして区別して扱う必要があります(2)。
2022年1月14日現在の国内での総接種回数は2億178万6,647回で、このうち高齢者( 65歳以上 )は6,601万8,696回、職域接種は1,933万3,787回でした。2022年1月14日時点の1回以上接種率は全人口(1億2,664万5,025人)の79.9%、2回接種完了率は78.6%、3回接種完了率は0.9%で、高齢者の1回以上接種率は、65歳以上人口(3,548万6,339 人)の92.5%、2回接種完了率は92.1%でした。
2022年1月11日公表時点の年代別接種回数別被接種者数と接種率/接種完了率( 図1 )を示します。また、新規感染者数と累積接種割合についてまとめました( 図2 )。
図1 年代別接種回数別被接種者数・接種率/接種完了率(首相官邸ホームページ公表数値より作図):2022年 1月 11日公表時点
注)接種率は、VRSへ報告された、一般接種(高齢者を含む)と先行接種対象者(接種券付き予診票で接種を行った優先接種者)の合計回数が使用されており、使用回数には、首相官邸HPで公表している総接種回数のうち、職域接種及び先行接種対象者のVRS未入力分である約1000万回分程度が含まれておらず、年齢が不明なものは計上されていません。また、年齢階級別人口は、総務省が公表している「令和3年住民基本台帳年齢階級別人口(市区町村別)」のうち、各市区町村の性別及び年代階級の数字を集計したものが利用されており、その際、12歳~14歳人口は10歳~14歳人口を5分の3したものが使用されています。
図2 日本_新規感染者数と累積接種割合の推移 [データ範囲:2020年1月22日~2022年1月10日]
下記データより作図.
Roser M, Ritchie H, Ortiz-Ospina E and Hasell J. (2020) - "Coronavirus Pandemic (COVID-19)". Published online at OurWorldInData.org. Retrieved from: 'https://ourworldindata.org/coronavirus' [Online Resource](閲覧日2022年1月12日)
参考文献
今回は、下記の内容について、最近のトピックスをまとめました。
【本項の内容】
掲載日:2022年1月21日
第68回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年1月20日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第68回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。
全国の新規感染者数(報告日別)は、今週先週比は3.6と急速な増加が続き、直近の1週間では10万人あたり約147となっている。新規感染者は20代を中心に増加している。まん延防止等重点措置が適用されている沖縄県、山口県及び広島県を始め、東京都や大阪府など関東や関西地方などの都市部のみならず、その他の地域でも新規感染者数の急速な増加が継続している。また、全国で新規感染者数が急速に増加していることに伴い、療養者数が急増し、重症者数も増加している。
オミクロン株のいわゆる市中感染が拡大しており、多くの地域でオミクロン株への急速な置き換わりが進んでいるが、引き続き、デルタ株も検出されている。
2022年1月13日
国立感染症研究所
国立感染症研究所では、新型コロナウイルス感染症対策に資する情報を提供することを目的として、実地疫学調査および新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS) のデータを用いて、 SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株) の潜伏期間の推定を行った。その暫定結果について報告する。
方法
本報告では2つのデータを用いて、それぞれ潜伏期間を推定した。
データ1:実地疫学調査
国内でオミクロン株症例に対して実施された実地疫学調査により、リンクおよび曝露日が明らかで、かつ曝露日から14日間が経過した感染ペア(N=35)のデータを用いた。曝露日から発症日までの日数を潜伏期間として検討した。
データ2: HER-SYS データ
2022年1月7日時点に登録されたHER-SYSデータを用いて、ゲノム検査によりオミクロン株が確定されたもののうち、推定感染日及び発症日に記載がある症例を抽出した。潜伏期間は推定感染日と発症日までの日数と定義した。アルファ株症例については、上記のオミクロン株症例を報告していた届出保健所からの症例に限定して、ゲノム検査によりアルファ株が確定された症例を抽出した。推定感染日と発症日の間隔が1日以上の症例を解析の対象とした。
潜伏期間の確率密度関数を計算するために、観察された潜伏期間に対してGamma分布, Lognormal分布, Weibull分布のあてはめを検討し、Akaike Information Criterion(AIC)による比較で最も当てはまりが良かったGamma分布を採用して確率密度分布を算出した。また最尤推定法を用いて推定を行い、信頼区間を計算した。
結果
データ1(実地疫学調査)を用いたオミクロン株症例の潜伏期間の中央値は2.9日(95%信頼区間:2.6-3.2)であった(図1)。99%が曝露から6.7日以内に発症していた。
図1.積極的疫学調査のデータを用いた曝露-発症間隔の分布と累積分布(N=35)
潜伏期間の単位は日。薄茶色は50%、薄水色は99%区間を示す。
データ2では、アルファ株症例1118例、オミクロン株症例113例が解析の対象となった。アルファ株症例の潜伏期間の中央値は3.4日(95%信頼区間:3.3-3.6)、オミクロン株症例は2.9日(95%信頼区間:2.5-3.2)であった。感染曝露から95%、99%が発症するまでの日数は、アルファ株症例ではそれぞれ8.7日、11.9日、オミクロン株症例ではそれぞれ7.1日、9.7日であった。
図2.HER-SYSデータを用いたアルファ株とオミクロン株の曝露-発症間隔の分布
感染曝露からの経過日数ごとの累積発症確率を表1に示す。アルファ株では10日目までに97.35%が発症するのに対して、オミクロン株では99.18%が発症すると推定された。
表1.HER-SYSデータを用いた曝露から経過日数ごとの発症する確率(%)
曝露日からの日数 |
アルファ株症例 |
オミクロン株症例 |
1日 |
6.29 |
8.55 |
2日 |
23.1 |
30.41 |
3日 |
42.42 |
53.05 |
4日 |
59.46 |
70.69 |
5日 |
72.67 |
82.65 |
6日 |
82.16 |
90.12 |
7日 |
88.63 |
94.53 |
8日 |
92.90 |
97.04 |
9日 |
95.63 |
98.43 |
10日 |
97.35 |
99.18 |
11日 |
98.41 |
99.57 |
12日 |
99.05 |
99.78 |
13日 |
99.44 |
99.89 |
14日 |
99.67 |
99.94 |
考察
本報告では、実地疫学調査で収集されたデータを用いた潜伏期間に対する確率密度分布の当てはめにより、中央値は2.9日と推定された。HER-SYSデータにおけるオミクロン株症例の潜伏期間が実地疫学調査と同等であることを踏まえて、アルファ株症例の潜伏期間との比較を行った。一方で感染曝露から99%が発症するまでの期間は、実地的疫学調査で収集されたデータに基づくと6.7日、 HER-SYSデータに基づくと9.7日と推定された。
観察10日目までにアルファ株症例の97.4%が発症するのに対して、オミクロン株症例では99.2%が発症すると推定された。この数値はアルファ株症例の14日における発症ハザードと同等であった。またオミクロン株症例では観察7日目までに94.5%が発症すると推定された。
本分析には制限がある。実地疫学調査においては曝露をうけた可能性のある者すべてが含まれていない可能性があるため、潜伏期間を過小評価している可能性がある。精緻な推定値を得るには上記を加味したモデルと十分なサンプルサイズが必要であるが、今回は検討できていない。HER-SYSデータにおける解析では、感染拡大の状況にあるオミクロン株症例を検討しているために、観察期間を十分にとれた症例が含まれることにより潜伏期間が変わる可能性がある。
注意事項
本報は迅速な情報共有を⽬的としており、内容や⾒解は知見の更新によって更新される可能性がある。
謝辞
本報告書の分析に用いたデータの収集にご協⼒いただいております各自治体関係者および各医療関係者の皆様に⼼より御礼申し上げます。
掲載日:2022年1月13日
第67回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年1月13日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第67回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。
全国の新規感染者数(報告日別)は、今週先週比は8.5と急速な増加が続き、直近の1週間では10万人あたり約41となっている。新規感染者は20代を中心に増加している。まん延防止等重点措置が適用されている沖縄県、山口県及び広島県を始め、東京都や大阪府など関東や関西地方などの都市部のみならず、その他の地域でもこれまで経験したことのない速さで新規感染者数が急速に増加している。また、全国で新規感染者数が急速に増加していることに伴い、療養者数が急増し、重症者数も増加している。
大部分の都道府県でオミクロン株のいわゆる市中感染が拡大しており、オミクロン株への急速な置き換わりが進んでいる地域もある。オミクロン株の伝播性が高いことを踏まえると、今後感染拡大が急速に進み、自宅・宿泊療養者や入院による治療を必要とする人が急激に増え、軽症・中等症の医療提供体制等がひっ迫する可能性に留意する必要がある。
2022年1月13日9:00時点
1月14日一部修正
1月20日一部修正
1月25日一部修正
国立感染症研究所
主な更新事項
概要
WHOは2021年11月24日にSARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統を監視下の変異株(Variant Under Monitoring; VUM)に分類したが(WHO. Tracking SARS-CoV-2 variants)、同年11月26日にウイルス特性の変化の可能性を考慮し、「オミクロン株」と命名し、懸念される変異株(Variant of Concern; VOC)に位置づけを変更した(WHO. Classification of Omicron (B.1.1.529) )。
2021年11月26日、国立感染症研究所は、PANGO系統でB.1.1.529系統に分類される変異株を、感染・伝播性、抗原性の変化等を踏まえた評価に基づき、注目すべき変異株(Variant of Interest; VOI)として位置づけ、監視体制の強化を開始した。2021年11月28日、国外における情報と国内のリスク評価の更新に基づき、B.1.1.529 系統(オミクロン株*)を、懸念される変異株(VOC)に位置付けを変更した。
* B.1.1.529 系統の下位系統であるBA.ⅹ系統等が含まれる。
表 SARS-CoV-2 B.1.1.529系統(オミクロン株)の概要
PANGO 系統名
|
日本 感染研 |
WHO |
EU ECDC |
UK HSA |
US CDC |
スパイクタンパク質の主な変異(全てのオミクロン株で認めるわけではない) |
検出報告国・地域数 |
B.1.1.529 BA.x |
VOC |
VOC |
VOC |
VOC |
VOC
|
G142D, G339D, S371L, S373P, S375F, S477N, T478K, E484A, Q493K, G496S, Q498R, N501Y, Y505H, P681H |
106か国 |
オミクロン株について
海外での発生状況
オミクロン株による感染例(以下オミクロン株感染例)の報告数ならびに報告国数が世界的に増加している。南アフリカ、イングランドやアメリカ合衆国では、デルタ株からオミクロン株への急速な置き換わりを認め、直近の報告ではいずれの国においても新規感染例の95%以上がオミクロン株に由来すると推定される結果であった。また、複数の国・地域で市中感染や集団内の多くの者が感染したクラスター事例も報告されており、さらなる感染の拡大が懸念される。ゲノムサーベイランスの質が十分でない国・地域においては探知されていない感染例が発生している可能性もあるため、現在感染例が探知されている国・地域よりもさらに広い範囲に感染が拡大している可能性がある。
日本での発生状況
海外でも各地域で急激なオミクロン株への置き換わりが進み、直近の海外からの入国者のSARS-CoV-2陽性例の8割以上がオミクロン株感染例であり、オミクロン株の国内への輸入リスクは非常に高い。国内では大部分の都道府県からオミクロン株感染例が報告され、特にオミクロン株の継続的な曝露を受けた地域では、市中感染の拡大による感染者数の急増とオミクロン株への急速な置き換わりを認めた。また、そのような地域からの波及を受けた地域でも急激な市中感染の拡大による感染者数の急増を認めている。
*厚生労働省報道発表資料に基づく
(注1)「空港検疫」には、検疫検査時に陽性だった方に加えて、宿泊施設での待機が必要な国・地域から入国後、待機中に陽性が判明し、オミクロン株と確定した場合も含む。
(注2)「都道府県発表」には、検疫所関係者でオミクロン株と確定した場合を含む。
(注3)「左記以外」は、オミクロン株と確定した者のうち、直近の海外渡航歴がなく、現時点で感染経路が明らかになっていない者等。
ウイルスの性状・臨床像・疫学に関する評価についての知見
世界各地で、これまでの他の変異株の流行時に比しオミクロン株流行時では、より高い実効再生産数、感染者数の増加率(growth rate)、倍加時間(doubling time)の短縮が報告されてきた。海外では集団発生事例での高い感染の割合(attack rate)や、デルタ株よりも高い家庭内二次感染率(household secondary attack rate)が報告され、伝播性の増加を示唆する所見がある。また、海外の集団発生事例では潜伏期間がデルタ株に比較して短縮している所見も報告されている。高い実効再生産数等は、感染・伝播性の増大と世代時間の短縮の両方の影響が考えられる。ただし、海外でのこれらの所見は、観察集団の免疫状況や感染予防行動等の違い、オミクロン株同定のための検査戦略などの影響等を考慮して慎重に解釈する必要がある。
国内においては、3都県で直近1週間の倍加時間の短縮が観察された。また、潜伏期間の短縮も観察されている。一方、実地疫学調査から得られた暫定的な結果からは、従来株やデルタ株によるこれまでの事例と比較し、感染・伝播性はやや高い可能性はあるが、現段階でエアロゾル感染を疑う事例の頻度の明らかな増加は確認されず、従来通り感染経路は主に飛沫感染と、接触感染と考えられた。また、多くの事例が従来株やデルタ株と同様の機会(例えば、換気が不十分な屋内や飲食の機会等)で起こっていた。基本的な感染対策(マスク着用、手指衛生、換気の徹底等)は有効であることが観察されており、感染対策が守られている場では大規模な感染者発生はみていない。
国内の積極的疫学調査による初期の症例のウイルスの排出期間についての調査では、呼吸器検体中のウイルスRNA量は診断日および発症日から3~6日で最も高くなる傾向があった。診断または発症10日以降でもRNAが検出される検体は認められたが、ウイルス分離可能な検体は認めず、少なくともワクチン接種者においては、従来株と同様に診断または発症10日を超えて感染性ウイルスを排出する可能性は低いと考えられる。また、追加で行ったワクチン未接種者における呼吸器検体中のウイルスRNA量の検討では、ワクチン未接種者でのウイルス排出期間がワクチン接種者に比べて長期化する可能性を示唆するデータは得られなかった。今回の検討では解析症例数が少ないことから、ワクチン未接種者のオミクロン株症例におけるウイルス感染動態の全体像を理解することは困難であるが、ワクチン未接種者においてもワクチン接種者と同様に、無症状者および軽症者においては発症または診断10日以降に感染性ウイルスを排出している可能性は低いと考えられた。
(国内の知見)
(海外の知見)
オミクロン株は、ワクチン接種や自然感染による免疫を逃避する性質が、遺伝子配列やラボでの実験、疫学データから示唆されている。ワクチンで誘導される抗体の in vitro(試験管内)での評価や疫学的評価から、ワクチン2回接種による発症予防効果がデルタ株と比較してオミクロン株への感染では著しく低下していることが示されている。3回目接種(ブースター接種)によりオミクロン株感染による発症予防効果が一時的に高まるが、この効果は数ヶ月で低下しているという報告もあり、長期的にどのように推移するかは不明である。入院予防効果もデルタ株と比較してオミクロン株において一定程度の低下を認めるが、発症予防効果と比較すると保たれている。入院予防効果においても3回目接種(ブースター接種)により入院予防効果が高まるという報告があるが、中長期的にこの効果が持続するかは不明である。また、モノクローナル抗体を用いた抗体医薬品についても、in vitroでの評価で、カシリビマブ・イムデビマブ(ロナプリーブ)は、オミクロン株の分離ウイルスに対して濃度依存的効果が確認されず中和活性が著しく低下している可能性があり、その他、バムラニビマブ・エテセビマブ、チキサゲビマブ・シルガビマブにおいても中和活性が著しく低下している可能性があるという報告がある。一般的にウイルス感染は、感染回復者は免疫が成立し感染しづらくなると理解されている。しかしながら、非オミクロン株に感染歴のある者の再感染は、非オミクロン株と比較してオミクロン株への免疫が成立せず感染がより起こりやすい(再感染しやすい)との報告がある。
これまでに細胞性免疫に関する評価が複数の国の研究機関等で行われており、少なくとも6報のプレプリントが報告されている。抗体と比較すると、オミクロン株に対する細胞性免疫の減弱は限定的であり、感染回復者やワクチン接種者(mRNAワクチン・アデノウイルスベクターワクチンなど)では、武漢株に対して反応するT細胞のうち、少なくとも70%以上がオミクロン株に対しても応答するとされている(Tarke, et al., Keeton, et al. その他4報)。したがって、過去の感染やワクチン接種により誘導された細胞性免疫はオミクロン株に対しても交差反応性を維持している可能性がある。ただし、細胞性免疫の反応性は個人差が大きいこと、in vitroでの評価法の種類によって交差性に差異が認められる可能性があることから、解釈に注意が必要である。
また、国立感染症研究所から、新型コロナワクチン2回接種からアルファ株またはデルタ株によるブレイクスルー感染までの期間の長さにより血清抗体のオミクロン株に対する交差中和能が変化し、ワクチン接種から感染までの期間の長い方が、交差中和能の高い抗体が誘導されると報告されている(Miyamoto et al., Sidik et al.)。本報告は、ブレイクスルー感染による液性免疫のブーストがオミクロン株に対しても有効であることを明らかにしただけでなく、地域毎に異なる感染流行拡大やワクチン接種導入、ブレイクスルー感染増加のタイミングにより、新型コロナウイルスに対する集団免疫が多様化していく可能性を示唆しており、感染流行予測における地域毎の血清疫学調査の重要性を強調するものである。
重症化予防に関する効果は十分な評価が得られていないが、ワクチン接種や過去の感染により、オミクロン株感染では重症化リスクが低下することが示唆されている(詳細は次項参照)。
(海外のワクチン疫学研究)
(新型コロナワクチン接種後のオミクロン株に対する中和能の検討)
(抗体医薬品の効果への影響)
(再感染リスクについて)
(細胞性免疫について)
国内で経過観察されているオミクロン株感染例(確定例ならびにL452R陰性例を含む)の初期の事例191例については、95%(181/191)が無症状ないし軽症で経過していた。海外の報告では、英国や南アフリカに加えて米国やカナダからデルタ株と比較した入院や重症化のしやすさの違いについての暫定データが報告され、デルタ株に比して入院や重症化リスクの低下が示唆されている。ただし、これらの報告では、オミクロン株感染例が若年層で多い、自然感染やワクチン接種による免疫の影響が考慮されていない等の様々な制限があること、重症化や死亡の転帰を確認するには時間がかかることを踏まえると更なる知見の集積が必要である。
現状の研究や報告の所見を総合すると、デルタ株と比較してオミクロン株では重症化しにくい可能性が示唆される。ただし、重症化リスクがある程度低下していたとしても、感染例が大幅に増加することで重症化リスクの低下分が相殺される可能性を考慮する必要がある。
オミクロン株病原性についての実験科学的な知見については、マウスおよびハムスターを用いた動物モデルでの評価について、いくつかのプレプリント論文が報告されてきた(Diamond, et al., Bentley, et al., Abdelnabi, et al., Sato, et al., McMahan, et al.)。また、in vitroおよびex vivoでの評価に関するプレプリント論文も報告されてきた(Meng, et al., Chi-wai, et al.)。いずれも、オミクロン株では従来株に比べて肺組織への感染性と病原性が低下していることを示唆している。ただし、これらの報告はあくまで動物モデルや細胞・組織レベルでの評価であり、ヒトに対するオミクロン株病原性とは必ずしも相関しない可能性があることに注意する必要がある。
(国内症例について)
(海外からの報告について)
(動物モデルでの評価)
当面の推奨される対策
基本的な感染対策の推奨
参考文献
注意事項
更新履歴
第6報 2022/1/13 9:00時点(20221/14,1/20,1/25 一部修正)
第5報 2021/12/28 9:30時点(2021/12/31 一部修正)
第4報 2021/12/15 19時時点
第3報 2021/12/8
第2報 2021/11/28
第1報 2021/11/26
国立感染症研究所実地疫学研究センター
掲載日:2022年1月13日
国立感染症研究所実地疫学研究センターでは、主に同センター内に設置されている実地疫学専門家養成コース(FETP)を中心に、自治体からの派遣要請あるいは厚生労働省からの依頼に基づき、厚生労働省クラスター対策班として、国内の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)事例に対する自治体の実地疫学調査を支援し、現場のクラスター対策の実施及び疫学的知見を深めるための活動に従事してきた。
2021年11月より新たに世界中で拡大している新型コロナウイルスオミクロン株〔SARS-CoV-2変異株 B.1.1.529系統(以下、オミクロン株)〕については、国立感染症研究所はリスク評価を継続的に発出しており、海外における発生状況、ウイルス学的な性状、臨床像、疫学的所見等を詳細に分析し、国内に向けて情報発信を行ってきた。これらは主に各国関係機関からの公式情報や文献的な情報に基づいている。当センターでは、主に国内感染と考えられるオミクロン株事例に対する調査支援に従事しており、本稿発出時点まで約10程度の自治体内で活動を行ってきた。予備的・暫定的な情報であっても、実地疫学調査により得られた所見は公衆衛生対策を構築する上で重要な手がかりとなることから、自治体と共に実地疫学調査を担当する当センターとして、迅速性に重きを置いた情報発信を行うものである。
これらの情報は、現在も進行中の事例から得られていたり(結果が変わっていく可能性がある)、研究としてデザインされた状況下で得られた知見ではない(観察期間等が一定ではない、オミクロン株が確認されていないがオミクロン株感染症例と疫学的につながりがある症例を含む)などの制限が多数あることに注意が必要である。
推定曝露日から14日以上経過した集団における感染例のみを解析対象とした場合の潜伏期間について、3つの自治体(うち情報の得られた単独の事例)からの情報を表1に示す。すなわち、比較可能な事例の情報についてまとめたところ、潜伏期間中央値の範囲は2-3日であった。国内でも海外からの報告と同様に、オミクロン株感染例では、従来株やデルタ株感染例と比較し潜伏期間が短縮している可能性が示唆された1, 2)。
表1.国内3自治体より得られたオミクロン株潜伏期間
自治体 | 対象感染者数 | 中央値(日)[範囲] |
A | 12 | 3[1-4] |
B | 18* | 3[2-5] |
C | 5 | 2[1-2] |
*家族内感染を含む。ただし、家族内感染は二次感染初発例のみ
家庭内SARについては、家族かどうかに関わらず同居者の中での感染例発生割合を算出した。ここでindex case(感染源となったと推定される最初の感染例)は、家庭内症例で最も発症日が早い症例、または当該症例以前に感染性を有する無症状の感染例との疫学的なリンクがあり、家庭にウイルスを持ち込んだことが示唆される症例である。4つの自治体からの結果を表2に示す。オミクロン株の家庭内SARは、従来株、デルタ株と比較して高い可能性が示された3-6)。
表2.国内4事例より得られたオミクロン株家庭内二次感染率(SAR)
自治体 | 検査者数(x) | 感染者数(y) | SAR(y/x)(%) [95%信頼区間] | 観察期間中央値 (日)[範囲] |
A | 17 | 6 | 35[13-58] | 全員14日間経過 |
B | 66 | 21 | 31[20-47] | 全員14日間経過 |
C | 24 | 11 | 45[14-76] | 全員14日間経過 |
D | 18 | 8 | 44[25-66] | 6[3-10] |
主な制限としては、情報収集時点で同居者濃厚接触者の健康観察期間が終了していない症例を含んでいることから、感染例の発生について過小評価している可能性がある。一方で、家庭内での三次感染以上を含んでいる場合には過大評価されうる。また、ワクチン接種状況、感染対策実施状況を含む曝露状況を考慮した結果ではないことに注意する必要がある。
オミクロン株感染で単一曝露など感染経路が確認された事例では、従来株、アルファ株、デルタ株同様、飛沫感染が疑われる感染が多かった。ただし、一部直接的または間接的な接触による感染の可能性や換気の悪い室内でのエアロゾル感染が否定できない感染(感染者用宿泊施設における従業員の感染(表3、事例9)、換気がある程度確保されていた医療機関外来の医療従事者の感染(同、事例10)、屋内作業を密な状況で長時間行った時の感染(同、事例8)、換気が悪い密な飲食店店舗内での感染(同、事例13)、など)が確認された。
感染経路を評価できた事例は少ないものの、エアロゾル感染が疑われた事例の頻度が明らかに増えているわけではなく、従来より認識されていたエアロゾル感染が起こりやすい状況(換気が悪い屋内、密、長時間)以外でのエアロゾル感染疑い事例も確認されていない。引き続き、感染経路を注意深く確認していく必要がある。
注)エアロゾル感染:2m以上離れた長距離間での感染、又は感染者の不織布マスク着用が自己申告と他覚的な確認で確認された状況での感染
表3.感染経路が推定されたオミクロン株新型コロナウイルス感染症の感染事例(13事例)
事例 | 感染 者数 | 感染 場所 | 推定感染経路 | 備考 |
1 | 10 | 会食 | 飛沫 | 自宅での親族との会食 |
2 | 13 | 会食 | 飛沫 | 飲食店での親族との会食 |
3 | 5 | 会食 | 飛沫 | 飲食店での親族との会食 |
4 | 5 | 会食 | 飛沫 | 飲食店での職場同僚との会食 |
5 | 6 | 会食 | 飛沫 | 飲食店での職場同僚との会食 |
6 | 6 | 会食 | 飛沫 | 飲食店での職場同僚との忘年会 |
7 | 7 | 会食 | 飛沫 | 自宅での友人との会食 |
8 | 16 | 職場 | 飛沫、ただし、 接触や一部のエアロゾル感染は否定できず | 職場の密な環境における食事や屋内作業 |
9 | 2 | 職場 | 接触、ただし、 一部のエアロゾル感染は否定できず | 感染者宿泊施設における従業員 |
10 | 1 | 職場 | 接触 | 医療機関外来 |
11 | 2 | 職場 | 飛沫 | 職場の同僚間 |
12 | 15 | 会食 | 飛沫 | 飲食店での友人との会食 |
13 | 16 | 会食 | 飛沫、ただし、 一部のエアロゾル感染は否定できず | 飲食店での友人との会食 |
令和4年1月13日
令和4 年1月20日 誤記訂正
国立国際医療研究センター 国際感染症センター
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)においては、B.1.1.529系統の変異株(オミクロン株)が、2021年11月末以降、我が国を含む世界各地から報告され、感染・伝播性や抗原性の変化が懸念されている。国内においては、新型コロナウイルス感染症患者は感染症法または検疫法に基づいて入院措置等が行われる。オミクロン株についての知見が不十分であったため、2022年1月4日までは、オミクロン株による新型コロナウイルス感染症患者(オミクロン株症例)については、オミクロン株以外による新型コロナウイルス感染症患者(非オミクロン株症例)と異なる退院基準・解除基準が設定されており、核酸増幅法または抗原定量検査による2回連続の陰性確認が必要とされていた。しかし、この退院基準では入院期間が長期化し、患者及び医療機関等の負担となっていたことから、オミクロン株症例のウイルス排出期間等について早急に明らかにする必要があった。厚生労働省、国立感染症研究所(感染研)において、国立国際医療研究センター国際感染症センター及び関係医療機関・自治体の協力のもと、感染症法第15条第2項の規定に基づきオミクロン株症例の積極的疫学調査を行っている。本調査において、新型コロナワクチン2回接種から14日以上経過している者(以降、「ワクチン接種者」と記載)における感染性ウイルス排出期間を検討し、発症または診断10日以降に感染性ウイルスを排出している可能性は低いことが示唆され、1月5日に第1報として報告するとともに、同日、厚生労働省より事務連絡(https://www.mhlw.go.jp/content/000876461.pdf)が発出され、ワクチン接種者においては、退院基準・解除基準を非オミクロン株症例と同様の取扱いとすることとなっている。しかし、新型コロナワクチン未接種者(以降、「ワクチン未接種者」と記載)におけるオミクロン株症例においては知見が得られなかった。第1報以降、ワクチン未接種者におけるオミクロン株症例の呼吸器検体中のウイルスRNA量(Cq値)の推移を検討したため、これを示す。
対象は検疫および国内で検出されたオミクロン株感染確定症例として、経過中に臨床目的もしくは研究目的で採取された(陰性を含む)すべての呼吸器検体(唾液および鼻咽頭スワブ)の残余検体について、感染研にてリアルタイムRT-PCRを実施した。採取の目安としては、SARS-CoV-2感染の初回陽性検体の検体採取日(本稿では便宜的に「診断日」と定義する)を0日目としてそこから、(1)0-1日目、(2)3-5日目、(3)6-8日目、(4)9日目以降、(5)退院時陰性検体(2回分)とした。
RNAは唾液および鼻咽頭拭い液検体200 µLからMaxwell RSC miRNA Plasma and Serum kitもしくはMagMAX Viral/Pathogen Nucleic Acid Isolation Kitを用いて抽出した。新型コロナウイルスN2領域をターゲットとしたプライマー/プローブセット(N2セット)とOne Step PrimeScript™ III RT-qPCR Mixを用いてリアルタイムRT-PCRによりウイルスRNA量(Cq値)を測定した。陰性と判定された検体のCq値は45を代入して解析した。
2022年1月7日までに登録された対象症例は、47例のべ265検体(ワクチン接種者:36例(210検体);ワクチン未接種者:11例(55検体))であった。年齢中央値31歳(四分位範囲24.5-47歳)(ワクチン接種者:38歳 (29-47歳);ワクチン未接種者:9歳(9-26歳))、男性33例(70%)、女性14例(30%)(ワクチン接種者:男性26例、女性10例;ワクチン未接種者:男性7例、女性4例)であった。退院までの全経過における重症度は、無症状が10例(21%)、軽症が36例(77%)、中等症Ⅰが1例(2%)であった(ワクチン接種者:無症状6例、軽症29例、中等症Ⅰ 1例;ワクチン未接種者:無症状4例、軽症7例)。ICU入室・人工呼吸器管理・死亡例はいなかった。
診断日からの期間別のウイルスRNA量(Cq値)を図Aに示す。Cq値は日数が経過するにつれて上昇傾向であった。また、ウイルスRNA検出検体の割合も日数が経過するにつれて、減少していた(表)。さらに、有症状者と無症状者において、ワクチン未接種者の検体とワクチン接種者の検体のウイルスRNA量を比較したところ、発症もしくは診断から0〜9日および発症もしくは診断10日以降において、ワクチン未接種者とワクチン接種者の呼吸器検体中のウイルスRNA量に違いは認めなかった(図B)。
図. ワクチン未接種/ワクチン接種者のオミクロン株症例における呼吸器検体中のウイルスRNA量(Cq値)の日数別推移(A) ワクチン未接種者のオミクロン株症例におけるウイルスRNA量(Cq値)の診断からの日数別推移。赤線は中央値と四分位範囲を示す。
(B) ワクチン未接種者とワクチン接種者のオミクロン株症例におけるウイルスRNA量(Cq値)の比較(有症状者および無症状者)赤線は中央値と四分位範囲を示す。ns: 統計学的有意差なし(一元配置分散分析とHolm-Sidak 検定)
表.ワクチン未接種のオミクロン株症例におけるウイルスRNA検出検体数および割合(診断からの日数別)
診断からの日数 | RNA検出検体数 および割合n (%) |
0-2日目 | 7/11 (63.6) |
3-6日目 | 11/13 (84.6) |
7-9日目 | 7/13 (53.8) |
10-13日目 | 3 /10 (30.0) |
14日目以降 | 1/8 (12.5) |
本報告では、ワクチン未接種者のオミクロン株症例におけるウイルス排出期間を検討した。ワクチン未接種者においても呼吸器検体中のウイルスRNA量は日数が経過するにつれて減少傾向であった。さらに、有症状者と無症状者において、ワクチン未接種者とワクチン接種者の呼吸器検体中のウイルスRNA量を比較したところ、発症もしくは診断から0〜9日、および発症もしくは診断10日以降において、両者のウイルスRNA量に違いは認めなかった。
現時点で検討した症例数はワクチン未接種者11例と限られているが、ワクチン未接種者でのウイルス排出期間がワクチン接種者に比べて長期化する可能性を示唆するデータは得られなかった。今回の検討では解析症例数が少ないことから、ワクチン未接種者のオミクロン株症例におけるウイルス感染動態の全体像を理解することは困難であるが、ワクチン未接種者においてもワクチン接種者と同様に、無症状者および軽症者においては発症または診断10日以降に感染性ウイルスを排出している可能性は低いと考えられた。 本報告の制限として、解析した症例数が少ないこと、調査対象者は無症状者及び軽症者が大部分を占め特にワクチン未接種者においては若年者が調査対象であったこと、ウイルス分離の結果が得られておらず感染性ウイルスの有無が不明であることなどが挙げられる。
本報は迅速な情報共有を⽬的としており、調査は継続しているため、内容や⾒解は知見の更新によって更新される可能性がある。
本調査にご協力いただいております各自治体関係者および各医療関係者の皆様に心より御礼申し上げます。本稿は, 次の医療機関からお送りいただいた情報を基にまとめています。
大阪市立総合医療センター、国際医療福祉大学成田病院、国立国際医療研究センター、東京都立駒込病院、長良医療センター、成田赤十字病院、りんくう総合医療センター(五十音順)
発出元国立感染症研究所
国立国際医療研究センター 国際感染症センター
2021年11月24日に南アフリカ共和国から世界保健機関(WHO)へ最初の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)新規変異株B.1.1.529 系統(オミクロン)感染例が報告された。12月21日までに日本を含め世界106カ国から感染例が報告され、各地でオミクロン株の感染拡大がみられている1)。