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掲載日:2022年1月13日

第67回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年1月13日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第67回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版

感染状況について

全国の新規感染者数(報告日別)は、今週先週比は8.5と急速な増加が続き、直近の1週間では10万人あたり約41となっている。新規感染者は20代を中心に増加している。まん延防止等重点措置が適用されている沖縄県、山口県及び広島県を始め、東京都や大阪府など関東や関西地方などの都市部のみならず、その他の地域でもこれまで経験したことのない速さで新規感染者数が急速に増加している。また、全国で新規感染者数が急速に増加していることに伴い、療養者数が急増し、重症者数も増加している。

大部分の都道府県でオミクロン株のいわゆる市中感染が拡大しており、オミクロン株への急速な置き換わりが進んでいる地域もある。オミクロン株の伝播性が高いことを踏まえると、今後感染拡大が急速に進み、自宅・宿泊療養者や入院による治療を必要とする人が急激に増え、軽症・中等症の医療提供体制等がひっ迫する可能性に留意する必要がある。

実効再生産数:
全国的には、直近(12/28時点)で2.29と2を上回る水準となっており、首都圏では2.27、関西圏では1.98となっている。

2022年1月13日9:00時点

1月14日一部修正

1月20日一部修正

1月25日一部修正

国立感染症研究所

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主な更新事項

  •   「ウイルスの性状・臨床像・疫学に関する評価についての知見」の「感染・伝播性」について、「国内の知見」を更新(5-6ページ)
  •   「ワクチン・抗体医薬品の効果への影響や自然感染による免疫からの逃避」について、「細胞性免疫について」の項を追加(10-11ページ)
  •   「重症度」について、「動物モデルでの評価」の項を追加(13-14ページ)

概要

WHOは2021年11月24日にSARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統を監視下の変異株(Variant Under Monitoring; VUM)に分類したが(WHO. Tracking SARS-CoV-2 variants)、同年11月26日にウイルス特性の変化の可能性を考慮し、「オミクロン株」と命名し、懸念される変異株(Variant of Concern; VOC)に位置づけを変更した(WHO. Classification of Omicron (B.1.1.529) )。

2021年11月26日、国立感染症研究所は、PANGO系統でB.1.1.529系統に分類される変異株を、感染・伝播性、抗原性の変化等を踏まえた評価に基づき、注目すべき変異株(Variant of Interest; VOI)として位置づけ、監視体制の強化を開始した。2021年11月28日、国外における情報と国内のリスク評価の更新に基づき、B.1.1.529 系統(オミクロン株*)を、懸念される変異株(VOC)に位置付けを変更した。

* B.1.1.529 系統の下位系統であるBA.ⅹ系統等が含まれる。

 

表 SARS-CoV-2 B.1.1.529系統(オミクロン株)の概要

PANGO

系統名

 

日本

感染研

WHO

EU

ECDC

UK

HSA

US CDC

スパイクタンパク質の主な変異(全てのオミクロン株で認めるわけではない)

検出報告国・地域数

B.1.1.529

BA.x

VOC

VOC

VOC

VOC

VOC

 

G142D, G339D, S371L, S373P, S375F, S477N, T478K, E484A, Q493K, G496S, Q498R, N501Y, Y505H, P681H

106か国

 

オミクロン株について

  •   オミクロン株は基準株と比較し、スパイクタンパク質に30か所程度のアミノ酸置換(以下、便宜的に「変異」と呼ぶ。)を有し、3か所の小欠損と1か所の挿入部位を持つ特徴がある。このうち15か所程度の変異は受容体結合部位(Receptor binding protein (RBD); residues 319-541)に存在する(ECDC. Threat Assessment Brief)。各変異等の詳細については第3報を参照されたい。
  • 下位系統としてBA.1系統、BA.2系統、BA.3系統が位置付けられており、現在の世界的な主流はBA.1系統である。国内での検出もほとんどがBA.1系統であるが、検疫ではインド、フィリピンに渡航歴がある者からBA.2系統が検出されている。国外では、デンマーク、フィリピン、インド等でBA.2系統が占める割合が増加している。BA.2系統は、BA.1系統よりも変異の箇所が少なく、BA.1系統でスパイクタンパク質に見られる欠失箇所(del69/70, del143/145, del212等)がない。一部の国では、これらのスパイクタンパク質の欠失箇所をPCR検査で検出する(S gene target failure (SGTF)と呼ばれる)ことでオミクロン株の代替指標としている場合もある。国内では、PCR検査によるL452R陰性をオミクロン株のスクリーニング方法として用いているが、BA.2もL452R陰性となるため検出可能である。現状では、BA.2の感染例に関する疫学的情報は限定的である。

 

海外での発生状況

オミクロン株による感染例(以下オミクロン株感染例)の報告数ならびに報告国数が世界的に増加している。南アフリカ、イングランドやアメリカ合衆国では、デルタ株からオミクロン株への急速な置き換わりを認め、直近の報告ではいずれの国においても新規感染例の95%以上がオミクロン株に由来すると推定される結果であった。また、複数の国・地域で市中感染や集団内の多くの者が感染したクラスター事例も報告されており、さらなる感染の拡大が懸念される。ゲノムサーベイランスの質が十分でない国・地域においては探知されていない感染例が発生している可能性もあるため、現在感染例が探知されている国・地域よりもさらに広い範囲に感染が拡大している可能性がある。

  •   2021年11月24日に南アフリカからWHOへ最初のオミクロン株による感染例(以下オミクロン株感染例)が報告されて以降、2022年1月6日までに日本を含め全世界149か国から感染例が報告された(WHO. Enhancing Readiness for Omicron (B.1.1.529): Technical Brief and Priority Actions for Member States. 7 January 2022)。
  •   2022年1月3日時点でアフリカでは、29か国からオミクロン株感染例が報告された(Outbreak Brief #103: Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Pandemic Date of Issue: 04 January 2022)。南アフリカでは、ゲノム解析された検体のうち、10月はデルタ株が85%(650/768)、オミクロン株0.3%(2/768)であったが、11月はオミクロン株84%(1,141/1,367)、12月はオミクロン株99%(1,057/1,071)であった (NICD. SARS-COV-2 GENOMIC SURVEILLANCE UPDATE. 7 JAN 2022))。
  •   2022年1月7日時点でEU/EEA域内では、30か国からオミクロン株感染例がEuropean Surveillance Systemに報告された。域内の多くの国々においてオミクロン株感染例の報告が増加し、クラスター事例も発生している(ECDC. Weekly epidemiological update: Omicron variant of concern (VOC) – week 1 (data as of 7 January 2022))。オミクロン株感染例28,522例とS遺伝子が検出されないSARS-CoV-2感染例(以下SGTF感染例)154例の計28,676例の解析では、年齢中央値31歳で男性が50%であった。そのうち情報を取得できた16,341例において、89%(14,508/16,341)が有症状であった。ワクチン接種歴について情報が得られた956例について、79% (759例)が2回接種、9% (89例)が1回接種、7% (67例)が未接種、4% (34例)が3回接種であった。また情報が得られた感染例の中で、1%(94/14,972)が入院し、0.1%(16/14,930)がICU入室/人工呼吸器管理を要し、0.01%(2/20,256)が死亡した。(ECDC. Country Overview Report: Week 52, 2021, produced on 6 January 2022)。
  •   2021年12月30日時点でイングランドでは、212,019例のオミクロン株感染例と492,543例のSGTF感染例が報告された。また12月29日時点で、75例の死亡例と981例の入院例(オミクロン株感染例ないしSGTF感染例)を認めた。イングランドでは11月末以降SGTF感染例の増加を認め、12月28日ないし29日に採取されS遺伝子の結果が判明した46,066検体のうち、96%(44,064検体)でSGTFを認めた(UKHSA. Omicron daily overview. 31 December 2021)。12月18日時点での53,842例(男性25,577例、女性28,265例)のオミクロン株感染例の解析では、20歳代が33%と最も多く、次いで30歳代が23%、40歳代が15%、10歳代が12%であった。(UK HSA. SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England Technical briefing 33)。
  •   アメリカ合衆国では、CDCの1月1日時点の推計では、同国での週別のオミクロン株検出割合の推定値が77%(12月19日~25日)から96%(2021年12月26日~2022年1月1日)に増加した。(CDC. COVID Data Tracker Variant Proportions)。
  •   2022年1月5日時点で西太平洋地域では、13ヵ国からオミクロン株感染例が報告された(WHO. Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) External Situation Report #86 5 January 2022)。韓国では、2021年12月20日時点で合計188例(確定例178例、確定例と疫学的関連のある10例)が報告された。確定例の年齢分布は、20歳未満が27%、20代~50代が66%で、推定感染地は海外が29%、国内が71%であった。診断時には20%が無症状で、有症状の場合は発熱、咽頭痛、咳が主な初期症状であり、いずれの感染例も軽症であった (3차접종 적극 참여, 누적 1,100 넘어(12.20., 정례브리핑))。
  •   2022年1月2日時点で東南アジア地域では、8か国からオミクロン株感染例が報告された(WHO. COVID-19 Weekly Situation Report Week #52 (27 December 2021 – 2 January 2022) 7 January 2022)。
  •   2021年12月18日時点で東地中海地域では、13か国からオミクロン株感染例が報告された(WHO EMRO. COVID-19: WHO EMRO Biweekly Situation Report #25 Epi Weeks 49 – 50 (5-18 December 2021))。

 

日本での発生状況

海外でも各地域で急激なオミクロン株への置き換わりが進み、直近の海外からの入国者のSARS-CoV-2陽性例の8割以上がオミクロン株感染例であり、オミクロン株の国内への輸入リスクは非常に高い。国内では大部分の都道府県からオミクロン株感染例が報告され、特にオミクロン株の継続的な曝露を受けた地域では、市中感染の拡大による感染者数の急増とオミクロン株への急速な置き換わりを認めた。また、そのような地域からの波及を受けた地域でも急激な市中感染の拡大による感染者数の急増を認めている。

  •   2022年1月11日までに日本において、計3,041例のオミクロン株感染例が報告された(2022年1月11日21時時点)。内訳*は水際関連検疫事例が1237例(以下検疫例)、水際関連都道府県発表事例が146例、それ以外の事例が1,658例であった。直近に海外渡航歴のないそれ以外の事例の報告数が水際関連空港検疫例を大きく上回った。検疫例について、入国前14日以内に滞在した国の数は計74か国であった。(厚生労働省報道発表資料:https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/index.html)。

*厚生労働省報道発表資料に基づく

(注1)「空港検疫」には、検疫検査時に陽性だった方に加えて、宿泊施設での待機が必要な国・地域から入国後、待機中に陽性が判明し、オミクロン株と確定した場合も含む。

(注2)「都道府県発表」には、検疫所関係者でオミクロン株と確定した場合を含む。

(注3)「左記以外」は、オミクロン株と確定した者のうち、直近の海外渡航歴がなく、現時点で感染経路が明らかになっていない者等。

  •   国内のCOVID-19発生動向については、新型コロナウイルス感染症サーベイランス週報:発生動向の状況把握を参照されたい。

 

ウイルスの性状・臨床像・疫学に関する評価についての知見

  •   感染・伝播性

世界各地で、これまでの他の変異株の流行時に比しオミクロン株流行時では、より高い実効再生産数、感染者数の増加率(growth rate)、倍加時間(doubling time)の短縮が報告されてきた。海外では集団発生事例での高い感染の割合(attack rate)や、デルタ株よりも高い家庭内二次感染率(household secondary attack rate)が報告され、伝播性の増加を示唆する所見がある。また、海外の集団発生事例では潜伏期間がデルタ株に比較して短縮している所見も報告されている。高い実効再生産数等は、感染・伝播性の増大と世代時間の短縮の両方の影響が考えられる。ただし、海外でのこれらの所見は、観察集団の免疫状況や感染予防行動等の違い、オミクロン株同定のための検査戦略などの影響等を考慮して慎重に解釈する必要がある。

国内においては、3都県で直近1週間の倍加時間の短縮が観察された。また、潜伏期間の短縮も観察されている。一方、実地疫学調査から得られた暫定的な結果からは、従来株やデルタ株によるこれまでの事例と比較し、感染・伝播性はやや高い可能性はあるが、現段階でエアロゾル感染を疑う事例の頻度の明らかな増加は確認されず、従来通り感染経路は主に飛沫感染と、接触感染と考えられた。また、多くの事例が従来株やデルタ株と同様の機会(例えば、換気が不十分な屋内や飲食の機会等)で起こっていた。基本的な感染対策(マスク着用、手指衛生、換気の徹底等)は有効であることが観察されており、感染対策が守られている場では大規模な感染者発生はみていない。

国内の積極的疫学調査による初期の症例のウイルスの排出期間についての調査では、呼吸器検体中のウイルスRNA量は診断日および発症日から3~6日で最も高くなる傾向があった。診断または発症10日以降でもRNAが検出される検体は認められたが、ウイルス分離可能な検体は認めず、少なくともワクチン接種者においては、従来株と同様に診断または発症10日を超えて感染性ウイルスを排出する可能性は低いと考えられる。また、追加で行ったワクチン未接種者における呼吸器検体中のウイルスRNA量の検討では、ワクチン未接種者でのウイルス排出期間がワクチン接種者に比べて長期化する可能性を示唆するデータは得られなかった。今回の検討では解析症例数が少ないことから、ワクチン未接種者のオミクロン株症例におけるウイルス感染動態の全体像を理解することは困難であるが、ワクチン未接種者においてもワクチン接種者と同様に、無症状者および軽症者においては発症または診断10日以降に感染性ウイルスを排出している可能性は低いと考えられた。

 

(国内の知見)

  •   HER-SYSに登録されたオミクロン株の感染例をもとに算出した直近2週間と1週間の倍加時間は、東京都で2.7日から1.9日、大阪府で2.6日から1.7日、沖縄県で1.9日から1.3日といずれも短縮していた。
  •   国立感染症研究所と国立国際医療研究センターは、国内の積極的疫学調査により、オミクロン株症例の呼吸器検体中のウイルスRNA量の推移と感染性ウイルスの検出期間を検討した。オミクロン株症例において、ウイルスRNA量は診断日および発症日から3~6日で最も高くなり、その後日数が経過するにつれて、低下傾向であった。診断または発症10日以降でもRNAが検出される検体は認められたが、ウイルス分離可能な検体は認めなかった。これらの知見から、2回のワクチン接種から14日以上経過している者で無症状者および軽症者においては、発症または診断10日以降に感染性ウイルスを排出している可能性は低いことが示唆された国立感染症研究所. SARS-CoV-2 B.1.1.529系統(オミクロン株)感染による新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査:新型コロナワクチン未接種者におけるウイルス排出期間(第2報))。
  •   追加で行ったワクチン未接種者のオミクロン株症例におけるウイルス排出期間の検討では、ワクチン未接種者においても呼吸器検体中のウイルスRNA量は日数が経過するにつれて減少傾向であった。さらに、有症状者と無症状者において、ワクチン未接種者とワクチン接種者の呼吸器検体中のウイルスRNA量を比較したところ、発症もしくは診断から0〜9日、および発症もしくは診断10日以降において、両者のウイルスRNA量に違いは認めなかった。現時点で検討した症例数は限られているがワクチン未接種者でのウイルス排出期間がワクチン接種者に比べて長期化する可能性を示唆するデータは得られなかった。今回の検討では解析症例数が少ないことから、ワクチン未接種者のオミクロン株症例におけるウイルス感染動態の全体像を理解することは困難であるが、ワクチン未接種者においてもワクチン接種者と同様に、無症状者および軽症者においては発症または診断10日以降に感染性ウイルスを排出している可能性は低いと考えられた。本報告の制限として、調査対象者は、無症状者及び軽症者が大部分を占め、特にワクチン未接種者においては若年者が調査対象であったこと、ウイルス分離は未実施であり感染性ウイルスの有無が不明であることなどが挙げられる(国立感染症研究所. SARS-CoV-2 B.1.1.529系統(オミクロン株)感染による新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査:新型コロナワクチン未接種者におけるウイルス排出期間(第2報))。
  •   国内の実地疫学調査から得られた情報に基づき、オミクロン株感染例(n=35)の潜伏期間について解析を行った結果、潜伏期間中央値の範囲は2-3日であった(国立感染症研究所. 実地疫学調査により得られた情報に基づいた国内のオミクロン株感染症例に関する暫定的な潜伏期間、家庭内二次感染率、感染経路に関する疫学情)。国内でも海外からの報告と同様に、オミクロン株感染例では、従来株やデルタ株感染例と比較し潜伏期間が短縮している可能性が示唆された。オミクロン株の家庭内二次感染率は31%-45%と、従来株、デルタ株と比較して高い可能性が示された。また、感染経路として、現段階でエアロゾル感染が疑われる頻度が明らかに増えているわけではなく、従来より認識されていたエアロゾル感染が起こりやすい状況(換気が悪い屋内で、密集した状態で、感染例と長時間空間を共有した場合など)以外では、エアロゾルによる感染が疑われる事例は確認されていない。ただし、上記の結果は、解析に含まれる事例数が十分でないこと、各事例におけるワクチン接種状況、感染対策状況を含む曝露状況を考慮した結果でないことなど、暫定的な結果であり、解釈には注意が必要である。
  •   国内の実地疫学調査データを用いた解析では、オミクロン株症例の潜伏期間の中央値は2.9日(95%CI 2.6-3.2)であった。99%が曝露から6.7日以内に発症していた。ただし、実地疫学調査においては曝露をうけた可能性のある者すべてが含まれていない可能性があるため、潜伏期間を過小評価している可能性がある。HER-SYSデータを用いた解析では、観察10日目までにアルファ株症例の97.4%が発症するのに対して、オミクロン株症例では99.2%が発症すると推定された。この数値はアルファ株症例の14日における発症ハザードと同等であった。またオミクロン株症例では観察7日目までに94.5%が発症すると推定された。ただし、HER-SYSデータにおける解析では、感染拡大の状況にあるオミクロン株症例を検討しているために、観察期間を十分にとれた症例が含まれることにより潜伏期間が変わる可能性がある(国立感染症研究所. SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)の潜伏期間の推定:暫定報告)。

 

(海外の知見)

  •   南アフリカにおいてオミクロン株の流行が始まった2021年11月から12月4日までの報告例を基に算出された実効再生産数は2.55 (95%CI 2.26-2.86)であった(NICD. The Daily Effective Reproduction Number in South Africa.)。
  •   英国においてはSGTFを認める検体(オミクロン株であることが疑われる検体)をモニタリングするサーベイランスが稼働しており、2021年11月20週から12月18日のデータを用いて増加率(growth rate)が0.36/日と算出された(UKHSA. Technical Briefing 33)。またオミクロン株確定例に対する増加率が検討されており、0.45/日 (95%CI 0.44-0.46)と算出された(Imperial College London. Report 49)。
  •   英国において2021年11月15日から12月14日の間に検体を採取されたオミクロン株感染例27,803例とデルタ株感染例256,854例を対象としたコホート研究では、オミクロン株感染例からの家庭内二次感染率はデルタ株感染例と比較して、調整なしオッズ比で1.4倍(95%CI 1.3–1.5)、年代、性別、ワクチン接種歴等で調整したオッズ比で1.4倍(95%CI 1.4-1.5)であった。また家庭外の二次感染をみると調整したオッズ比で2.6倍(95%CI 2.4-2.8)と推定された(UKHSA Technical Briefing 33)。
  •   英国において定期的に検体を採取している横断研究の2021年11月23日から12月14日(12月15-17日採取の検体も一部含む)のアップデートによれば、デルタ株からオミクロン株への置換が10%から90%になるまでの日数は、アルファ株からデルタ株への置換と比較して約3.5倍速いと推定された(REACT-1 Round 16)。
  •   デンマークで2021年12月上旬に登録されたSARS-CoV-2感染例における家庭内での二次感染の発生を追跡したところ、二次感染率がオミクロン株では31%、デルタ株では21%であった。デルタ株感染例のいる世帯に比べてオミクロン株感染例がいる世帯では、2回接種した家族が二次感染するオッズ比(調整後)は2.6倍(95%CI 2.3-2.9)であり、追加接種した家族でのオッズ比(調整後)は3.7倍(95%CI 2.7-5.1)であった(Lyngse, et al.)。
  •   米国でのアフリカからの帰国者の家族におけるオミクロン株の二次感染の観察研究では、5名の家族のうち4名はSARS-CoV-2感染歴 (うち1例はワクチン2回接種) があったが全員が陽性となり、平均潜伏期間は3.0日(範囲 1.4-3.1)であった(CDC. Morbidity and Mortality Weekly Report)。
  •   韓国から報告された湖南保育施設関連のオミクロン株感染例25例の解析では、平均潜伏期間は3.6日(範囲2~8日)、平均発症間隔は3.1日(範囲1~7日)であり、デルタ株の平均潜伏期間3~5日、平均発症間隔2.9~6.3日より短かった。オミクロン株感染例での家族内二次感染率は44.7%で、デルタ株の約20%と比較して高かった。(3차접종 적극 참여, 누적 1,100 넘어(12.20., 정례브리핑))
  •   フェロー諸島での33人が集まったイベントで、21人(63%)がSARS-CoV-2感染が確認され、13例でオミクロン株と確定された。感染例はすべて2回のワクチン接種済みのうえ、過去1ヶ月半に3回目の追加接種をうけていた。イベントを曝露日とした際の潜伏期間は、平均3.2日(95%CI 2.8-3.6)であった(Helmsda,l et al.)。
  •   その他にデンマークで150人の参加者が集まるイベントで、71人(47%)がオミクロン株に感染した事例(Espenhain , et al.)や、ノルウェーでオスロー市内のレストランで開催されたクリスマスパーティーに参加した111人中80人(73%)でSARS-CoV-2感染が確認され、ほとんどがオミクロン株による感染と推定された事例が報告された。参加者の大多数は2回のワクチン接種歴を有しており、この集団での潜伏期間は中央値3日であった(Brandal, et al.)

 

  •   ワクチン・抗体医薬品の効果への影響や自然感染による免疫からの逃避

オミクロン株は、ワクチン接種や自然感染による免疫を逃避する性質が、遺伝子配列やラボでの実験、疫学データから示唆されている。ワクチンで誘導される抗体の in vitro(試験管内)での評価や疫学的評価から、ワクチン2回接種による発症予防効果がデルタ株と比較してオミクロン株への感染では著しく低下していることが示されている。3回目接種(ブースター接種)によりオミクロン株感染による発症予防効果が一時的に高まるが、この効果は数ヶ月で低下しているという報告もあり、長期的にどのように推移するかは不明である。入院予防効果もデルタ株と比較してオミクロン株において一定程度の低下を認めるが、発症予防効果と比較すると保たれている。入院予防効果においても3回目接種(ブースター接種)により入院予防効果が高まるという報告があるが、中長期的にこの効果が持続するかは不明である。また、モノクローナル抗体を用いた抗体医薬品についても、in vitroでの評価で、カシリビマブ・イムデビマブ(ロナプリーブ)は、オミクロン株の分離ウイルスに対して濃度依存的効果が確認されず中和活性が著しく低下している可能性があり、その他、バムラニビマブ・エテセビマブ、チキサゲビマブ・シルガビマブにおいても中和活性が著しく低下している可能性があるという報告がある。一般的にウイルス感染は、感染回復者は免疫が成立し感染しづらくなると理解されている。しかしながら、非オミクロン株に感染歴のある者の再感染は、非オミクロン株と比較してオミクロン株への免疫が成立せず感染がより起こりやすい(再感染しやすい)との報告がある。

これまでに細胞性免疫に関する評価が複数の国の研究機関等で行われており、少なくとも6報のプレプリントが報告されている。抗体と比較すると、オミクロン株に対する細胞性免疫の減弱は限定的であり、感染回復者やワクチン接種者(mRNAワクチン・アデノウイルスベクターワクチンなど)では、武漢株に対して反応するT細胞のうち、少なくとも70%以上がオミクロン株に対しても応答するとされている(Tarke, et al., Keeton, et al. その他4報)。したがって、過去の感染やワクチン接種により誘導された細胞性免疫はオミクロン株に対しても交差反応性を維持している可能性がある。ただし、細胞性免疫の反応性は個人差が大きいこと、in vitroでの評価法の種類によって交差性に差異が認められる可能性があることから、解釈に注意が必要である。

また、国立感染症研究所から、新型コロナワクチン2回接種からアルファ株またはデルタ株によるブレイクスルー感染までの期間の長さにより血清抗体のオミクロン株に対する交差中和能が変化し、ワクチン接種から感染までの期間の長い方が、交差中和能の高い抗体が誘導されると報告されている(Miyamoto et al., Sidik et al.)。本報告は、ブレイクスルー感染による液性免疫のブーストがオミクロン株に対しても有効であることを明らかにしただけでなく、地域毎に異なる感染流行拡大やワクチン接種導入、ブレイクスルー感染増加のタイミングにより、新型コロナウイルスに対する集団免疫が多様化していく可能性を示唆しており、感染流行予測における地域毎の血清疫学調査の重要性を強調するものである。

重症化予防に関する効果は十分な評価が得られていないが、ワクチン接種や過去の感染により、オミクロン株感染では重症化リスクが低下することが示唆されている(詳細は次項参照)。

 

(海外のワクチン疫学研究)

  •   英国健康安全保障庁(UKHSA)は症例対照研究(test-negative design)を用いて、オミクロン株およびデルタ株感染による発症に対する、新型コロナワクチン2回接種および3回(ブースター)接種の未接種と比較した有効性の評価を行った(UKHSA. Update on hospitalisation and vaccine effectiveness for Omicron VOC-21NOV-01 (B.1.1.529). 31 December 2021)。2021年11月27日から12月24日に実施された検査において、主にSGTFを用いて、デルタ株感染例169,888例、オミクロン株感染例204,036例に分類し、検査陰性者と比較して、それぞれのワクチンの有効率を算出した。2回接種からの全ての期間でオミクロン株に対する有効率はデルタ株に対する有効率よりも低かった。アストラゼネカ社製ワクチンを2回接種した者においては2回接種から20週後には効果が消失していた。ファイザー社製またはモデルナ社製のワクチンを接種した者では2回接種2-4週後は有効率が65-70%であったが、20週後には10%程度まで低下していた。ブースター接種2-4週後は有効率が65-75%と高まるものの、ブースター接種5-9週後は55-70%、ブースター接種10週後以降は40-50%まで低下した。
  •   UKHSAからは、上記データと救急外来・入院データを突合して、オミクロン株感染による入院に対する、新型コロナワクチン2回接種および3回(ブースター)接種の未接種と比較した有効性の暫定的な評価も報告されている(UKHSA. Technical Briefing Update on hospitalisation and vaccine effectiveness. 31 December 2021)。2回接種2-24週後は有効率が72%(95%CI 55-83)であったが、25週後以降では52%(95%CI 21-71)であった。3回目(ブースター)接種2週後以降では有効率が88%(95%CI 78-93)であった。本研究では、年齢・性別・過去の感染歴・地域・人種・重症化リスク因子・時期で調整しているが、入院者数が少ないためワクチンの種類ごとには解析していない。
  •   南アフリカの民間保険会社Discovery Healthも類似のデザインを用いて、オミクロン株流行期(2021年11月15日から12月7日)およびデルタ株流行期(2021年9月1日から10月30日)における入院に対する、新型コロナワクチン2回接種の未接種と比較した有効性の暫定的な評価を報告している(Collie, et al.)。オミクロン流行期における2回接種14日後以降の有効率は70%(95%CI 62-76)であり、デルタ株流行期の有効率93%(95%CI 90-94)と比較して低いが一定程度保たれていた。本研究では、年齢・性別・過去の感染歴・カレンダー週・地域・重症化リスク因子で調整しているが、2回接種からの具体的な期間については記載がなかった。

 

(新型コロナワクチン接種後のオミクロン株に対する中和能の検討)

  •   オミクロン株においては、複数の国の研究機関等からの報告において、抗原性の変化による感染回復者やワクチン接種者の血清による中和能の低下が示されている(Lu, et al., Dejnirattisai , et al., Cele, et al., Carreno, et al.その他報告多数)。これらの結果は実験系の違いや使用された血清の採取時期(感染やワクチン接種から採血までの期間)の違い等により数値にはばらつきがあるものの、アルファ株以前に主流であったD614G変異を持つ株やデルタ株、オミクロン株以前の分離株でワクチン株から最も抗原性が離れていると考えられるベータ株と比較して、オミクロン株に対するファイザー社製のワクチン2回接種で誘導される中和抗体価は一貫して低い。また、3回(ブースター)接種後においての報告もあり、2回接種と比較するとオミクロン株に対する中和抗体価が高いことが報告されているが、従来株に対する中和抗体価と比較すると低い。ただし、これらの結果は中和抗体のin vitroでの評価であり、解釈に注意が必要である。

 

(抗体医薬品の効果への影響)

  •   オミクロン株においては、抗原性の変化により、SARS-CoV-2に対するモノクローナル抗体を用いた抗体医薬品の効果への影響も懸念されており、オミクロン株の分離ウイルスやシュードタイプウイルスを用いたモノクローナル抗体による中和試験の暫定結果が報告されている(Cameroni, et al, Cathcart, et al., Cao, et al. その他報告複数)。ソトロビマブ(ゼビュディ)やDXP-604(BeiGene・Singlomicsが開発)は、オミクロン株で認めるスパイクタンパク質の変異を持つシュードタイプウイルスに対して中和活性を維持しているという報告がある。一方で、カシリビマブ・イムデビマブ(ロナプリーブ)は、オミクロン株の分離ウイルスに対して濃度依存的な効果が認められず、中和活性が著しく低下している可能性があるという報告がある。その他、バムラニビマブ・エテセビマブ、チキサゲビマブ・シルガビマブにおいても中和活性が著しく低下している可能性があるという報告がある。これらの結果はin vitroでの評価であり、解釈に注意が必要である。

 

(再感染リスクについて)

  •   英国健康安全保障庁(UKHSA)は非オミクロン株と比較したオミクロン株における再感染のリスク比についての暫定的な報告を行った(UKHSA Technical Briefing 31)。2021年11月20日から12月5日にウイルスゲノム解析がなされ、オミクロン株感染とされた361例と非オミクロン株感染とされた85,460例のうち、年齢群・地域・(症状の有無、スクリーニング等の)検査区分で調整した再感染のリスク比は5.2(95%CI 3.4-7.6)であった。ただし、この報告は暫定的であり、SGTFを認める症例が優先的にウイルスゲノム解析をなされていることなどから解釈に注意が必要である。
  •   オミクロン株確定例における再感染率はデルタ株感染例と比較して高く、調整された再感染のリスク比が5.41(95%CI 4.87-6.00)であった。ワクチン接種なしでは6.36 (95%CI5.23-7.74)となった (Imperial College London. Report 49)。
  •   南アフリカにおいてSARS-CoV-2陽性例および検査のサーベイランスデータを用いた研究では、2種類の手法を用いて、非オミクロン株とオミクロン株への再感染のしやすさについて検討された(Pulliam, et al.まず、初回感染の発生率に対する再感染の発生率の比が第1波と同じであると仮定して、その後の再感染者数を予測したところ、第2波(ベータ株主流)、第3波(デルタ波主流)で観察された再感染者数は予測範囲内であったが、11月に観察された再感染者数は予測範囲を上回っていた。次に、全期間について初回感染の発生率に対する再感染の発第3波(デルタ株主流)は0.09であったが、11月以降は0.25と上昇していた。比は一貫して1を下回っており、初回感染よりも再感染の発生率は低いが、ベータ株やデルタ株の流行時に比較して、再感染の発生率は高まっている可能性があった。なお、この検討では、個々のSARS-CoV-2陽性例のワクチン接種歴が得られていないためワクチン接種による感染予防効果は検討されていない。また、SARS-CoV-2陽性例のウイルスゲノム解析結果は不明であり、検査対象は時系列的に変化し、受療行動が変化している可能性があることにも留意する必要がある。

 

(細胞性免疫について)

  •   ワクチン接種者(Ad26.CoV2.S or BNT162b) もしくはCOVID-19感染例を対象として、ワクチン接種22-32日後、感染後1.3-6ヶ月後にT細胞反応性が解析された。オミクロン株に対して、CD4陽性T細胞は14-30%、CD8陽性T細胞は17-25%の応答性が低下した。また約15%の症例では、CD8陽性T細胞応答が検出限界以下であった。既感染例へのワクチン接種により、T細胞の頻度は高くなる傾向にあるが、オミクロンに対する交差性に大きな影響は認められなかった。(Keeton, et al.
  •   ワクチン接種者 (mRNA-1273, BNT162b2, Ad26.COV2.S, NVX-CoV2373)を対象として、1回接種2週間後、2回接種2週間後、3.5ヶ月後、5-6ヶ月後に解析が行われた。ワクチンの違い(mRNA-1273, BNT162b2, Ad26.COV2.Sのみ検討)により交差性に影響は確認されなかった。オミクロン株へのCD4陽性T細胞応答とCD8陽性T細胞応答は、それぞれ83%と85%が維持されていた。バイオインフォマティクスによるエピトープの解析では、全てのCD4陽性T細胞エピトープの72%、CD8陽性T細胞エピトープの86%がオミクロン株でも保持されていた。ただし、変異の影響には個体差が認められ、2-3.5%の検体ではオミクロン株の変異によりCD4陽性T細胞応答が1/3以下まで低下した。CD8陽性T細胞はさらに変異の影響を受ける場合が多く、約19%の検体で反応が1/3以下に低下した(Tarke, et al.)。
  •   交互接種を含む多様なワクチン接種者(既感染者含む)を対象とした検討では、オミクロン株に対するT細胞応答は全体的に約83%維持されていた(Marco, et al.)。
  •   ワクチン接種者 (BNT162b2, Ad26.COV2.S)を対象として、2回目接種1ヶ月後と8ヶ月後に解析したところ、オミクロン株に対してCD8陽性T細胞応答の82-84%が維持されていた(Liu, et al.)。
  •   ワクチン接種者 (ChAdOx-1 S, Ad26.COV2.S, mRNA-1273, BNT162b2)を対象として、最終接種28日後と6ヶ月後にCD4陽性T細胞の応答が解析された。mRNA-1273が最も強いT細胞応答を誘導し、オミクロン株に対する応答性が維持されていた(Geurtsvan, et al.)。
  •   ワクチン接種者 (BNT162b:半年後)もしくは既感染者(9ヶ月後)を対象としてオミクロン株に対する反応を解析した。ワクチン接種者では、CD4陽性T細胞は中央値で9%減少した。CD8陽性T細胞は中央値で8%減少した。既感染者では、CD4陽性T細胞は中央値で16%減少、CD8陽性T細胞は中央値で30%減少した(Gao, et al.)。

 

  •   重症度

国内で経過観察されているオミクロン株感染例(確定例ならびにL452R陰性例を含む)の初期の事例191例については、95%(181/191)が無症状ないし軽症で経過していた。海外の報告では、英国や南アフリカに加えて米国やカナダからデルタ株と比較した入院や重症化のしやすさの違いについての暫定データが報告され、デルタ株に比して入院や重症化リスクの低下が示唆されている。ただし、これらの報告では、オミクロン株感染例が若年層で多い、自然感染やワクチン接種による免疫の影響が考慮されていない等の様々な制限があること、重症化や死亡の転帰を確認するには時間がかかることを踏まえると更なる知見の集積が必要である。

現状の研究や報告の所見を総合すると、デルタ株と比較してオミクロン株では重症化しにくい可能性が示唆される。ただし、重症化リスクがある程度低下していたとしても、感染例が大幅に増加することで重症化リスクの低下分が相殺される可能性を考慮する必要がある。

オミクロン株病原性についての実験科学的な知見については、マウスおよびハムスターを用いた動物モデルでの評価について、いくつかのプレプリント論文が報告されてきた(Diamond, et al., Bentley, et al., Abdelnabi, et al., Sato, et al., McMahan, et al.)。また、in vitroおよびex vivoでの評価に関するプレプリント論文も報告されてきた(Meng, et al., Chi-wai, et al.)。いずれも、オミクロン株では従来株に比べて肺組織への感染性と病原性が低下していることを示唆している。ただし、これらの報告はあくまで動物モデルや細胞・組織レベルでの評価であり、ヒトに対するオミクロン株病原性とは必ずしも相関しない可能性があることに注意する必要がある。

 

(国内症例について)

  •   厚生労働省は、日本で確認されたオミクロン株感染例(確定例ならびにL452R陰性例を含む)について、初期の事例については、感染症法第15条第2項に基づく積極的疫学調査を行っている。1月12日時点で情報が得られた191例のオミクロン株感染例の解析では、男性が62%(119/191)、入院からの観察期間中央値は 11日(最小値1日、最大値25日)で、観察期間中に継続して無症状が68例、軽症が113例、中等症Ⅰが6例、中等症Ⅱが3例、重症が1例であった。ワクチン接種歴に関しては、接種なしが35例、1回接種が4例、2回接種が145例、3回接種が7例であった。

 

(海外からの報告について)

  •   UKHSAは 救急外来および入院データ、SGTFデータ(デルタ株とオミクロン株の分類に使用)、ワクチン接種歴のデータを突合して、デルタ株とオミクロン株の救急外来受診や入院率の違いを検討している(UKHSA Technical Briefing )。2021年11月22日から12月29日のまでのデータを用いて解析したところ、救急外来受診・入院率はデルタ株と比較してオミクロン株感染で0.53倍(95%CI 0.50-0.57)であり、入院率のみでは0.33倍(95%CI 0.30-0.37)であった。本解析では検体採取週と居住地で層別化し年齢・検体採取日・性別・人種・剥奪指標(所得や生活水準などの社会的な指標)・海外渡航歴・ワクチン接種歴<および過去の感染で調整している。
  •   米国の1つの医療グループが2021年11月27日から12月20日までに受診したSARS-CoV-2感染例の重症化について検討したところ、オミクロン株での入院率はアルファ株と比較して0.14倍(95%CI 0.12-0.17)、デルタ株と比較すると0.23倍(95%CI 0.20-0.27)であった。ただし患者背景の調整はされておらず、オミクロン株の流行初期のデータであることに留意する必要がある(Christensen, et al.)。
  •   南アフリカの私立医療グループを受診したSARS-CoV-2感染例データを変異株が流行していた時期をそれぞれ定義して2021年12月7日までの期間でグループ分けして検討したところ、オミクロン株流行期では41.3%が入院したのに対し、それ以前は67.8‒69.3%と有意に高かった。またICU入室率もオミクロン株流行期では18.5%であるのに対し、それ以前は29.9‒41.0%と有意に高かった。しかし時期で区切られていること、ワクチン接種に関するデータはデルタ株流行期では不明であることに留意する必要がある(Maslo, et al.
  •   カナダのオンタリオ州のSARS-CoV-2感染例データを2021年11月22日から12月25日まで抽出し、全ゲノム解析ないしSGTF(50%を超えた12月13日以降は全例)によって探知されたオミクロン株とデルタ株を性、年齢群、ワクチン接種歴、タイミング、地区と発症日による調整後に比較したところ、入院ないし死亡リスクは65%減少(95%CI 54-74)しており、ICU入室ないし死亡リスクは83%減少(95%CI 63-92)した(Ulloa, et al.)。
  •   英国インペリアルカレッジは類似のデータセットを用いて、ワクチン接種歴や非オミクロン株への既感染の影響を考慮したより詳細な解析を行って、デルタ株とオミクロン株の入院率の違いを検討した(Imperial College London. Report 50)。 2021年12月1日から14日までの検査データを12月21日に抽出して解析が行われ、ワクチン接種歴・年代・性別・人種・地域・検体採取日で層別化したデータを用いて解析された。結果、デルタ株と比較してオミクロン株の感染例では入院率(救急外来受診も含まれる可能性がある)が15-20%低下しており、1泊以上入院した者に限定すると50-60%の低下であった。ただし、過去の感染例の全員がとらえられていないために、実際には3倍の既感染例がいると仮定すると、この既感染の影響を除いた入院率の低下は0-30%程度と推定された。さらに、ワクチン接種歴で層別化した結果も提示されており、未接種のオミクロン株感染例では、未接種のデルタ株感染例の入院率の0.59倍(95%CI 0.5-0.69)であったが、同様に過去の感染者数が過小評価されている可能性を考慮して既感染の影響を除くと、この値は0.76倍となりデルタ株感染例との差が小さくなった。また、mRNAワクチンを2回以上接種している者だけで評価すると、デルタ株感染例とオミクロン株感染例の入院率は同程度であった。本解析では、基礎疾患については調整しておらず、入院関連のイベントは数が少なく、また、報告遅れがあり得るため、解釈に注意が必要である。
  •   南アフリカのNICDからの報告として、検査データ、COVID-19症例データ、ウイルスゲノム解析データ、入院サーベイランスデータを突合して、デルタ株とオミクロン株の入院オッズの違いを検討した(Wolter, et al.)。2021年10月1日から11月30日の期間で、年齢・性別・基礎疾患の有無・地域・公立または私立医療機関・既感染の有無で調整した入院オッズは、デルタ株感染例と比較してオミクロン株感染例で0.2 (95%CI 0.1-0.3)であった。さらに、2021年10月1日から11月30日の期間に入院した者で、かつ12月21日までに入院後の転帰が判明している者において、年齢・性別・基礎疾患の有無・地域・公立または私立医療機関・既感染の有無・ワクチン接種歴・初回検体陽性〜入院までの期間で調整した重症化(ICU入室・酸素需要あり・人工呼吸器使用・ECMO使用・ARDS・死亡)のオッズは、デルタ株感染例と比較してオミクロン株感染例で0.7 (95%CI 0.3-1.4)であった。さらに、2021年4-11月のデルタ株感染例と10月1日から11月30日のオミクロン株感染と推定される症例でかつ12月21日までに入院後の転帰が判明している者において、入院症例における年齢・性別・基礎疾患の有無・地域・公立または私立医療機関・既感染の有無・ワクチン接種歴・初回検体陽性〜入院までの期間で調整した重症化のオッズを比較したところ、デルタ株感染例と比較してオミクロン株感染例で0.3 (95%CI 0.2-0.5)であった。ただし、最後の解析では、既感染例の増加については検討されておらず、重症化オッズの低下は、既感染例の増加が一定程度寄与している可能性がある。また、既感染の有無やワクチン接種歴については、データが不完全な可能性がある。
  •   スコットランドのエディンバラ大学からの報告として、プライマリケアデータ、ワクチン接種歴データ、検査データ、ウイルスゲノム解析データ、入院データ、死亡データが突合された人口の99%(540万人)をカバーするEarly Pandemic Evaluation and Enhanced Surveillance of COVID-19(EAVE Ⅱ)プラットフォームを用いて、2021年11月1日から12月19日に検査陽性となった者におけるコホート解析が行われた(Sheikh, et al.)。SGTFデータを用いてデルタ株とオミクロン株を区別し、年代・性別・剥奪指標(所得や生活水準などの社会的な指標)・既感染・基礎疾患のスコアリング・ワクチン接種歴・カレンダー週をモデルに組み込んで解析したところ、オミクロン株感染例において観察された入院数をデルタ株のデータをもとに期待される入院数で割ったobserved/expected比(O/E比)は0.32(95%CI 0.19-0.52)であった。

 

(動物モデルでの評価)

  •   構造モデルや結合能解析ではオミクロン株のスパイクタンパクとマウスACE2(ウイルスレセプター)のより強い結合能が示唆されていたにもかかわらず、近交系マウスを用いた病原性解析では,以前の変異株と比較してオミクロン株感染後の体重減少は軽微であった。また、上・下気道におけるウイルス感染価もオミクロン株感染個体の方が低値であった。一方でヒトACE発現トランスジェニックマウス(K18-hACE2トランスジェニックマウス)においてもウイルス感染はみとめられるものの体重減少は比較的軽微であった。更に,野生型ゴールデンハムスターとヒトACE2発現ハムスターでの病原性解析においても体重変化や呼吸機能などの臨床症状,肺におけるウイルス感染、マイクロCTや組織標本による肺炎重症度などの評価においていずれもオミクロン株の方がデルタ株などの従来の変異株より軽度であった。いくつかの異なるオミクロン株を用いて複数のラボで病原性評価を行った結果、齧歯類におけるオミクロン株の病原性低下が示された(Diamond, et al.)。
  •   K18-hACE2トランスジェニックマウスを用いた病原性解析の結果によると、オミクロン株ではパンデミック初期にイギリスで分離されたB系統やデルタ株と比較してウイルス感染後の体重減少が軽度であり,上下気道のウイルス力価も低値であった。また,肺組織では限局した肺炎像が観察され,比較的軽微であった(Bentley, et al.)。
  •   ゴールデンハムスターを用いた病原性解析では,オミクロン株感染4日目の肺におけるウイルスRNA量はB.1系統(D614G)と比較して約1/1,000と低値であり、また,オミクロン株感染後の肺からは感染性ウイルスは検出されなかった。組織病理学的に,オミクロン株感染後の肺において、気管支周囲の炎症や気管支肺炎の所見は認められなかった。(Abdelnabi, et al.)
  •   ハムスターモデルでは,オミクロン株感染後の体重減少や呼吸機能の低下は,B.1.1系統やデルタ株と比較して軽度であった。組織病理学的には,B.1.1系統やデルタ株感染後では気管支上皮や肺胞上皮に多数のウイルス抗原陽性細胞が認められた一方で,オミクロン株ではウイルス抗原陽性細胞は少数であった。(Sato, et al.)
  •   ゴールデンハムスターを用いた病原性解析では、パンデミック初期に米国で初めて分離された従来株(WA1/2020株),アルファ株,ベータ株、デルタ株感染後に体重減少が見られた一方で,オミクロン株感染後に有意な体重減少は認められなかった.オミクロン株感染動物において上・下気道でのウイルス複製と肺炎所見は観察されたが、WA1/2020株と比較して鼻甲介でのコピー数が高く,肺でのコピー数が低い傾向を示した。よって,以前のSARS-CoV-2と比較すると上気道感染が優位であり,下気道感染による重症化の可能性は低いと推察された。(McMahan, et al.)
  •   細胞内へのウイルスの侵入効率について、SARS-CoV-2スパイクタンパク質を発現するシュードウイルスを用いてin vitroでの解析を実施した。その結果、オミクロン株型のシュードウイルスはB.1.1系統型やデルタ株型と比較して、初代3次元下気道オルガノイドおよびCalu-3細胞 (肺腺癌細胞株) への侵入効率が低下していることが確認された。このオミクロン株シュードウイルスの細胞侵入効率は、TMPRSS2(SARS-CoV-2の細胞侵入に関与するとされる酵素)発現性と逆相関していた。TMPRSS2を発現している肺細胞では、オミクロン株はデルタ株と比較して明らかに低い複製効率を示した。スパイク糖タンパク質を介した細胞間融合はS1/S2切断が必要であるが,TMPRSS2の存在にも依存する。オミクロンのスパイクの融合性はTMPRSS2発現下でも損なわれ、Deltaスパイクと比較してシンシチウム形成能は顕著に減少している。これらのin vitroデータは、TMPRSS2を発現する下気道での感染性を減少させるが、上気道に存在するTMPRSS2非発現細胞の感染には影響しないことを示唆している(Meng, et al.)。
  •   ヒト肺組織を用いたex vivoでの解析では、オミクロン株のウイルス複製効率は気管支において従来株やデルタ株の約70倍を示した一方で、肺においては従来株の約1/10であった。これらのことはヒトにおける重症度が低いことが示唆している可能性がある (Chi-wai, et al.)。

 

  •    検査診断
    •   国立感染症研究所の病原体検出マニュアルに記載のPCR検査法のプライマー部分に変異は無く、検出感度の低下はないと想定される。
    •   オミクロン株は国内で現在使用されているSARS-CoV-2 PCR診断キットでは検出可能と考えられる。
    •   WHOテクニカルブリーフでは、抗原定性検査キットの診断精度については、オミクロン株による影響を受けない可能性が示唆されている。(WHO. Enhancing Readiness for Omicron (B.1.1.529): Technical Brief and Priority Actions for Member States)
    •   国内における変異株PCR検査法に関しては、 SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)について(第3報)を参照されたい。
    •   WHO の指定するオミクロン株(B.1.1.529系統の変異株)と確定するためには全ゲノム情報による塩基変異の全体像を知ることが不可欠である。国立感染症研究所では、全ゲノム解析によりゲノム全長を解読し、得られた配列(contig 配列)を用いて Nextclade および PANGOLIN プログラムにて解析し、クレード(clade)及び PANGO 系統(lineage)の両方が適正に判定された場合に最終判定に資する対象としている。ごく稀に、大きな欠失が生じ、PANGO 系統の結果が得られてもクレードが検出できない場合がある。この場合、解読リード深度 (read depth)が 300 倍以上かつゲノム被覆率(coverage)が 98%以上である、 または、de novo アセンブリにて完全(complete)な contig 配列が得られて いれば、結果が得られた PANGO 系統を確定としている(厚生労働省 2021年2月5日事務連絡 新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査におけるゲノム解析及び変異株 PCR 検査について )。
    •   2021年12月1日以降、GISAIDに日本から登録されているSARS-CoV-2は962検体あり、L452R陽性282検体は全てデルタ株、L452R陰性検体680検体のうち679検体はオミクロン株、1検体はPango分類不能であった。L452R陰性となる他の変異株の存在割合について継続的にモニタリングが必要であるが、現時点ではL452R陰性と判断された場合はほぼオミクロン株と見做しうる状況にあると考えられる。

 

当面の推奨される対策

  •   デルタ株に比べて重症化リスクが低下していることを考慮しつつ、感染者数の大幅な増加に伴う重症化リスクの高い集団での感染拡大の可能性を考慮し、感染者数の抑制策や中等症・重症者の増加に備えた医療提供体制の構築が望まれる。
  •   ワクチン2回接種率を高いレベルで達成している地域においてもオミクロン株による急激な市中感染拡大を認めていること、3回目接種(ブースター接種)によりオミクロン株に対する発症ならびに入院予防効果の回復が期待されることから、地域の状況に応じて早期の3回目接種(ブースター接種)を検討することが望ましい。また、重症化予防のためワクチン未接種者については、引き続き接種機会を確保していくことが重要である。
  •   カシリビマブ・イムデビマブ(ロナプリーブ)のオミクロン株への有効性が低下することが報告されており、オミクロン株感染例であることが明らかな場合や、その蓋然性が高い場合はロナプリーブを投与することは推奨されない。
  •   潜伏期間がデルタ株よりも短縮しており、感染のサイクル(世代時間)が早まっている可能性があり、倍加時間も短縮している。オミクロン株が流行している地域では、感染者数の急増が懸念される。オミクロン株への急速な置き換わりの進行や感染例の急増に伴い、検査、疫学調査、濃厚接触者ならびに感染例への対応、医療提供体制等については地域の流行状況に合わせた柔軟な対応が必要である。
    •   オミクロン株へ置き換わった状況では、変異株の発生動向の監視を目的とした対応が望ましい。ゲノム解析や変異株PCR検査については全数実施するのではなく、偏りのないサンプリングによる一定割合の検体に対する実施や、重症例や潜在的なインパクトが高い事例の基点となるような感染例に対して優先的に行うことを考慮する。
    •   疫学調査については、潜伏期間が短縮していることも考慮し、地域の状況に応じて、感染拡大や重症化リスクの高いクラスター等への重点化を検討する。
    •   地域の流行状況に応じて、濃厚接触者の自宅待機への切り替えや待機期間の短縮を検討する。
  •   医療・福祉・公衆衛生のほか、各種社会的基盤となる事業において、感染拡大に伴う欠勤者の増加も見込んだ事業継続体制を準備する。
  •   ワクチン接種歴のない者や基礎疾患のある者における評価が十分でないことから、引き続きオミクロン株の疫学的特徴及び重症化リスクについて分析・評価していく必要がある。

 

基本的な感染対策の推奨

  •   個人の基本的な感染予防策としては、変異株であっても、従来と同様に、3密の回避、特に会話時のマスクの着用、手洗いなどの徹底が推奨される。

 

参考文献

 

注意事項

  •        迅速な情報共有を目的とした資料であり、内容や見解は情勢の変化によって変わる可能性がある。

 

 

更新履歴 

 第6報 2022/1/13 9:00時点(20221/14,1/20,1/25 一部修正)

 第5報 2021/12/28 9:30時点(2021/12/31 一部修正)

 第4報 2021/12/15 19時時点

 第3報 2021/12/8

 第2報 2021/11/28

 第1報 2021/11/26

 

 

 

 

国立感染症研究所実地疫学研究センター
掲載日:2022年1月13日

国立感染症研究所実地疫学研究センターでは、主に同センター内に設置されている実地疫学専門家養成コース(FETP)を中心に、自治体からの派遣要請あるいは厚生労働省からの依頼に基づき、厚生労働省クラスター対策班として、国内の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)事例に対する自治体の実地疫学調査を支援し、現場のクラスター対策の実施及び疫学的知見を深めるための活動に従事してきた。

2021年11月より新たに世界中で拡大している新型コロナウイルスオミクロン株〔SARS-CoV-2変異株 B.1.1.529系統(以下、オミクロン株)〕については、国立感染症研究所はリスク評価を継続的に発出しており、海外における発生状況、ウイルス学的な性状、臨床像、疫学的所見等を詳細に分析し、国内に向けて情報発信を行ってきた。これらは主に各国関係機関からの公式情報や文献的な情報に基づいている。当センターでは、主に国内感染と考えられるオミクロン株事例に対する調査支援に従事しており、本稿発出時点まで約10程度の自治体内で活動を行ってきた。予備的・暫定的な情報であっても、実地疫学調査により得られた所見は公衆衛生対策を構築する上で重要な手がかりとなることから、自治体と共に実地疫学調査を担当する当センターとして、迅速性に重きを置いた情報発信を行うものである。

これらの情報は、現在も進行中の事例から得られていたり(結果が変わっていく可能性がある)、研究としてデザインされた状況下で得られた知見ではない(観察期間等が一定ではない、オミクロン株が確認されていないがオミクロン株感染症例と疫学的につながりがある症例を含む)などの制限が多数あることに注意が必要である。

潜伏期間

推定曝露日から14日以上経過した集団における感染例のみを解析対象とした場合の潜伏期間について、3つの自治体(うち情報の得られた単独の事例)からの情報を表1に示す。すなわち、比較可能な事例の情報についてまとめたところ、潜伏期間中央値の範囲は2-3日であった。国内でも海外からの報告と同様に、オミクロン株感染例では、従来株やデルタ株感染例と比較し潜伏期間が短縮している可能性が示唆された1, 2)

表1.国内3自治体より得られたオミクロン株潜伏期間

自治体 対象感染者数 中央値(日)[範囲]
A 12 3[1-4]
B 18* 3[2-5]
C 5 2[1-2]

*家族内感染を含む。ただし、家族内感染は二次感染初発例のみ

家庭内二次感染率(家庭内Secondary Attack Rate: SAR)

家庭内SARについては、家族かどうかに関わらず同居者の中での感染例発生割合を算出した。ここでindex case(感染源となったと推定される最初の感染例)は、家庭内症例で最も発症日が早い症例、または当該症例以前に感染性を有する無症状の感染例との疫学的なリンクがあり、家庭にウイルスを持ち込んだことが示唆される症例である。4つの自治体からの結果を表2に示す。オミクロン株の家庭内SARは、従来株、デルタ株と比較して高い可能性が示された3-6)

表2.国内4事例より得られたオミクロン株家庭内二次感染率(SAR)

自治体 検査者数(x) 感染者数(y) SAR(y/x)(%) [95%信頼区間] 観察期間中央値 (日)[範囲]
A 17 6 35[13-58] 全員14日間経過
B 66 21 31[20-47] 全員14日間経過
C 24 11 45[14-76] 全員14日間経過
D 18 8 44[25-66] 6[3-10]

主な制限としては、情報収集時点で同居者濃厚接触者の健康観察期間が終了していない症例を含んでいることから、感染例の発生について過小評価している可能性がある。一方で、家庭内での三次感染以上を含んでいる場合には過大評価されうる。また、ワクチン接種状況、感染対策実施状況を含む曝露状況を考慮した結果ではないことに注意する必要がある。

感染経路

オミクロン株感染で単一曝露など感染経路が確認された事例では、従来株、アルファ株、デルタ株同様、飛沫感染が疑われる感染が多かった。ただし、一部直接的または間接的な接触による感染の可能性や換気の悪い室内でのエアロゾル感染が否定できない感染(感染者用宿泊施設における従業員の感染(表3、事例9)、換気がある程度確保されていた医療機関外来の医療従事者の感染(同、事例10)、屋内作業を密な状況で長時間行った時の感染(同、事例8)、換気が悪い密な飲食店店舗内での感染(同、事例13)、など)が確認された。

感染経路を評価できた事例は少ないものの、エアロゾル感染が疑われた事例の頻度が明らかに増えているわけではなく、従来より認識されていたエアロゾル感染が起こりやすい状況(換気が悪い屋内、密、長時間)以外でのエアロゾル感染疑い事例も確認されていない。引き続き、感染経路を注意深く確認していく必要がある。

注)エアロゾル感染:2m以上離れた長距離間での感染、又は感染者の不織布マスク着用が自己申告と他覚的な確認で確認された状況での感染

表3.感染経路が推定されたオミクロン株新型コロナウイルス感染症の感染事例(13事例)

事例 感染 者数 感染 場所 推定感染経路 備考
1 10 会食 飛沫 自宅での親族との会食
2 13 会食 飛沫 飲食店での親族との会食
3 5 会食 飛沫 飲食店での親族との会食
4 5 会食 飛沫 飲食店での職場同僚との会食
5 6 会食 飛沫 飲食店での職場同僚との会食
6 6 会食 飛沫 飲食店での職場同僚との忘年会
7 7 会食 飛沫 自宅での友人との会食
8 16 職場 飛沫、ただし、 接触や一部のエアロゾル感染は否定できず 職場の密な環境における食事や屋内作業
9 2 職場 接触、ただし、 一部のエアロゾル感染は否定できず 感染者宿泊施設における従業員
10 1 職場 接触 医療機関外来
11 2 職場 飛沫 職場の同僚間
12 15 会食 飛沫 飲食店での友人との会食
13 16 会食 飛沫、ただし、 一部のエアロゾル感染は否定できず 飲食店での友人との会食
参考文献
  1. Lauer SA, et al., Ann Intern Med 172: 577-582, 2020
  2. Grant R, et al., Lancet Reg Health Eur 2021, doi: 10.1016/j.lanepe.2021.100278
  3. IASR 41 (9) : 173-174, 2020
  4. IASR 42 (5) : 104-106, 2021
  5. Madewell ZJ, et al., JAMA Netw Open 3: e2031756, 2020
  6. Ng OT, et al., Lancet Reg Health West Pac 17: 100299, 2021

令和4年1月13日
令和4 年1月20日 誤記訂正
国立国際医療研究センター 国際感染症センター

【背景・目的】

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)においては、B.1.1.529系統の変異株(オミクロン株)が、2021年11月末以降、我が国を含む世界各地から報告され、感染・伝播性や抗原性の変化が懸念されている。国内においては、新型コロナウイルス感染症患者は感染症法または検疫法に基づいて入院措置等が行われる。オミクロン株についての知見が不十分であったため、2022年1月4日までは、オミクロン株による新型コロナウイルス感染症患者(オミクロン株症例)については、オミクロン株以外による新型コロナウイルス感染症患者(非オミクロン株症例)と異なる退院基準・解除基準が設定されており、核酸増幅法または抗原定量検査による2回連続の陰性確認が必要とされていた。しかし、この退院基準では入院期間が長期化し、患者及び医療機関等の負担となっていたことから、オミクロン株症例のウイルス排出期間等について早急に明らかにする必要があった。厚生労働省、国立感染症研究所(感染研)において、国立国際医療研究センター国際感染症センター及び関係医療機関・自治体の協力のもと、感染症法第15条第2項の規定に基づきオミクロン株症例の積極的疫学調査を行っている。本調査において、新型コロナワクチン2回接種から14日以上経過している者(以降、「ワクチン接種者」と記載)における感染性ウイルス排出期間を検討し、発症または診断10日以降に感染性ウイルスを排出している可能性は低いことが示唆され、1月5日に第1報として報告するとともに、同日、厚生労働省より事務連絡(https://www.mhlw.go.jp/content/000876461.pdf)が発出され、ワクチン接種者においては、退院基準・解除基準を非オミクロン株症例と同様の取扱いとすることとなっている。しかし、新型コロナワクチン未接種者(以降、「ワクチン未接種者」と記載)におけるオミクロン株症例においては知見が得られなかった。第1報以降、ワクチン未接種者におけるオミクロン株症例の呼吸器検体中のウイルスRNA量(Cq値)の推移を検討したため、これを示す。

【方法】

対象症例および検体採取

対象は検疫および国内で検出されたオミクロン株感染確定症例として、経過中に臨床目的もしくは研究目的で採取された(陰性を含む)すべての呼吸器検体(唾液および鼻咽頭スワブ)の残余検体について、感染研にてリアルタイムRT-PCRを実施した。採取の目安としては、SARS-CoV-2感染の初回陽性検体の検体採取日(本稿では便宜的に「診断日」と定義する)を0日目としてそこから、(1)0-1日目、(2)3-5日目、(3)6-8日目、(4)9日目以降、(5)退院時陰性検体(2回分)とした。

核酸抽出およびリアルタイムRT-PCR

RNAは唾液および鼻咽頭拭い液検体200 µLからMaxwell RSC miRNA Plasma and Serum kitもしくはMagMAX Viral/Pathogen Nucleic Acid Isolation Kitを用いて抽出した。新型コロナウイルスN2領域をターゲットとしたプライマー/プローブセット(N2セット)とOne Step PrimeScript™ III RT-qPCR Mixを用いてリアルタイムRT-PCRによりウイルスRNA量(Cq値)を測定した。陰性と判定された検体のCq値は45を代入して解析した。

【結果】

対象症例の属性

2022年1月7日までに登録された対象症例は、47例のべ265検体(ワクチン接種者:36例(210検体);ワクチン未接種者:11例(55検体))であった。年齢中央値31歳(四分位範囲24.5-47歳)(ワクチン接種者:38歳 (29-47歳);ワクチン未接種者:9歳(9-26歳))、男性33例(70%)、女性14例(30%)(ワクチン接種者:男性26例、女性10例;ワクチン未接種者:男性7例、女性4例)であった。退院までの全経過における重症度は、無症状が10例(21%)、軽症が36例(77%)、中等症Ⅰが1例(2%)であった(ワクチン接種者:無症状6例、軽症29例、中等症Ⅰ 1例;ワクチン未接種者:無症状4例、軽症7例)。ICU入室・人工呼吸器管理・死亡例はいなかった。

リアルタイムRT-PCR

診断日からの期間別のウイルスRNA量(Cq値)を図Aに示す。Cq値は日数が経過するにつれて上昇傾向であった。また、ウイルスRNA検出検体の割合も日数が経過するにつれて、減少していた()。さらに、有症状者と無症状者において、ワクチン未接種者の検体とワクチン接種者の検体のウイルスRNA量を比較したところ、発症もしくは診断から0〜9日および発症もしくは診断10日以降において、ワクチン未接種者とワクチン接種者の呼吸器検体中のウイルスRNA量に違いは認めなかった(図B)。

67 fig1 図. ワクチン未接種/ワクチン接種者のオミクロン株症例における呼吸器検体中のウイルスRNA量(Cq値)の日数別推移

(A) ワクチン未接種者のオミクロン株症例におけるウイルスRNA量(Cq値)の診断からの日数別推移。赤線は中央値と四分位範囲を示す。
(B) ワクチン未接種者とワクチン接種者のオミクロン株症例におけるウイルスRNA量(Cq値)の比較(有症状者および無症状者)赤線は中央値と四分位範囲を示す。ns: 統計学的有意差なし(一元配置分散分析とHolm-Sidak 検定)

 

表.ワクチン未接種のオミクロン株症例におけるウイルスRNA検出検体数および割合(診断からの日数別)

診断からの日数 RNA検出検体数
および割合n (%)
0-2日目 7/11 (63.6)
3-6日目 11/13 (84.6)
7-9日目 7/13 (53.8)
10-13日目 3 /10 (30.0)
14日目以降 1/8 (12.5)

【考察】

本報告では、ワクチン未接種者のオミクロン株症例におけるウイルス排出期間を検討した。ワクチン未接種者においても呼吸器検体中のウイルスRNA量は日数が経過するにつれて減少傾向であった。さらに、有症状者と無症状者において、ワクチン未接種者とワクチン接種者の呼吸器検体中のウイルスRNA量を比較したところ、発症もしくは診断から0〜9日、および発症もしくは診断10日以降において、両者のウイルスRNA量に違いは認めなかった。

現時点で検討した症例数はワクチン未接種者11例と限られているが、ワクチン未接種者でのウイルス排出期間がワクチン接種者に比べて長期化する可能性を示唆するデータは得られなかった。今回の検討では解析症例数が少ないことから、ワクチン未接種者のオミクロン株症例におけるウイルス感染動態の全体像を理解することは困難であるが、ワクチン未接種者においてもワクチン接種者と同様に、無症状者および軽症者においては発症または診断10日以降に感染性ウイルスを排出している可能性は低いと考えられた。 本報告の制限として、解析した症例数が少ないこと、調査対象者は無症状者及び軽症者が大部分を占め特にワクチン未接種者においては若年者が調査対象であったこと、ウイルス分離の結果が得られておらず感染性ウイルスの有無が不明であることなどが挙げられる。

注意事項

本報は迅速な情報共有を⽬的としており、調査は継続しているため、内容や⾒解は知見の更新によって更新される可能性がある。

謝辞

本調査にご協力いただいております各自治体関係者および各医療関係者の皆様に心より御礼申し上げます。本稿は, 次の医療機関からお送りいただいた情報を基にまとめています。

大阪市立総合医療センター、国際医療福祉大学成田病院、国立国際医療研究センター、東京都立駒込病院、長良医療センター、成田赤十字病院、りんくう総合医療センター(五十音順)

発出元

国立感染症研究所
国立国際医療研究センター 国際感染症センター

 


[訂正]
令和4 年1月20日 誤記(2か所)を訂正しました。
 
【背景・目的】
発症または診断10日後以降に感染性ウイルスを
 →
発症または診断10日以降に感染性ウイルスを
 
【考察】
発症または診断10日後以降に感染性ウイルスを
 →
発症または診断10日以降に感染性ウイルスを

 

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沖縄県におけるSARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)症例の実地疫学調査報告

(速報掲載日 2022/1/11)(IASR Vol. 43 p37-40: 2022年2月号)
 
はじめに

 2021年11月24日に南アフリカ共和国から世界保健機関(WHO)へ最初の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)新規変異株B.1.1.529 系統(オミクロン)感染例が報告された。12月21日までに日本を含め世界106カ国から感染例が報告され、各地でオミクロン株の感染拡大がみられている1)

掲載日:2022年1月11日

第66回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年1月6日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第66回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版

感染状況について

新規感染者は急速に増加している。全国の新規感染者数(報告日別)は、直近の1週間では10万人あたり約5であるが、直近の今週先週比は3.26となっている。特に感染者が急増している地域として、沖縄県では10万人あたり約80で今週先週比は6.95、山口県では10万人あたり約22で今週先週比が11.11、広島県では10万人あたり約14で今週先週比が24.69となっている。また、関東や関西地方などの都市部を中心に新規感染者数の増加が見られる。全国で新規感染者数が急速に増加していることに伴い、療養者数と重症者数は増加傾向にある。

海外におけるオミクロン株による感染例は、継続的に増加している。国内においても、約8割の都道府県でオミクロン株の感染が確認されており、海外渡航歴がなく、感染経路が不明の事案が継続して発生している地域もある。またデルタ株からの置き換わりも進んでいる地域もあることを踏まえると、今後、感染拡大が急速に進み、医療提供体制等がひっ迫する可能性に留意する必要がある。

実効再生産数:
全国的には、直近(12/21時点)で1.31と1を上回る水準が継続しており、首都圏では1.26、関西圏では1.35となっている。

IASR-logo

札幌市立小中学校における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行状況とその拡大因子の解析

(速報掲載日 2022/1/7)(IASR Vol. 43 p35-37: 2022年2月号)
 

 国内の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染者数は、新型コロナワクチン接種率の向上等により低下し、高齢者施設等でのクラスター発生数も減少してきている。一方で新型コロナワクチン接種ができない、または進んでいない20代以下では感染者数が増加し、それに伴い学校では新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者発生に対する適切な対策が求められている。そこで、2020年2月1日〜2021年9月15日の期間に発生した、札幌市立小中学校に通う児童・生徒、教職員等のCOVID-19事例を解析し、小中学校におけるSARS-CoV-2感染拡大要因について検討した。なお、札幌市では2021年7月より市立小中学校教職員を新型コロナワクチンの優先接種の対象にした。また、8月20日からは12~15歳の市民に新型コロナワクチン接種券を送付して同年齢層の市民にも新型コロナワクチン接種を開始したが、9月15日までに2回目接種を完了した同年齢市民の割合は約0.4%であった。COVID-19の流行以降、市立小中学校の児童・生徒、教職員等にSARS-CoV-2感染者が発生した場合、原則、感染者が発生した学級を学級閉鎖とし、同時に学級全員・接触のあった教員に発症の有無を問わずPCR検査を行ってきた。また、2021年3~6月までは、市衛生研究所や民間検査機関で検出されたSARS-CoV-2はB.1.1.7系統(アルファ株)が主流であり、B.1.617.2系統(デルタ株)の2021年6~ 9月までの月別検出割合は各0.2%、44%、74%、86%と増加していた。

令和4年1月5日
国立感染症研究所
国立国際医療研究センター 国際感染症センター

英語版

【背景・目的】

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)においては、B.1.1.529系統の変異株(オミクロン株)が、2021年11月末以降、我が国を含む世界各地から報告され、感染・伝播性や抗原性の変化が懸念されている。国内においては、新型コロナウイルス感染症患者は感染症法または検疫法に基づいて入院措置等が行われる。オミクロン株についての知見が不十分であるため、令和4年1月4日現在、オミクロン株による新型コロナウイルス感染症患者(オミクロン株症例)については、オミクロン株以外による新型コロナウイルス感染症患者(非オミクロン株症例)と異なる退院基準が設定されており、核酸増幅法または抗原定量検査による2回連続の陰性確認が必要とされている。しかし、現在の退院基準では入院期間が長期化し、患者及び医療機関等の負担となる可能性があることから、オミクロン株症例のウイルス排出期間等について明らかにする必要がある。

国立感染症研究所(感染研)では、関係医療機関・自治体の協力のもと、感染症法第15条の規定に基づき、オミクロン株症例の積極的疫学調査を行っており、本調査の一環として、感染性持続期間を検討している。本稿では、この暫定報告として、国内のオミクロン株症例の呼吸器検体中のウイルスRNA量(Cq値)の推移と感染性ウイルスの検出期間を示す。

【方法】

対象症例および検体採取

対象は検疫および国内で検出されたオミクロン株感染確定症例で、経過中に臨床目的もしくは研究目的で採取された(陰性を含む)すべての呼吸器検体(唾液および鼻咽頭スワブ)の残余検体について、感染研にてリアルタイムRT-PCRおよびウイルス分離試験を実施した。採取の目安としては、SARS-CoV-2感染の初回陽性検体の検体採取日(本稿では便宜的に「診断日」と定義する)を0日目としてそこから、(1)0-1日目、(2)3-5日目、(3)6-8日目、(4)9日目以降、(5)退院時陰性検体(2回分)とした。

核酸抽出およびリアルタイムRT-PCR

RNAは唾液および鼻咽頭拭い液検体200 µLからMaxwell RSC miRNA Plasma and Serum kitもしくはMagMAX Viral/Pathogen Nucleic Acid Isolation Kitを用いて抽出した。新型コロナウイルスN2領域をターゲットとしてOne Step PrimeScript™ III RT-qPCR Mixを用いてリアルタイムRT-PCRによりCq値を測定した。陰性と判定された検体のCq値は45を代入して解析した。

分離試験

検体と分離用培地を混和し、VeroE6/TMPRSS2細胞に接種/培養を行い、接種後3日、5日に細胞変性効果の有無について評価した。また、細胞変性効果が見られた時点もしくは5日目に培養上清を回収し、リアルタイムRT-PCRにてSARS-CoV-2の確認試験を実施し、ウイルス分離の判定を行った。

【結果】

対象症例の属性

2021年12月22日までに登録された対象症例は、21例のべ83検体であった。年齢中央値33歳(四分位範囲 29-47歳)、男性19例(90%)、女性2例(10%)であった。ワクチン3回接種は2例(10%)で、その内訳はファイザー社製のワクチン3回の1例とジョンソンエンドジョンソン社製のワクチンの後にファイザー社製のワクチン2回接種した1例であった。そのほかはファイザー社製のワクチン2回が8例(38%)、武田/モデルナ社製のワクチン2回が9例(43%)、未接種者はいずれも未成年で2例(10%)であった。ワクチン2回接種から2週間以内の経過の者はいなかった。 退院までの全経過における重症度は、無症状が4例(19%)、軽症が17例(81%)であった。中等症以上・ICU入室・人工呼吸器管理・死亡例はいなかった。

リアルタイムRT-PCR

診断日および(有症状者に限定して)発症日からの期間を以下に分けてCq値を図A, Bに示す。Cq値は診断日および発症日から3~6日の群で最低値となり、その後日数が経過するにつれて、上昇傾向であった。診断または発症10日目以降でもRNAが検出される検体は認められ、Cq値20台の検体を2例認めたが、いずれも症状消失後2日以内の検体であった。

66 fig1 図. オミクロン株症例におけるCq値の日数別推移

(A) オミクロン株症例におけるCq値の診断からの日数別推移
(1)0-2日目、(2)3-6日目、(3)7-9日目、(4)10-13日目、(5)14日目以降
(B) オミクロン株症例におけるCq値の発症からの日数別推移(有症状者に限定した発症からの日数別)
(1)-1-2日目、(2)3-6日目、(3)7-9日目、(4)10-13日目、(5)14日目以降

分離試験

診断日および(有症状者に限定して)発症日からの期間を以下に分けて分離の可否をに示す。診断日および発症日からの日数が3~6日目の群でウイルス分離可能な割合は最も高く、その後は減少傾向であった。特に、診断および発症10日目以降、ウイルス分離可能な症例は認めなかった。また未成年患者検体からもウイルス分離は可能であった。PCR陰性でウイルス分離された検体は認めなかった。

表.オミクロン株症例におけるRNA検出および分離の可否

(A)ウイルスRNA検出検体数および割合と分離可能検体数および割合(診断からの日数別)

診断からの日数 RNA検出検体数   および割合n (%) 分離可能検体数    および割合n (%) PCR陽性検体のうち分離可能検体数および割合n (%)
0-2日目 20/21 (95.2) 2/21 (9.5) 2/20 (10.0)
3-6日目 14/17 (82.4) 7/17 (41.2) 7/14 (50.0)
7-9日目 17/18 (94.4) 2/18 (11.1) 2/17 (11.8)
10-13日目 4/15 (26.7) 0/15 (0) 0/4 (0)
14日目以降 5/12 (41.7) 0/12 (0) 0/5 (0)

(B)ウイルスRNA検出検体数および割合と分離可能検体数および割合(有症状者に限定した発症からの日数別)

発症からの日数 RNA検出検体数   および割合n (%) 分離可能検体数    および割合n (%) PCR陽性検体のうち分離可能検体数および割合n (%)
-1-2日目 15/16 (93.8) 2/16 (12.5) 2/15 (13.3)
3-6日目 8/8  (100) 4/8 (50.0) 4/8 (50.0)
7-9日目 16/16 (100) 3/16 (18.8) 3/16 (18.8)
10-13日目 7/12 (58.3) 0/12 (0) 0/7 (0)
14日目以降 4/10 (40.0) 0/10 (0) 0/4 (0)

(C)無症状者のウイルスRNA検出検体数および割合と分離可能検体数および割合

陽性からの日数 RNA検出検体数   および割合n (%) 分離可能検体数    および割合n (%) PCR陽性検体のうち分離可能検体数および割合n (%)
0-5日目 6/6 (100) 3/6 (50.0) 3/6 (50.0)
6-9日目 3/4 (75.0) 0/4 (0) 0/3 (0)
10日目以降 1/10 (10) 0/10 (0) 0/1 (0)

【考察】

本報告では、国内のオミクロン株症例における感染性持続期間を検討した。

オミクロン株症例において、Cq値は診断日および発症日から3~6日の群で最低値となり、その後日数が経過するにつれて、上昇傾向であった。診断または発症10日目以降でもRNAが検出される検体は認められたが、ウイルス分離可能な検体は認めなかった。これらの知見から、2回のワクチン接種から14日以上経過している者で無症状者および軽症者においては、発症または診断10日後以降に感染性ウイルスを排出している可能性は低いことが示唆された。

本調査の制限として、ワクチン接種歴のある者が大多数であったこと、無症状者及び軽症者が調査対象であったことなどが挙げられる。また、ウイルス分離試験の結果は検体の採取方法・保管期間・保管状態等に大きく依存することから、陰性の結果が検体採取時の感染者体内に感染性ウイルスが存在しないことを必ずしも保証するものではないことに注意が必要である。

注意事項

迅速な情報共有を⽬的とした資料であり、内容や⾒解は知見の更新によって変わる可能性がある。

謝辞

本調査にご協力いただいております各自治体関係者および各医療関係者の皆様に心より御礼申し上げます。本稿は, 次の医療機関からお送りいただいた情報を基にまとめています。

国立国際医療研究センター、りんくう総合医療センター(五十音順)

発出元

国立感染症研究所
国立国際医療研究センター 国際感染症センター

掲載日:2021年12月28日

第65回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年12月28日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第65回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版

感染状況について

全国の新規感染者数(報告日別)は、直近の1週間では10万人あたり約1.3と、依然として非常に低い水準であり、新規感染者が確認されない日が継続している地域もある。一方、都市部を中心に新規感染者数の増加が見られることに加え、一部の地域では、社会福祉施設、医療機関でのクラスターや感染経路不明事案の発生による一時的な増加もあり、直近の今週先週比は1.51となっており、増加が3週間以上継続している。

複数の地域でオミクロン株の感染が確認されており、海外渡航歴がなく、現時点で感染経路が不明である事案も確認されている。

実効再生産数:
全国的には、直近(12/12時点)で1.21と1を上回る水準が継続しており、首都圏では1.22、関西圏では1.06となっている。

2021年12月28日9:30時点

12月31日 一部修正

国立感染症研究所

PDF

概要

WHOは2021年11月24日にSARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統を監視下の変異株(Variant Under Monitoring; VUM)に分類したが(WHO. Tracking SARS-CoV-2 variants)、同年11月26日にウイルス特性の変化の可能性を考慮し、「オミクロン株」と命名し、懸念される変異株(Variant of Concern; VOC)に位置づけを変更した(WHO. Classification of Omicron (B.1.1.529) )。

2021年11月26日、国立感染症研究所は、PANGO系統でB.1.1.529系統に分類される変異株を、感染・伝播性、抗原性の変化等を踏まえた評価に基づき、注目すべき変異株(Variant of Interest; VOI)として位置づけ、監視体制の強化を開始した。2021年11月28日、国外における情報と国内のリスク評価の更新に基づき、B.1.1.529 系統(オミクロン株*)を、懸念される変異株(VOC)に位置付けを変更した。

* B.1.1.529 系統の下位系統であるBA.ⅹ系統等が含まれる。

表 SARS-CoV-2 B.1.1.529系統(オミクロン株)の概要

PANGO

系統名

日本

感染研

WHO

EU

ECDC

UK

HSA

US CDC

スパイクタンパク質の主な変異(全てのオミクロン株で認めるわけではない)

検出報告国・地域数

B.1.1.529

BA.x

VOC

VOC

VOC

VOC

VOC

G142D, G339D, S371L, S373P, S375F, S477N, T478K, E484A, Q493K, G496S, Q498R, N501Y, Y505H, P681H

106か国

 

オミクロン株について

  •   オミクロン株は基準株と比較し、スパイクタンパク質に30か所程度のアミノ酸置換(以下、便宜的に「変異」と呼ぶ。)を有し、3か所の小欠損と1か所の挿入部位を持つ特徴がある。このうち15か所程度の変異は受容体結合部位(Receptor binding protein (RBD); residues 319-541)に存在する(ECDC. Threat Assessment Brief)。各変異等の詳細については第3報を参照されたい。

海外での発生状況

全世界でオミクロン株による感染例(以下オミクロン株感染例)の報告数ならびに報告国数が継続的に増加し、南アフリカ、イングランドやアメリカ合衆国では、デルタ株からオミクロン株への急速な置き換わりの進行が報告された。また、複数の国・地域で市中感染や集団内の多くの者が感染したクラスター事例も報告されており、さらなる感染の拡大が懸念される。ゲノムサーベイランスの質が十分でない国・地域においては探知されていない感染例が発生している可能性もあるため、現在感染例が探知されている国・地域よりもさらに広い範囲に感染が拡大している可能性がある。

  •   2021年11月24日に南アフリカからWHOへ最初のオミクロン株感染例が報告されて以降、12月21日までに日本を含め全世界106か国から感染例が報告された(WHO. Weekly epidemiological update on COVID-19 - 21 December 2021)。
  •   2021年12月20日時点でアフリカでは、22か国からオミクロン株感染例が報告された(Outbreak Brief #101: Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Pandemic Date of Issue: 21 December 2021)。南アフリカでは、ゲノム解析された検体のうち、10月はデルタ株が85%(646/764)、オミクロン株0.2%(2/764)であったが、11月はオミクロン株82%(987/1,210)、12月はオミクロン株98%(629/639)であった (NICD. SARS-COV-2 GENOMIC SURVEILLANCE UPDATE (24 DEC 2021))。
  •   2021年12月19日時点でEU/EEA域内では、28か国から合計4,691例のオミクロン株感染例が報告された。情報を取得できた範囲では、オミクロン株感染例のEU/EEA域内での死亡は報告されていない。オミクロン株の市中感染例が増加し、クラスター事例も発生している(ECDC. Epidemiological update: Omicron variant of concern (VOC) – week 50 data as of 19 December 2021.)。オミクロン株感染例4,766例とS遺伝子が検出されない(S gene target failure(SGTF)と呼ばれる)SARS-CoV-2感染例(以下SGTF感染例)の計4,786例の解析では、年齢中央値31歳(範囲0-112歳)で男性が51%であった。そのうち情報を取得できた2,550例において、94%(2,388/2,550)が有症状であった。情報が得られた感染例の中で、1%(15/2,717)が入院し、ICU入室/人工呼吸器管理を要したものはいなかった(0/2,707)(ECDC. Country Overview Report: Week 50, 2021, produced on 23 December 2021.)。
  •   2021年12月23日時点でイングランドでは、102,729例のオミクロン株感染例と192,965例のSGTF感染例が報告された。また12月19日時点で、29例の死亡例と366例の入院例(オミクロン株感染例ないしSGTF感染例)を認めた。イングランドでは11月末以降SGTF感染例の増加を認め、12月21日ないし22日に採取されS遺伝子の結果が判明した34,270検体のうち、86.2%(29,524検体)でSGTFを認めた(UKHSA. Omicron daily overview. 24 December 2021.)。12月18日時点での53,842例(男性25,577例、女性28,265例)のオミクロン株感染例の解析では、20歳代が33%と最も多く、次いで30歳代が23%、40歳代が15%、10歳代が12%であった。(UK Health Security Agency. SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England Technical briefing 3)。
  •   2021年12月8日時点でアメリカ合衆国では、22の州でオミクロン株感染例が報告されており、このうち複数の州で市中感染が示唆される事例が報告された。情報を取得できた43例において、入院例が1例報告され、死亡例は報告されなかった (CDC. SARS-CoV-2 B.1.1.529 (Omicron) Variant — United States, December 1–8, 2021.)。CDCの12月20日時点の推計では、同国での週別のオミクロン株検出割合の推定値が12.6%(12月5日~11日)から73.2%(12月12日~18日)に増加した。(CDC. COVID Data Tracker Variant Proportions)。
  •   2021年12月17日時点で西太平洋地域では、11ヵ国からオミクロン株感染例が報告された(WHO. Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) External Situation Report #83 15 December 2021)。2021年12月20日時点で韓国では、合計188例(確定例178例、確定例と疫学的関連のある10例)が報告された。確定例の年齢分布は、20歳未満が26.7%、20代~50代が66.3%で、推定感染地は海外が28.9%、国内が71.1%であった。診断時には19.8%が無症状で、有症状の場合は発熱、咽頭痛、咳が主な初期症状であり、いずれの感染例も軽症であった (3차접종 적극 참여, 누적 1,100 넘어(12.20., 정례브리핑))。
  •   2021年12月19日時点で東南アジア地域では、7か国からオミクロン株感染例が報告された(WHO. COVID-19 Weekly Situation Report Week #50 (13 December – 19 December 2021) 24 )。
  •   2021年12月4日時点で東地中海地域では、3か国からオミクロン株感染例が報告された(WHO EMRO. COVID-19: WHO EMRO Biweekly Situation Report #24 Epi Weeks 47 – 48 (21 November – 4 December 2021.)。

 

日本での発生状況

海外からの入国者のSARS-CoV-2陽性者の中でオミクロン株感染例の割合が高まり、オミクロン株感染例が継続して報告されており、オミクロン株の国内への輸入リスクは高まっている。また、14日以内に海外渡航歴のある者との関連が認められないオミクロン株の感染例が複数の都道府県から報告されている。感染源が確認できていない事例が継続して発生している地域もあり、そのような地域では感染拡大に留意する必要がある。海外での報告で示唆されているオミクロン株の感染・伝播性の高さ等を考慮すると、国内においても大規模クラスターの発生や、広範囲での市中感染が継続することで、感染例の急増につながることが懸念される。

 

  •   2021年12月27日までに日本において、計316例のオミクロン株感染例が報告された(2021年12月27日21時時点)。内訳*は水際関連空港検疫事例が247例(以下検疫例)、水際関連都道府県発表事例が33例、それ以外の事例が36例(大阪府14例、京都府12例、愛知県、山口県より各2例、東京都、富山県、静岡県、滋賀県、広島県、福岡県より各1例より報告があった)であった。検疫でSARS-CoV-2陽性が判明する者の中でオミクロン株感染例の割合は経時的に高くなっている。検疫例について、入国前14日以内に滞在した国の数は計41か国であった。(厚生労働省報道発表資料:https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/index.html)。

*厚生労働省報道発表資料に基づく

(注1)「空港検疫」には、検疫検査時に陽性だった方に加えて、宿泊施設での待機が必要な国・地域から入国後、待機中に陽性が判明し、オミクロン株と確定した場合も含む。

(注2)「都道府県発表」には、検疫所関係者でオミクロン株と確定した場合を含む。

(注3)「左記以外」は、オミクロン株と確定した者のうち、直近の海外渡航歴がなく、現時点で感染経路が明らかになっていない者等。

  •   国内のCOVID-19発生動向については、新型コロナウイルス感染症サーベイランス週報:発生動向の状況把握を参照されたい。
  •   オミクロン株感染例と同じ便に搭乗していた乗客は濃厚接触者として健康観察および定期的な検査が実施されていた。また、各自治体においては、感染源・感染経路の特定及び感染拡大防止のため、幅広なリスク集団を対象に検査・調査が行われている。調査で特定された(濃厚)接触者については健康観察と定期的な検査が実施されている。

 

ウイルスの性状・臨床像・疫学に関する評価についての知見

  •   感染・伝播性

オミクロン株の流行が先んじて報告された南アフリカでは、高い実効再生産数が報告され、イングランドからも倍加時間の短縮や感染者数の高い増加率が報告された。海外から報告された集団発生事例での高い発病率や、デルタ株よりも多くの家庭内二次感染例が報告されたことも伝播性の増加を示唆する所見である。ただし、観察集団の免疫状況や感染予防行動等の違い、オミクロン株同定のための検査戦略などの影響等も含めて、解釈には依然として慎重を要する。また、世代時間や潜伏期間がデルタ株に比較して短縮している可能性を示す所見があることにも留意する必要がある。倍加時間の短縮は、感染性の増大と世代時間の短縮の両方の影響を加味する必要がある。さらに、国内の積極的疫学調査から得られた暫定的な結果からは、これまでの事例(従来株やデルタ株による)と比較し、感染・伝播性はやや高い可能性はあるが、感染様式の変化や著しい感染・伝播性の増加の根拠は得られていない。また、基本的で適切な感染対策(マスク着用、手指衛生、換気の徹底等)は引き続いて有効であることが観察されており、感染対策が比較的守られている状況下では爆発的な感染拡大には至っていない。引き続き日本におけるオミクロン株の感染・伝播性に関する知見の蓄積が必要である。

  •   国内の積極的疫学調査による結果に基づくと、同居の濃厚接触者において観察期間を7日とし、その期間を経過した者を対象とした場合、二次感染率は中央値22%(四分位範囲:0-100%)であった(11事例(対象者:計37名))。また、推定曝露日が得られた感染例(n=11)における潜伏期間の中央値は3日(四分位範囲:2.5-4日)、であった。ただし、各事例におけるワクチン接種率、感染対策状況を含む曝露状況について情報が十分得られていないことから、あくまでも暫定的な数字であり、解釈には注意が必要である。
  •   屋外の競技場や職場において、マスクの着用や同一空間の滞在時間に関係なく幅広検査の対象となった者のうち、現在のところ、感染例は検出されていない。
  •   オミクロン株の感染例が搭乗していた航空機について、乗客全員を濃厚接触者として14日間の健康観察が行われていた。12月25日までに健康観察を終了したオミクロン株感染例と同じ機内の乗客2,097人のうち、入国後にオミクロン株による感染が明らかとなったのは計4便の5人 (0.24%, 95%信頼区間(CI):0.07-0.56)のみで、うち2名は家族だった。また、1名は同乗の感染例とウイルスゲノム配列が異なっていた。一方、2021年12月3日から19日までの間に、到着時オミクロン株陽性者のいない便の乗客62,257名の中で、検疫での検査結果が陰性になってから14日以内にオミクロン株陽性となった者(またはL452R変異株PCR陰性者)は65名検出され(0.10%、95% CI 0.08-0.13)、これらの割合に有意な差はなかった。
    •   南アフリカにおいてオミクロン株の流行が始まった11月から12月4日までの報告例を基に算出された実効再生産数は2.55 (95%CI 2.26, 2.86)であった(NICD. The Daily Effective Reproduction Number in South Africa.)。
    •   英国においてはSGTFを認める検体(オミクロン株であることが疑われる検体)をモニタリングするサーベイランスが稼働しており、11月4週から12月3週のデータを用いて増加率(growth rate)が0.41/日と算出された(UKHSA. Technical Briefing 32)。またオミクロン株確定例に対する増加率が検討されており、0.45/日 (95%CI 0.44-0.46)と算出された(Imperial College London. Report 49)。
    •   またデルタ株と比較した相対的な免疫逃避の程度を考慮したモデルでは同時期の増加率は0.29/日と算出された(LSHTM. Modelling report)。
    •   上に伴い、英国では倍加時間(doubling time)も算出されており、SGTFデータおよびオミクロン確定例のデータから倍加時間はそれぞれ1.6日と1.5日と算出された(Imperial College London. Report 49)。またデルタ株に対する相対免疫逃避を考慮したモデルでは倍加時間は2.4日と算出された(LSHTM. Modelling report)。
    •   英国において2021年11月15日から12月6日の間に検体を採取されたオミクロン株感染例777例とデルタ株感染例115,407例を対象としたコホート研究では、オミクロン株感染例からの家庭内二次感染率(Household secondary attack rate)はデルタ株感染例と比較して、調整なしオッズ比で2.0倍(95%CI 1.7–2.4)、年代、性別、ワクチン接種歴等で調整したオッズ比で2.9倍(95%CI 2.4–3.5)であった。また家庭外の二次感染も含んだ二次感染率は1.96倍(95%CI 1.77–2.16)と推定された(UKHSA Technical Briefing 32)。
    •   韓国から報告された湖南保育施設関連のオミクロン株感染例25例の解析では、平均潜伏期間は3.6日(範囲2~8日)、平均発症間隔は3.1日(範囲1~7日)であり、デルタ株の平均潜伏期間3~5日、平均発症間隔2.9~6.3日より短かった。オミクロン株感染例での家族内二次感染率は44.7%で、デルタ株の約20%と比較して高かった。(3차접종 적극 참여, 누적 1,100 넘어(12.20., 정례브리핑))
    •   デンマークでは、150人の参加者が集まるイベントで、71人(47%)がオミクロン株に感染した事例が報告された。同国では2021年12月9日時点で、合計785例のオミクロン株感染例が確認されており、年齢は2~95歳(中央値:32歳)で、55%(433例)が男性であった。76%(599例)がワクチン接種を完了しており、7%(56例)は追加接種を受けていた。1%(9例)が入院治療(うち1例は集中治療)を要し、死亡例は報告されなかった (Espenhain L., et al.)。
    •   ノルウェーでは、オスロー市内のレストランで開催されたクリスマスパーティーに参加した111人中80人(73%)でSARS-CoV-2感染が確認され、ほとんどがオミクロン株による感染と推定されている。参加者の大多数は30-50代で、2回のワクチン接種歴を有していた。80人中79人が何らかの症状を呈し、多くの者はパーティーの3日後の発症であった。感染例の70%以上で咳、頭痛、咽頭痛、倦怠感を、半数以上で発熱を認めたが、入院例や死亡例は報告されていない。なお、この集団での潜伏期間は中央値3日だった (Brandal, RC., et al.)。

  •   ワクチン・抗体医薬品の効果への影響や自然感染による免疫からの逃避

オミクロン株は、ワクチン接種や自然感染による免疫を逃避する性質が、遺伝子配列やラボでの実験、疫学データから示唆されている。ワクチンで誘導される抗体の in vitro(試験管内)での評価や疫学的評価から、ワクチン2回接種による発症予防効果がデルタ株と比較してオミクロン株への感染では低い可能性が示されている。3回目接種(ブースター接種)により、オミクロン株感染による発症予防効果が高まる可能性が示唆されているが、3回目接種からの日数が数週間程度と非常に短い者におけるデータであるため、中長期的にこの効果が持続するかは不明である。また、モノクローナル抗体を用いた抗体医薬品についても、in vitroでの評価で、カシリビマブ・イムデビマブ(ロナプリーブ)は、オミクロン株の分離ウイルスに対して中和活性が著しく低下している可能性があり、その他、バムラニビマブ・エテセビマブ、チキサゲビマブ・シルガビマブにおいても中和活性が著しく低下している可能性があるという報告がある。さらに、非オミクロン株に感染歴のある者の再感染は、非オミクロン株と比較してオミクロン株への感染がより起こりやすい(再感染しやすい)との報告がある。重症化予防に関する効果は十分な評価が得られていないが、ワクチン接種や過去の感染により、オミクロン株感染では重症化リスクが低下している可能性が示唆されている(詳細は次項参照)。

  •   英国健康安全保障庁(UKHSA)は症例対照デザイン(test-negative design)を用いて、オミクロン株およびデルタ株感染による発症に対する、新型コロナワクチン2回接種および3回(ブースター)接種及び未接種と比較した有効性の暫定的な評価を行った(UKHSA. Technical Briefing 31, Andrews et al.. UKHSA. Technical Briefing 33)。2021年11月27日から12月6日に実施された検査において、主にSGTFを用いて、デルタ株感染例56,439例、オミクロン株感染例581例に分類し、検査陰性者130,867人と比較して、それぞれのワクチンの有効率を算出した。その結果、ファイザー社製のワクチンを2回接種後2-9週間ではオミクロン株に対する有効率は88%(95%CI 65.9-95.8)とデルタ株(88.2 (95%CI 86.7-89.5))と同等であった。しかし、2回接種後10週以降では、デルタ株よりもオミクロン株に対する有効率が低かった。さらに、2回接種後20週以降においては、デルタ株に対する有効率が60%強であるのに対し、オミクロン株に対する有効率は35%程度であった。ブースターの発症予防効果については、12月17日までの検査を含め、デルタ147,597症例、オミクロン68,489症例を組み入れた更なる解析結果が報告されている。ファイザー社製ワクチンを2回接種後に、3回目(ブースター)接種としてファイザー社製ワクチンを用いた場合には、接種直後に発症予防効果が70%に上昇するものの、10週以降で45%に低下していた。3回目(ブースター)接種としてモデルナ社製ワクチンを用いた場合には、3回目接種5〜9週間後には約70~75%の有効性が認められた(10週以降のデータなし)。一方で、アストラゼネカ社製ワクチンを2回接種後に、3回目接種としてファイザーもしくはモデルナ社製ワクチンを用いた場合には接種2~4週間後に約60%に上昇した。しかし3回目接種10週間後にはファイザー社製ワクチンをブースター接種した場合で35%、モデルナ社製ワクチンをブースター接種した場合に45%にまで低下した。いずれの結果についても、観察研究であるため、バイアスや交絡の可能性があり、また、オミクロン株感染例は少ないため、信頼区間が広く、点推定値の評価には注意が必要である。また、本報告は発症予防効果についての評価であり、オミクロン株感染による重症例に対するワクチン有効性については、今後の更なる検討が必要である。
  •   オミクロン株においては、複数の国の研究機関等からの報告において、抗原性の変化による感染回復者やワクチン接種者の血清による中和能の低下が示されている(Lu et al., Dejnirattisai et al., Cele et al., Carreno et al.その他報告多数)。これらの結果は実験系の違いや使用された血清の採取時期(感染やワクチン接種から採血までの期間)の違い等により数値にはばらつきがあるものの、アルファ株以前に主流であったD614G変異を持つ株やデルタ株、オミクロン株以前の分離株でワクチン株から最も抗原性が離れていると考えられるベータ株と比較して、オミクロン株に対するファイザー社製のワクチン2回接種で誘導される中和抗体価は一貫して低い。また、3回(ブースター)接種後においての報告もあり、2回接種と比較するとオミクロン株に対する中和抗体価が高いことが報告されているが、従来株に対する中和抗体価と比較すると低い。ただし、これらの結果は中和抗体のin vitro(試験管内)での評価であり、解釈に注意が必要である。
  •   オミクロン株においては、抗原性の変化により、SARS-CoV-2に対するモノクローナル抗体を用いた抗体医薬品の効果への影響も懸念されており、オミクロン株の分離ウイルスやシュードタイプウイルスを用いたモノクローナル抗体による中和試験の暫定結果が報告されている(Cameroni et al, Cathcart et al., Cao et al. その他報告複数)。ソトロビマブ(ゼビュディ)やDXP-604(BeiGene・Singlomicsが開発)は、オミクロン株で認めるスパイクタンパク質の変異を持つシュードタイプウイルスに対して中和活性を維持しているという報告がある。一方で、カシリビマブ・イムデビマブ(ロナプリーブ)は、オミクロン株の分離ウイルスに対して中和活性が著しく低下している可能性があるという報告がある。その他、バムラニビマブ・エテセビマブ、チキサゲビマブ・シルガビマブにおいても中和活性が著しく低下している可能性があるという報告がある。これらの結果はin vitro(試験管内)での評価であり、解釈に注意が必要である。
  •   一方で、現時点で明らかな細胞性免疫からの逃避についての情報はない(Redd, et al.)。
  •   英国健康安全保障庁(UKHSA)は非オミクロン株と比較したオミクロン株における再感染のリスク比についての暫定的な報告を行った(UKHSA Technical Briefing 31)。2021年11月20日から12月5日にウイルスゲノム解析がなされ、オミクロン株感染とされた361例と非オミクロン株感染とされた85,460例のうち、年齢群・地域・(症状の有無、スクリーニング等の)検査区分で調整した再感染のリスク比は5.2(95%CI 3.4-7.6)であった。ただし、この報告は暫定的であり、SGTFを認める症例が優先的にウイルスゲノム解析をなされていることなどから解釈に注意が必要である。
  •   オミクロン株確定例における再感染率はデルタ株感染例と比較して高く、調整された再感染のリスク比が 5.41(95%CI 4.87-6.00)であった。ワクチン接種なしでは 6.36 (95%CI5.23-7.74)となった(Imperial College London. Report 49)。
  •   南アフリカにおいてSARS-CoV-2陽性例および検査のサーベイランスデータを用いた研究では、2種類の手法を用いて、非オミクロン株とオミクロン株への再感染のしやすさについて検討された(Pulliam, et al.まず、初回感染の発生率に対する再感染の発生率の比が第1波と同じであると仮定して、その後の再感染者数を予測したところ、第2波(ベータ株主流)、第3波(デルタ波主流)で観察された再感染者数は予測範囲内であったが、11月に観察された再感染者数は予測範囲を上回っていた。次に、全期間について初回感染の発生率に対する再感染の発第3波(デルタ株主流)は0.09であったが、11月以降は0.25と上昇していた。比は一貫して1を下回っており、初回感染よりも再感染の発生率は低いが、ベータ株やデルタ株の流行時に比較して、再感染の発生率は高まっている可能性があった。なお、この検討では、個々のSARS-CoV-2陽性例のワクチン接種歴が得られていないためワクチン接種による感染予防効果は検討されていない。また、SARS-CoV-2陽性例のウイルスゲノム解析結果は不明であり、検査対象は時系列的に変化し、受療行動が変化している可能性があることにも留意する必要がある。

  •   重症度

国内で経過観察されているオミクロン株感染例の初期の事例109例については、94%(103/109)が無症状ないし軽症で経過していた。海外の報告では、英国や南アフリカ等からデルタ株と比較した入院や重症化のしやすさの違いについての暫定データが報告されている。デルタ株と比較してオミクロン株では重症化しにくい可能性が示唆される。ただし、これらの報告では、オミクロン株感染例が若年層で多い、自然感染やワクチン接種による免疫の影響が考慮されていない等の様々な制限があること、重症化や死亡の転帰を確認するには時間がかかることを踏まえると更なる知見の集積が必要である。また、重症化リスクがある程度低下していたとしても、感染例が大幅に増加することで重症化リスクの低下分が相殺される可能性も考慮する必要がある。

  •   厚生労働省は、日本で確認されたオミクロン株感染例について、初期の事例については、感染症法第15条第2項に基づく積極的疫学調査を行っている。12月27日時点で情報が得られた109例のオミクロン株感染例の解析では、男性が63%(69/109)、入院からの観察期間中央値は 8日(最小値 1日、最大値19日)で、観察期間中に継続して無症状が29例、軽症が74例、中等症Ⅰが6例であった。ワクチン接種歴に関しては、未接種者が22例、接種者*(追加接種ありを含む)が86例、ワクチン接種日不明が1例であった。*規定の接種回数(ジョンソン・エンド・ジョンソン社製のワクチンの場合1回、その他のワクチンは2回)のワクチン接種を完了後、14日以上経過したもの
  •   UKHSAは 救急外来および入院データ、SGTFデータ(デルタ株とオミクロン株の分類に使用)、ワクチン接種歴のデータを突合して、デルタ株とオミクロン株の救急外来受診や入院率の違いを検討している(UKHSA Technical Briefing 31)。2021年11月22日から12月19日のまでのデータを用いて解析したところ、救急外来受診・入院率はデルタ株と比較してオミクロン株感染で0.62倍(95%CI 0.55-0.69)であり、入院率のみでは0.38倍(95%CI 0.30-0.50)であった。本解析では検体採取週と居住地で層別化し年齢・検体採取日・性別・人種・剥奪指標(所得や生活水準などの社会的な指標)・海外渡航歴・ワクチン接種歴で調整しているが、過去の感染や基礎疾患については調整していない。
  •   英国インペリアルカレッジは類似のデータセットを用いて、ワクチン接種歴や非オミクロン株への既感染の影響を考慮したより詳細な解析を行って、デルタ株とオミクロン株の入院率の違いを検討した(Imperial College London. Report 50)。 2021年12月1日から14日までの検査データを12月21日に抽出して解析が行われ、ワクチン接種歴・年代・性別・人種・地域・検体採取日で層別化したデータを用いて解析された。結果、デルタ株と比較してオミクロン株の感染例では入院率(救急外来受診も含まれる可能性がある)が15-20%低下しており、1泊以上入院した者に限定すると50-60%の低下であった。ただし、過去の感染例の全員がとらえられていないために、実際には3倍の既感染例がいると仮定すると、この既感染の影響を除いた入院率の低下は0-30%程度と推定された。さらに、ワクチン接種歴で層別化した結果も提示されており、未接種のオミクロン株感染例では、未接種のデルタ株感染例の入院率の0.59倍(95%CI 0.5-0.69)であったが、同様に過去の感染者数が過小評価されている可能性を考慮して既感染の影響を除くと、この値は0.76倍となりデルタ株感染例との差が小さくなった。また、mRNAワクチンを2回以上接種している者だけで評価すると、デルタ株感染例とオミクロン株感染例の入院率は同程度であった。本解析では、基礎疾患については調整しておらず、入院関連のイベントは数が少なく、また、報告遅れがあり得るため、解釈に注意が必要である。
  •   南アフリカのNICDからの報告として、検査データ、COVID-19症例データ、ウイルスゲノム解析データ、入院サーベイランスデータを突合して、デルタ株とオミクロン株の入院オッズの違いを検討した(Wolter, et al.)。2021年10月1日から11月30日の期間で、年齢・性別・基礎疾患の有無・地域・公立または私立医療機関・既感染の有無で調整した入院オッズは、デルタ株感染例と比較してオミクロン株感染例で0.2 (95%CI 0.1-0.3)であった。さらに、2021年10月1日から11月30日の期間に入院した者で、かつ12月21日までに入院後の転帰が判明している者において、年齢・性別・基礎疾患の有無・地域・公立または私立医療機関・既感染の有無・ワクチン接種歴・初回検体陽性〜入院までの期間で調整した重症化(ICU入室・酸素需要あり・人工呼吸器使用・ECMO使用・ARDS・死亡)のオッズは、デルタ株感染例と比較してオミクロン株感染例で0.7 (95%CI 0.3-1.4)であった。さらに、2021年4-11月のデルタ株感染例と10月1日から11月30日のオミクロン株感染と推定される症例でかつ12月21日までに入院後の転帰が判明している者において、入院症例における年齢・性別・基礎疾患の有無・地域・公立または私立医療機関・既感染の有無・ワクチン接種歴・初回検体陽性〜入院までの期間で調整した重症化のオッズを比較したところ、デルタ株感染例と比較してオミクロン株感染例で0.3 (95%CI 0.2-0.5)であった。ただし、最後の解析では、既感染例の増加については検討されておらず、重症化オッズの低下は、既感染例の増加が一定程度寄与している可能性がある。また、既感染の有無やワクチン接種歴については、データが不完全な可能性がある。
  •   スコットランドのエディンバラ大学からの報告として、プライマリケアデータ、ワクチン接種歴データ、検査データ、ウイルスゲノム解析データ、入院データ、死亡データが突合された人口の99%(540万人)をカバーするEarly Pandemic Evaluation and Enhanced Surveillance of COVID-19(EAVE Ⅱ)プラットフォームを用いて、2021年11月1日から12月19日に検査陽性となった者におけるコホート解析が行われた(Sheikh et al.)。SGTFデータを用いてデルタ株とオミクロン株を区別し、年代・性別・剥奪指標(所得や生活水準などの社会的な指標)・既感染・基礎疾患のスコアリング・ワクチン接種歴・カレンダー週をモデルに組み込んで解析したところ、オミクロン株感染例において観察された入院数をデルタ株のデータをもとに期待される入院数で割ったobserved/expected比(O/E比)は0.32(95%CI 0.19-0.52)であった。

  •    検査診断
    •   国立感染症研究所の病原体検出マニュアルに記載のPCR検査法のプライマー部分に変異は無く、検出感度の低下はないと想定される。
    •   オミクロン株は国内で現在使用されているSARS-CoV-2 PCR診断キットでは検出可能と考えられる。
    •   WHOテクニカルブリーフでは、抗原定性検査キットの診断精度については、オミクロン株による影響を受けない可能性が示唆されている。(WHO. Enhancing Readiness for Omicron (B.1.1.529): Technical Brief and Priority Actions for Member States)
    •   国内における変異株PCR検査法に関しては、 SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)について(第3報)を参照されたい。
    •   WHO の指定するオミクロン株(B.1.1.529系統の変異株)と確定するためには全ゲノム情報による塩基変異の全体像を知ることが不可欠である。国立感染症研究所では、全ゲノム解析によりゲノム全長を解読し、得られた配列(contig 配列)を用いて Nextclade および PANGOLIN プログラムにて解析し、クレード(clade)及び PANGO 系統(lineage)の両方が適正に判定された場合に最終判定に資する対象としている。ごく稀に、大きな欠失が生じ、PANGO 系統の結果が得られてもクレードが検出できない場合がある。この場合、解読リード深度 (read depth)が 300 倍以上かつゲノム被覆率(coverage)が 98%以上である、 または、de novo アセンブリにて完全(complete)な contig 配列が得られて いれば、結果が得られた PANGO 系統を確定としている(厚生労働省 2021年2月5日事務連絡 新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査におけるゲノム解析及び変異株 PCR 検査について )。

当面の推奨される対策

  •   オミクロン株については、現時点ではウイルスの性状に関する実験的な評価や疫学的な情報は限られており、高いワクチン接種率を達成している我が国においても感染拡大と患者増加のリスクを想定した対策を講じる必要がある。
  •   カシリビマブ・イムデビマブ(ロナプリーブ)のオミクロン株への有効性が低下することが報告されており、オミクロン株感染例であることが明らかな場合や、その蓋然性が高い場合はロナプリーブを投与することは推奨されない。
  •   水際対策と並行して、検疫及び国内での変異株PCR検査及びゲノムサーベイランスによる監視を引き続き行う必要がある。
  •   市中感染が疑われる感染例も報告されており、変異株PCR検査体制の徹底による早期探知、迅速な積極的疫学調査ならびに感染拡大防止策の実施が必要である。
  •   潜伏期間や世代時間の短縮が海外の知見によって示唆されており、また臨床的特徴についてもワクチン接種歴のないものや基礎疾患のあるものにおける評価が十分でないことから、引き続きオミクロン株の疫学的特徴及び重症化リスクについて分析・評価していく必要がある。
  •   オミクロン株感染例と同一空間を共有した者については、マスクの着用の有無や接触時間にかかわらず、幅広な検査の対象としての対応を行うことが望ましい。

 

 基本的な感染対策の推奨

  •         個人の基本的な感染予防策としては、変異株であっても、従来と同様に、3密の回避、特に会話時のマスクの着用、手洗いなどの徹底が推奨される。

 

参考文献

 

注意事項

  •        迅速な情報共有を目的とした資料であり、内容や見解は情勢の変化によって変わる可能性がある。

 

更新履歴

 第5報 2021/12/28 9:30時点

 第4報 2021/12/15 19時時点

 第3報 2021/12/8

 第2報 2021/11/28

 第1報 2021/11/26

 

 

 

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