ここでは、学術雑誌に掲載された感染研の研究者の論文や報道等のあった研究成果の要約を公開することで、感染研が行っている研究業務を紹介していきます。

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biochem 2020 1Chlamydia trachomatis-infected human cells convert ceramide to sphingomyelin without sphingomyelin synthases 1 and 2.

Tachida Y, Kumagai K, Sakai S, Ando S, Yamaji T, and Hanada K

FEBS Let, 594, 519-529, 2020. doi.org/10.1002/1873-3468.13632

結膜炎や性器感染症を引き起こす偏性細胞内寄生細菌クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis; Ct)が分裂増殖するには、宿主細胞のセラミド輸送タンパクCERTを介してセラミドが寄生胞(封入体)に供給されることが必要である。正常細胞においてCERTは、セラミド新合成の場である小胞体膜からスフィンゴミエリン(SM)生合成の場であるゴルジ体へとセラミドを輸送するが、Ct感染細胞中ではセラミドを封入体膜に運ぶ役割も担う。

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A Novel Immunogen Selectively Eliciting CD8+ T Cells but Not CD4+ T Cells Targeting Immunodeficiency Virus Antigens.

vac 2020 2Ishii H, Terahara K, Nomura T, Takeda A, Okazaki M, Yamamoto H, Tokusumi T, Shu T, Matano T

J. Virol., 94, e01876-19, 2020

HIVはHIV特異的CD4陽性T細胞に優先的に感染することから、ワクチン接種により誘導されたHIV特異的CD4陽性T細胞は感染後のウイルス増殖を促進することが示唆されている。本研究では、SIV Gag・Vifを標的として抗原特異的CD8陽性T細胞を選択的に誘導する新規抗原(TC11)を設計し、サルモデルにおける免疫誘導能とSIV感染への影響を解析した。

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bac 2020 2Streptococcus pneumoniae hijacks host autophagy by deploying CbpC as a decoy for Atg14 depletion.

Sayaka Shizukuishi, Michinaga Ogawa, Satoko Matsunaga, Mikado Tomokiyo, Tadayoshi Ikebe, Shinya Fushinobu , Akihide Ryo & Makoto Ohnishi

EMBO Rep (2020) e49232

肺炎の主要な原因菌である肺炎球菌は、時に小児や高齢者を中心に髄膜炎などの重篤な侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)を引き起こす。IPDを起こすためには肺炎球菌が細胞の中を通り抜ける必要があるが、今までに我々は、ゼノファジー(殺菌的オートファジー)が細胞内に侵入した肺炎球菌を殺菌排除することを報告している。今回、我々は肺炎球菌が巧妙な方法で宿主細胞の殺菌機構から逃れていることを発見した。

 

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vac 2020 1Effects of the thermal denaturation of Sabin-derived inactivated polio vaccines on the D-antigenicity and the immunogenicity in rats.

Murakami K, Fujii Y and Someya Y

Vaccine 38(17):3295–3299, 2020

セービン株由来不活化ポリオワクチン(sIPV)の有効性はラット免疫原性試験と中和抗体を誘導するD抗原量の測定試験で評価される。国家検定では前者の試験が行われている。これら二種の試験の関係を明らかにするために、sIPVを加温処理し、D抗原性および免疫原性に対する効果を調べた。

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Enhanced isolation of SARS-CoV-2 by TMPRSS2-expressing cells.

Shutoku Matsuyama, Naganori Nao, Kazuya Shirato, Miyuki Kawase, Shinji Saito, Ikuyo Takayama, Noriyo Nagata, Tsuyoshi Sekizuka, Hiroshi Katoh, Fumihiro Kato, Masafumi Sakata, Maino Tahara, Satoshi Kutsuna, Norio Ohmagari, Makoto Kuroda, Tadaki Suzuki, Tsutomu Kageyama, and Makoto Takeda

Proc Natl Acad Sci USA (March 12, 2020)

 

vir 2020 022019年12月に中国武漢で発生した新型コロナウイルス SARS-CoV-2による肺炎の流行は、今や世界中に広がっている。TMPRSS2とは、呼吸器上皮に発現している宿主のタンパク分解酵素のひとつである。

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para 2020 3Molecular and biological analysis revealed genetic diversity and high virulence strain of Toxoplasma gondii in Japan.

Junpei Fukumoto, Akinori Yamano, Motomichi Matsuzaki, Hisako Kyan, Tatsunori Masatani, Tomohide Matsuo, Toshihiro Matsui, Mami Murakami, Yasuhiro Takashima, Ryuma Matsubara, Michiru Tahara, Takaya Sakura, Fumihiko Takeuchi, Kisaburo Nagamune

PLoS ONE, 15(2), e0227749, 2020

parasitology 2019 1

トキソプラズマは、胎児に感染して発症する先天性トキソプラズマ症や、臓器移植などの際の免疫不全状態の患者に致死的な脳炎を引きおこす寄生虫です。従来トキソプラズマには高、低、無病原性の3つの遺伝型があることが知られていました。最近、遺伝型は16にまで増えましたが、日本を含むアジアでの遺伝型はほとんどわかっていません。

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para 2020 1IL-33 is essential to prevent high fat diet-induced obesity in mice infected with an intestinal helminth.

Seiji Obi*, Chikako Shimokawa*, Mizuki Katsuura, Alex Olia, Takashi Imai, Kazutomo Suzue, Hajime Hisaeda
 *equally contributed

Parasite Immunology 2020, doi:10.1111/pim.12700 

parasitology 2019 1

最近の研究で、二型自然リンパ球(ILC2)がマウスにおける肥満抑制に重要な働きをしていることが示された。ILC2は、特に寄生虫感染によって大量に誘導される細胞であるため、我々は寄生虫が感染することでも肥満を抑制することができるのではないかと考え、検討を行った。

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2019nCoV 200130monos thumb国立感染症研究所ウイルス第三部で、新型コロナウイルスの分離に成功しました(図1)。使用した細胞はVeroE6/TMPRSS2細胞​(TMPRSS2というプロテアーゼを発現している)です。臨床検体を接種後、細胞の形状変化を観察し、多核巨細胞の出現を捉えました。

細胞上清中のウイルスゲノムを抽出して、ほぼ全長のウイルスゲノムの配列を確定しました。これは、最初に発表されたウイルスの遺伝子配列と99.9%の相同性がありました。

分離したウイルスを用いて、ウイルス感染機構及び病原性の解析、ウイルス検査法・抗ウイルス薬・ワクチンなどの開発を進める予定です。また、新型コロナウイルス対策に役立てるため、ウイルスと細胞は国内外に広く配布する予定です。

 

以下の写真は、「感染症 画像・映像アーカイブ」の記事で一般に配布しております。

2019nCoV 200130monos niid

図1:当研究所で分離された新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真像。粒状の粒子の上にコロナウイルス特有の冠状のスパイクタンパク質が観察できます。

2019nCoV 200130cellculture niid

図2:VeroE6/TMPRSS2細胞に出現した新型コロナウイルスによる細胞変性像。画面の中央に多数の核の集積像(多核巨細胞像)が確認できます。

2019nCoV 200130fluoro niid

図3:2019-nCoVに感染した細胞の蛍光抗体染色像

 

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Streptococcus pneumoniae triggers hierarchical autophagy through reprogramming of LAPosome-like vesicles via NDP52-delocalization.

Michinaga Ogawa, Naoki Takada, Sayaka Shizukuishi, Mikado Tomokiyo, Bin Chang, Mitsutaka Yoshida, Soichiro Kakuta, Isei Tanida, Akihide Ryo, Jun-Lin Guan, Haruko Takeyama, Makoto Ohnishi

Commun Biol 3, 25 (2020) doi:10.1038/s42003-020-0753-3

肺炎の主要な原因菌である肺炎球菌は、時に重篤な侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)を引き起こす。IPDを起こすためには肺炎球菌が細胞の中を通り抜ける必要があるが、今までに我々は、細胞に侵入した肺炎球菌はゼノファジー(殺菌的オートファジー)により殺菌されることを報告している。今回、我々は肺炎球菌がオートファジーで殺菌されるプロセスに着目した。

 

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Severe fever with thrombocytopenia syndrome virus targets B cells in lethal human infections.

Tadaki Suzuki, Yuko Sato, Kaori Sano, Takeshi Arashiro, Harutaka Katano, Noriko Nakajima, Masayuki Shimojima, Michiyo Kataoka, Kenta Takahashi, Yuji Wada, Shigeru Morikawa, Shuetsu Fukushi, Tomoki Yoshikawa, Masayuki Saijo, and Hideki Hasegawa

J Clin Invest. 2020 Jan 6. pii: 129171.

virology 2020 1

重症熱性血小板減少症候群(Severe fever with thrombocytopenia syndrome; SFTS)は、SFTSウイルス(SFTSV)によるマダニ媒介性のウイルス性出血熱である。本研究では、SFTSで死亡した患者体内でのSFTSV感染細胞はマクロファージと「抗体産生細胞である形質芽球に分化しつつあるB細胞」であることを明らかにした。さらに、本研究ではヒト形質芽球と似た特徴を持つ培養細胞株のPBL-1細胞を用いて、SFTS患者の体内で起こるウイルス感染を試験管内で再現が可能なSFTSV感染の実験系の開発にも成功した。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan