Shionoya K, Yamasaki M, Iwanami S, Ito Y, Fukushi S, Ohashi H, Saso W, Tanaka T, Aoki S, Kuramochi K, Iwami S, Takahashi Y, Suzuki T, Muramatsu M, Takeda M, Wakita T, Watashi K*
Front Microbiol. 12:651403. doi: 10.3389/fmicb.2021.651403
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の制圧は喫緊の課題である。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2021年5月現在も世界的に大きな問題となっている新興感染症であるが、これに有効な抗ウイルス薬は未だほとんど無い。
Ian BaudiI, Masanori IsogawaI*, Federica Moalli, Masaya Onishi, Keigo Kawashima, Yuji Ishida, Chise Tateno, Yusuke Sato, Hideyoshi Harashima, Hiroyasu Ito, Tetsuya Ishikawa, Takaji Wakita, Matteo Iannacone, Yasuhito Tanaka*
PLoS Pathogens, 17(5), e1009228, 2021.
B型肝炎ウイルス(HBV)は急性および慢性肝炎、肝硬変、および肝細胞癌の原因となる。インターフェロン(IFN)は、HBV感染による病態に寄与すると考えられているが、そのメカニズムは不明である。
続きを読む: インターフェロンシグナルは、不全タンパク質反応を抑制し、B型肝炎ウイルス表面抗原を蓄積する肝細胞の細胞死を誘導する
Keigo Yato, Taishi Onodera, Mami Matsuda, Saya Moriyama, Akira Fujimoto, Koichi Watashi, Hideki Aizaki, Tomohisa Tanaka, Kohji Moriishi, Hironori Nishitsuji, Kunitada Shimotohno, Koji Tamura, Yoshimasa Takahashi, Takaji Wakita, Masamichi Muramatsu, Takanobu Kato, Ryosuke Suzuki
Journal of Virology, 95, e01680-20, 2021
B型肝炎ウイルスは(HBV)はHBV表面上のpreS1領域の一部(preS1/2-47)が受容体NTCPと結合して感染しますが、これまでpreS1/2-47の感染中和エピトープは明確ではありませんでした。
本研究ではpreS1/2-47を認識する13種類の抗体を作製し、エピトープとウイルス感染阻害効果を検証しました。その結果preS1/2-47のN末とC末部分を認識する抗体が顕著にウイルス感染を抑制することがわかりました。
今後はこの研究で得られた抗体の診断や治療への応用、同定されたエピトープに対する抗体を誘導する新規ワクチン抗原の開発等が期待されます。
本研究は、ウイルス第二部および免疫部との共同研究により、AMEDの支援を受け実施しました。
Yuriko Tomita, Shutoku Matsuyama, Hideo Fukuhara, Katsumi Maenaka, Hiroaki Kataoka, Takao Hashiguchi, Makoto Takeda
Journal of Virology (March 31, 2021) DOI: 10.1128/JVI.00434-21
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が効率よく感染するためには、ウイルスのスパイクタンパク質が、ヒトの細胞上にあるTMPRSS2という酵素で切断(開裂)されなければなりません。すなわちTMPRSS2の活性はSARS-CoV-2の感染に非常に重要です。しかし、TMPRSS2の生理的な活性制御やSARS-CoV-2感染との関連については、よくわかっていませんでした。今回の研究では、一部の生体内タンパク質分解酵素に対する生理的阻害物質HAI-2(hepatocyte growth factor activator inhibitor 2)がSARS-CoV-2の感染抑制因子であることを発見しました。本研究の成果は、HAI-2がSARS-CoV-2を生理的にも抑えている可能性を示しています。今後のSARS-CoV-2感染症(COVID-19)の病態解明のための研究、創薬へ向けた研究に大いに役立つ成果です。本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)ならびにJSPS科研費の助成を受けて成されました。(本論文は、Journal of Virologyのエディターが選ぶSpotlight論文に選ばれました)
続きを読む: TMPRSS2の生理的な活性阻害因子であるHAI-2は、新型コロナウイルスSARS-CoV-2の感染を抑制する
Isolation and characterization of Helicobacter suis from human stomach.
Rimbara E, Suzuki M, Matsui H, Nakamura M, Morimoto M, Sasakawa C, Masuda H, Nomura S, Osaki T, Nagata N, Shibayama K, Tokunaga K
Proc Natl Acad Sci U S A. 2021
ヘリコバクター・スイスは豚を自然宿主とし、ヒト胃にも感染するが、ヒト胃からの分離培養の成功例はなく、その病原性には不明な点が多かった。本研究では胃MALTリンパ腫など複数の胃疾患患者からヘリコバクター・スイスを分離培養することに世界で初めて成功した。
続きを読む: ヒト胃からのヘリコバクター・スイスの培養に成功 -ピロリ菌だけでなく、ヘリコバクター・スイスもヒト胃における病原細菌であることを証明-
Increased risk of rhinovirus infection in children during the coronavirus disease-19 pandemic.
Emi Takashita, Chiharu Kawakami, Tomoko Momoki, Miwako Saikusa, Kouhei Shimizu, Hiroki Ozawa, Makoto Kumazaki, Shuzo Usuku, Nobuko Tanaka, Ichiro Okubo, Hiroko Morita, Shiho Nagata, Shinji Watanabe, Hideki Hasegawa, Yoshihiro Kawaoka
Influenza and Other Respiratory Viruses, 2021
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下では、すべての年齢層で、インフルエンザをはじめとする代表的な呼吸器感染症ウイルスの検出率が低下していました。一方、10歳未満の小児では、COVID-19の流行拡大後も新型コロナウイルスはほとんど検出されませんでしたが、ライノウイルスの検出率が著しく上昇し、例年の2倍以上となりました。本研究により、COVID-19流行下で10歳未満の小児のライノウイルス感染リスクが上昇したことが明らかになりました。