Enhanced isolation of SARS-CoV-2 by TMPRSS2-expressing cells.

Shutoku Matsuyama, Naganori Nao, Kazuya Shirato, Miyuki Kawase, Shinji Saito, Ikuyo Takayama, Noriyo Nagata, Tsuyoshi Sekizuka, Hiroshi Katoh, Fumihiro Kato, Masafumi Sakata, Maino Tahara, Satoshi Kutsuna, Norio Ohmagari, Makoto Kuroda, Tadaki Suzuki, Tsutomu Kageyama, and Makoto Takeda

Proc Natl Acad Sci USA (March 12, 2020)

 

vir 2020 022019年12月に中国武漢で発生した新型コロナウイルス SARS-CoV-2による肺炎の流行は、今や世界中に広がっている。TMPRSS2とは、呼吸器上皮に発現している宿主のタンパク分解酵素のひとつである。

2019nCoV 200130monos thumb国立感染症研究所ウイルス第三部で、新型コロナウイルスの分離に成功しました(図1)。使用した細胞はVeroE6/TMPRSS2細胞​(TMPRSS2というプロテアーゼを発現している)です。臨床検体を接種後、細胞の形状変化を観察し、多核巨細胞の出現を捉えました。

細胞上清中のウイルスゲノムを抽出して、ほぼ全長のウイルスゲノムの配列を確定しました。これは、最初に発表されたウイルスの遺伝子配列と99.9%の相同性がありました。

分離したウイルスを用いて、ウイルス感染機構及び病原性の解析、ウイルス検査法・抗ウイルス薬・ワクチンなどの開発を進める予定です。また、新型コロナウイルス対策に役立てるため、ウイルスと細胞は国内外に広く配布する予定です。

 

以下の写真は、「感染症 画像・映像アーカイブ」の記事で一般に配布しております。

2019nCoV 200130monos niid

図1:当研究所で分離された新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真像。粒状の粒子の上にコロナウイルス特有の冠状のスパイクタンパク質が観察できます。

2019nCoV 200130cellculture niid

図2:VeroE6/TMPRSS2細胞に出現した新型コロナウイルスによる細胞変性像。画面の中央に多数の核の集積像(多核巨細胞像)が確認できます。

2019nCoV 200130fluoro niid

図3:2019-nCoVに感染した細胞の蛍光抗体染色像

 

Severe fever with thrombocytopenia syndrome virus targets B cells in lethal human infections.

Tadaki Suzuki, Yuko Sato, Kaori Sano, Takeshi Arashiro, Harutaka Katano, Noriko Nakajima, Masayuki Shimojima, Michiyo Kataoka, Kenta Takahashi, Yuji Wada, Shigeru Morikawa, Shuetsu Fukushi, Tomoki Yoshikawa, Masayuki Saijo, and Hideki Hasegawa

J Clin Invest. 2020 Jan 6. pii: 129171.

virology 2020 1

重症熱性血小板減少症候群(Severe fever with thrombocytopenia syndrome; SFTS)は、SFTSウイルス(SFTSV)によるマダニ媒介性のウイルス性出血熱である。本研究では、SFTSで死亡した患者体内でのSFTSV感染細胞はマクロファージと「抗体産生細胞である形質芽球に分化しつつあるB細胞」であることを明らかにした。さらに、本研究ではヒト形質芽球と似た特徴を持つ培養細胞株のPBL-1細胞を用いて、SFTS患者の体内で起こるウイルス感染を試験管内で再現が可能なSFTSV感染の実験系の開発にも成功した。

Evaluation of antigenic differences between wild and Sabin vaccine strains of poliovirus using the pseudovirus neutralization test.

Minetaro Arita and Masae Iwai-Itamochi

Scientific reports, 9:11970, 2019

virology 2017 4

小児麻痺(ポリオ)流行に対する日本における集団免疫を評価・維持するために、ポリオウイルスに対する中和抗体の保有率調査が行われてきました。しかし、近年、2型ポリオウイルスの管理基準が厳格になり、中和抗体価測定試験におけるウイルスの使用が制限され、試験を継続するための方法論が模索されています。

Poliovirus evolution toward independence from the phosphatidylinositol-4 kinase IIIβ/ oxysterol-binding protein family I pathway.

Minetaro Arita, and Joëlle Bigay

ACS Infectious Diseases, 5: 962-973, 2019

virology 2017 4

PI4KB/OSBP経路は、ポリオウイルスを含む多くのウイルスの複製に利用されており、ウイルスの複製に必須な宿主経路の一つであると考えられています。今回、国立感染症研究所ウイルス第二部とフランスのコート・ダジュール大学との共同研究により、PI4KB/OSBP経路に依存しないポリオウイルス変異株を分離しました。

Tracking and clarifying differential traits of classical- and atypical L-type bovine spongiform encephalopathy prions after transmission from cattle to cynomolgus monkeys.

Hagiwara K, Sato Y, Yamakawa Y, Hara H, Tobiume M, Okemoto-Nakamura Y, Sata T, Horiuchi M, Shibata H, and Ono F.

PLoS One, 14(5): e0216807, 2019

virology 2017 4

ウシ海綿状脳症(BSE)病原体のプリオンには、classical型(C型)と非定型タイプ(L型、H型)があります。C型プリオンが混入した餌が原因となって英国では多くの牛がBSEにかかり、さらに感染牛の神経などに蓄積したC型プリオンを食べた人の中に変異型クロイツフェルト・ヤコブ病が発生しました。一方、L型やH型プリオンが人へ感染したという報告はこれまでありませんが、L型プリオンはヒト・モデルとしてのカニクイザルに感染します。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan