国立感染症研究所

SARS、MERS、COVID-19を含むコロナウイルス感染症に関する記事がWebサイト全体から集められて表示されます。

 

更新日:2024年3月1日

2023年5月8日より新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律上5類感染症に位置付けられました(過去のサーベイランス週報はこちら)。引き続き、COVID-19の流行状況を複数の指標を用いて精査し、解釈を行っています。

注意事項にも記載していますが、報告数は暫定値であり、変更の可能性があるので十分にご注意ください。

新型コロナウイルス感染症サーベイランス週報

インフルエンザ/COVID-19定点に報告された患者数とともに、2023年9月25日より基幹定点からのCOVID-19の入院患者の届出が開始されたことをうけ、基幹定点に報告された入院患者数の集計、並びにゲノムサーベイランスの結果を用いて解釈をおこなっています。週1回の更新を予定しています。

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2023年19週から38週までのサーベイランス週報はこちら

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新型コロナウイルス感染症サーベイランス週報 ‐ 速報

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について(厚生労働省)

 

注記

全国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行状況について複数の指標を用いてまとめています。週ごとに「傾向(トレンド)」と「水準(レベル)」を明記し、感染の流行の状況について、解釈を行っています。広くCOVID-19に関する疫学情報を提供・還元することを目的としており、COVID-19対策の参考として活用していただければ幸いです。
なお、週報で用いている定点当たり報告数及び基幹定点からの入院患者数の詳細は、感染症発生動向調査 週報(IDWR)をご参照ください。また、2023年第38週まで用いていたG-MISの詳細は、医療機関等情報支援システム(G-MIS)をご参照ください。

 

国立感染症研究所

2024年2月16日時点
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背景

  •    2020年以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行は継続しているが、世界保健機関(WHO)は2023年5月4日に国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)に該当しないことを宣言した。2024年1月24日現在、SARS-CoV-2の変異株は、EG.5.1系統などのXBB系統(BJ.1系統とBM.1.1.1系統の組換え体)の亜系統から、BA.2.86系統の亜系統であるJN.1系統とその亜系統への置き換わりが世界的に進んでいる (WHO, 2024a、covSPECTRUM, 2024)。

 

検出状況について

  •    2022年に主流となっていたBA.2系統の亜系統で、過去に報告されたBA.2系統からスパイクタンパク質に30以上のアミノ酸変異を有するBA.2.86系統が2023年7月にイスラエルとデンマークから報告され、さらにスパイクタンパク質にL455S変異を獲得したBA.2.86系統の亜系統であるJN.1系統が10月に欧州から報告された(GISAID, 2024)。BA.2.86系統が報告された当初は、XBB系統からの急速な置き換わりはみられなかったが、JN.1系統は欧州諸国を中心に感染者数増加の優位性を示しており、世界的にXBB系統からの置き換わりが進み、多くの国で主流となっている(covSPECTRUM, 2024)。
  •    2024年2月7日までに94ヵ国から89,361件のJN.1系統(亜系統を含む)のゲノム解析結果がGISAIDに登録されている。フランス、デンマーク、スペイン、シンガポールなどでは、2023年10月から11月にかけてJN.1系統の占める割合が上昇し、12月初旬には主流となっている(covSPECTRUM, 2024)。また、米国でも1月21日から2月3日に検出されたSARS-CoV-2の93.1%を占めると推測され、1月以降主流となっていると考えられている(CDC, 2024)。ただし、GISAIDへの登録数は各国のゲノムサーベイランス体制に依存すること、ゲノム解析件数が世界的に減少傾向にあることから、解釈には注意が必要である。
  •    日本国内では週に1,000件程度のゲノム解析が実施されており、2024年2月5日時点で、国立感染症研究所ゲノムサーベイランスシステム(COG-jp)に2023年第15週(4/10-16)以降59,790件のゲノム解析結果が登録されている。
    BA.2.86系統は2023年第35週(8/28-9/3)に、JN.1系統は第39週(9/25-10/1)に初めてCOG-jpに登録されている。2024年2月5日時点で、2023年第35週以降登録された23,466件のゲノム解析結果のうち、BA.2.86系統とその亜系統が2,794件、さらにそのうちJN.1系統とその亜系統が1,592件を占めている。JN.1系統とその亜系統の報告数は増加傾向にあり、民間検査機関の検体に基づくゲノムサーベイランスでは、2024年第7週(2/12-18)には77%を占めると推定されている(国立感染症研究所, 2024a、国立感染症研究所, 2024b)。ただし、検体提出から登録・報告まで時間を要することから、直近数週間の登録情報の解釈には注意が必要である。

 

科学的知見について

  •    JN.1系統は、スパイクタンパク質にL455S変異を獲得したBA.2.86系統の亜系統である。L455S変異は標的細胞のACE2受容体への結合能を低下させる一方で、中和抗体による免疫から逃避する可能性を高めることが示唆されている(Kaku Y. et al., 2023)。また、BA.2.86系統に感染したハムスターの血清を用いた実験において、JN.1系統の免疫を逃避する可能性はBA.2.86系統と同等であったと報告されている。XBB.1.5系統やEG.5系統に感染したヒトの血清では、BA.2.86系統及びHK.3系統(EG.5.1系統の亜系統)と比較してJN.1系統の免疫を逃避する可能性が高かったと報告されている(Kaku Y. et al., 2023、 Wang Q. et al., 2023、 Yang S. et al., 2023)。ただし、これらの知見については、査読を受ける前のプレプリント論文を含むことに注意が必要である。一方で、2023年9月に採取された、ワクチン接種歴のある成人の血清においては、BA.2.86系統、JN.1系統に対して免疫を逃避する可能性の上昇は見られなかったと報告されている(Jeworowski LM. et. al., 2024)。
    SARS-CoV-2に対する細胞性免疫について、SARS-CoV-2特異的T細胞のBA.2.86系統に対する応答はCD4陽性T細胞で72%、CD8陽性T細胞で89%が保存されると予測されており、安定したT細胞応答が得られると可能性が報告されている(Sette A. et al., 2024)。
  •    日本を含む複数の国で2023年9月以降に接種されているXBB.1.5系統対応1価ワクチンに関して、ワクチン接種者の血清とシュードウイルスを用いた実験ではBA.2.86系統と比較してJN.1系統の中和抗体価が低く、L455S変異がこれに影響している可能性が示唆されている(Kaku Y. et al., 2023)。
  •    XBB.1.5系統対応1価ワクチンの接種により、JN.1系統に対する中和抗体価の上昇が認められている (Wang Q. et al., 2023)ほか、検査や治療薬への影響について、BA.2.86系統と比較して検査精度、抗ウイルス薬の有効性が低下するという知見はない。
    米国疾病管理予防センター(CDC)は上記の結果をもとに、免疫を逃避する可能性は指摘されているもののワクチンへの影響は限定的であるとして、現行のワクチン、検査、治療薬はいずれもJN.1系統に対して有効であるとしている(CDC, 2023)。また、WHOも2023年12月に実施されたTAG-CO-VACの会議を受けた声明の中で、前述の動物及びヒトの血清を用いた実験結果を引用し、知見は限定的であるものの、引き続きXBB.1.5系統対応1価ワクチンの接種が推奨されるとしている(WHO, 2023) 。
  •    また、XBB.1.5系統対応1価ワクチンの有効性に関して、2023年9月21日から2024年1月14日までに米国内の薬局で実施された無料のPCR検査、抗原検査の結果を解析した結果が報告されている。この中で、S遺伝子標的陰性(S gene target failure:SGTF)により調査当時に米国内で流行していたXBB系統とJN.1系統を区別し、感染予防に対するワクチン効果がSGTFの場合(JN.1系統を含む)49%(95%信頼区間:19-68%)、S遺伝子標的陽性(SGTP)の場合(XBB系統を含む)60%(95%信頼区間:35-75%)であったと報告されている(Link-Gelles R. et al., 2024)。
    これらの結果から、XBB.1.5系統対応1価ワクチンはJN.1系統に対して、特に発症予防効果や重症化予防効果において、これまで主流であった亜系統と同程度の有効性が期待できると考えられる 。
  •    重症化リスクに関しては、WHOは、新型コロナウイルスワクチンに関する技術諮問グループであるTAG-CO-VACの会議で示されたデータとして、デンマークで行われた65歳以上を対象とした研究において、BA.2.86系統以外の亜系統に感染した患者と比較したJN.1系統に感染した患者の入院のオッズ比は、1.15(95%信頼区間:0.74-1.78)と有意な差がなかったと報告した(WHO, 2024c)。またフランスでも同様の傾向が見られたとしたほか、シンガポールからのデータとして、JN.1系統に感染した高齢者、若年者で、ともに入院リスクと重症度が低かったと報告した(WHO, 2024c)。

 

各国、各機関による評価

  •    検出数は少ないものの、既存の変異株と比較したアミノ酸の違いが多いことから、WHOは2023年8月17日にBA.2.86系統を監視下の変異株(VOI:Variants of Interest)に指定した。その後、他のBA.2.86系統の亜系統と比較してJN.1系統が世界各地で感染者数増加の優位性を見せたことから、12月18日にJN.1系統をBA.2.86系統とその亜系統から独立させる形でVOIに指定した(WHO, 2024b)。
    欧州疾病予防管理センター(ECDC)は8月24日にBA.2.86系統をVOIに指定しており、JN.1系統もこの中に含めた取り扱いとしている (ECDC, 2024)。
  •    WHOとCDCはそれぞれJN.1系統の評価を公表しており、世界的に感染者数増加の優位性がみられることに加え、BA.2.86系統と比較して免疫を逃避する可能性が高いとしているものの、感染者の重症度が高くなる知見はなく、公衆衛生的なリスクは他の亜系統と同等としている(CDC, 2024b、WHO, 2024c)。また、英国健康安全保障庁(UKHSA)も公式ブログの中で、公衆衛生上の勧告に変更はないとしている(UKHSA, 2024)。ただし、特に疫学的、臨床的な知見が少ないことから、JN.1系統の評価のために、ウイルス学的、疫学的、臨床的知見、国内外での発生状況の監視を継続する必要がある。

 

関連項目

参考文献

 

注意事項

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