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2022年1月26日9:00時点
国立感染症研究所
概要
WHOは2021年11月24日にSARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統を監視下の変異株(Variant Under Monitoring; VUM)に分類したが(WHO. Tracking SARS-CoV-2 variants)、同年11月26日にウイルス特性の変化の可能性を考慮し、「オミクロン株」と命名し、懸念される変異株(Variant of Concern; VOC)に位置づけを変更した(WHO. Classification of Omicron (B.1.1.529) )。
2021年11月26日、国立感染症研究所は、PANGO系統でB.1.1.529系統に分類される変異株を、感染・伝播性、抗原性の変化等を踏まえた評価に基づき、注目すべき変異株(Variant of Interest; VOI)として位置づけ、監視体制の強化を開始した。2021年11月28日、国外における情報と国内のリスク評価の更新に基づき、B.1.1.529 系統(オミクロン株*)を、懸念される変異株(VOC)に位置付けを変更した。
* B.1.1.529 系統の下位系統であるBA.ⅹ系統等が含まれる。
表 SARS-CoV-2 B.1.1.529系統(オミクロン株)の概要
PANGO 系統名
|
日本 感染研 |
WHO |
EU ECDC |
UK HSA |
米国のCDC |
スパイクタンパク質の主な変異等(全てのオミクロン株で認めるわけではない) |
検出報告国・地域数 (2022年1月20日時点) |
B.1.1.529 BA.x |
VOC |
VOC |
VOC |
VOC (BA.2はVUIに指定された) |
VOC
|
BA.1/BA.2共で主流:G142D, G339D, S373P, S375F, S477N, T478K, E484A, Q493R, Q498R, N501Y, Y505H, D614G, H665Y, N679K, P681H, N764K, D796Y, Q954H, N969K
BA.1で主流: A67V, del69/70, T95I, del143/145, N211I, del212, S371L, G496S, T547K, N856K, L981F
BA.2で主流: T19I, L24S, del25/27, V213G, S371F, T376A, D405N, R408S, K417N, N440K |
171か国 |
オミクロン株について
海外での発生状況
オミクロン株による感染者(以下オミクロン株感染者)の報告数ならびに報告国数が世界的に増加し、デルタ株からオミクロン株への世界的な置き換わりの進行を認めている。一方で、2021年末頃にオミクロン株感染者が急激に増加した国々の一部では、新規感染者数が減少に転じている。オミクロン株の下位系統(BA.1、BA.2ならびにBA.3系統)に関し、現状では世界的にBA.1系統が圧倒的多数を占めていると推定されるが、いくつかの国でBA.2系統の占める割合の増加が報告されている。
日本での発生状況
国内では全ての都道府県からオミクロン株感染者が報告され、特に関東、関西、中国地方と九州の一部の地域で、市中感染の拡大による感染者数の更なる増加を認めている。多くの地域でオミクロン株への急速な置き換わりが進んでいるが、引き続き、デルタ株も検出されている。比較的感染者数が少ない地域でも流行地域からの感染の波及によるさらなる感染拡大が懸念される。
*厚生労働省報道発表資料に基づく
(注1)「検疫」には、検疫検査時に陽性だった方に加えて、宿泊施設での待機が必要な国・地域から入国後、待機中に陽性が判明し、オミクロン株と確定した場合も含む。
ウイルスの性状・臨床像・疫学に関する評価についての知見
海外からオミクロン株流行時には、これまでの流行株と比べてより高い実効再生産数、感染者数の増加率(Growth rate)、倍加時間(Doubling time)の短縮が報告されてきたが、新たに英国からデルタ株と比較して短い発症間隔(Serial interval)や世代時間(Generation time)が報告された。
国内においては、3都県で直近2週間と1週間の倍加時間が2日前後であり、短縮した世代時間を考慮してもデルタ株よりも首都圏および関西圏で高い実効再生産数を示していることからもオミクロン株による流行拡大が続いていると考えられる。国内の積極的疫学調査によれば、ワクチン接種者と非接種者ではウイルス排泄期間に大きな差がないこと、ワクチン接種者では発症ないし診断から10日以降のウイルス排泄の可能性が低いこと、無症候病原体保有者では診断から8日以降のウイルス排泄の可能性が低いことが明らかとなった。
国内の流行初期の多くの事例が従来株やデルタ株と同様の機会(例えば、換気が不十分な屋内や飲食の機会等)で起こっていると考えられた。ただし、市中で感染拡大している地域においては、感染の場が児童施設、学校、医療・福祉施設等に広がっている。(第68回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料. 2022年1月20日)
オミクロン株は、ワクチン接種や自然感染による免疫を逃避する性質が、遺伝子配列やラボでの実験、疫学データから示されている。ワクチン2回接種による発症予防効果がデルタ株と比較してオミクロン株への感染では著しく低下していることが示されている。3回目接種(ブースター接種)によりオミクロン株感染による発症予防効果が一時的に高まるが、この効果は数ヶ月で低下しているという報告もあり、長期的にどのように推移するかは不明である。入院予防効果もデルタ株と比較してオミクロン株において一定程度の低下を認めるが、発症予防効果と比較すると保たれている。入院予防効果においても3回目接種(ブースター接種)により効果が高まるという報告があるが、長期的にこの効果が持続するかは不明である。一般的にウイルス感染は、感染回復者は免疫が成立し感染しづらくなると理解されている。しかしながら、非オミクロン株に感染歴のある者のオミクロン株による再感染は、非オミクロン株と比較してオミクロン株への免疫が成立せず感染がより起こりやすい(再感染しやすい)との報告がある。一方で、細胞性免疫に関する実験による(in vitro)データが複数の研究機関から報告されており、過去の感染やワクチン接種により誘導された細胞性免疫はオミクロン株に対しても交差反応性を維持している可能性がある。さらに、モノクローナル抗体を用いた抗体医薬品についても、in vitroでの評価で、カシリビマブ・イムデビマブ(ロナプリーブ)は、オミクロン株の分離ウイルスに対して濃度依存的効果が確認されず中和活性が著しく低下している可能性があり、その他、バムラニビマブ・エテセビマブ、チキサゲビマブ・シルガビマブにおいても中和活性が著しく低下している可能性があるという報告がある。
重症化予防に関する効果は十分な評価が得られていないが、ワクチン接種や過去の感染により、オミクロン株感染では重症化リスクが低下することが示唆されている(詳細は次項参照)。
米国および南アフリカからデルタ株陽性例に比べて入院や重症化リスクの低下が示唆されるデータが追加された。国内における流行早期の入院例における低い酸素需要、HER-SYSにおいてオミクロン株陽性例は届け出時点でほとんどが軽症であることや肺炎割合の低下が明らかとなった。現在までの所見を総合すると、デルタ株と比較してオミクロン株では重症化しにくいと考えられる。一方で呼吸不全のある症例の73%が70歳以上に集積していること、感染者が大幅に増加することで相対的な重症化リスクの低下分が相殺される可能性には注意する必要がある。流行が急拡大し、知見が限定的な現段階において、国内でのオミクロン株の重症度や重症化リスク因子について定量的に評価することは難しく、また、重症化や死亡の転帰を確認するには時間がかかることを踏まえた知見の集積が必要である。
オミクロン株の病原性についての実験科学的な知見については、マウスおよびハムスターを用いた動物モデルでの評価について、論文報告あるいはプレプリントの更新があった。また、in vitroおよびex vivoでの評価に関するプレプリント論文も更新された。いずれも、オミクロン株では従来株に比べて肺組織への感染性と病原性が低下していることを示唆している。ただし、これらの報告はあくまで動物モデルや細胞・組織レベルでの評価であり、ヒトに対するオミクロン株病原性とは必ずしも相関しない可能性があることに注意する必要がある。
(動物モデルでの評価)
当面の推奨される対策
基本的な感染対策の推奨
参考文献
注意事項
更新履歴
第7報 2022/1/26 9:00時点
第6報 2022/1/13 9:00時点(2022/1/14, 1/20, 1/25 一部修正)
第5報 2021/12/28 9:30時点(2021/12/31 一部修正)
第4報 2021/12/15 19:00時点
第3報 2021/12/8
第2報 2021/11/28
第1報 2021/11/26
令和4年1月28日
国立感染症研究所
国立国際医療研究センター 国際感染症センター
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)においては、B.1.1.529系統の変異株(オミクロン株)が、2021年11月末以降、我が国を含む世界各地から報告され、感染・伝播性や抗原性の変化が懸念されている (1)。
国内におけるオミクロン株の疫学的、臨床的特徴の報告は限られている(2) (3)。そのため、国内におけるオミクロン株の疫学的、臨床的特徴を迅速に把握することを目的として、検疫及び国内にて、初期に探知されたオミクロン株症例について積極的疫学調査を行った。本調査は、厚生労働省、国立感染症研究所において、国立国際医療研究センター国際感染症センター及び関係医療機関・自治体の協力のもと、感染症法第15条第2項の規定に基づいて行われた。
以下の条件を全て満たすものとした。
調査対象の年齢層の中心は比較的若年層で、80例(65.6%)に2回以上のワクチン接種歴があり、基礎疾患を有していないものが多数(92例[75.4%])であった。多くの症例に発症前14日以内に海外への渡航歴があり、50例(41.0%)に発症前14日以内のCOVID-19確定例もしくは疑い例との濃厚接触歴を認めた。入院時の画像検査で肺炎像を認めた症例は少なく、入院時の血液検査所見は、概ね正常範囲内であった。入院期間中に観察された主な症状は、37.5℃以上の発熱、咳嗽、咽頭痛、鼻汁で、これまで特徴的とされていた嗅覚・味覚障害の割合は少なかった。入院期間中に酸素需要を認めた症例はなく、COVID-19への直接的な効果を期待して介入が行われた主な治療の内容は、ソトロビマブ、カシリビマブ/イムデビマブ、レムデシビルであった。重症例は認めず、死亡例も認めなかった
本調査には複数の制限がある。はじめに、本調査の対象は、積極的疫学調査協力医療機関で入院診療を行ったゲノム解析によるオミクロン株確定例の初期の患者であり、ゲノム解析で確定診断できていない疑い例は調査対象にしていない。2つ目に、調査期間中に、オミクロン株確定症例の入退院基準の変更が、知見や状況に合わせて行われている。当初、原則全例入院の上、退院基準として、核酸増幅法または抗原定量検査による2回連続の陰性確認が必要とされていたが、2022年1月5日、ワクチン接種者においては、退院基準を従来のB.1.617.2系統の変異株(デルタ株)等と同様の取扱いとすることとなった(4)。また、自宅等の療養体制が整った自治体における感染急拡大時の対応として、医師が入院の必要が無いと判断した無症状病原体保有者や軽症者については、他の新型コロナウイルス感染症患者と同様に、宿泊療養・自宅療養とすることとして差し支えなくなった(5)。さらに、1月14日、ワクチン接種の有無に関わらず、退院基準を従来のB.1.617.2系統の変異株(デルタ株)等と同様の取り扱いとすることとなった(6)。これらの入退院基準の変遷を本調査では考慮していない。3つ目に、国内で早期に探知された症例は、比較的若年層であり、基礎疾患を有する者が少なかった。このため、本調査結果のみで、COVID-19の重症化リスクが高いとされる高齢者や基礎疾患を有する者における重症化リスクを評価することは困難である。なお、10例(8.2%)の60歳以上では、7例(70%)に何らかの基礎疾患があり、9例(90%)がワクチン2回以上接種しており、全例有症状であったが、9例(90%)にソトロビマブが投与され、重症化した症例は認めなかった。4つ目に、本調査は初期に探知された症例から収集された情報のため、検疫法による入院が多く含まれており、国内流行の疫学的特徴(年齢、性別、ワクチン接種歴、渡航歴、接触歴等)とは異なる可能性が高い。
本調査では、日本国内のSARS-CoV-2 B.1.1.529系統(オミクロン株)感染によるCOVID-19の発症から退院までの疫学的・臨床的特徴を初めて明らかにした。
迅速な情報共有を目的とした資料であり、 内容や見解は知見の更新によって変わる可能性がある。
本調査にご協力いただいております各自治体関係者および各医療関係者の皆様に心より御礼申し上げます。本稿は、次の医療機関からお送りいただいた情報を基にまとめています。
大阪市立総合医療センター、沖縄県立南部医療センター・こども医療センター、国際医療福祉大学成田病院、国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院、国立大学法人千葉大学医学部附属病院、国立病院機構沖縄病院、国立病院機構長良医療センター、国立病院機構福岡東医療センター、市立ひらかた病院、東京都保健医療公社豊島病院、東京都立駒込病院、東京都立墨東病院、成田赤十字病院、横浜市立市民病院、りんくう総合医療センター(五十音順)
発出元
国立感染症研究所
国立国際医療研究センター 国際感染症センター
令和4年1月27日
国立感染症研究所
国立国際医療研究センター 国際感染症センター
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)においては、B.1.1.529系統の変異株(オミクロン株)が、2021年11月末以降、我が国を含む世界各地から報告され、感染・伝播性や抗原性の変化が懸念されている。国内においては、オミクロン株についての知見が不十分であったため、2022年1月4日までは、オミクロン株による新型コロナウイルス感染症患者(オミクロン株症例)については、隔離解除のため核酸増幅法または抗原定量検査による2回連続の陰性確認を行ってきた。国立感染症研究所(感染研)と国立国際医療研究センター 国際感染症センターにおいて、関係医療機関・自治体の協力のもと、感染症法第15条の規定に基づきオミクロン株症例の積極的疫学調査を行っている。この調査報告の第1報として、新型コロナワクチン2回接種から14日以上経過している者(以降、「ワクチン接種者」と記載)における感染性ウイルス排出期間を検討し、発症または診断10日後以降に感染性ウイルスを排出している可能性は低いことが示唆された。この報告に基づき、2022年1月5日にワクチン接種者においては、退院基準を非オミクロン株症例と同様の取扱いとすることとなった1。また、1月13日に第2報として、新型コロナワクチン未接種者(以降、「ワクチン未接種者」と記載)のオミクロン株症例におけるウイルス排出期間を呼吸器検体中のウイルスRNA量(Cq値)を用いて比較したところ、ワクチン接種者に比べて長期化する可能性を示唆するデータは得られなかったことを報告し、この報告に基づき、1月14日ワクチン接種の有無に関わらず、退院基準・解除基準を従来のB.1.617.2系統の変異株(デルタ株)等と同様の取り扱いとしている2。第2報以降に無症状病原体保有者(以降、「無症状者」と記載)の検体が集積されたことから無症状者における呼吸器検体中のウイルスRNA量(Cq値)とウイルス分離の結果を検討し報告する。
1「B.1.1.529系統(オミクロン株)の感染が確認された患者等に係る入退院及び濃厚接触者並びに公表等の取扱いについて」(令和3年11月30日付け(令和4年1月5日一部改正)厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部事務連絡(https://www.mhlw.go.jp/content/000876461.pdf)
2「B.1.1.529系統(オミクロン株)の感染が確認された患者等に係る入退院及び濃厚接触者並びに公表等の取扱いについて」(令和3年11月30日付け(令和4年1月14日一部改正)厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部事務連絡(https://www.mhlw.go.jp/content/000876461.pdf)
対象は検疫および国内で検出されたオミクロン株感染確定症例として、経過中に臨床目的もしくは研究目的で採取された(陰性を含む)すべての呼吸器検体(唾液および鼻咽頭スワブ)の残余検体について、感染研にてリアルタイムRT-PCRを実施した。採取の目安としては、SARS-CoV-2感染の初回陽性検体の検体採取日(本稿では便宜的に「診断日」と定義する)を0日目としてそこから、(1)0-1日目、(2)3-5日目、(3)6-8日目、(4)9日目以降、(5)退院時陰性検体(2回分)とした。
RNAは唾液および鼻咽頭拭い液検体200 µLからMaxwell RSC miRNA Plasma and Serum kitもしくはMagMAX Viral/Pathogen Nucleic Acid Isolation Kitを用いて抽出した。新型コロナウイルスN2領域をターゲットとしたプライマー/プローブセット(N2セット)とOne Step PrimeScript™ III RT-qPCR Mixを用いてリアルタイムRT-PCRによりウイルスRNA量(Cq値)を測定した。陰性と判定された検体についてCq値45を代入して解析した。
検体と分離用培地を混和し、VeroE6/TMPRSS2細胞に接種/培養を行い、接種後3日、5日に細胞変性効果の有無を評価した。また、細胞変性効果が見られた時点もしくは5日目に培養上清を回収し、リアルタイムRT-PCRにてSARS-CoV-2の確認試験を実施し、ウイルス分離の判定を行った。
2022年1月14日までに検体搬入された対象症例は、20例(ワクチン接種者:10例;ワクチン未接種者:10例)であった。年齢中央値28歳(四分位範囲9-45歳)(ワクチン接種者:40歳 (29-49歳);ワクチン未接種者:9歳(9-23歳))、男性12例(60%)、女性8例(40%)(ワクチン接種者:男性7例、女性3例;ワクチン未接種者:男性5例、女性5例)であった。
診断日からの期間別のウイルスRNA量(Cq値)を図に示す。Cq値は日数が経過するにつれて上昇傾向であった。また、ウイルスRNAの検出症例割合は日数が経過するにつれて減少していたが、8日目以降も検出されていた(表)。
診断日からの期間を以下に分けて分離の可否を表に示す。診断0~5日目 までは多くの症例でウイルス分離可能であったが、診断6日目以降はウイルス分離可能な症例は減少していき、診断8日目以降はウイルス分離可能な症例は認めなかった(表)。
図. 無症状者のオミクロン株症例における呼吸器検体中のウイルスRNA量(Cq値)の日数別推移
無症状者のオミクロン株症例におけるウイルスRNA量(Cq値)の診断からの日数別推移。赤線は中央値と四分位範囲を示す。
表. 無症状者のオミクロン株症例におけるウイルスRNA検出症例数および割合と分離可能症例数および割合(診断からの日数別)
診断からの日数 |
RNA検出症例数および割合n (%) |
分離可能症例数および割合 n (%) |
0-5日目 |
14/16 (87.5) |
9/16 (56.3) |
6-7日目 |
11/13 (84.6) |
2/13 (15.4) |
8-11日目 |
15/18 (83.3) |
0/18 (0) |
12日目以降 |
5/15 (33.3) |
0/15 (0) |
本報告では、無症状者のウイルス排出期間を検討した。無症状者においても呼吸器検体中のウイルスRNA量は診断後経時的に減少傾向であった。診断8日目以降もRNAは持続的に検出されたが、ウイルス分離可能な症例は診断6日目以降に減少し、診断8日目以降にウイルス分離可能な症例は認めなかった。今回の検討では解析症例数が少ないことや、無症状者においては状況によって診断されるタイミングが大きく異なることから、本結果のみで無症状者のオミクロン株症例におけるウイルス感染動態の全体像を理解することは困難である。ただし、診断6日目以降、ウイルス分離可能な症例が漸減していき、診断8日目以降にウイルス分離可能な症例が検出されなかったことから、無症状者における感染性ウイルス排出の可能性は、診断6日目から8日目にかけて大きく減少していくことが示唆された。
本報告の制限として、症例数が少ないこと、無症状者は診断される状況によって感染から診断まで時間が異なる可能性があるということ、ウイルス分離試験の結果は検体の採取方法・保管期間・保管状態等に大きく依存することから、陰性の結果が検体採取時の感染者体内に感染性ウイルスが存在しないことを必ずしも保証するものではないことなどが挙げられる。
迅速な情報共有を⽬的とした資料であり、内容や⾒解は知見の更新によって変わる可能性がある。
本調査にご協力いただいております各自治体関係者および各医療関係者の皆様に心より御礼申し上げます。本稿は, 次の医療機関からお送りいただいた情報を基にまとめています。
大阪市立総合医療センター、国際医療福祉大学成田病院、国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院、国立病院機構長良医療センター、国立病院機構福岡東医療センター、市立ひらかた病院、東京都保健医療公社豊島病院、東京都立駒込病院、東京都立墨東病院、成田赤十字病院、りんくう総合医療センター(五十音順)
発出元国立感染症研究所
国立国際医療研究センター 国際感染症センター
(IASR Vol. 43 p20-22: 2022年1月号)
富山県では以前, 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性検体を培養細胞に添加してウイルス分離を行い, 感染性の有無を評価し, リアルタイムPCRによるCt値との相関について解析した1)。評価する過程で, 鼻腔・鼻咽頭ぬぐい液検体においては効率よくウイルスが分離されたものの, 唾液検体からは分離できないものが多かった。本研究では, SARS-CoV-2のPCR検査のために当所に持ち込まれ, SARS-CoV-2が陽性であることが確認された鼻腔・鼻咽頭ぬぐい液と唾液の臨床検体を用いて, ウイルスの分離率の比較を行った。また, 鼻腔・鼻咽頭ぬぐい液および唾液に既知のウイルスゲノム量のSARS-CoV-2を添加して作製した模擬検体を用い, 培養細胞に接種して検体種ごとのウイルス分離率の比較も行った。鼻腔・鼻咽頭ぬぐい液や唾液中のSARS-CoV-2の感染性について明らかにできれば, 今後の感染予防対策にも繋がることが期待される。
続きを読む: 新型コロナウイルス感染症患者鼻腔・鼻咽頭ぬぐい液および唾液検体における新型コロナウイルス分離培養の比較解析―富山県衛生研究所
(IASR Vol. 43 p22-23: 2022年1月号)
福井県における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)第5波の期間(2021年7月20日~10月14日)において, 県内の高齢者施設(施設)で計39例のCOVID-19症例の集積が確認された。当該施設の全職員62名, 入所者68名(A階の居室:29名, B階の居室:39名)は2021年4~7月に2回のワクチン接種を終え, ワクチン接種率は100%であったにもかかわらずクラスターが発生し, いわゆるブレイクスルー感染集団発生事例であった。今回, ブレイクスルー感染のクラスターがどのような状況, 環境下において発生したのかを明らかにし, 今後の対策に資するため, 実地疫学調査を行ったので, その結果について報告する。
掲載日:2022年1月27日
第69回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年1月26日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第69回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。
全国の新規感染者数(報告日別)は、今週先週比は2.2と急速な増加が続き、直近の1週間では10万人あたり約276となっている。新規感染者は20代以下を中心に増加しているが、年代別の割合では20代が減少する一方、10歳未満が増加している。まん延防止等重点措置が適用されている16都県のうち、沖縄県以外の15都県では急速な増加が継続している。沖縄県では今週先週比が1を下回る水準となっているが、新規感染者について20代中心に若年層で減少する一方、60代以上で増加していることに留意が必要。また、重点措置区域以外の地域でも新規感染者数の急速な増加が継続している。全国で新規感染者数が急速に増加していることに伴い、療養者数が急増し、重症者数も増加している。
オミクロン株のいわゆる市中感染が拡大しており、多くの地域でオミクロン株への急速な置き換わりが進んでいるが、引き続き、デルタ株も検出されている。
国立感染症研究所
(掲載日:2022年1月20日)
2022年1月12日現在、国内ではファイザー製、武田/モデルナ製、アストラゼネカ製の新型コロナワクチン(以下、ワクチン)が使用されています。ファイザー製と武田/モデルナ製の接種対象は12歳以上で、アストラゼネカ製の接種対象は原則40歳以上です。
また、2021年12月1日から18歳以上の者を対象として、ファイザー製ワクチンによる追加接種(3回目接種)が始まり、2021年12月17日からは、武田/モデルナ製ワクチンも追加接種(3回目接種)可能となりました。2回目接種と3回目接種の接種間隔は下記に示すとおりです(表1)。
表1 2回目接種と3回目接種の接種間隔対象 | 2022年1月 | 2022年2月 | 2022年3月以降 |
医療従事者等や高齢者施設等の入所者等 | 6か月 | 6か月 | 6か月 |
その他の高齢者 | 8か月 | 7か月 | 6か月 (前月より1か月短縮) |
64歳以下 | 8か月 | 8か月 | 7か月 |
※ なお、自治体によっては上記スケジュールから前倒しになることがあります。
初回接種(1回目・2回目接種)で使用したワクチンとは異なる種類のワクチン(ファイザー製、武田/モデルナ製)で追加接種すること(交互接種)も可能です。なお、武田/モデルナ製ワクチンによる追加接種は、初回接種の半量で実施する必要があるため注意が必要です(初回接種:1回0.5mL、追加接種:1回0.25mL)。
米国では2021年10月29日、5~11歳の小児に対するファイザー製ワクチン(以下、小児用ファイザー製ワクチン)の緊急使用許可( Emergency Use Authorization:EUA )が承認されました。2021年11月2日に開催された予防接種の実施に関する諮問委員会(Advisory Committee on Immunization Practices:ACIP)で5~11歳への接種推奨が決まり、11月3日~12月19日までに約870万回の接種が実施されました(1)。国内では2021年11 月 10 日に小児用ファイザー製ワクチンの薬事申請がなされ、現在審査中ですが、各自治体で接種開始に向けた準備が進められています。なお、小児用ファイザー製ワクチンは12歳以上用とは生理食塩水での希釈量 (小児用:1.3mL、12歳以上用:1.8mL)、1回接種量(小児用0.2mL、12歳以上用0.3mL)、1バイアルの接種可能人数(小児用10人分、12歳以上用6人分)、保存及び移送方法が異なるため、別の種類のワクチンとして区別して扱う必要があります(2)。
2022年1月14日現在の国内での総接種回数は2億178万6,647回で、このうち高齢者( 65歳以上 )は6,601万8,696回、職域接種は1,933万3,787回でした。2022年1月14日時点の1回以上接種率は全人口(1億2,664万5,025人)の79.9%、2回接種完了率は78.6%、3回接種完了率は0.9%で、高齢者の1回以上接種率は、65歳以上人口(3,548万6,339 人)の92.5%、2回接種完了率は92.1%でした。
2022年1月11日公表時点の年代別接種回数別被接種者数と接種率/接種完了率( 図1 )を示します。また、新規感染者数と累積接種割合についてまとめました( 図2 )。
図1 年代別接種回数別被接種者数・接種率/接種完了率(首相官邸ホームページ公表数値より作図):2022年 1月 11日公表時点
注)接種率は、VRSへ報告された、一般接種(高齢者を含む)と先行接種対象者(接種券付き予診票で接種を行った優先接種者)の合計回数が使用されており、使用回数には、首相官邸HPで公表している総接種回数のうち、職域接種及び先行接種対象者のVRS未入力分である約1000万回分程度が含まれておらず、年齢が不明なものは計上されていません。また、年齢階級別人口は、総務省が公表している「令和3年住民基本台帳年齢階級別人口(市区町村別)」のうち、各市区町村の性別及び年代階級の数字を集計したものが利用されており、その際、12歳~14歳人口は10歳~14歳人口を5分の3したものが使用されています。
図2 日本_新規感染者数と累積接種割合の推移 [データ範囲:2020年1月22日~2022年1月10日]
下記データより作図.
Roser M, Ritchie H, Ortiz-Ospina E and Hasell J. (2020) - "Coronavirus Pandemic (COVID-19)". Published online at OurWorldInData.org. Retrieved from: 'https://ourworldindata.org/coronavirus' [Online Resource](閲覧日2022年1月12日)
参考文献
今回は、下記の内容について、最近のトピックスをまとめました。
【本項の内容】
掲載日:2022年1月21日
第68回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年1月20日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第68回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。
全国の新規感染者数(報告日別)は、今週先週比は3.6と急速な増加が続き、直近の1週間では10万人あたり約147となっている。新規感染者は20代を中心に増加している。まん延防止等重点措置が適用されている沖縄県、山口県及び広島県を始め、東京都や大阪府など関東や関西地方などの都市部のみならず、その他の地域でも新規感染者数の急速な増加が継続している。また、全国で新規感染者数が急速に増加していることに伴い、療養者数が急増し、重症者数も増加している。
オミクロン株のいわゆる市中感染が拡大しており、多くの地域でオミクロン株への急速な置き換わりが進んでいるが、引き続き、デルタ株も検出されている。
2022年1月13日
国立感染症研究所
国立感染症研究所では、新型コロナウイルス感染症対策に資する情報を提供することを目的として、実地疫学調査および新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS) のデータを用いて、 SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株) の潜伏期間の推定を行った。その暫定結果について報告する。
方法
本報告では2つのデータを用いて、それぞれ潜伏期間を推定した。
データ1:実地疫学調査
国内でオミクロン株症例に対して実施された実地疫学調査により、リンクおよび曝露日が明らかで、かつ曝露日から14日間が経過した感染ペア(N=35)のデータを用いた。曝露日から発症日までの日数を潜伏期間として検討した。
データ2: HER-SYS データ
2022年1月7日時点に登録されたHER-SYSデータを用いて、ゲノム検査によりオミクロン株が確定されたもののうち、推定感染日及び発症日に記載がある症例を抽出した。潜伏期間は推定感染日と発症日までの日数と定義した。アルファ株症例については、上記のオミクロン株症例を報告していた届出保健所からの症例に限定して、ゲノム検査によりアルファ株が確定された症例を抽出した。推定感染日と発症日の間隔が1日以上の症例を解析の対象とした。
潜伏期間の確率密度関数を計算するために、観察された潜伏期間に対してGamma分布, Lognormal分布, Weibull分布のあてはめを検討し、Akaike Information Criterion(AIC)による比較で最も当てはまりが良かったGamma分布を採用して確率密度分布を算出した。また最尤推定法を用いて推定を行い、信頼区間を計算した。
結果
データ1(実地疫学調査)を用いたオミクロン株症例の潜伏期間の中央値は2.9日(95%信頼区間:2.6-3.2)であった(図1)。99%が曝露から6.7日以内に発症していた。
図1.積極的疫学調査のデータを用いた曝露-発症間隔の分布と累積分布(N=35)
潜伏期間の単位は日。薄茶色は50%、薄水色は99%区間を示す。
データ2では、アルファ株症例1118例、オミクロン株症例113例が解析の対象となった。アルファ株症例の潜伏期間の中央値は3.4日(95%信頼区間:3.3-3.6)、オミクロン株症例は2.9日(95%信頼区間:2.5-3.2)であった。感染曝露から95%、99%が発症するまでの日数は、アルファ株症例ではそれぞれ8.7日、11.9日、オミクロン株症例ではそれぞれ7.1日、9.7日であった。
図2.HER-SYSデータを用いたアルファ株とオミクロン株の曝露-発症間隔の分布
感染曝露からの経過日数ごとの累積発症確率を表1に示す。アルファ株では10日目までに97.35%が発症するのに対して、オミクロン株では99.18%が発症すると推定された。
表1.HER-SYSデータを用いた曝露から経過日数ごとの発症する確率(%)
曝露日からの日数 |
アルファ株症例 |
オミクロン株症例 |
1日 |
6.29 |
8.55 |
2日 |
23.1 |
30.41 |
3日 |
42.42 |
53.05 |
4日 |
59.46 |
70.69 |
5日 |
72.67 |
82.65 |
6日 |
82.16 |
90.12 |
7日 |
88.63 |
94.53 |
8日 |
92.90 |
97.04 |
9日 |
95.63 |
98.43 |
10日 |
97.35 |
99.18 |
11日 |
98.41 |
99.57 |
12日 |
99.05 |
99.78 |
13日 |
99.44 |
99.89 |
14日 |
99.67 |
99.94 |
考察
本報告では、実地疫学調査で収集されたデータを用いた潜伏期間に対する確率密度分布の当てはめにより、中央値は2.9日と推定された。HER-SYSデータにおけるオミクロン株症例の潜伏期間が実地疫学調査と同等であることを踏まえて、アルファ株症例の潜伏期間との比較を行った。一方で感染曝露から99%が発症するまでの期間は、実地的疫学調査で収集されたデータに基づくと6.7日、 HER-SYSデータに基づくと9.7日と推定された。
観察10日目までにアルファ株症例の97.4%が発症するのに対して、オミクロン株症例では99.2%が発症すると推定された。この数値はアルファ株症例の14日における発症ハザードと同等であった。またオミクロン株症例では観察7日目までに94.5%が発症すると推定された。
本分析には制限がある。実地疫学調査においては曝露をうけた可能性のある者すべてが含まれていない可能性があるため、潜伏期間を過小評価している可能性がある。精緻な推定値を得るには上記を加味したモデルと十分なサンプルサイズが必要であるが、今回は検討できていない。HER-SYSデータにおける解析では、感染拡大の状況にあるオミクロン株症例を検討しているために、観察期間を十分にとれた症例が含まれることにより潜伏期間が変わる可能性がある。
注意事項
本報は迅速な情報共有を⽬的としており、内容や⾒解は知見の更新によって更新される可能性がある。
謝辞
本報告書の分析に用いたデータの収集にご協⼒いただいております各自治体関係者および各医療関係者の皆様に⼼より御礼申し上げます。
掲載日:2022年1月13日
第67回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年1月13日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第67回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。
全国の新規感染者数(報告日別)は、今週先週比は8.5と急速な増加が続き、直近の1週間では10万人あたり約41となっている。新規感染者は20代を中心に増加している。まん延防止等重点措置が適用されている沖縄県、山口県及び広島県を始め、東京都や大阪府など関東や関西地方などの都市部のみならず、その他の地域でもこれまで経験したことのない速さで新規感染者数が急速に増加している。また、全国で新規感染者数が急速に増加していることに伴い、療養者数が急増し、重症者数も増加している。
大部分の都道府県でオミクロン株のいわゆる市中感染が拡大しており、オミクロン株への急速な置き換わりが進んでいる地域もある。オミクロン株の伝播性が高いことを踏まえると、今後感染拡大が急速に進み、自宅・宿泊療養者や入院による治療を必要とする人が急激に増え、軽症・中等症の医療提供体制等がひっ迫する可能性に留意する必要がある。