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国立感染症研究所
2021年10月28日12:00時点
変異株に関する新たな分類の導入について
変異株の分類についてはWHOの暫定定義を準用し、国内の流行状況を加味して「懸念される変異株(VOC)」と「注目すべき変異株(VOI)」に分類してきた。WHOでは9月より新たに、「監視下の変異株(VUM: Variants Under Monitoring)」の分類を設け、ウイルスの特性に影響を与えると思われる遺伝子変異を持つものの、表現型や疫学的な影響の証拠は現時点では不明である変異株を分類している。また、VOC/VOIにかつて分類されていたが、その後検出されなくなった、或いは公衆衛生的意義が薄れた変異株についてVUMとして一定期間監視を行うとしている。今般、国内外の変異株の疫学的状況が変化しつつあり、また、監視体制を強化し、早期の対応につなげる観点から、「監視下の変異株(VUM)」の分類を国立感染症研究所でも設定する(表1、表3)。
表1 国立感染症研究所による国内における変異株の分類(2021年10月28日時点)
分類 |
定義 |
主な対応 |
該当 変異株 |
懸念される変異株 (VOC; Variants of Concern) |
公衆衛生への影響が大きい感染・伝播性、毒力*、及び治療・ワクチン効果の変化が明らかになった変異株 |
対応 週単位で検出数を公表(IDWR) ゲノムサーベイランス(国内・検疫) 必要に応じて変異株PCR検査で監視 積極的疫学調査 |
ベータ株 ガンマ株 デルタ株 |
注目すべき変異株 (VOI; Variants of Interest) |
公衆衛生への影響が見込まれる感染・伝播性、毒力、及び治療・ワクチン効果や診断に影響がある可能性がある、又は確実な変異株で、国内侵入・増加の兆候やリスクを認めるもの(以下、例) ・検疫での一定数の検知 ・渡航例等と無関係な国内での検出 ・国内でのクラスター連鎖 ・日本との往来が多い国での急速な増加 |
警戒 週単位で検出数を公表(IDWR) ゲノムサーベイランス(国内・検疫)で監視 積極的疫学調査 必要に応じて変異株PCR検査の準備
|
該当なし |
監視下の変異株 (VUM; Variants Under Monitoring) |
公衆衛生への影響が見込まれる感染・伝播性、毒力、及び診断・治療・ワクチン効果に影響がある可能性がある変異を有する変異株 また、VOCやVOIに分類された変異株であっても、以下のような状況では、本分類に一定期間位置付ける ・世界的に検出数が著しく減少 ・追加的な疫学的な影響なし ・国内・検疫等での検出が継続的に僅か ・特に懸念される形質変化なし |
監視 発生状況や基本的性状の情報収集 ゲノムサーベイランス(国内・検疫)で監視 (VOC/VOIからVUMに移行後国内発生が継続するものは)週単位で検出数を公表 (IDWR)
|
アルファ株 (旧)カッパ株 ラムダ株 ミュー株 AY.4.2
|
* 毒力virulence: 病原体が引き起こす感染症の重症度の強さ
IDWR: 感染症発生動向調査週報
変異株の再分類
E484Qを含むデルタ株の事例について
新たにVUMに位置付けられた変異株について
これまでVOCs/VOIsに位置付けていなかった変異株の中では、新たにC.37系統の変異株(ラムダ株)、B.1.621系統 (ミュー株)、AY.4.2系統の各変異株をVUMに分類する。
C.37系統の変異株 (ラムダ株)について
B.1.621系統の変異株 (ミュー株)について
AY.4.2系統の変異株 について
引用文献 (1-4 は査読前のプレプリント論文である)
注意事項
迅速な情報共有を目的とした資料であり、内容や見解は情勢の変化によって変わる可能性がある。
更新履歴
第14報 2021/10/28 12:00時点
第13報 2021/08/28 12:00 時点
第12報 2021/07/31 12:00 時点
第11報 2021/07/17 12:00 時点
第10報 2021/07/06 18:00時点
第 9報 2021/06/11 10:00時点
第 8報 2021/04/07 17:00 時点
第 7報 2021/03/03 14:00時点
第 6報 2021/02/12 18:00時点
第 5報 2021/01/25 18:00時点 注)タイトル変更
「感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念されるSARS-CoV-2の新規変異株について」
第 4報 2021/01/02 15:00時点
第 3報 2020/12/28 14:00時点
第 2報 2020/12/25 20:00時点 注)第1報からタイトル変更
「感染性の増加が懸念されるSARS-CoV-2新規変異株について」
第 1報 2020/12/22 16:00時点 「英国における新規変異株(VUI-202012/01)の検出について」
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)変異株の分類方法の変更について
2024年11月8日更新
国立感染症研究所
国立感染症研究所では、これまで新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株について、世界保健機関(WHO)による分類方法に基づき、「懸念される変異株(VOC)」、「注目すべき変異株(VOI)」、「監視下の変異株(VUM)」に分類してきた。
2020年12月にアルファが出現して以降、様々な変異株が出現し、置き換わりを見せたが、2022年11月以降はオミクロンが主流であり、亜系統の中で置き換わりが続いている。この間、その免疫逃避に関する変異は続いている一方で、重症化や感染性の増大といった、公衆衛生上のリスクを引き起こす亜系統は出現していない。
WHOはその変異株の分類において、感染者数増加の優位性及び遺伝子変異をもとにVUM、VOIへの指定を行い、公衆衛生上のリスクが明らかとなった場合にVOCに指定する体制をとっており、今後はオミクロンと比較して公衆衛生上のリスクがある場合のみVOCに指定し、新規の名称を提起する方針としている。
一方、日本国内においては、新型コロナウイルス感染症が「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」の5類感染症に位置付けられて以降も、厚生労働省における感染症発生動向調査(ゲノムサーベイランス)と入国時感染症ゲノムサーベイランスの実施に基づき、国立感染症研究所では、新規に出現した亜系統やその割合、感染者数増加の優位性及び遺伝子変異を常に監視・評価している。さらに、評価の結果、公衆衛生上のリスクが上昇する懸念がある、またはワクチン選定に影響を及ぼす可能性があるとされる亜系統については、厚生労働省へ迅速に情報提供をする体制が整えられているところである。
これらを背景に、今後国内における変異株の分類および監視方法については、以下のとおりとする。
※参考:WHOにおけるSARS-CoV-2変異株の分類定義と対応
https://www.who.int/publications/m/item/updated-working-definitions-and-primary-actions-for--sars-cov-2-variants
※ VariantのPango系統やNextstrainクレードといった分類が複雑で覚えにくく、初めて報告された地名などが呼称として使用されていることが、差別や偏見につながることも懸念して、2021年5月より、WHOは代表的なvariantに対してギリシャ文字の呼称を定めている。これまで”variant”の訳語として「変異株」、WHOが呼称を定めたvariantについてそれを用いて「〇〇株」と称してきた(例:B.1.1.7系統=アルファ株、B.1.1.529系統=オミクロン株)。しかし、B.1.1.529系統が主流となって以降、亜系統が広く分岐し、さらにWHOが用いる呼称で総称される系統・亜系統の抗原性等の性質が多様化しており、遺伝的に同一、又はほぼ均一なウイルスの集合体を示す「株」を、WHOが用いる呼称に対応して用いることが適さなくなってきている。そのため、WHOが呼称を定めた各variantについて「アルファ」「オミクロン」のように表現することとした。
なお、「〇〇株」は一般に広く使用されている用語となっており、通称として引き続き用いることを妨げるものではない。
(IASR Vol. 42 p233-234: 2021年10月号)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者は2020(令和2)年6月25日付の事務連絡1)に基づいて発症日から10日間経過し, かつ, 症状軽快後72時間経過した場合に退院が認められてきた。しかし, 世界的に流行しているN501Y変異株は科学的データが乏しいことから, 2020年12月25日付の事務連絡により退院基準として2回連続の核酸検出検査による陰性確認が必要となった2)。北海道でも2021(令和3)年2月頃から市中でN501Y変異株感染者が増加し, 入院病床がひっ迫する状況となった。2021年4月8日に国立感染症研究所より, 空港検疫所における軽症例および無症状例のウイルス量の経時的変化に関する調査が報告された3)。変異株症例と非変異株症例のウイルスRNAコピー数を比較すると, 診断後7日には明らかな違いはなく, 診断後10日には103copies/反応以下と少なくなっており, ウイルス分離試験でも陰性であった。この知見によりN501Y変異株感染者においても従来の退院基準に基づいて退院が可能となった4)。しかし, 中等症以上を含む入院患者における知見は乏しい。今回, N501Y変異株感染入院患者が従来の退院基準を満たした日におけるCt値および新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抗原量について検討した。
続きを読む: 新型コロナウイルスN501Y変異株感染入院患者が従来の退院基準を満たした日におけるCt値および抗原量に関する検討
(IASR Vol. 42 p234-236: 2021年10月号)
2021年5~6月, 東京都内のオフィスビルの1つのフロア(Aフロア)に所在する複数のコールセンター(事業所)で, 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症例が報告された。これら症例の集積を確認した管轄である池袋保健所が, 国立感染症研究所(厚生労働省クラスター対策班)に本事例の感染源・感染経路の検討を要請した。また, 気流・換気の調査に関しては北海道大学および熊本大学の協力を得た。本稿では, 調査結果と提言を簡潔に報告する。
(IASR Vol. 42 p236-237: 2021年10月号)
全国自治体が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者発生に際して実施する積極的疫学調査では, 患者および濃厚接触者に対して詳細な聞き取り調査が行われる。本解析の目的は, これまで収集された積極的疫学調査情報を集約し, 感染者と濃厚接触者の基本情報と接触場所から感染リスクの高い属性や感染場所の特徴を明らかにするとともに, 感染伝播性が高いといわれるN501Y変異を有する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)変異株(N501Y変異株)の二次感染率を従来株と比較検討することである。
掲載日:2021年10月22日
第56回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年10月20日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第56回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。
全国の新規感染者数(報告日別)は、今週先週比が0.65と減少が継続し、直近の1週間では10万人あたり約3となっている。引き続き、今回及び今春の感染拡大前の水準以下が続いている。
新規感染者数の減少に伴い、療養者数、重症者数や死亡者数も減少が続いており、重症者数は今回及び今春の感染拡大前の水準以下となった。一方、死亡者数は今回の感染拡大前の水準を超えている。
また、緊急事態措置やまん延防止等重点措置の解除後、多くの地域で夜間滞留人口の増加が続いており、新規感染者数の今後の動向には注意が必要。
(注)死亡者数は、各自治体が公表している数を集計したもの。公表日ベース。
掲載日:2021年10月21日
新型コロナウイルスに対するワクチン接種が進む中、その効果によって、感染者数(検査陽性者数)が多くとも必ずしも直ちに医療提供体制の逼迫につながるわけではなくなってきている。われわれは、今後の感染拡大の際に必要となる病床数(酸素投与を必要とする患者や重症者の数にもとづく)といった医療需要について、短期的(1から4週間後)あるいは中期的(1から2ヶ月後)に予測するためのツールを開発した。本ツールでは、任意の状況を想定して「新規陽性者数、ワクチン接種率、感染拡大スピード」を使用者が入力する。ワクチンの効果・年代別の重症化率・入院期間といったパラメータはあらかじめ入力されている。これらの初期値は、科学論文や複数の自治体からのデータをもとに設定したが、使用者が任意の値に変更することも可能である。
本ツールによって、2021年の冬期の流行をそれぞれの自治体で想定しながら、必要とする病床の確保ならびに、どういう段階で地域での感染対策の強化などを呼びかける必要があるかの検討に用いることができる。また、今後リバウンドが起こった際には、その後に起こりうる状況の見える化にも用いることができる。
短期的な予測において2週間~4週間後の状況が現在の確保病床数を越えるか否かを検討することで、警戒や感染対策の強化を行うべきか判断の参考として用いることができる。(なお、4週間にわたって同じ感染拡大スピードであり続けると仮定している。一方で、市民の行動の変化などがあった場合にはその想定は過大になる可能性があることに注意が必要である。)
今後の流行で想定される感染の広がりとして、たとえば、ある時点での新規陽性者数・ワクチン接種率を入力し、「拡大シナリオ:横ばい(1.0→横ばい)」とすることで、現在の状態が続いた場合に医療需要がどの程度になるのかを検討することができる。また、今後、リバウンドが見られ始めたとき、「そのときの新規陽性者数」と「そのときのワクチン接種率」を入力し、「拡大シナリオ:増加(1.3~1.5→先月と同様)」と設定することで、第6波で起きうるその後2か月間の悲観的な予測を検討できる。さらに、「さまざまな新規陽性者数」と「今冬に想定されるワクチン接種率」を入力し、予測ツールによって算出される「酸素投与を要する人の数、重症者数、必要な確保病床数」を参照することで、【現在の確保病床ではどの程度の規模の感染状況に耐えられるのか】や【想定される感染規模に対して、どの程度の確保病床数が必要になるのか】を検討するためのデータを得ることができる。
本ツールはインターネット上で公開されており、行政・医療機関・一般市民が自由に利用することができる。あくまでモデルであり絶対的なものではないことには留意されたい。1つの参考資料として、本ツールが今後の流行に対する備えや、更なる議論の発展に役立つことを期するものである。
本ツール、およびモデルの詳細や説明資料を入手できるURL:
https://github.com/yukifuruse1217/COVIDhealthBurden
予測ツール開発・検証チーム:
古瀬 祐気(京都大学)
和田 耕治(国際医療福祉大学)
押谷 仁(東北大学)
髙 勇羅(国立感染症研究所)
鈴木 基(国立感染症研究所)
脇田 隆字(国立感染症研究所)
国立感染症研究所
2021年10月18日
国立感染症研究所は、SARS-CoV-2ウイルスのアルファ株とデルタ株の組換え体とみられるSARS-CoV-2ウイルスを国内で6検体検出した。
図 国内で検出されたアルファ株とデルタ株の組換え体とみられるSARS-CoV-2ウイルスの遺伝子配列アライメント
上2行(PG-58832:アルファ株、PG-48062:デルタ株)は参照配列。
赤字の6検体はNextcladeで21A(デルタ)と判定されたものの、ORF7a遺伝子配列部分の変異はアルファ株のプロファイルと同一だった。赤字点線部分がアルファ株との組換えが起こったと考えられる箇所である。
国立感染症研究所
(掲載日:2021年10月15日)
2021年10月8日現在、国内ではファイザー製、武田/モデルナ製、アストラゼネカ製の新型コロナワクチン( 以下、ワクチン )が使用されています。ファイザー製と武田/モデルナ製の接種対象は12歳以上で、アストラゼネカ製の接種対象は原則40歳以上です。
10月7日現在の総接種回数は1億7,212万7,058回で、このうち高齢者( 65歳以上 )は6,455万3,077回、職域接種は1,752万3,553回でした。10月7日時点の1回以上接種率は全人口(1億2,664万5,025人)の72.8%、2回接種完了率は63.1%で、高齢者の1回以上接種率は、65歳以上人口(3,548万6,339 人)の90.8%、2回接種完了率89.6%でした。10月4日公表時点の年代別1回以上接種者数と接種率( 図1 )、および2回接種完了者数と完了率( 図2 )を示します。また、新規感染者数と累積接種割合についてまとめています( 図3 )。
図1 年代別1回以上接種者数・1回以上接種率( 首相官邸ホームページ公表数値より作図 ): 2021年10月4日公表時点 | 図2 年代別2回接種完了者数・2回接種完了率( 首相官邸ホームページ公表数値より作図 ): 2021年10月4日公表時点 |
注)接種率は、VRSへ報告された、一般接種(高齢者を含む)と先行接種対象者(接種券付き予診票で接種を行った優先接種者)の合計回数が使用されており、使用回数には、首相官邸HPで公表している総接種回数のうち、職域接種及び先行接種対象者のVRS未入力分である約1000万回分程度が含まれておらず、年齢が不明なものは計上されていません。また、年齢階級別人口は、総務省が公表している「令和3年住民基本台帳年齢階級別人口(市区町村別)」のうち、各市区町村の性別及び年代階級の数字を集計したものが利用されており、その際、12歳~14歳人口は10歳~14歳人口を5分の3したものが使用されています。
図3 日本_新規感染者数と累積接種割合の推移 [データ範囲:2020年1月22日~2021年10月3日]下記データより作図.Roser M, Ritchie H, Ortiz-Ospina E and Hasell J. (2020) - "Coronavirus Pandemic (COVID-19)". Published online at OurWorldInData.org. Retrieved from: 'https://ourworldindata.org/coronavirus' [Online Resource](閲覧日2021年10月5日)今回は、下記の内容について、最近のトピックスをまとめました。
注目すべき感染症 ※PDF版よりピックアップして掲載しています。
◆直近の新型コロナウイルス感染症の状況
2019年12月、中華人民共和国湖北省武漢市において確認され、2020年1月30日、世界保健機関(WHO)により「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言され、3月11日にはパンデミック(世界的な大流行)の状態にあると表明された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2021年10月8日15時現在、感染者数(死亡者数)は、世界で236,747,683例(4,834,252例)、196カ国・地域(集計方法変更:海外領土を本国分に計上)に広がった(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21555.html)。