新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 関連情報ページ

(このページでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 関連の記事を、掲載日が新しい順に表示しています)

2021年11月9日

端緒

新型コロナウイルス感染症のワクチン開発は未曾有のスピードで進み、ファイザー社製およびモデルナ社製のmRNAワクチンは大規模なランダム化比較試験で有効性(vaccine efficacy)が90%以上とされ、アストラゼネカ社製のウイルスベクターワクチン1種類も有効性が70%程度とされた1-3。国内外で緊急使用許可や製造販売承認を受け、実社会におけるワクチン導入初期の有効性(vaccine effectiveness)も海外で評価されており、ランダム化比較試験と同等の有効性を認めた4-5。国内においても、国立感染症研究所にて、複数の医療機関の協力のもとで、発熱外来等で新型コロナウイルスの検査を受ける者を対象として、症例対照研究(test-negative design)6を実施しており、この暫定報告の第一報では、国内においても高い有効性が示された7。しかし、前回報告では、B.1.1.7系統(アルファ株)からB.1.617.2系統(デルタ株)の置き換わり期であったため8、デルタ株に対する有効性については更なる検討が必要であった。そこで、今回は、関東において月初めにはデルタ株が9割以上を占め、月末にはほぼ全ての検出株がデルタ株であった8月の調査における暫定結果を報告する。

 

■国際感染症分野のキャリアアップセミナー
感染症に立ち向かうグローバルヘルス人材の拡大〜

  1. 日時:2021年11月12日(金)17:30-19:00
  2. 開催方法:Zoomウェビナーによるオンラインセミナー
  3. 受講料:無料
  4. 申込み方法ウェビナー登録
  5. 主催:国立国際医療研究センター グローバルヘルス人材戦略センター
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  6. プログラム
    17:30-17:40
    開会とグローバルヘルスのランドスケープ
     グローバルヘルス人材戦略センター長/WHO執行理事  中谷 比呂樹
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     国立感染症研究所感染症危機管理研究センター長  齋藤 智也
    18:00-18:50
    パネルディスカッション
     座長:齋藤 智也
     国立国際医療研究センター国際感染症センター長  大曲 貴夫
     国立感染症研究所感染症疫学センター長  鈴木 基
     国立感染症研究所実地疫学研究センター長  砂川 富正
     厚生労働省健康局結核感染症課 杉原 淳
     厚生労働省東京空港検疫所支所 髙橋 里枝子
  7. 18:50-19:00
    まとめ  中谷 比呂樹

詳細および申込み方法は「リーフレット」をご覧いただきますようお願い申し上げます。

  211112

 

 

 

掲載日:2021年10月30日

第57回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年10月26日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第57回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版

感染状況について

全国の新規感染者数(報告日別)は、今週先週比が0.57と減少が継続し、直近の1週間では10万人あたり約2となっており、昨 年の夏以降で最も低い水準となった。一方、60代以上及び10代以下の新規感染者も減少が続いているが、感染者に占める割合 は、60代以上は8月を底として2割弱まで上昇しており、10代以下は9月以降、2割程度で横ばいの状態が続いている。

新規感染者数の減少に伴い、療養者数、重症者数や死亡者数も減少が続いており、重症者数は今回及び今春の感染拡大前 の水準以下となった。一方、死亡者数は今回の感染拡大前の水準を超えている。

緊急事態措置等の解除後、多くの地域で夜間滞留人口の増加が継続しており、新規感染者数の今後の動向に注意が必要。

実効再生産数:
全国的には、直近(10/9時点)で0.70と1を下回る水準が続き、首都圏では0.60、関西圏では0.68となっている。

(注)死亡者数は、各自治体が公表している数を集計したもの。公表日ベース。

 

国立感染症研究所
2021年10月28日12:00時点

PDF

変異株に関する新たな分類の導入について

 変異株の分類についてはWHOの暫定定義を準用し、国内の流行状況を加味して「懸念される変異株(VOC)」と「注目すべき変異株(VOI)」に分類してきた。WHOでは9月より新たに、「監視下の変異株(VUM: Variants Under Monitoring)」の分類を設け、ウイルスの特性に影響を与えると思われる遺伝子変異を持つものの、表現型や疫学的な影響の証拠は現時点では不明である変異株を分類している。また、VOC/VOIにかつて分類されていたが、その後検出されなくなった、或いは公衆衛生的意義が薄れた変異株についてVUMとして一定期間監視を行うとしている。今般、国内外の変異株の疫学的状況が変化しつつあり、また、監視体制を強化し、早期の対応につなげる観点から、「監視下の変異株(VUM)」の分類を国立感染症研究所でも設定する(表1、表3)。

表1 国立感染症研究所による国内における変異株の分類(2021年10月28日時点)

分類

定義

主な対応

該当

変異株

懸念される変異株

(VOC; Variants of Concern)

公衆衛生への影響が大きい感染・伝播性、毒力*、及び治療・ワクチン効果の変化が明らかになった変異株

対応

Ÿ 週単位で検出数を公表(IDWR)

Ÿ ゲノムサーベイランス(国内・検疫)

Ÿ 必要に応じて変異株PCR検査で監視

Ÿ 積極的疫学調査

ベータ株

ガンマ株

デルタ株

注目すべき変異株

(VOI; Variants of Interest)

公衆衛生への影響が見込まれる感染・伝播性、毒力、及び治療・ワクチン効果や診断に影響がある可能性がある、又は確実な変異株で、国内侵入・増加の兆候やリスクを認めるもの(以下、例)

・検疫での一定数の検知

・渡航例等と無関係な国内での検出

・国内でのクラスター連鎖

・日本との往来が多い国での急速な増加

警戒

Ÿ週単位で検出数を公表(IDWR)

Ÿゲノムサーベイランス(国内・検疫)で監視

Ÿ積極的疫学調査

Ÿ必要に応じて変異株PCR検査の準備

該当なし

監視下の変異株

(VUM; Variants Under Monitoring)

公衆衛生への影響が見込まれる感染・伝播性、毒力、及び診断・治療・ワクチン効果に影響がある可能性がある変異を有する変異株

また、VOCやVOIに分類された変異株であっても、以下のような状況では、本分類に一定期間位置付ける

・世界的に検出数が著しく減少

・追加的な疫学的な影響なし

・国内・検疫等での検出が継続的に僅か

・特に懸念される形質変化なし

監視

Ÿ発生状況や基本的性状の情報収集

Ÿゲノムサーベイランス(国内・検疫)で監視

Ÿ(VOC/VOIからVUMに移行後国内発生が継続するものは)週単位で検出数を公表 (IDWR)

アルファ株

(旧)カッパ株

ラムダ株

ミュー株

AY.4.2

* 毒力virulence: 病原体が引き起こす感染症の重症度の強さ

IDWR: 感染症発生動向調査週報

変異株の再分類

  • これまでVOCに指定されていた変異株の中では、B.1.1.7系統の変異株(アルファ株)は、検出数が世界的に継続して減少しており、国内でも9月上旬以降、国際ゲノムデータベースであるGISAID(Global Initiative on Sharing All Influenza Data, https://www.gisaid.org)への登録がない。感染・伝播性は現在流行の中心であるデルタ株より低く、抗原性への影響がみられない。WHOと英国健康安全保障庁(HSA)はVOCの分類を維持しているが、欧州CDC、米国CDCは、それぞれ警戒解除した変異株(De-escalated variant)、監視中の変異株(VBM:Variant being monitored)に分類を変更している。以上の状況を鑑みて、我が国における分類をVUMに変更する。
  • B.1.351系統の変異株(ベータ株)、P.1系統の変異株(ガンマ株)については、世界的に検出数は継続して減少しているものの、一部の地域で発生が継続しており、抗原性の変化への影響を考慮して引き続きVOCに分類する。なお、米国CDCは共にVBMに分類している。
  • B.1.617.2系統の変異株(デルタ株)は、世界で検出されるウイルスの99%以上を占めており、国内でもほぼ100%置き換わっている。しかし、ワクチンの一部の効果の減弱が指摘されていること、また追加の変異やその亜型(AY.x系統)の動向が必要とされていることから、引き続きVOCに分類する。
  • VOIに位置付けてきたB.1.617.1系統の変異株(旧カッパ株)は、インドで4月に増加が見られたが、現在は終息している。国内では8例、検疫で19例が検出されているが、最終検出日は国内では2021年5月7日、検疫では 2021年5月1日である。国外からの流入が複数回あったことが確認できるが、国内では終息していると考えられる。WHOはVUMに分類を変更し「カッパ株」の呼称は取りやめ、欧州CDC、英国HSA、米国CDCがそれぞれ警戒解除した変異株(De-escalated variant)、調査中の変異株(VUI:Variant under investigation)、VBMに分類を変更している。世界的にも報告が著しく減少していることから、我が国における分類をVUMに変更する。

E484Qを含むデルタ株の事例について

  • デルタ株の中で、これまでVOC/VOIに見られたスパイクタンパクの特徴的な変異が加わった変異株について注視する動きがある。欧州CDCはデルタ株への追加変異として、スパイクタンパクにK417N、E484Q、Q613Hの各アミノ酸置換(以下便宜的に「変異」という。)が加わったものをVUMとして監視対象としている。
  • これらの追加変異の入ったウイルスの検出事例は検疫・国内で散見しているが、E484Qを含むデルタ株については、10月に入ってからも国内でいくつか検出がある。国内感染が示唆されるが、共に感染源不明の事例であり、国内で複数のE484Qを含むデルタ株が一定数存在する可能性がある。E484Q変異は感染・伝播性の増加や中和抗体の感受性が低下する可能性があるが、現在のところ国内で公衆衛生的に追加的な影響があることを示唆する所見はない。
  • VOCに位置付けるデルタ株の一部として、ゲノムサーベイランスや分子疫学調査で、顕著な疫学的変化(ブレークスルー感染、巨大クラスター化、二次感染率の増加、顕著な検出率の増加等)と関連するか引き続き注意する。

新たにVUMに位置付けられた変異株について

これまでVOCs/VOIsに位置付けていなかった変異株の中では、新たにC.37系統の変異株(ラムダ株)、B.1.621系統 (ミュー株)、AY.4.2系統の各変異株をVUMに分類する。

C.37系統の変異株 (ラムダ株)について

  • ラムダ株は、ペルーで2020年8月に初めて報告された。ラムダ株のスパイクタンパクの特徴的な変異としては、L452Q, F490S, D614G変異があり、感染・伝播性の増加と中和抗体への抵抗性と関連している可能性がある(1,2)。
  • ラムダ株は、第13報でも報告していたが、主に南米地域で比較的多くの割合を占めていたが、いずれの国においても減少傾向にある。
  • 検疫ではこれまで4例認めており、2021年9月6日の例が最後である。国内での検出流はない。
  • WHO、欧州CDCは引き続きVOIに位置付けているが、英国はVUIから“Monitoring(監視対象)”に位置付けを変更している。
  • 国立感染症研究所では、現状、ラムダ株が国内で拡大するリスクは非常に低いと考えるが、流行地域における動向を把握する必要性からVUMとして監視対象に位置付ける。

B.1.621系統の変異株 (ミュー株)について

  • ミュー株は、コロンビアで2021年1月に初めて検出された。WHOのVOCが有するE484K, N501Y, P681H等の変異を有することから、感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念されている。また、既存株の回復期血清やワクチン接種後の血清に対し中和抗体価が低下していることを示す実験的な報告もある(3,4)。
  • 地域的には、コロンビアとチリで検出数が多い。GISAIDの登録情報によれば、世界的には5月から検出割合が増加したが8月から減少傾向にある。
  • 検疫では、2例(最終検出日:2021年7月5日)が検出されているが、国内での検出は無い。
  • ミュー株について、WHO、欧州CDCはVOIに位置付け、英国HSA、米国CDCはそれぞれVUI、VBMに位置付けている。
  • 国立感染症研究所としては、ミュー株が国内で拡大するリスクは現状において低いと考えるが、流行地域における動向を把握する必要性からVUMとして監視対象に位置付ける。

AY.4.2系統の変異株 について

  • デルタ株は、PANGO系統のB.1.617.2系統及びその亜系統にあたるAY系統を含んでいるが、AY系統の中のAY.4.2系統が英国で増加している。
  • AY.4.2系統は、AY.4系統(B.1.617.2.4系統に相当)の亜系統として、PANGO系統分類の系統判別プログラム定義ファイルの更新(2021年10月4日、v.1.2.8)により新たに定義がなされた。
  • AY.4.2系統は、デルタ株やAY.4系統の変異に加え、スパイクタンパクにY145H、A222Vの各変異が入っていることが特徴とされる。これらの変異箇所は、スパイクタンパクのN末端側の変異であり、抗体医薬やワクチンにより誘導される抗体が標的とするエピトープ領域とは異なるため、免疫逃避などの影響は少ないと考えられるが、感染・伝播性や抗原性への影響に関して、疫学的・ウイルス学的な性質の評価に関する情報は現時点では十分に得られていない。
  • GISAID上、AY.4.2系統は25,222件登録されており、その93.8%は英国からの登録であったが、日本の検疫を含む多くの地域からも検出されている。(10月25日時点)
  • 英国は10月15日にAY.4.2系統を"Monitoring(監視対象)"に位置づけ(5)、10月20日にVUI(調査中の変異株)に位置づけた(6)。英国内では、デルタ株が約99.8%を占めており、そのデルタ株の中でもAY.4系統の割合が多かったが、さらにそのサブ系統であるAY.4.2系統の変異株が、当地で流行するその他の変異株に比較して速く増加しており、9月27日の週で英国で解析された検体の6%程度に検出されていることを指摘していた(5)。英国健康安全保障庁は、AY.4.2の増加率は、各地域で流行しているAY.4.2以外と比べて17%高い*と試算している(*この増加率は本系統の生物学的な感染・伝播性の増加の可能性だけでは無く、流行地の疫学的状況等にも左右されるものであり、解釈に注意を要する)。英国では、英国外の多数の国からの旅行者からも本系統が検出されており、その発生時期や起源は不明としている(6)。また、家庭における2次感染率が、AY.4.2系統で12.4% (95%CI: 11.9%-13.0%)とその他のデルタ株(11.1% (95%CI: 11.0%-11.2%))に比べて有意に高かった。家庭以外でもAY.4.2で2次感染率が高かったがその差は有意ではなかった。地域ごとの2次感染率の差異は観察されていない(6)
  • 欧州CDCは10月21日にVUMに位置付けた。なお、欧州CDCは域内での「検出」という位置づけであり、コミュニティでの流行とは判断していない(7)。
  • 我が国では、検疫で2021年8月28日に英国滞在歴のある入国者から検出されたデルタ株の1例について、これまでのPANGO系統判定プログラムではAY.4系統と判定されていたが、AY.4.2系統を含む定義ファイルに更新された系統判定プログラムでは、AY.4.2系統と判定された。なお、ウイルス分離を試みたがウイルスを分離することはできなかった。なお、10月28日時点で、国内ではAY.4.2系統と判定されたウイルスの検出はない。
  • 国立感染症研究所では、本系統は感染性が高まっている可能性を踏まえ、VUMに位置付け、諸外国の情報収集を継続するほか、ゲノムサーベイランスで国内の状況を監視する。

引用文献 (1-4 は査読前のプレプリント論文である)

  1. Acevedo ML, et al. Infectivity and immune escape of the new SARS-CoV-2 variant of interest Lambda. medRxiv. 2021. 
  2. Tada T, et al. SARS-CoV-2 Lambda Variant Remains Susceptible to Neutralization by mRNA Vaccine-elicited Antibodies and Convalescent Serum. bioRxiv. 2021.
  3. Uriu K, et al. Ineffective neutralization of the SARS-CoV-2 Mu variant by convalescent and vaccine sera. bioRxiv 2021.09.06.459005; doi: https://doi.org/10.1101/2021.09.06.459005.
  4. Miyakawa, K., et al. Neutralizing efficacy of vaccines against the SARS-CoV-2 Mu variant. medRxiv 2021.09.23.21264014; doi: https://doi.org/10.1101/2021.09.23.21264014.
  5. UK Health Security Agency. SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England: Technical briefing 25. 15 October 2021.
  6. UK Health Security Agency. SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England: Technical briefing 26. 22 October 2021.
  7. European Centre for Disease Prevention and Control. SARS-CoV-2 variants of concern as of 21 October 2021: https://www.ecdc.europa.eu/en/covid-19/variants-concern.

注意事項

 迅速な情報共有を目的とした資料であり、内容や見解は情勢の変化によって変わる可能性がある。

更新履歴

第14報   2021/10/28  12:00時点

13   2021/08/28  12:00 時点

12   2021/07/31  12:00 時点

11   2021/07/17  12:00 時点

10報 2021/07/06  18:00時点

  報 2021/06/11 10:00時点

      2021/04/07 17:00 時点

     2021/03/03 14:00時点 

      2021/02/12 18:00時点

5報 2021/01/25 18:00時点 注)タイトル変更

「感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念されるSARS-CoV-2の新規変異株について」

  報 2021/01/02 15:00時点

  報 2020/12/28 14:00時点 

  2報 2020/12/25 20:00時点 注)第1報からタイトル変更

「感染性の増加が懸念されるSARS-CoV-2新規変異株について」

  1報 2020/12/22 16:00時点 「英国における新規変異株(VUI-202012/01)の検出について」

  no14 2

no14 3

 

一般的にウイルスは増殖や感染を繰り返す中で徐々に変異をしてくことが知られており、新型コロナウイルスについても少しずつ変異をしています。大半の変異はウイルスの特性にほとんど影響を及ぼしませんが、一部の変異では、感染・伝播性、重症化リスク、ワクチン・治療薬の効果、診断法などに影響を及ぼすことがあります。 国立感染症研究所では新型コロナウイルスの変異株について迅速リスク評価を行い、「懸念される変異株(VOC)」、「注目すべき変異株(VOI)」、「監視下の変異株(VUM)」に分類しています。

 

  国立感染症研究所による国内における変異株の分類(2023年4月21日時点)

分類

定義

主な対応

該当

変異株

懸念される変異株

(VOC; Variants of Concern)

公衆衛生への影響が大きい感染・伝播性、毒力*、及び治療・ワクチン効果の変化が明らかになった変異株

対応

Ÿ 週単位で検出数を公表

Ÿ ゲノムサーベイランス(国内・検疫)

Ÿ 必要に応じて変異株PCR検査で監視

Ÿ 積極的疫学調査

オミクロン

注目すべき変異株

(VOI; Variants of Interest)

公衆衛生への影響が見込まれる感染・伝播性、毒力、及び治療・ワクチン効果や診断に影響がある可能性がある、又は確実な変異株で、国内侵入・増加の兆候やリスクを認めるもの(以下、例)

・検疫での一定数の検知

・渡航例等と無関係な国内での検出

・国内でのクラスター連鎖

・日本との往来が多い国での急速な増加

警戒

Ÿ週単位で検出数を公表

Ÿゲノムサーベイランス(国内・検疫)で監視

Ÿ積極的疫学調査

Ÿ必要に応じて変異株PCR検査の準備

 

 該当なし

監視下の変異株

(VUM; Variants Under Monitoring)

公衆衛生への影響が見込まれる感染・伝播性、毒力、及び診断・治療・ワクチン効果に影響がある可能性がある変異を有する変異株

また、VOCやVOIに分類された変異株であっても、以下のような状況では、本分類に一定期間位置付ける

・世界的に検出数が著しく減少

・追加的な疫学的な影響なし

・国内・検疫等での検出が継続的に僅か

・特に懸念される形質変化なし

監視

Ÿ発生状況や基本的性状の情報収集

Ÿゲノムサーベイランス(国内・検疫)で監視

Ÿ週単位で検出数を公表 

 

該当なし

* 毒力virulence: 病原体が引き起こす感染症の重症度の強さ

※ VariantのPango系統やNextstrainクレードといった分類が複雑で覚えにくく、初めて報告された地名などが呼称として使用されていることが、差別や偏見につながることも懸念して、2021年5月より、WHOは代表的なvariantに対してギリシャ文字の呼称を定めている。これまで”variant”の訳語として「変異株」、WHOが呼称を定めたvariantについてそれを用いて「〇〇株」と称してきた(例:B.1.1.7系統=アルファ株、B.1.1.529系統=オミクロン株)。しかし、B.1.1.529系統が主流となって以降、亜系統が広く分岐し、さらにWHOが用いる呼称で総称される系統・亜系統の抗原性等の性質が多様化しており、遺伝的に同一、又はほぼ均一なウイルスの集合体を示す「株」を、WHOが用いる呼称に対応して用いることが適さなくなってきている。そのため、WHOが呼称を定めた各variantについて「アルファ」「オミクロン」のように表現することとした。

なお、「〇〇株」は一般に広く使用されている用語となっており、通称として引き続き用いることを妨げるものではない。

 

 

 

 ● 国立感染症研究所が公表している新規変異株に関する報告

 

 ● 変異株に関する疫学調査

 

 ● 国立感染症研究所のゲノム解析の実施状況及びPANGO系統別検出状況

 

 

 

 

 

 

 

 

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新型コロナウイルスN501Y変異株感染入院患者が従来の退院基準を満たした日におけるCt値および抗原量に関する検討

(IASR Vol. 42 p233-234: 2021年10月号)

 
はじめに

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者は2020(令和2)年6月25日付の事務連絡1)に基づいて発症日から10日間経過し, かつ, 症状軽快後72時間経過した場合に退院が認められてきた。しかし, 世界的に流行しているN501Y変異株は科学的データが乏しいことから, 2020年12月25日付の事務連絡により退院基準として2回連続の核酸検出検査による陰性確認が必要となった2)。北海道でも2021(令和3)年2月頃から市中でN501Y変異株感染者が増加し, 入院病床がひっ迫する状況となった。2021年4月8日に国立感染症研究所より, 空港検疫所における軽症例および無症状例のウイルス量の経時的変化に関する調査が報告された3)。変異株症例と非変異株症例のウイルスRNAコピー数を比較すると, 診断後7日には明らかな違いはなく, 診断後10日には103copies/反応以下と少なくなっており, ウイルス分離試験でも陰性であった。この知見によりN501Y変異株感染者においても従来の退院基準に基づいて退院が可能となった4)。しかし, 中等症以上を含む入院患者における知見は乏しい。今回, N501Y変異株感染入院患者が従来の退院基準を満たした日におけるCt値および新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抗原量について検討した。

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コールセンターにおけるCOVID-19クラスター事例:気流調査に基づく予防策の検討

(IASR Vol. 42 p234-236: 2021年10月号)

 
はじめに

 2021年5~6月, 東京都内のオフィスビルの1つのフロア(Aフロア)に所在する複数のコールセンター(事業所)で, 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症例が報告された。これら症例の集積を確認した管轄である池袋保健所が, 国立感染症研究所(厚生労働省クラスター対策班)に本事例の感染源・感染経路の検討を要請した。また, 気流・換気の調査に関しては北海道大学および熊本大学の協力を得た。本稿では, 調査結果と提言を簡潔に報告する。

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新型コロナウイルスN501Y変異株による接触場所別SARS-CoV-2 PCR検査陽性率の変化

(IASR Vol. 42 p236-237: 2021年10月号)

 
はじめに

 全国自治体が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者発生に際して実施する積極的疫学調査では, 患者および濃厚接触者に対して詳細な聞き取り調査が行われる。本解析の目的は, これまで収集された積極的疫学調査情報を集約し, 感染者と濃厚接触者の基本情報と接触場所から感染リスクの高い属性や感染場所の特徴を明らかにするとともに, 感染伝播性が高いといわれるN501Y変異を有する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)変異株(N501Y変異株)の二次感染率を従来株と比較検討することである。

掲載日:2021年10月22日

第56回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年10月20日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第56回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版

感染状況について

全国の新規感染者数(報告日別)は、今週先週比が0.65と減少が継続し、直近の1週間では10万人あたり約3となっている。引き続き、今回及び今春の感染拡大前の水準以下が続いている。

新規感染者数の減少に伴い、療養者数、重症者数や死亡者数も減少が続いており、重症者数は今回及び今春の感染拡大前の水準以下となった。一方、死亡者数は今回の感染拡大前の水準を超えている。

また、緊急事態措置やまん延防止等重点措置の解除後、多くの地域で夜間滞留人口の増加が続いており、新規感染者数の今後の動向には注意が必要。

実効再生産数:
全国的には、直近(10/3時点)で0.68と1を下回る水準が続き、首都圏では0.66、関西圏では0.67となっている。

(注)死亡者数は、各自治体が公表している数を集計したもの。公表日ベース。

掲載日:2021年10月21日

 新型コロナウイルスに対するワクチン接種が進む中、その効果によって、感染者数(検査陽性者数)が多くとも必ずしも直ちに医療提供体制の逼迫につながるわけではなくなってきている。われわれは、今後の感染拡大の際に必要となる病床数(酸素投与を必要とする患者や重症者の数にもとづく)といった医療需要について、短期的(1から4週間後)あるいは中期的(1から2ヶ月後)に予測するためのツールを開発した。本ツールでは、任意の状況を想定して「新規陽性者数、ワクチン接種率、感染拡大スピード」を使用者が入力する。ワクチンの効果・年代別の重症化率・入院期間といったパラメータはあらかじめ入力されている。これらの初期値は、科学論文や複数の自治体からのデータをもとに設定したが、使用者が任意の値に変更することも可能である。

 本ツールによって、2021年の冬期の流行をそれぞれの自治体で想定しながら、必要とする病床の確保ならびに、どういう段階で地域での感染対策の強化などを呼びかける必要があるかの検討に用いることができる。また、今後リバウンドが起こった際には、その後に起こりうる状況の見える化にも用いることができる。

・短期的な予測

 短期的な予測において2週間~4週間後の状況が現在の確保病床数を越えるか否かを検討することで、警戒や感染対策の強化を行うべきか判断の参考として用いることができる。(なお、4週間にわたって同じ感染拡大スピードであり続けると仮定している。一方で、市民の行動の変化などがあった場合にはその想定は過大になる可能性があることに注意が必要である。)

・中期的な予測

 今後の流行で想定される感染の広がりとして、たとえば、ある時点での新規陽性者数・ワクチン接種率を入力し、「拡大シナリオ:横ばい(1.0→横ばい)」とすることで、現在の状態が続いた場合に医療需要がどの程度になるのかを検討することができる。また、今後、リバウンドが見られ始めたとき、「そのときの新規陽性者数」と「そのときのワクチン接種率」を入力し、「拡大シナリオ:増加(1.3~1.5→先月と同様)」と設定することで、第6波で起きうるその後2か月間の悲観的な予測を検討できる。さらに、「さまざまな新規陽性者数」と「今冬に想定されるワクチン接種率」を入力し、予測ツールによって算出される「酸素投与を要する人の数、重症者数、必要な確保病床数」を参照することで、【現在の確保病床ではどの程度の規模の感染状況に耐えられるのか】や【想定される感染規模に対して、どの程度の確保病床数が必要になるのか】を検討するためのデータを得ることができる。

 本ツールはインターネット上で公開されており、行政・医療機関・一般市民が自由に利用することができる。あくまでモデルであり絶対的なものではないことには留意されたい。1つの参考資料として、本ツールが今後の流行に対する備えや、更なる議論の発展に役立つことを期するものである。

本ツール、およびモデルの詳細や説明資料を入手できるURL:

https://github.com/yukifuruse1217/COVIDhealthBurden

 

予測ツール開発・検証チーム:

古瀬 祐気(京都大学)
和田 耕治(国際医療福祉大学)
押谷 仁(東北大学)
髙 勇羅(国立感染症研究所)
鈴木 基(国立感染症研究所)
脇田 隆字(国立感染症研究所)

 

 

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