新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 関連情報ページ

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2021年10月6日

要約

国立感染症研究所では、複数の医療機関の協力のもとで、発熱外来等で新型コロナウイルスの検査を受ける者を対象として、社会活動・行動のリスクを検討するための症例対照研究を実施している。本暫定報告は、2021年6月から7月に東京都内の5ヶ所の医療機関の発熱外来等を受診した成人のうち新型コロナワクチンの接種歴がない753名(うち陽性257名(34.1%))の解析結果である。

会食・飲み会に参加しなかった者と比較して、会食・飲み会に参加した者では、感染のオッズが高かった。ただし、飲酒を伴う場合は1回でも高いオッズであった。また、レストラン・バー・居酒屋などでの飲み会・会食は感染のオッズが高いが、レストラン・バー・居酒屋などでの飲み会・会食に参加していなくても、自宅における同居者以外との会食や飲み会等への参加もリスク因子であることが示された。いずれの状況でも、昼よりも夕方・夜の飲み会・会食において感染のオッズが高かった。一方で、カフェや喫茶店、食事配達、テイクアウトの利用、1人での外食は明らかなリスク因子ではなかった。会食や飲み会、食事様式、カフェ利用等の様子に関連した検討では、最大同席人数は自身を含めて5人以上で感染のオッズが高く、最大滞在時間は2時間以上の場合オッズが高かった。会食/飲み会参加・カフェ利用がない者と比較して、食事や飲み物を口に運ぶとき以外マスクをつけていた者は感染のオッズは変わらなかったが、マスクを着用していなかった・席についてマスクを外した者では、極めて高いオッズを示した。また、不織布マスクを着用していた者と比較して、布/ガーゼマスクやウレタンマスクを着用していた者は感染のオッズが高かった。この関係は、会食歴があるものに限定した際により強くなった。その他の行動歴として、デパートやショッピングセンター訪問においては、感染のオッズの上昇は認めなかったが、2人以上のカラオケでは、行った者の数が少ないため信頼区間が広いが感染のオッズが高かった。就業・就学については、就業・就学の有無、フルタイムかパートタイムか、電車通勤かどうかで感染のオッズは大きく変わらなかった。テレワーク・オンライン授業の実施状況についても、明確な傾向はみられなかった。

感染のリスクは単一ではなく、一つの感染対策で十分というものも存在しないため、本報告等を踏まえて、流行状況に応じて政府・自治体の要請に応じた感染対策を遵守し、感染リスクの高い行動を極力避け、ワクチン接種を検討し、複合的に感染リスクを下げることが重要である。

高齢者の会合等、人が集う場面での新型コロナウイルス感染症に関する
感染事例の所見と公民館や体育館等を利用する際の感染対策についての提案

2021年9月24日時点

国立感染症研究所実地疫学研究センター

<はじめに>

 当センターでは、これまで多くの医療機関や高齢者福祉施設における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)クラスター事例の調査に当たる一方で、いわゆる昼カラオケ事例を始めとする、日常生活の娯楽の場で高齢者を中心とする年齢層の集団が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した複数の事例について、自治体による疫学調査の支援を行ってまいりました1)。度重なる緊急事態宣言を経て、デルタ株を中心とする第5波がひと段落しつつある2021年9月末の状況の中で、これから地域によっては、公民館等を中心にして、秋祭り等の行事がCOVID-19に警戒しながら行われていくことが予想されます。特に多くの高齢者においては、新型コロナワクチンの接種も進んでおり、ここで今一度、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による高齢者が集った場合に発生したクラスター事例を振り返り、これまでに得られた知見や必要な対策について考えてみたいと思います。なお、これらの情報は、当センターにより自治体の調査支援後の状況として、現時点でまだ最終的な報告や論文に至っていない暫定的な内容であるものが大半であり、あくまで一般的で共通する所見等の早期還元としての位置付けであることにご注意いただければ、と思います。

 

<これまでに得られた主な所見>

・高齢者が日常生活で集合して楽しむ場での感染としては、昼カラオケ、フィットネスクラブ、サークル・クラブ活動等、が知られていた。

・主に高齢者を対象とした催事場(ショッピングモールでの対面販売等)での数週間程度の比較的長期間のイベントにおいて、アルファ株流行下より、複数のクラスター事例の発生を認めた。

・イベントでは、物品の無料体験会、説明会などの場面で、地域の高齢者が連日、時に繰り返し訪れている様子が観察された。

・上記のようなイベントでは、地域の高齢者が集まり、参加者(利用者)同士での談笑、飲食を通した憩いの場になっていた。そのプラス面を考慮する必要がある一方で、調査により、感染した高齢者が、他の感染機会を認めなかった場合も多く、対策上の重要性が認められた

・利用者のマスクについては、一般に着用が推奨されていたが、特に飲食時やそれ以外のマスク着用の状況は詳細な情報が得られていない。

・説明会等における講師や他の大会関係者のマスク着用に関する情報は乏しかった。

・特に扱う対象が食品の場合、試飲や試食などマスクを外す機会があった。

・一部密な状態(狭い空間に多数の者がいた状態)があったことが観察され、換気についても不十分であった可能性が見受けられた(CO2センサーなどでの測定情報無し)。

・感染者の店舗利用日が共通していない事例があり、利用者間ではなく、感染した従業員が感染伝播に寄与した事例があった可能性が考えられた。

 

<これまでの所見に基づく主な提案:公民館ガイドラインを踏まえて>

 高齢者を含む地域住民が集う場としての公民館における新型コロナウイルスへの対応に関しては、公益社団法人全国公民館連合会により作成された、「公民館における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」(2020年10月2日)が同会ホームページ上で公開されています2)。幅広く客観的な情報を網羅しているガイドラインであり、運営者はこの内容を確認することがまず肝要です。同ガイドラインの構成については、感染防止のための基本的な考え方の中で、いわゆる三つの密(密閉、密集、密接)を徹底して避けることの重要性について触れ、リスク評価の項では、接触感染・飛まつ感染それぞれの対策、集客施設としてのリスク評価、地域における感染状況のリスク評価の重要性について言及しています。具体的に、イベント・講座等の実施に講じるべき具体的策、館における公演等の開催に際して、公演主催者が講じるべき具体的対策(対人距離を最低1メートル(出来れば2メートル)確保する)、入館時に検温すること、直接手で触れることが出来る展示物等は展示しない、トイレの管理等、の注意点が分かりやすく列挙されています2)。

 以下、当センターによる高齢者を主な対象とした催事場事例対応からの経験に基づく特記すべき事項です。公民館ガイドラインとの重複する事項が複数含まれますが、利用者自身が注意すべき事項、従業員の感染予防が重要であることに関する注意事項、さらに、施設の換気に関する注意点、の3つに大別して説明します(換気についてはさらに専門家からの助言を得ました)。

・利用者に対して:

  1. 屋内で複数の者が集まる機会では密集・密接になる場面を避けることを徹底する。具体的には、良好な換気への対策が十分に行われているイベントに参加することを心がける。マスク着用は必須である。イベント終了後の談笑や長時間の利用を避けることが必要。また、対人距離は最低1メートル(できるだけ2メートル)を確保する。座席の配置についても、最低1メートル(できるだけ2メートル)を確保する。高齢者では耳が聞こえにくい、見にくいなどで距離を保てない状況からどうしても近い距離の接触となりがちではあるが、適切なマスク着用をさらに徹底し、参加は短時間に留めるなどの工夫を行う。
  2. 試飲や試食を伴う屋内のイベントへは、できる限り参加を控える。参加する場合、マスクを外す時間を短時間に留め、その間は会話しない。適切なアルコール消毒剤を用いた手指衛生を適切に行う。

・運営者(開催されているイベントがある場合の主催者を含む)・従業員に対して:

  1. 従業員は施設内感染拡大の要因となり得ることから感染予防が出来るように指導を徹底する。
  2. 具体的には従来通りの基本として、適切なマスク着用、手指衛生、換気を徹底する。
  3. 説明会や講演会の開催にあたっては、運営者・主催者は、屋内で、長時間に渡り、参加者が集まってしまうことを避け、屋外での開催やオンラインを組み入れたイベントとなるように工夫する。
  4. 換気が十分に実施できる環境の整備を行う(詳細は後述)。

・換気を十分に実施する具体的方法(北海道大学工学研究院教授:林基哉先生による補足)

  1. 機械換気設備がある場合には、施設使用時には常時運転する。
  2. 寒さや暑さに配慮しながら、窓とドアをなるべく常時開放して、部屋の空気がこもらないようにする(暖冷房の利用や着衣に配慮しながら、より換気を確保する)。
  3. 扇風機、サーキュレーターなどで、屋内の空気を動かして空気の淀みを少なくする。
  4. 特に換気が十分ではない場合、滞在時間を最小限にすることが望ましい。
  5. 二酸化炭素濃度の測定機器(CO2センサー)を利用して、換気の確認を行うことが出来る(従来必要とされている換気量があれば、1000ppm程度以下になる。必要な換気量を確保するためには、800ppmを超えたら窓開け換気等の換気対策を行うことが望ましい。また、測定器の値が適切かどうか、定期的に確認する)。

 

<おわりに>

2021年9月末現在、新型コロナワクチンの接種が進む国内の状況で、医療機関や高齢者施設における、いわゆるブレイクスルー感染事例が散見されています。しかし、死亡等の重症化に対する減少効果は明らかで、ワクチンの高い有効性は明らかと言えます。とは言え、適切なマスクの着用をしない、手指衛生を怠る、換気をきちんと行わない、等の杜撰な感染対策下においては、デルタ株はたやすく人々に感染し、大きな脅威をもたらすことも分かってきました。その点からも、高齢者を中心とする年齢層の方が集う場をどのように安全に運営するか、は運営者のみならず、利用者である市民も一体となって取り組むべき課題と言えます。また、本稿では触れませんでしたが、屋外においても三つのうち一つの密でも発生すると、感染リスクが増大することが観察されています。付設する広場などにおいても、常に警戒を怠らず、十分な間隔をおきながら交流を楽しむことが求められます。屋外のイベントにおいても、密が発生しない(最低限人と人が接触しない)程度の間隔を空けていただきたいと思います。ただし、大声での歓声、声援等が想定される場合等は、十分な人と人との間隔(1メートル)を要することとします。

 

<参考文献>

  1. 札幌市・小樽市における新型コロナウイルス感染症の昼カラオケ関連事例における感染リスク因子(速報掲載日2020/10/7) (IASR Vol. 41 p185-187: 2020年10月号) https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2488-idsc/iasr-news/9895-488p01.html
  2. 公益社団法人全国公民館連合会(一部改訂令和2年10月2日).公民館における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインhttps://www.kominkan.or.jp/file/all/2020/20201002_02guide_ver03.pdf
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新型コロナウイルス感染症における積極的疫学調査の結果について(最終報告)

(IASR Vol. 42 p197-199: 2021年9月号)

 

 本報告は, 感染症法第15条第1項の規定に基づいた積極的疫学調査1,2)で集約された, 各自治体・医療機関から寄せられた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の退院患者の情報に関する最終報告3,4)である。ただし, 本情報は統一的に収集されたものではなく, 各医療機関の退院サマリーの様式によるため解釈には注意が必要である。

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消防学校における新型コロナウイルス感染症症例集積事例

(IASR Vol. 42 p199-201: 2021年9月号)

 
端 緒

 2021年4月13日(Day1, 発症日の最も早い症例の発症日をDay0としている), 消防学校にて初任教育学生2名がPCR検査で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性と判明し, 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断されたことから, 学校は保健所からの指導を受け, 4月14日(Day2)からの校内留置措置を実施した。消防学校の初任教育学生は203名, 職員が35名であった。学生は4つの小隊(50名程度)に分かれ, 基本的には小隊ごとに授業が実施されていた。それぞれの小隊はさらに8つの班(6名程度)に分かれていた。男子学生の場合, 同班の学生は寮で同室であった。室内は完全個室ではなく各個人のスペースが仕切られ, 天井部が空いていた。寮は3つのフロアに分かれて学生が居住していた。

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福岡県新型コロナウイルス感染対策調査:介護・福祉施設等における課題

(IASR Vol. 42 p201-203: 2021年9月号)

 
はじめに

 介護・福祉施設等では, 共同生活ならびに認知・身体機能の維持を目指した活動を行うため, 3密を完全に避けることは困難である。さらに, マスク着用を遵守できない利用者も一定数いるため, 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の伝播が起こりやすい環境である。実際に福岡県内の介護・福祉施設等では, 第3波と称される2020年12月~2021年3月までに64件(計1,144人)のクラスターが発生しており, 迅速かつ抜本的な対策が求められている。今回, 福岡県医師会が主体となり, 福岡県保健医療介護部とともに県内の医療機関ならびに介護・福祉施設等における感染対策の実情を評価し, 講じるべき対策を検討するためにアンケート調査を行った。

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群馬県におけるSARS-CoV-2アルファ株関連症例の特徴について(2021年2月10日~6月2日)

(IASR Vol. 42 p203-204: 2021年9月号)

 

 2020年11月, 英国で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株であるVOC-202012/01(アルファ株)が報告され, 世界各地で感染拡大がみられている1,2)。アルファ株は, 従来株と比較して感染力および重篤度が高いウイルスと推定されており, 英国での感染者数の増加を引き起こした要因と考えられている。国内でも, 2020年12月25日に, 英国からの帰国者でアルファ株が初めて検出された2)。2021年2月, 群馬県においてもアルファ株が検出され, その後, 県内の主流行株へと代わってきた。群馬県衛生環境研究所では, 国立感染症研究所(感染研)病原体ゲノム解析研究センターと共同で, SARS-CoV-2のゲノム解析を行っている。その情報を基に, ハプロタイプ・ネットワーク図を作成し, 疫学調査と統合して解析することで, 群馬県におけるアルファ株の感染状況に関する知見を得たので報告する。

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高い累積罹患率を認めた札幌市内コールセンターでの新型コロナウイルス感染症アウトブレイク(2021年5月)―健康管理, 感染管理, 換気を確認する重要性について

(IASR Vol. 42 p206-207: 2021年9月号)

 

 2021年4月から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第4波を迎えていた札幌市で, 市内コールセンターAでCOVID-19アウトブレイクが確認された。コールセンターは, 比較的密な環境で時に大声を出して勤務していることから, 海外でもアウトブレイクが報告されており1), 安全な勤務体制の構築が課題である。今回, 調査で判明した課題を整理し, 改善点を検討した。

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疫学的なつながりが全ゲノム解析で補足できたSARS-CoV-2デルタ株感染事例(2021年7月)―札幌市

(IASR Vol. 42 p205-206: 2021年9月号)

 

 2021年7月上旬, 札幌市内で2例しか確認されていなかったL452R変異を持つ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に, 札幌市職員3名を含む6名が同時期に罹患した。札幌市職員は業務上のつながりが乏しい2部署から確認されており, 発症2週間前に2部署は同じ空間で業務を行うことはなかったが, 感染した3人は同じ日に, 集団Aに対応していた。札幌市では初のL452R変異株感染が集団で確認された事例であり, 疫学調査とゲノム解析で感染経路が推測されたため, 事例を紹介する。

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精神科病院における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)クラスター事例と対応

(IASR Vol. 42 p207-209: 2021年9月号)

 
はじめに

 精神疾患を有する患者の場合, マスク着用や手指衛生, 身体的距離の確保といった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染予防対策を十分に行うことが困難であり, COVID-19患者が発生した場合の感染拡大リスクは高いと考えられる。このため, 精神科病院においては, こうした患者の特性をふまえたうえで, あらかじめCOVID-19患者発生に備えた体制を整備し, 対策を実施することが求められる。

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単科精神科病院の療養病棟で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)集団感染事例の血清疫学調査(第1報)

(IASR Vol. 42 p210-211: 2021年9月号)

 
はじめに

 2020年9月, 県内の単科精神科病院(以下, 病院)の1閉鎖療養病棟(病床数60)において新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の集団感染事例が発生した(本号31ページ参照)。事例探知時の入院者数は58名であった。同年4月より面会は制限されていたが, 認知機能障害など基礎疾患の特性から棟内の標準感染予防策の実施は難しかった。積極的疫学調査の結果, 感染源は特定されなかったが, 地域の流行状況や流行曲線などからウイルスが1つの侵入経路で持ち込まれたものと考えられた。最終的に, PCR検査で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性と判定されたCOVID-19の確定症例は70例(患者55例, 職員15例)となった。

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