国立感染症研究所

SARS、MERS、COVID-19を含むコロナウイルス感染症に関する記事がWebサイト全体から集められて表示されます。

 

 

国立感染症研究所

2023年9月7日時点
2023年9月12日一部修正

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概要

  •    2020年以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行は継続しているが、世界保健機関(WHO)は2023年5月4日に国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)に該当しないことを宣言した。2023年8月25日現在、SARS-CoV-2の変異株はBJ.1系統とBM.1.1.1系統の組換え体であるXBB系統が世界的に主流となっており、XBB.1.5系統、XBB.1.9系統、XBB.1.16系統など、複数のXBB系統の亜系統が報告されている。
  •    2023年2月に初めて報告されたEG.5系統はXBB.1.9.2系統の亜系統である。EG.5系統及びその亜系統はXBB.1.9系統、XBB.1.16系統などの一部にみられるF456L変異を有しているほか、EG.5.1系統の一部はこれに加えてL455F変異を有しており、XBB.1.5系統と比較して免疫を逃避する可能性が高くなることが示唆されている。
  •    8月22日までにGISAIDに登録されたEG.5系統の90%をEG.5.1系統が占めている。EG.5.1系統はアジアや欧米でこれまで主流となっている系統に対して感染者数増加の優位性を見せているが、重症度や感染性の上昇という知見はなく、世界的に9月以降の接種が計画されているXBB.1.5系統対応新型コロナウイルスワクチンの有効性が低下するという報告もない。
  •    世界的な検出割合の上昇を受け、WHOは8月9日にEG.5系統を注目すべき変異株(VOI: Variant of Interest )に、欧州疾病予防管理センター(ECDC)は8月10日に他の変異株と合わせて“XBB.1.5-like + F456L”の一群をVOIに指定した。

 

発生状況

  •    2023年8月25日現在、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株はBA.2系統の亜系統であるBJ.1系統とBM.1.1.1系統の組換え体であるXBB系統が世界的に主流となっており、XBB.1.5系統、XBB.1.9系統、XBB.1.16系統など、複数のXBB系統の亜系統がみられている(WHO, 2023a)。
  •    XBB.1.9.2系統の亜系統であるEG.5系統は2023年2月に初めて報告され、さらにその中でQ52H変異を有するものとして、2023年3月にEG.5.1系統が初めて報告された(GISAID, 2023)。8月29日までに、59の国と地域からGISAIDにEG.5系統及びその亜系統(以下EG.5系統)が18,274件登録され (covSPECTRUM, 2023)、登録された全検体に占める割合は、第27週(7月3日~9日)に12.8%であったものが、第31週(7月31日~8月6日)には 23.8%に上昇している(WHO, 2023a)。 GISAIDに登録されたEG.5系統のうちEG.5.1系統及びその亜系統(以下EG.5.1系統)が92.8%(16,967件)を占めている。EG.5.1系統は55の国と地域から登録されており、中国、米国、日本、韓国、カナダ等のアジアと北米から多く登録されているほか、欧州でも登録数が増加しており、各国において感染者数増加の優位性がみられている(covSPECTRUM, 2023)。一方で、これらの国におけるSARS-CoV-2感染者数、重症者数、死亡者数の推移は国によって異なり、EG.5.1系統の割合の上昇は感染者数や重症者数の増加には直結していない(UKHSA, 2023b、China CDC, 2023、CDC, 2023、 Government of Canada, 2023、 ECDC, 2023)。ただし、中国は感染者数などの公表が月1回であり、米国は感染者数の報告が終了するなど、各国におけるサーベイランスやその報告状況が異なることに注意が必要である。
  •    日本国内においては、2023年3月に初めてGISAIDに登録されて以降、8月29日までに1,943件のEG.5系統が登録され、うち96.0%(1,865件)がEG.5.1系統であった (covSPECTRUM, 2023)。民間検査会社の検体に基づくゲノムサーベイランスでは、第32週(8月7日~8月13日)に検出された検体のうち29%をEG.5.1系統が占め、今後その割合が上昇すると推定されている(国立感染症研究所, 2023a、国立感染症研究所, 2023b)。
  •    現時点で、EG.5系統の重症度への影響、感染性、治療薬への影響などの臨床的、疫学的な知見は得られていないことから、今後の国内外での検出状況、感染者数、重症者数の推移を注視する必要がある。
  

ウイルス学的知見

  •    EG.5.1系統は、EG.5系統が有しているF456L変異に加えてQ52H変異を有しているXBB.1.9.2系統の亜系統である。
    F456L変異については、F456L変異を有するXBB.1.5系統のシュードウイルスを用いたin vitroの報告で、XBB.1.5系統に対する中和抗体による免疫から逃避する可能性が指摘されている(Yisimayi A. et. al., 2023)。ただし、査読前のプレプリント論文であることに注意が必要である。
    また、EG.5.1系統の一部はF456L変異と隣接したアミノ酸変異であるL455F変異を有しており、XBB.1.5系統にL455F変異やF456L変異が加わることで中和抗体からの免疫を逃避する可能性が高くなるほか、これら2つの変異が併存することでアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)への結合能が上昇することを示唆する専門家もいる(Jian F. et al., 2023. 2023)。シュードウイルスを用いたin vitroでの報告では、EG.5.1系統の免疫逃避が起こる可能性はXBB1.5系統やXBB.1.9.2系統、XBB.1.16系統と同等であり、EG.5.1系統の感染者増加の優位性には、ウイルスの性質だけではなく、複数の要因が関与しているとの報告(Kaku Y. et. al., 2023)、XBB系統およびBQ系統の中和抗体による免疫から逃避する可能性がXBB.1.16系統よりわずかに高いとする報告(Wang Q. et al., 2023)や、新型コロナウイルスワクチン接種後のブレイクスルー感染による中和抗体による免疫から逃避する可能性がXBB.1.9.2系統よりわずかに高いとする報告(Uraki R. et al., 2023)があり、一定した見解は得られていない。ただし、いずれも査読前のプレプリント論文であることに注意が必要である。

 

新型コロナウイルスワクチンに関する知見

  •    現在日本や諸外国において、秋以降に接種が実施される新型コロナウイルスに対するワクチンとしてXBB.1.5系統対応1価ワクチンが準備されている(厚生労働省, 2023)。XBB.1.5系統対応1価ワクチンを生産、販売しているファイザー社、モデルナ社はいずれも現在準備中のワクチンにおいて、EG.5系統に対する中和活性を確認したとの報道発表を行った (Reuters, 2023、Moderna. 2023)。XBB.1.5系統対応1価ワクチンによる中和抗体は、EG.5.1に対してもXBB.1.5と同程度に効果があることも確認されている(Chalkias, S. et al., 2023)。EG.5.1系統とXBB.1系統の抗原性の差を調べたこれまでの報告でも、確認できた差は2倍程度とわずかである(Wang Q. et. al., 2023、Jian F. et al., 2023、Kaku Y. et. al., 2023、Uraki R. et al., 2023)。ただし、いずれも査読前のプレプリント論文等であることに注意が必要である。

 

海外の専門機関による評価

  •    WHOは2023年8月9日にEG.5に関するリスク評価を公表するとともに、EG.5系統をVOIに指定した。このリスク評価の中で、感染者数増加の優位性と免疫から逃避する可能性に関するリスクを中程度(Moderate)、重症度と臨床的な懸念に関してのリスクは低(Low)とし、総合的なリスクについて低(Low)とした。ただし、包括的な評価のためには、さらなる知見が必要と述べている(WHO, 2023b)。
  •    ECDCは2023年8月10日にEG.5系統を含む“XBB.1.5-like + F456L”を、EU/EEA圏内で拡大傾向にあること、市中での流行状況、免疫を回避する可能性に関する知見を理由にVOIに指定した。この中にはEG.5系統のほか、FL.1.5.1系統、XBB.1.16.6系統、XBB.1.5.59系統などが含まれており、EG.5系統だけではなくFL.1.5.1系統やXBB.1.16.6系統も一部の地域で感染者増加の優位性があることから、“XBB.1.5-like + F456L”として評価を行っている(ECDC, 2023)。 

参考文献

 

注意事項

迅速な情報共有を目的とした資料であり、内容や見解は情勢の変化によって変わる可能性がある。  

厚生労働省
国立感染症研究所
(掲載日:2023年8月 9日)
(更新日:2023年 8月15日)

 

 【背景・目的】

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2023年4月時点において世界で6億人以上が感染し約600万人以上が死亡している公衆衛生上、極めて脅威の大きい感染症である。新型コロナウイルスに対する我が国の一般住民における抗体保有状況の継続的な検討は、今後のCOVID-19対策に重要である。2020年度、2021年度と厚生労働省および国立感染症研究所が主体となって大規模な血清疫学調査が実施された。本調査は、昨年度までの調査を引き継ぎ、我が国における新型コロナウイルス感染症の疾病負荷の把握と新型コロナワクチン接種で誘導された抗体の保有状況を検討することを目的として、昨年度までの調査と同様に5都府県をおいて実施された。国内の検査陽性者数は2023年4月30日時点において、3372万人が確認されているが実際の感染者数は把握されている数よりも高いことが推測され、信頼性の高い結果を得るために抗体検査の実施が求められている。そこで、2022年度は先般の調査に準拠し、被験者の年齢・性別、職業、ワクチン接種状況や新型コロナウイルス感染症の診断歴等を聴取するとともに抗体保有状況を調査した。本調査により、様々な属性の集団における既感染者割合を推定することが可能となり、今後の感染症対策にとって有用な知見が得られることが期待できる。本報告書では、2022年12月および2023年2月に実施された第5回・第6回の血清疫学調査の結果を示す。

  続きを読む:2022年度新型コロナウイルス感染症に対する血清疫学調査報告
 

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