国立感染症研究所

vir 2021 12
High-order epistasis and functional coupling of infection steps drive virus evolution toward independence from a host pathway

Minetaro Arita

Microbiology Spectrum, In Press: DOI: https://doi.org/10.1128/Spectrum.00800-21

ウイルスが宿主の細胞に感染するためには、宿主の様々な遺伝子を必要とします。RNAウイルス研究のモデルウイルスであるエンテロウイルスでは、宿主のPI4KB遺伝子およびOSBP遺伝子が複製に必要であることが知られています。また、これらを標的とする抗エンテロウイルス化合物の研究から、これらの遺伝子に依存しないウイルス変異株が4つの変異で生じることが明らかにされています。このうち2つの変異はウイルスRNAの複製に必要ですが、残り2つの変異の役割は不明でした。今回の研究で、役割が不明だった1つの変異がウイルスの細胞間の広がりを促進することを見出しました。この現象には、3つの変異がウイルスゲノムに導入される順番・組み合わせが必須であり(遺伝学用語でエピスタシスと呼ばれます)、これによりウイルス感染過程が促進され、最終的にウイルスの細胞間の広がりが促進されることが明らかにされました。今後さらに研究を進めることにより、ウイルスの進化における宿主因子の役割が解明されることが期待されます。

vir 2021 12
Amino Acid Polymorphism in Hepatitis B Virus Associated with Functional Cure.

Takashi Honda, Norie Yamada, Asako Murayama, Masaaki Shiina, Hussein Hassan Aly, Asuka Kato, Takanori Ito, Yoji Ishizu, Teiji Kuzuya, Masatoshi Ishigami, Yoshiki Murakami, Tomohisa Tanaka, Kohji Moriishi, Hironori Nishitsuji, Kunitada Shimotohno, Tetsuya Ishikawa, Mitsuhiro Fujishiro, Masamichi Muramatsu, Takaji Wakita, Takanobu Kato.

Cell Mol Gastroenterol Hepatol. 2021 Aug 2;S2352-345X(21)00159-4. doi: 10.1016/j.jcmgh.2021.07.013. Online ahead of print.

現行のB型慢性肝炎治療ではHBs抗原の陰性化すなわち機能的治癒が治療目標とされている。そこで機能的治癒との関連が報告されているHBVコア領域I97Lの変異がHBVの感染増殖に与える影響を解析した。

HBV感染系においてI97L変異株は通常のHBV株と比較して低い感染性を示した。さらに超遠心密度勾配法での解析により、I97L変異株では通常のHBVゲノムである不完全二本鎖ではなく、主に一本鎖ゲノムを持つ未熟なウイルスが産生されることが明らかとなった。この未熟なウイルスの感染性を評価したところ、細胞への吸着や侵入効率には差を認めなかったが、感染後のcccDNA生成効率が低下していた。これらの結果から、このI97L変異による未熟なHBV産生が感染細胞におけるcccDNA合成効率を低下させ、患者中のHBV量を減少させることで機能的治癒の成立に関与していると考えられた。

日時:令和3年6月9-10日
Zoom開催

■公開資料 6月10日(木) 第2日目 シンポジウムII 「サーベイランスの課題と現状の取組ー未来のより良いサーベイランスに向けてー ③次期感染症サーベイランス(仮称)について 厚生労働省結核感染症課 梅田浩史
■レファレンスセンター等報告 1.麻疹・風疹 2.HIV関連 3.インフルエンザ 4.レンサ球菌 5.カンピロバクター 6.結核 7.アルボウイルス 8.エンテロウイルス 9.ノロウイルス 10.レジオネラ 11.薬剤耐性菌 12.寄生虫 13.リケッチア 14.アデノウイルス 15.大腸菌 16.百日咳・ボツリヌス 17.動物由来感染症






vir 2021 09
Subacute SARS-CoV-2 replication can be controlled in the absence of CD8+ T cells in cynomolgus macaques.

Nomura T, Yamamoto H, Nishizawa M, Hau TTT, Harada S, Ishii H, Seki S, Nakamura-Hoshi M, Okazaki M, Daigen S, Kawana-Tachikawa A, Nagata N, Iwata-Yoshikawa N, Shiwa N, Iida S, Katano H, Suzuki T, Park ES, Maeda K, Suzaki Y, Ami Y, Matano T.

PLoS Pathogens. 2021 Jul 19;17(7):e1009668. Online ahead of print. (doi: 10.1371/journal.ppat.1009668.)

SARS-CoV-2感染によるCOVID-19の多くは軽症であるが、一部は致死的な呼吸器症状を示す。重症化のメカニズムは不明であり宿主免疫の機能不全が関与する可能性が考えられている。

この課題の解決を目的として、本研究ではSARS-CoV-2経鼻感染カニクイザルモデルを構築し、抗CD8抗体投与によるCD8陽性細胞枯渇実験を行った。予想に反して投与群と非投与群の鼻咽頭スワブおよび口腔スワブ中のvRNAコピー数および感染性ウイルス力価に有意な差異はなく、CD8陽性T細胞非存在下でも、SARS-CoV-2複製は制御されうることが示された。 CD8陽性T細胞はSARS-CoV-2感染制御に寄与しうると考えられるが、本研究は、SARS-CoV-2感染において、CD8陽性T細胞の機能不全だけでは、感染制御不全・重症化に直結するわけではないことを示すものである。

imm 2021 01
Temporal Maturation of Neutralizing Antibodies in COVID-19 Convalescent Individuals Improves Potency and Breadth to Circulating SARS-CoV-2 Variants

Saya Moriyama, Yu Adachi, Takashi Sato, Keisuke Tonouchi, Lin Sun, Shuetsu Fukushi, Souichi Yamada, Hitomi Kinoshita, Kiyoko Nojima, Takayuki Kanno, Minoru Tobiume, Keita Ishijima, Yudai Kuroda, Eun-Sil Park, Taishi Onodera, Takayuki Matsumura, Tomohiro Takano, Kazutaka Terahara, Masanori Isogawa, Ayae Nishiyama, Ai Kawana-Tachikawa, Masaharu Shinkai, Natsuo Tachikawa, Shigeki Nakamura, Takahiro Okai, Kazu Okuma, Tetsuro Matano, Tsuguto Fujimoto, Ken Maeda, Makoto Ohnishi, Takaji Wakita, Tadaki Suzuki, and Yoshimasa Takahashi

Immunity, in press | doi; https://doi.org/10.1016/j.immuni.2021.06.015

 

新型コロナウイルスの一部の変異株は、回復者やワクチン接種者が獲得する中和抗体から逃避するというデータが相次いで報告され、今後のワクチン戦略にも影響を与える可能性が指摘されている。本研究ではCOVID-19回復者の中和抗体の量と質を最長10ヶ月間に渡り経時的に解析した。主要な中和抗体の標的部位であるスパイクタンパクの宿主レセプター結合領域 (receptor binding domain; RBD)に変異株に特徴的な変異を入れた変異株RBDタンパクを作製し、変異感受性・変異耐性抗体を定量したところ、変異株RBDにも結合する変異耐性抗体はCOVID-19重症度に関わらず減衰速度が緩やかで持続性に優れ、親和性が上昇していた。さらに、抗体あたりの中和活性と変異株に対する交差中和活性が経時的に増加しており、我々の免疫系は変異株にも適応力のある質の高い抗体の比率を時間と共に高めることが可能であると考えられる。

vir 2021 09
Dysbiotic fecal microbiome in HIV-1 infected individuals in Ghana

Prince Kofi Parbie, Taketoshi Mizutani, Aya Ishizaka, Ai Kawana-Tachikawa, Lucky Ronald Runtuwene, Sayuri Seki, Christopher Zaab-Yen Abana, Dennis Kushitor, Evelyn Yayra Bonney, Sampson Badu Ofori, Satoshi Uematsu, Seiya Imoto, Yasumasa Kimura, Hiroshi Kiyono, Koichi Ishikawa, William Kwabena Ampofo, Tetsuro Matano

Front. Cell. Infect. Microbiol., 18 May 2021

腸内細菌叢の環境制御が疾患予防や治療の分野で重要であることが明らかになりつつあります。

HIV感染におけるウイルス動態や各種免疫マーカーと腸内細菌叢の環境変化をガーナにおけるコホートで検討しました。対象はHIV感染者と性および年齢をマッチさせたHIV非感染者です。結果、HIV感染者の腸内細菌叢は非感染者に比して優位にαダイバシティが低いことが観察されました。 細菌叢ではAchromobacter とStenotrophomonasを含むProteobacteria groupsの優位な増強が認められました。さらにPrevotellaの減少が認められています。これらのデータは他の人種とのそれと異なる部分もあり、今後、地域の文化社会学的なアプローチや免疫学的・遺伝学的な解析によりHIV感染・病態と腸内細菌叢環境との関連性を解析する予定です。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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